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【日記】目の前で人が倒れた

23:00過ぎ。
今日は早く退社できるかなと思っていたらそんなこともなくて
うっへりしながら電車に乗る。

そんな時間なのに豊洲駅には人が多くて
有楽町線の各駅にも人は多くて
この生活をしていると酷く間違った錯覚に陥る。

何でこんな時間に帰る人がこんなに多いのだろう。
なんでこんな時間に帰る人がこんなに多いのに不況なのだろう。
せめて人々の大半が酒臭くてやかましいなら
救いのある辟易だというのに。

気味が悪い。




市ヶ谷で降り、都営新宿線に乗り換える。
京王線の最寄り駅まで直通運転する電車が来た。
夜も更けて車庫入りするために直通するだけの嬉しくもない幸運。

私はこの時間の帰宅にしては珍しく眠くなかったので
携帯電話でSSを打っていた。

うーん、ネチョを入れる場所が思いつかない。
ネチョを入れる場所が思いつかないというのは、
前置き部分で登場人物の感情のうねりを描き切れていない証拠だ。
このSSはダメかも知れない。

そんなふうに携帯電話をいじくり回していると
いつの間にか最寄り駅だ。
この駅で終点の電車なので全員が降りる。
混雑が嫌なのと、
入力途中の文節がまだ変換し切れていなかったので
おおかたの客が降りてからゆっくり降りようと思って席に座ったままでいた。



一人、どうも変な男性の乗客が居る。
降りようとしないで吊革につかまったまま、
開いているドアの前で立っているのだ。

見ると耳にはイヤホンが付いていて
もしかしたらこの駅が終点であることに気付いていないのかも知れなかった。
酒に酔って、吊革につかまって立ったまま寝ることが出来る
訓練された社会人ならそんな芸当もお手の物である。



他の乗客はわらわらと降りていく。
立ったままのその客をよけて大体の客が降りたところで
私もよっこらせと立ち上がる。
立ったままのその乗客の横を通り過ぎたので
何気なしに顔を見る。

目が開いていた。
寝ていない。
人の流れが目に入っているのなら、
流石にここが終点であることに気付くはずだ。

怪訝に思いながら車両とホームの間の隙間を跨ごうと
視線を逸らす直前。




その乗客が、倒れた。



(えっ?)



自分もぶっ倒れたことがあるが、
目眩でふらふらになって幾許か持ち堪えるし
そもそもヤバイと感じてしゃがみ込んだりもする。

だがその客は
目をはっきりと見開いたまま、
しかも受け身を徒労とする姿勢にもならず
真っ直ぐに後に倒れた。



「はっ!?」
「えっ」


私と、私と同じように人の波が終わってから降りようとしていた女性一人が
同時に声を上げた。

一目で分かる。

あの倒れ方は、ヤバイ。



取りあえず駆け寄って見ると、一応動いている。
死んではいないようだった。

駅のホームでは早くも野次馬が出来上がっていた。

ホームと車両内と
つまりさっき跨ごうとした隙間。
それを境界にして

こちらが舞台、あちらが観客席。

そんな風に世界が分断された。
だれも踏みいってこない。
人がぶっ倒れたのを見ても、誰も、誰も入ってこない。
誰も声を上げない。
奇異の目、怪訝な目、慌てた目。
幾らかの声。

だが誰も動かない。



「駅員呼んでください」



私が開きっぱなしのドアから顔を出して言うと
女性が一人応えて先頭車両の方へ向かっていった。

二人で言っても仕方がないので、
私は倒れた人の方を見る。

偶然同じ舞台に押し込められた女性が、
倒れた男性乗客に「動かないでください」と言っている。
倒れた男が意識を取り戻したらしい。
制止されつつもやはりしゃっきりしない足取りで、
女性が客席に座らせた。

しばらくすると、
電車のドアが閉まる。



「え、なんで?呼びに行った人は?」



もう一人男性のサラリーマンがドアに体を挟んで
閉まるのを制止してくれた。
その後も何度もドアが閉まろうとする。
サラリーマンが閉じるのを何度か制止したが
あまりにも閉める気が満々だったので
サラリーマンも引いてしまった。

ドアが閉じられ、舞台と客席が遮断される。

私と女性は再び舞台側に押し込められた。


「駅員は」
「まだ……」



ドアが閉まると言うことは伝達がされていないということだろう。
どうなってんだこれ。



私は車両の中を歩いて先頭車両へ向かう。
後部車両と迷ったが、
車掌の声が可愛い女性ボイスだったので
(聞いている分には非常に心地よかったけど)
ことこの状態では役に立つまい
車掌が若手女性なら運転手はそれなりに業務を理解した男性の筈
こういう事があればそちらに従うように指示されているか
そう教育されていなくても指示を仰ぐだろう。
そう思って先頭車両を選んだ。



てくてく車両内を歩くと、
向こう側から運転手が向かってきた。



私と距離を縮め続けて出会ったあたりのドアに向かってしゃがみ
ドアを開ける。



「どうぞ」
(えっ)



まさかと思うが、
私が寝てるか何かで取り残された乗客だと思われている
つまり
倒れた人がいることが伝わっていないのではないか。



「倒れた人がいるんですけど」
「あ、はい、有り難う御座います」



なんだか頼りねえなあ。
ともかく一旦車両を外に出て、私は舞台の外側へ。

そのまま倒れた男性客の車両までホームを遡る。



運転手がドアを開けると、
待っていた女性とともに外に出てきた。



「大丈夫ですか」



そう声をかけて帰ってきた言葉に驚愕した。



「意識失ってましたか」



目眩とか、なんとか、
意識を失う前の前兆を察知できずにいきなり失神したらしい。

それにしても人が良さそうな人だ。
めちゃくちゃに腰が低いのも、
こうして周りに迷惑をかけている引け目それだけのモノではないように見える。



で。
駅員の対応を見ようとすると

運転手はとっとと車両内を後部車両へ歩き去ってしまった。
終点で行う車両内点検を済ます要領に見える。



「ちょっ、あの人……!」
「あのひと!」



私と女性は同時に声を上げる。
それほどにぞんざいな対応だった。



男性は私と女性の方を借りてはいるが、意識を持って立っている。
そうであるこの時間だけを切り取って見る限り
確かに大病人には見えないかも知れない。



「だ、大丈夫ですか?」
「ええ…」
「駅員(多分)呼びましたから」
「済みません」



一応普通の声だ。
顔面が蒼白だが、一応意識ははっきりと



していなかった。



また目を開いたまま倒れ込む。



私の方にもたれかかるように崩れてきたので、
ゆっくりと腰を下ろさせる。

ここで気付いた。
この人、酒臭くない。

目を見開いたまま倒れたのだから
酒のせいではないとは思っていたけど
酒臭さの欠片もなかった。
むしろネクターピーチのような甘い香りがしている。
カクテルっぽい匂いでもなかったが、
流石にそこまで分かるほど私の鼻はよくない。



それにしても。



だれも、何もしない。
野次馬と、乗り換え客と、沢山いるのに何もしない。
何も言わない。


倒れ込んでいる病人が居るのに、
待合室の中でベンチに腰掛けてるヤツは微動だにしない。
直ぐ傍にあるベンチに座ってるやつもぴくりとも動かない。
周りで私達を見ているヤツも視線以外動かない。

確かにこういう人は寝かせておいた方がいいから
ベンチを開けても意味はないのだけど



全く動かないあいつらが
ものすごく気持ちが悪かった。



やがて駅員がきて
担架が来るから、と言ったが
男性客は再び意識を取り戻して立ち上がっていた。

自分で立ち上がって歩こうとするので
駅員が付き添って駅員室へ行く。



そこまでに対応した駅員は3人目。
恐らく誰もあの倒れ込んだ瞬間を目にしていない。
そして入れ替わりに対応しているから状況も何も伝わっていないだろう。



最後に対応して付きそう駅員は
つきそうだけで別に肩を貸したりはしない。
そのころには男性客は自分の足で歩けるようになっていたのだから。

だから駅員はあの壮絶な倒れ方した
ヤバイ状況だとは思っていないだろう。
転んで頭を打っただけとかその程度に思われている。

対応の軽さがそれを物語っていた。


その後を付いていく私と女性。
そしてドアを体で開け続けようとしてくれていた男性サラリーマン。

改札は一つなので駅員室もそこに一つあるだけ。
全員の道のりが一致して、
女性は、心配そうにしながらも時間が時間だけに慌てて走っていってしまった。
前に駅員と乗客を見ながら男性と私が残り



「あれ、倒れ方ヤバイですよね。尋常な倒れ方じゃなかった」
「ですよね、目、開いたままでしたし」



駅員に引き渡し、男性は
「思い切り倒れて頭打ってますから救急車」
と伝えている。
駅員も其れを了承したように駅員室へ乗客を導くが
倒れた乗客は「大丈夫です」「済みません」「帰れます」と言っている。

正直、先の男性の伝え方では危機感が伝わっていない気がしたので
お節介かも知れないと思いながらも
駅員室に戻り、
駅員の一人を手招きで呼び、
向こうにいる倒れた乗客に聞こえない声で

「目を開いたまま、ばたんって倒れて、まずい感じです。
本人はああ平気って言ってますけど、絶対病院に連れてった方がいいです」

と伝えた。

駅員は若そうだったので、私が伝えたこれを
同僚に対してどのように展開出来るか疑問が残ったけれど
もう私が出来ることはなさそうだった。



私が一番パニクっているのか?
もう1時間くらい経つけれど、
目を見開いたまま二度も倒れたあの顔が焼き付いて離れない。
アレはヤバイ。




こんな事を日記にしたためて
何がそんなに気になっているのだろうかと
自問しながら書いている。

結局、
あんな衝撃的なものを目撃していながら
あの後どうなったのか知る術もなく

きっとあの時電車から降りて観客席側に降りたときのように
この事件からはドロップアウトしたのだろう。



あの乗客がどうなったのか
救急車が本当に呼ばれたのか
それとも自力で帰宅したのか
あの後直ぐに亡くなったのか
数日後に亡くなるのか
けろっと完治するのか
それが労災なのか
ただの持病なのか
私には何も知る余地はない。

事件直後にワイドショーが大騒ぎし
その後どうなったのかは全く報道されない
その気持ちの悪さを100倍にしたような
そんなもやもやと不快感だけが残っている。

それに
あの野次馬共への嫌悪感は自分が思う以上に自分の胸の中で腐敗して
同時に
もし自分があの瞬間
ホームと車両の隙間をあと10秒早く渡りきっていたら
あの野次馬と同じだったかも知れない、
恐らく同じだっただろうことを考えると
それも吐き気を誘うほど気持ちが悪い。

これが、社会か。




あと。
人の良さそうなサラリーマンが
あの時間の電車で
あんなヤバイ倒れ方してるのを思うと
明日は我が身なのかも知れないと
身の毛もよだつ思いです。

この記事へのコメント

Re: 【日記】目の前で人が倒れた

検索ワードから来ました。
終電車の人々。関心の無さにびっくりしますね。。

この間同僚と帰った時に同じく目を見開いたまま倒れこんだので
心配でいろいろ検索してました

Re: Re: 【日記】目の前で人が倒れた

> 検索ワードから来ました。
> 終電車の人々。関心の無さにびっくりしますね。。
>
> この間同僚と帰った時に同じく目を見開いたまま倒れこんだので
> 心配でいろいろ検索してました

こういうと不謹慎と言うところもあるかもしれませんが
目を開いたままいきなり斃れるあのさまは
素直に恐怖心を憶えます。
それが日々のストレスなどから着ていたりすると思うと
働き方にも折り合いをつけないとダメなんだろうと思いますね…。

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