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離乳食

1時間で好きなものをだらだらっとかいて
流せる。
これこそが産廃の排水溝たる所以ですね。

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「いい格好ね、妹紅」

 いつも通りの殺し合いだ。手足を切り落とされて倒れているのは妹紅。散り散りになっているパーツを取り戻そうにも、目の前にいる輝夜が止めを刺すまでにはどうにもならない。

「……まだだっ……ぐ」

 呪を念じて炎を呼ぼうとする妹紅。炎術を発動するに必要な印を得られるのは、何も手や足だけではない。口だって十分な炎術のトリガ足りえる。が、輝夜はあっさりとその道も断った。

「が……っ!」

 輝夜が、手に持っていた妹紅の腕を、ぞんざいにその口に突き入れたのだ。

「あは、あははは!無様な顔!自分の拳を銜え込んで、凄い顔してるのよあなた?!醜い、醜いわ!」

 口角を吊り上げ、目を見開いた、叫ぶ様な笑い声。今こうして倒れているのは妹紅だが、戦い自体は競っていた。倒れているのが輝夜だった可能性も十二分にある。だからこそ、目の前に転がっている勝利を、狂気を以って楽しもうと。それがこの二人の夜のあり方だった。
 輝夜は、笑いにひくつきながら、千切れた妹紅の手首を掴んでぐいぐいとその口へ押し込む。いや、手を口に入れるという押し方ではない。既に単に上から下へ、顎の中に力を入れている、しかも思いっきり押し入れているだけに過ぎない。

「が、ぐぎ……あぐ」

 感情からではなく息苦しさと生理反応によって涙目になる妹紅。その発端がどこにあったのかなど関係もなく、妹紅の涙に輝夜は興奮する。

「いい、いいわ。その顔!ねえ!もっと、もっと泣いて見せなさい!?無様に歪んだ顔で、涙を流して見せなさい!」

 ぐい、と輝夜が一層の力を込めると、がこんと軽い音がして妹紅の口が大きく開いた。頬の肉が裂ける。拳が完全に喉の奥まで通り抜けた。

「~~っ!んが……ぐぎ!ん~~!」
「あら、顎が外れちゃったわね……。無様。本当に醜いわ、地上人。」

 妹紅を蔑む言葉を投げているが、輝夜の表情は恍惚のそれで。

「ねえ、どうして貴方みたいなのを、私が好きにならなくちゃいけないの?ねえ?こんな、醜悪で、愚鈍で、蒙昧で。ただの、ただの地上人の貴方を、私が好きにならなきゃいけないのよ!?」

 狂った。まさにその言葉が相応しい勢いで、腕を押し付ける。喉の奥を突き上げて、後頭部の骨を砕く。それに負けるように妹紅の腕が手首からあらぬ方向へ折れた。もう力を込めるのに掴む部分がよれよれになってしまっている。
 妹紅はといえば、脳幹部分を潰されて、意識を失っていた。だが死なない。蓬莱人とはそういうものだ。ともに後天性蓬莱人である輝夜と妹紅は、互いのことを誰よりもよく理解していた。
 だが。
 自分の気持ちの整理が、下手だったのだろう。

「返事しなさいよ!ほら!このくらいで死んでんじゃないわよ!ねえ!?私の問いに応えなさい!私は貴方の持っているものが欲しいの。なんだって欲しいの。貴方の心も、体も、何でも私の中に入れてしまいたい!わかるでしょう!?ねえ、わかるでしょう?!死んでる場合じゃないのよ、ウスノロ!ブサイク!」

 唾を飛ばしながら妹紅を叫ぶ。その手は動かなくなった妹紅の腹へ。
 皮膚を裂き、吹き出る血。
 柔らかい肉を掻き分け、爪を差し入れる。
 ずぶりとそのまま差し込んで、左右に広げるように腹を押し開けた。
 戦いで損傷した内蔵が、蠢いて再生を急いでいた。
 たったいま開腹したそこをつなぎ合わせようと、肉同士が呼び合っている。

「……貴方はここに来る前に、何を食べてきたの?貴方はここに来る前に、誰の作ったものを食べてきたの?」

 もう少し肉を掻き分けると、三日月のような形に見えなくもない白い袋。
 その姿を認めた輝夜は子供のように笑うのだ。

「ねえ、それ、私にも頂戴?私も妹紅と一緒のもの、食べるわ」

 目を細めていとおしげにそれを見る。赤い血の膜の下で白くぬめり光る胃に爪の先を突き立てる。
 優しく。そう、それこそが宝石で、恋人で、愛情だと物語る、優しい指先。
 
 つぶ
 
 そのまま、指を縦に下ろすと、それは花開く百合のように。
 だがその奥に見える未消化で原形をとどめぬ食物。消化液と混じったその悪臭。
 誰もが顔を背けるそれを、腹から直接書き出して至福の笑みを浮かべる輝夜。

「一人で食べちゃうなんて、ずるいわ」

 小さく優しく呟いて。
 しかしそこからの動きはまさしく獣。
 荒々しく、猛々しく、禍々しく、そして生き生きしていた。

「妹紅の!食べたもの!美味しいわ!素敵、素敵よ!」

 ぶちゅ、ぐちゅ

 汚らしい水音を立てながら、輝夜が妹紅の胃の中に顔を突っ込む。胃の中の未消化のままの食べ物を貪る様に口に含み、それを何度も口の中で躍らせ、咀嚼し、咽下する。

「うふ、おいしいっ……妹紅の、もこうのたべものぉっ!ぶちゅ、ぶちゅっ!ちゅるっ」

 顎で掬いきれないものは口をすぼめて吸い出す。
 胃の中の隅々までを舌で嘗め回し、その味、その匂い、そして歪んだ愛を飲み込んでゆく。
 さらに奥に突っ込んで幽門を舌でほじって更にその奥までもを求める。

「すき、すき、もこう、すき」

 胃の中に顔を突っ込んで、どろどろに汚れた顔のまま愛を漏らす輝夜。
 再生が徐々に進んだ妹紅。肉同士が呼び合って結合したもう片方の腕を挙げ、腹部に顔を突っ込む輝夜の頭部へ。
 その手に気づき、動きを止めて凍りつく輝夜。しかし妹紅の手は、その輝夜の髪を優しく梳いて。

「……甘いんだから」

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