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ミスティックワードが散るのは、廻り狂うトゥルー、身、あるいは愚かの四則によってのみである。

久しぶりに夜伽に投稿しました。
現在は削除されています。削除の経緯に関しては、こちらをご覧ください。

ミスティックワードが散るのは、廻り狂うトゥルー、身、あるいは愚かの四則によってのみである。



だらだら長い一文をつらつらと重ねるような文体ってのをやってみたいなと思って、
実は今書いているSSの気分転換に書いたものだったんですが
先に出来上がってしまいました。

純粋に書いていて楽しかったです。

後は、
「東方キャラの一切出てこない東方SS」
ってのをやってみたいと言う野望の一つの布石としての側面もありました。

もともと妖怪ってのは
そんな、人の視界の中に入り込んで目立つ行動をとろうとせず
人知れず何かをして、
裏から人に影響を与えるような存在であるんじゃないかと思っていて
だとするなら、いっぺんは、
東方キャラが明示的に登場しない(でも存在がほのめかされている)SSと言うのを
やってみたいなあと思っています。



今回のこのつらつらと読みづらいことこの上ない文体は
もろにラブクラフト全集を読んでいる影響で書きたいと思いました。
アレをもっと酷く悪くたちの悪い形にすると、こんな感じになるのかなと思ってやってみたら
思いのほか楽しかった。

また機会があったらやってみたいです。


以下、本文のアーカイブ。
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◆表紙



 検収された際「1290」と書いた表紙らしい紙が先頭ページだったことから、この押収資料を「1290の文書」とする。



◆秘封クラブと呼ばれるオカルト集団について



 何の変哲もない大学の、まったく他愛のないサークル活動、たった二人から活動を開始した「秘封クラブ」と呼ばれる活動が、ここを拠点にしていたのかもしれなかった。
 始動メンバーはわずか二人だったにも拘わらず、その活動は二人が大学を卒業したその先随分と長い間にまで及び、最盛期には数百という予備メンバー、数千とも言われる沿革メンバーを抱えていたなどと、まことしやか噂されている。
 だがそれを裏付ける物証は何一つ残されておらず、今では予備メンバーだと自称する人間がいくたりか残っているだけだったし、それも自称でしかなく信用に足る発言ではなかった。

「これも、これもこれも、実際に起こった事件を記してる」

 その集団が、それほどの支持を受けながらも予備メンバーの存在をさえ公式には認めず、最後まで二人きりで活動していたらしいという噂はもはや伝説じみて、若者達の間で受け継がれていた。
 私はそれをただの都市伝説と片付けるにはいかばかりか、幾つかの点において「真実味がありすぎる」と感じていて、一人、仕事とは別枠のプライベートな時間を使って細々と調査を続けていたのだ。

「持って帰って鑑識作業してみないと真偽は定かじゃないけど、ここに書かれてる日付が正しいなら、昨今のSWA事件幾つかに、彼女たちは間違いなく関わっている」

 私は全く一人というわけではなかった。一人だけ、私の胡散臭い調査に、嫌々言いながらも付いてきて手伝ってくれる相棒がいる。会社の後輩ということもあって、あまり引きずり回すとパワハラ疑惑をかけられかねないので、あまり頻繁に声をかけるわけではないが、こうして調査に一つ光が見え詰めたいときには、手伝ってもらうこともしばしばだった。名を三鉢守シィヌといい、私はシィと呼んでいた。

「標谷先輩?」
「見て、これ」
「ただの子供の秘密基地だったんじゃないんですか?ドラッグパーティでもやってたとか」
「子供がわざわざ競売物件を落札してまでこんなことをする?これは、秘封が社会人になった後、大学の部室の代わりに拠点にした場所に違いないわ」
「それこそただのオカルト活動に、自分の家や賃貸でなくてこんな大層な場所を構える必要があったとも思えませんけど。第一、競売物件とはいえ、そんな資金がどこから。」

 彼女達が活動を最大にしていた頃は、経済不況、度重なる自然災害、政治不信、行き詰まる国際問題、打開できないエネルギー問題、日本ですら逃れられなかった水問題、テクノロジの一人歩き、ゆきすぎた価値観の多様化によって、過去に類を見ない社会不安が日本を席巻していた。何故かそれが爆発するように高まった時期が、秘封が活動をもっとも活発にしていた時期と重なっていたのだ。緩やかに消えてきてはいるが今でもそれは続いていて、社会不安は確かに今でも私達の頭上で暗雲のように漂い覆い隠している。それに背を押される形で、秘封クラブと呼ばれるオカルト集団は、恐らく彼女達でも想像していなかったほどの支持を得て、その活動はアンダーグラウンドな情報網によって真偽もソースも明らかでない形で報道され続けた。
 彼女達が実際に残したものは何もないとされているが、予備メンバーを自称する人間からは、公式を謳った情報メディアが頒布されていた。もちろんそれが本当に公式だったのかどうかはわからないし、予備メンバー達も、それはただの自称でしかないのだから、実際は何の実体も持っていない空虚な集団帰納的な都市伝説でしかないのかもしれない。



◆世界閉じる場所



 その四則は、私という存在が仮に私という個体だけでなく、私を取り巻く環境それらすべてを包括してこそ私というものを構成するのだとすれば、まさに私というものを構成する要素のありとあらゆるものに、それは川辺の深みで脚を取られ多くが命を落とす絡みつく水草がそうであるのと同じように、私を捕まえたまま、昼も、夜も、自我にも、体にも、ねっとりと絡み付いて放してはくれなかった。
 私はあれ以来、酩酊と夢を伴わない睡眠、薬理によった強制的な愉悦にある間以外は、とりわけそれが夜であった場合には、筆舌にしがたい恐怖が背後に迫っているという不安(それは精神、薬理、病状によるものではない)に苛まれ続け、当時週に数時間程度だけ訪れる平穏を心待ちにしながら、戦慄の日々を過ごし続けていたが、その間隔も日増しに長くなり、今はこうしてこれをしたためるに足る平常な精神が以前いつであったのかと思い出せば、もう三月も前であったことを考えると、私が命を保ち続けられるのも、そう長くはないだろうと思わざるを得なく、この体験を誰かに知らせるべきだと(正確に言うなれば徒にそれを探求してこの真理を詳らかにするなどと言う思い上がりを誰もゆめゆめ持つべきではないという警告として)このノートを記している。願わくば、このノートが誰かの畏怖と警戒心だけを育て、好奇心や探求心を煽らないことを。
 そう言う前提であることは確かに記した上で、私はあの日のことを詳細に書き残そうと思う。
 あの日、娘と息子を保育所へ向かいにいくのに、私は彼女達と約束した20時に一息間に合いそうになかったこともあったし、いつも使っている、表側に面し人通りも多く街灯が煌々と光り人の文明がそれ以外を否定する様をまるで体現したかのような道はどうにも今日に限っては耳に痛いほど喧噪に過ぎ、あるいは立ちすくんで動けないほどに雑踏が込み合い過ぎて、それらの妨害によって約束に違える恐れを色濃く私に示してきたものだから、私はその道を行くのを諦め、今述べた表通りの目映く飾りたてた安心感とは真逆の、仄やぐ不安と滴り流れる闇、頬を撫でる何者か悪寒をさえ与える夜風の支配する(しかしそれは妙に私を安らがせて手招きする)、得体の知れぬ小径を通り抜けることにしたのだ。
 小道は、少なくともこの町に住んで10数年にもなる私の頭に刷り込まれた地図を参照する限りは、確かに保育所までの近道に違いなかったが、だというのにも関わらず、私はこの夜初めてこの道に足を踏み入れようと意を決し、そこはかとない不安感と安らぎに髪を引かれて実際に通ることになるまで、ただの一度たりとも意識したことのない道であったし、もっと正確に言うのであれば、私はそんな道がそこにあるという事実さえ知らなかったか、あるいは気づいてさえいなかった。
 人の希望にあふれた表通りの明るさとは裏腹に、その小径には光はなく、あるのはただ不快に笑いながら私を見下ろす不吉の月と、それを崇拝し奉仕するように取り巻く鈍い光の星星だけであって、道をなす壁、塀も、まるで氷かもしくは深海からすくい上げた泥を塗り込めたように冷え冷えとした空気を醸しだしながら私を取り囲み、私を世界から隔離せんとしているようにさえ感じられ、その様は、壁の無機質、天の不吉が、双方手を取り合って私を飲み込もうとする悪意を持っているかのようにさえ、思えた。
 私は人々を押し退け悪態を吐かれ、時間に間に合わずに娘達にだめな父親と罵られることさえ受け入れ、甘んじ、その上でその暗い道を引き返し、表通りの雑踏を行くよう、方針を変えるべきだったのだ。
 だが、私はそれをしなかった。しなかった私を暗愚で鈍感な人間だと笑うものがあるというのなら、その言葉をそのままその主へ返そう。私が見、感じ、知ってしまった四則というものは、私がそうして通り抜けた道にのみ潜み棲むものではなく、そこかしこ、目に見える空間という空間、あるいは目を瞑ってさえ考えることのできる概念という輪郭のない存在の四辺にさえ、その存在は刻まれているのであって、我々人間の視力、触覚、聴覚、温感といった外界とのインターフェイスについて、まだ私達に対して――それは単に気紛れ、あるいは偶然によってそうであると言うだけであって全く信頼の置ない――いかばかりか友好的な神が、それを目にすることが出来ぬ劣悪な視力、あるいは感じられぬ薄い霊感を私達に与えることによって、我々からは慈悲深くも覆い隠されていると言うだけなのだ。私は何らかの些細な拍子に、私を救い得たかもしれぬ神の隔離の塀を一息に踏み越えてしまったのだ。あの小道である必要は毛ほどもなく、あなた方が今こうして私の手記を読んでいるそのとき、顔を上げて目に入ってくる光景、そこにある物体、それに紐付く概念いずれにであっても必ず、その四則、隠れ潜む恐怖達は、宿っていることを、決して忘れないで欲しい。



◆患者達とカルト



「とりあえず、この家、登記はどうなってるの?」
「トグチ・カズンドという人物の所有になっているみたいです。税なんかはきっちりどこかから支払われているみたいですが、トグチと言う人物は追い切れませんでした」
「ふうん。トグチはいいとして、カズンドってどんな字を書くの?歴史上の人物みたいな名前ね。」
「一人、だそうです。」
「ふうん。二人で活動していたってのに、仰々しく演出じみた名前だこと」

 公式メディアと謳われて頒布されていたのは、音楽を収録したコンパクトディスクと呼ばれる、その当時でも既に再生機器が手に入らない骨董な媒体によってであり、それに何枚かのこれまた今はみない、純粋紙で出来た媒体がバンドルされていた。
 予備メンバー達は、自分達を病人と見なしていた。いかなる病気であるのかの明確な文言は残っていないが、この「自分たちを病人と見なす」という性質が、噂をまことしやかなものに仕立てていた。
 つまり、その社会不安が覆い隠す当時の日本で、それ故にか多発した不可解な事故、失踪、あるいは集団自殺や同時多発殺人に、この「病人」達が関わったのではないかという、根も葉もない噂だ。

「もしかして、秘封クラブなんてものはやっぱり存在しなくて、誰か一人の手によって見事情報操作されて”あったことにされた”集団だったとか。」
「先輩、最近仕事で扱うネタがつまらないからって、あんまりに夢見がちじゃないですか」
「……そうね」
「でしょう。だから、この廃屋だって、別に秘封なんかとは関係がないんじゃないですか。このトグチ・カズンドってのも、ただの金持ちで、バブルで値が下がった土地を手放せなくて放ってあるだけかもしれないですよ」
「そうであるか、もしくは、そうでないか、どちらかをはっきりさせるのが、私達の仕事でしょう。」
「今はプライベートですけど」

 私達がたどり着いた廃屋は、私達の地道で綿密な調査の上で線上に浮かび上がった場所だった。
 ぶっちゃけ、不法侵入である。だが、ここに誰もいないということは数ヶ月も前からじっと確認し続けてほぼ確実であった。この廃屋に興味を抱く人間がこの周囲にはいないことも、ノベタン済みだった。

「で、この辺のもの、どうするんですか」
「全部電子化するわ。書類以外は出来る限り詳細に写真におさめて。紙……ああ、もう、紙なんていつの時代よ、紙の書類は、いったんイメージングして持ち出すわ。」
「それ、私がやるんじゃないですよね?」
「て、手伝ってよぅ」

 立ち入った廃屋は、数年か、あるいは十数年か、全く手入れされていないようであったが、その屋内には、たったさっきまで人が生活し、何らかの書類をまとめ、活動をしたため、行動計画を練り、あるいは夜の帳に隠れて秘め事をしていたかのような生活の痕跡が残されていて、まるで凍り付いたそのままの時間に埃をかぶったみたいに、様々なものがそこかしこに残されていた。

「イメージスキャナ、使おうにも電源来てないんですけど」
「うーん……。明日、バッテリーと一緒に持ってくるかぁ。保存は明日にしましょう。」
「明日、突然この家が取り壊されてなきゃあいいですね」
「やめてよ。せっかく見つけた、重要な証拠よ。たとえ秘封の二人のものでなくても、予備メンバーが何らかしていた場所であることは間違いないわ。ここに書いてあること、ちょっと読むだけでも、好奇心がかき立てられてたまらないし。」
「はいはい。明日またここにくるんですね。私、先輩といつになったらまともなデート出来るんですかねえ」

 そうして入手した、この真贋さえ知れぬ怪しげな紙媒体の資料は、俗に”世界”と呼ばれる、形而上的で非唯一的な名前空間も、恒星が寿命を迎えて炸裂するときのように崩壊することがあるという私の仮説を、支持するまではいかないが、ある程度私に自信を与えるものだった。



◆血に飢えた闇



 話が逸れてしまったので戻そう。
 そういうわけで、どうにも空恐ろしい気配を感じ、本能が危険を察知して警鐘をけたたましくかき鳴らしているにも拘わらず私がその道を進んだのは、確かに耳に入り込んでくる、ガラスを鳴らす音と人の声の間のような、その道にぎっしりと詰め込まれた闇を晴らしさえする軽快なリフレインが、私の意識、体中の神経、あるいは運動中枢を、まるでハープの弦を白く美しい細指が弾き奏でるかのように触れてきて、私はその心地よさに囚われてしまったからに違いなかった。宝石を音に置き換えるのならばこうであるに違いないと思わされる美しい音色が、どろどろと渦巻き流れる闇、あるいは蛆虫や正体不明の節足動物が犇めき蠢く、冷たく凍り付いたような不安感を吹き出し続ける小径に響きわたり、それに導かれ、私はそう言うわけで進んでいくことにしたのだった。
 私を突き動かし続けるのは、響く音に、流れる闇に、あるいは脈打ち蠢く何かに、夏だというのにさめざめ冷え渡る空気に対して抱く、不安感と恐怖、そしてそれを上回る好奇心とリフレインであって、娘達を保育所へ向かいにいく近道としての選択であったということは既に忘れ去られていた。そこは道だというのに、気味が悪いほど白い塀とその白にびっしりと落書きを施された壁、あるいはそこを抜けようとも思えぬほど鬱蒼とした茨の生け垣によって切り取られ、私はそれに導かれるまま歩き続けるしかなかった。このとき私は一時的に喪心していたようにその目的を忘れてはいたが、これをこのまま進めば、保育所のすぐ側にでるはずだった。
 その一角を占める闇はまるで泥のように半ば液化していて、私が一歩進める一投足や泥濘を徒労にも払おうとする一挙手の果てにまで、まるでこの世に未練のある亡者が私の生きた体に手を巻き付けてそれを置いていけというように鬱陶しく絡み付いてきて私を飲み込もうとしているようにさえ感じる。明かりのない暗がりに対する原始的な不安感、視界が制限され感覚が鈍ることへの本能的な恐怖感があるにも拘わらず、私は道を進むのをやめることが出来なかったし、後ろを振り返る気は起こらなかった。それをするには、どうやら想像を絶するほどの勇気と決意が必要だったろうし、残念とも思わないが私はそれらを持ち合わせてはいなかったのだ。蔵に押し込められ入り口を閉じられた、そんな風に私は、歩むことを強いられているようであったし、かといって背後では、私はそれを知ることが出来ず、また知りたいとさえ思えない、血腥く忌まわしい儀式が繰り返し繰り返し行われているような気配が後ろから四六時中襲ってくるので、やはり振り返ることも止まることも出来なかった。
 この壁の向こう、あるいは生け垣の向こうには、表通りで賑わいを生むのと同じ人間が、まだ20時にもなる前なのだから、きっとテレビでも見て、夕食を口に運び、談笑しながら生活しているはずであったが、この裏小路からではそんな気配は一切感じられなく、形だけは町として残り人の誰も住んでいないゴーストタウンが急に目の前に現れたようであり、かつてそこに棲んでいた人々の呪いや思念をメタンの湧く沼地のようにぐらぐらと煮立たせているようにも見えた。
 町の真ん中に、このように退廃を感じ、まるで黒いなめし革のように人の息吹や命の煌めきを吸い込んでしまって感じさせない土地があったことに、私は驚きを隠せないでいた。先ほどから記している通りの不快な空気は依然私を解放してくれなかったし、私ははたと思い出した娘達を向かいにいくという目的を盲目然と見定めて進むことが出来なければ、その場でへたり込んで動けなくなっていたかもしれなかった。
 先ほどから耳に入り込んでくるリフレインは、この不快感を和らげてはくれてはいたが、私をこの小径から逃がさないという点で言えば、絡み付く不快感達と一緒であった。しかし一体何の音であろうか、声であるかもしれない。透明感のある清涼なそれを私はもっと近くで聞いてみたいと思い、どんよりと幽かな月明かり、掠れそうな星明かりに照らされる道行きを進んでいく。



◆情報と言う遺跡について



「標谷アルマイヤ。仕事の傍ら独自の”世界開閉現象論”を展開するも、本人は科学の知識ゼロ。故に誰にも取り合ってもらえず、未だにこうして、後輩の一人を駆り出しては泥棒じみたことをしている。」
「科学なんてね、物証の前ではなんの意味もないの。物証がなくたって同じ、結局は真と偽を基本にした論理式なんて、こんな小さなものにすべてを乗っけて仮説をこねくり回しているに過ぎないわ。史跡を見なさい。あれこそ物証よ。人がそこでそれをなしたという、揺らがぬ証拠。そしてそれは数式よりも遙かに確固たる力を持っているからこそ、歴史学者でなくても見つけることが出来る。数学者でなくてもそれを見ることが出来る。それは物証が、きわめて単純明快で至極強固な一つの解だからよ。そして、記録というのは、遺跡や史跡と同じ。予想ではない、証明式も必要ない、解がそこにあるという事実。それに改竄があるのかどうかを確かめるのが、私達の仕事じゃない。」
「今はプライベートの時間ですけど。」
「それ、にどめよ」
「おたがいにですけどね」

 秘封クラブは、ここを拠点に活動していたのだろうか。
 彼女達はある時を境に突然姿を消したと言われている。これもまた伝説となっている所以である。それまでは、いくらか予備メンバーの前に姿を現すこともあり、公式メディアに描かれる活動記録はこうしたときに伝聞されたものだと言われているが、それを境に公式メディアも頒布されなくなっている。
 こうした突然の活動停止は、彼女達が、自らが扱っていたオカルティズムに関わる何らかの事故によって、どこかへ行ってしまったのだとさえ言われている。
 もしくは、後輩の言うとおり、この家の持ち主が一人でやっていた創作活動について、それをやめてしまっただけかも知れなかった。
 それでも、見つけられた資料というのは、十全彼女達の活動記録というわけではなかった。彼女達もまたどこかから怪しげな事件や事例を集めてこの家に蓄積し、それを何らかの方法で選別して、活動の一部に組み込んでいるようであった。そうした、蒐集・蓄積された資料の内、活動実績の伴わない幾らかの資料には、そうした私の(時に胡散臭いと揶揄される)仮説の、手伝いになってくれそうなものが含まれていた。
 ここでは、その内の一つを紹介しようと思う。何か恐ろしい目にあった男が、気をふれた末に自ら命を絶つ前に記したとされるその手記らしい。これを、秘封は近い内に扱う題材として決めていたようで、おびただしい、堆く積み上げられた書類の中でも比較的浅い地層から見つかったものだ。
 この手記の中でも警告されているが、この手記の真偽がどうであるかわからない以上、その中に記されたことを、日常、決して意識しないべきである。そうしてしまったなら、これを記した男と、同じ末路をたどるかも知れないからだ。
 ゆめゆめ警戒心を怠ることなく、これを読むべきである。もしくは、読むべきではない。私は、むしろこちらを推奨したい。
 私達はそこでそれを見つけ、興味なさげではある彼女は知らないが、私はそれをとっぷりと読み、中に記された恐怖感と好奇心が水と油と海面活性剤をなしている様をまざまざ知らされたことで、この奇妙な出来事もまた秘封の活動を詳らかにする(記述内容の次第について、これを詳らかとするつもりは、今のところはない)上で何らか重要な情報を抱えているだろうと言うことに、確信を持ったのだ。




◆軽快なリフレイン



 耳?いや、この音は私がその道を進み、視界に入るそれらがしかし全く直観以上の認識に進化することなく私の浅いところで遮断されていることにぼんやりと気づいた頃には、そうして視覚情報を削ぎ落として得られた受信許容に対して、その音が越権、侵入、横溢しており、耳からの入力というよりかは、私の頭の中に響いて脳の電気信号を直接操作しているようだった。私は空寒くなり、心許ない手で耳を塞いでみたものの、案の定(そして不幸なことに)、その音は頼りない指をすり抜けて全く音量を小さくすることはなかった。
 響く音は先へ進むにつれて音量を大きくしていき、徐々にそのディティールが判断できるようになってきたが、足を止めることは依然として許されなかった。軽快なリフレインは、金管楽器の音を想起させ、同時にソプラノ歌手の澄み渡る声のようでもあり、ただそれだけではなく、それは明らかに、私を誘い込んでいて、私はふらふらとそれに引きずられるように、操られるように、熱に浮かされるように、夢遊病のように、あるいは生き長らえてしまった焼死寸前の人間のように、一つの広場めいた場所へとたどり着いていた。
 軽快なリフレインはそこでは、花畑に舞い踊る蝶、そよぐ風、降り注ぐ陽光のように優しく響き渡ってその広場めいた場所に満ちており、私がそこに至るまでに感じた空恐ろしい不安感、何かに飲まれてしまいそうな恐怖は、一切その姿を、まるで光に追いやられてもの隅に追いやられ狭いところにひしめき泣く闇のように小さくなっていて、私はその空間に足を踏み入れた瞬間、しかし、心地よいと同時に絶対的に危機的な覚悟と言うものを、その周囲に纏う概念的な糖衣を剥ぎ取った剥き出しの記号・意識・意味として、握り締めていることに気付いた。と言うのも、それは余りにも甘美であり、今はもの奥に押し込められあるいは陰に隠れ、私をその奥からじっと見つめたまま身じろぐ闇や冷たさ、蚯蚓のように這い回るものはその一つ足りとて嘘ではなく、それは確実に今でも私の周りを取り囲んでいて、この広場めいたところがそれらから完全安全万全に私を守ってくれる聖域などではないと言うことを、私はこの甘美な音に包まれた悦楽の中に沈み揺らぎ震える中で、本能的に察していたのだった。だと言うのに私の体はその広場の中央、氷じみてひんやりとした壁に囲われ、闇の中に浮かぶ何者か節足動物のような忌まわしい何かに向かって、歩き始めているではないか。軽快なリフレインは未だに鳴り響いていて私を軽やかな気分に留め置いたままその隠れ潜む四則への回避本能を巧妙に覆い隠してしまっていて、それに気付いている脳髄の最奥が警告を発し続けているにも拘らず、悲しいかな、無用に発達した新皮質が、もっと大切なものへの重要な信号を遮断してその警告を見事私から遠ざけていているせいで、私の足はその軽快なリフレインに導かれるように、嗚呼、おぞましくそそり立つ節くれ立った節足、それに絡みつく血に飢えた濃霧の様な闇、そしてもう私をそこから逃してはくれないだろうと確信めいたものさえ私に押し付けてくる氷の壁面の奥へと進んでいくではないか。



◆サーチライト



「標谷先輩。」
「シィ、ごめん、お疲れ。続きは明日にしましょう。」
「先輩、標谷先輩」
「ちょっ……」

 荷物をまとめ、この泥棒じみた侵入を完了しようかと脱出の準備をしていると、私は埃を被りもう十年以上も誰にも横たわられることは無かっただろうベッドに、押し倒された。
 枕も布団さえも、そのベッドには備わっていて、でもシーツと見間違えるくらいに埃が積もっている。そこに押し倒されて舞い上がった埃は、持ち込んだLEDランタンの光を散らしてちらちら輝いた。あからさまに舞い上がった埃は逆に息を止める程度の警戒心を抱かせて、二人とも咳込むことはなく、そうして止められた息の苦しさを紛らわすように、彼女は私の唇に吸付いてきた。

「し、シィ?」
「もう、いい加減我慢できません。ここひと月、調査調査調査ですっかりご無沙汰じゃないですか」
「そ、そう、ね」

 私が誘って戯れに(とはいっても私は彼女に強烈に惹かれていたのだが)寝てからと言うものの、彼女はいつの間にか”こっち”にどっぷりと浸かっていた。いや、私に、だろうか。他の女を覚えさせないようにしないと、私が足元をすくわれてしまいそうだった。

「ひと月くらい、我慢できないの」
「出来ません。三日だって、先輩のことを想わずにはいられません」

 想う、とは、一人でしているという意味だろう。

「まだ、毎日してるの?」
「はい。先輩が悪いんです。今更、女性に夢中になるなんて思わなかった。女になってから、我慢の仕方を思い出せないんです。」

 彼女は、特殊な性別の持ち主だった。女なのは、心だけ。体は、大分しなやかで、そうであるといわれるとどうにもなよなよとしたイメージを払拭は出来なかったが、確かに体つきも、何より性器も男だった。彼女は女の心を持ち男の体として男を好きだったところを、私とのかかわりによって、男の体と女の心を持ち女として女を好くという、余計に複雑な状態に陥ってしまったのだった。

「色キチガイ」
「先輩だって」

 だが、その倒錯具合が、私にはもっともっと好ましかった。ただの男に飽きていたのもあるかもしれないが、男のような女と言うものに惹かれる私も、女の真似をする男に惹かれる私も、その両方を一気に彼女が持っていってしまったと言うのは確かにあったのだ。

「ここ、ひとに見つかるとまずいんですよね?」

 私が口ごもると、追い打ちをかけるように。

「声、出さないでくださいね?」
「ちょっと、シィ、何もここじゃなくても」
「だって、また明日ねって言って、きっと今日もお別れじゃないですか……さみしい」

 彼女は、らしいところでは、そこいらの女よりもよほど女らしかった。それは彼女が男であって、男と女の境界、あるいはその逆と言うものについて無意識に知り尽くしていたからかもしれない。
 私は、とかく、彼女の中性的、いや、両性的な魅力にぞっこんであった。彼女もまた、そんな特殊な自分を好んでくれるという理由で、私を愛してくれていたし、自惚れでないのならば、他の誰かにこの間に入られることはないだろうと言う自負はあった。傍目から見れば、彼女は、気持ちの悪いオカマでしかないのだし、私は私で、理解しがたいレズビアンでしかないのだ。

「埃臭くて、燃えますね」
「なんで」
「なんか、セックスするだけのための場所って感じが」
「倒錯者」

 無言で肯定して、私を押し倒した奴の、女にしては少しだけ幅のある肩に手を乗せ、腕、胸、また肩、首へと掌を這わせる。

「息が上がってるわよ?犬みたい」
「標谷先輩だっ」

 反論しようとするシィの唇を指先で制止する。

「ちがうでしょ?」
「……アル」

 よろしい。そう小さく言ってから、彼女の、――いや、もう彼になっていた――体を抱き寄せる。
 セックスの時だけ、下の名前で呼ばせていた。セックスの時だけ、私は彼女の言いなりだった。セックスの時だけ彼女は彼になり、セックスの時だけ男と女になっていて、セックスの時だけ、私達は恋人同士だった。それ以外の時は、先輩と後輩、女同士、プレイメイト。
 私もすっかりその気で、彼女に獣じみたものを感じたのは何も彼女の男性性によってばかりではないような気がしたが、それこそが私が彼女に惹かれる最大の理由であることを自覚するに、わざわざ気に留め検証することでもないと意識から追い出した。

「いいよ、シよ、ここで。」



◆氷の壁



(そっちへいってはならない!そこは、そこは、向こう側に通ずる四角い口だ!)

 私の意識の片鱗は、懸命に足を止めようと脳に指令を出しているが、軽快なリフレインは耳の中から脳へと流れ込み、その警告を鬱屈したストレス、もはや気に留めるべきでもない歪み嫉妬じみた妄言だと片付けてテーブルの上から払いのけてしまう。テーブルの上から散らされ、今や無残に床に撒き散らされたそれらがこそ、本当に目を向けるべき忠告だと言うのに、とまれ、私の足、止まれ!そのうぞうぞと蠢くダニの群れ、宵闇の残滓、氷結の洞穴、そして何よりその軽快なリフレインは、今は弱っているとはいえ人智を超え、人間を意識一つで消し去ってしまう大宇宙の薄膜のその向こうで薄ら笑う存在の一片だ、それに近づいたなら、無事ではすむまいぞ!
 足は止まらない、止まらないのだ、幾ら私が理性に訴えかけようとも、全く随意にならなず、周到に用意された蜘蛛巣にあえて足を踏み入れようとしているようにしか見えない歩みを、止めようとしないのだ。
 それが何なのか私には皆目見当がつかない。ただ濃密に立ち込め血への欲求を隠すことなく漂い私に絡み付いてくる闇の中、ほのかに見えるあの節足の獣はしゅうしゅうと不気味な音を立てて此方へ視線を投げてきていて、辺りに流れ私の喉元に当てられた剃刀のような冷たさは、そのその視線の方へ歩けと、歩けと命じてきて、やはりあのリフレインは決して助けてなどくれないと言うことを思い知った。
 止まらなければ、止まらなければ私は、食われてしまう、あの巨大な四則に。幾つもの宇宙の隅に追いやられ、その狭い小さな宇宙で、かつていた温かな場所が再び開かれそこに帰ることを望みながら縮こまり脅えている四則に。それは、脅え恐れ震えているからこそ、我々人間のようなちっぽけなものが近づくのは、それだけでまるで嵐の中に放り出されようとしている小さな火にも満たない存在だと思い知らされてしまうのだ。
 諦めてください、私には、あなた方を救うことは出来ません。宇宙を包む細胞膜の向こうにあるもののことなど、私には知りえないのです。そこにかつてあった王国のことなど露ほども知らないし、そこにあなた方を帰してあげる力など、私には、ないのです!
 懇願は聞き入れられなかったらしく、私を拘束し歩かせるリフレインは鳴り止まず、私の足はまた一歩また一歩と中央で力なく横たわるそれに向かっていく。先ほどまで私を何とか恐怖心から遠ざけ、このおぞましい事態を認識しながらも精神を保っていられる原因であったリフレインはいつの間にか軽快さを失い、伸びたテープを低速で逆再生し、その上から錆た鉄、腐ったインク、肉じみた匂いと、尊厳を損なうほど忌々しい呪詛の数々をオーバレイしたような、聞くに堪えぬ音楽の吐瀉物と化していて、そういう理由で私の精神はいよいよ鑿を叩きつけられる軽石のような有様になっていた。
 逃げ出そうにも取り囲む氷は厚く冷たく、よじ登ろうと手を触れると手が張り付いて、足も張り付いて、その場から動けなくなりその壁の中に取り込まれてしまうだろう。仮にそうでないとしても、もはやそれを出来るほどの力は私には無いように思えた。
 だめだ。もう、私はここで終わる。逃げだそうにもこの氷河の壁は私を決して逃しはしないだろう。だが、だがもう一つだけ、もう一度だけ、もう一縷だけ、望みをかけさせて欲しい。今まで何度も試みたが出来なかった、自我をこの世界へ楔打つための、出来うるたったちっぽけな動作を、もう一回だけ試してみよう、そう思えたのは何かの奇跡のようでもあったし、それがなければ私はその場で呑み込まれていただろう。
 だが、結局のところ後になってから振り返るにこのとき素直に飲み込まれ、四則のうちのひとつとして別の生を受けることが出来たのなら、それはそのほうが幸せだったのかもしれない。
 私は、もう一度だけ、声帯と横隔膜に命じ、声を出させようとしたのだった。



◆逃錯好為



「いいよ、シよ、ここで。」
「アル、アルっ!」

 私の体ならどこでもいいといわんばかりの勢いで、股間をすり付けて腰を揺らせるシィ。伝わる感触は硬く、スカートの下、下着の中で窮屈に膨張しているものの存在を伝えてきた。熱く、硬く、逞しいそれが、何枚もの布越しに私を求めている。程なくして私の体も、それを受け入れる、いや、求めてしっとりと綻び始めた。

「すっごい……」

 私は体の間に手を差し入れ、今はおなかの下あたりを中心に擦り付けられているスカートの中の膨らみを、その上から撫でるというには強く、掴むというには優しく、触ってやる。

「あ、アルぅっ」

 私の掌に包まれるように触られているシィの肉棒は、スカートにテントを張りながら時折ぴくんと跳ねる。塗れやすい彼女、いや、彼のことだから、持ち上げられて紐みたいに細ったぱんつの布地は、すっかり水気を吸って塗れているかも知れない。

「女のくせに、おっきすぎ@」
「”クリちゃん”、あんまりさすさすしない、でぇっ」

 女である彼は、それをクリトリスと呼んでいる。私には、クリだろうがチンポだろうが、気持ちよければ何でも構わなかったが、それをクリトリスであると扱ってあげれば、彼も、私も、もっと気持ちよくなれたし、錯覚かも知れないが愛し合えていた気がする。彼だってそれがなんなのかはわかっているが、ペニスではなくクリトリスとして愛してあげられる私が、彼女にとっては最高のパートナーに違いなかった。私は彼女を他の男(あるいは女)に渡す気なんてなかった。

「なぁによ、自分で私の体にすりすりしてきてたくせに?」
「だって、だってぇっ@」

 切なそうな顔で私を見るシィ。その頬に触れ、首へ滑らせ、胸に手をやる。乳房はない。だが、平らで白く、女にしては少しだけ広い胸は、私の気に入りのポイントだった。

「かわい」
「アルみたいに、おっきい胸、欲しい」
「なくていいの。シィは、こうだから、かわいいんだから」

 そう言って、膨らみのない胸の上で、しかしピンと立つ乳首を指で挟み、ころころと転がしてやると、太股に触れている彼女のクリトリスが、ぐん、とさらに一回り膨れる。

「アル、わたし、もう」

 切なすぎて泣き出しそうな顔になっているシィを、私はさらに追い込んでいく。自分のスカートの下に手を入れてぱんつを下ろそうとしている彼女の視線を捕まえ、舌を少しだけ出して唇を舐め、スカートの中に手を入れて自分を解放しようとする手に指を絡めて止める。焦りと熱が綯い交ぜになった、彼女の男の表情。きゅんとくる。女よりかわいい。

「ね。」
「いまさら、とまらないですっ」
「やめないわよ。だから、脱がせて?」

 私はするりと彼女の体を抜けて立ち上がり、腕をのばして、はい、と一言合図をする。
 何もいわず、浮かされたみたいに私の後を追って立ち上がった彼女は私のブラウスに手を伸ばす。

「おくちでね」
「えっ」
「くちで、脱がすの」

 彼女は戸惑ったような表情を浮かべたが、どうにも股間のものが急かし、プライドを捨てさせてしまうらしい。私よりも頭一つ分背の高い彼女は、少し屈んで肩に手を置き滑らせて二の腕を掴んできた。
 そのまま押し倒される、と思ったが、彼女はそのまま私の胸元に顔を寄せ、口を開いてブラウスのボタンを口に含む。唇と歯、舌だけを不器用に動かして、私の指示通りにボタンをはずそうとしているようだった。

「そう、いい子」

 セックスのときの彼女は、生意気な後輩から従順でかわいい彼(女)へと変貌する。そのギャップもまた、私を掴んで離さなかった。
 私のボタンをやっとのことで一つ外すたび、息苦しさを耐えていた溜息が漏れるが、それはボタンが外れてブラウスがはだけ、ブラの胸元が露わになるたび深く熱を帯びていく。やがて全てを外し終えると、達成感に惚けた目で私の半裸を舐めるように見た。

「あら、それで終わり?」

 私がそう言葉をかけると、私のその言葉に強いられたようにふらふらと再び胸元に顔を寄せるシィ。従順に、ブラを外そうとしてくる。私はホックが前にあることを示すと同時に彼女を挑発する目的で、腕を頭上にあげて肘を持つようなポーズで彼女の行為を迎えた。
 詰めるように寄せられた下着は、乳房の両サイドから力を加えて寄せ上げなければ、ホックを弛めることが出来ない。彼女がどう口でホック部分をいじったところでそれが外れる道理もなかったが、私は敢えてそれをさせ、彼女は恭順を示した。

「ふふ、本当に、犬みたいね」
「あ、アルぅっ!」

 それでも言いつけ通りに口で何とかしようと胸の間に顔を寄せ、口を押しつけてくるシィ。フロント部分に歯や舌、唇が当たると、私の肌にもそれが当たる。彼女の口から漏れる唾液も塗りつけられて、私はそれだけでも体が熱くなってしまう。
 シィに奉仕させている優越、その口が鋭敏になった肌を撫でる快感。彼のクリトリス程ではないが、私もまた段々堪なくなってくる。上に上げた腕を下ろして、どんなにかその頭を抱きしめたいか。だけど、それはしない。彼女が獣欲を我慢し、今の立場とそうして膨れ上がってからやがて爆ぜる快感を楽しむのと同じように、私も今我慢する。彼女に焦らされ昂らせられ、内圧の上がった性欲が爆発してセックスしか知らないケダモノ同士みたいに求め合うのが、私は好きだった。
 私たちは、マゾ同士だ。今はただ私が引っ張っているだけで、その動機はきわめてマゾヒスティック。彼女が私をこうしてくれるのも、いいと思う。
 姿勢を低くして私の胸に顔を寄せる彼女の膝は少しだけ曲げられており、腰もまた少し折られて引けていた。膝同士太股同士が擦り合わせるように動き、その根本にあるものに秘密で刺激を送ろうとしている。私が足先でそこへ、直接の刺激を送りつけてやると、彼女の体重が全て私にかけられてきた。膝が笑い、腰が砕け、完全に私に捕まり寄りかかる彼女。

「もう、クリちゃんこんなにしちゃって」
「だ、だめ、だめぇっ!アル、アルだめっ!」
「だったら早く、外して?まだ、下もあるんだから」

 堪らなくなって、彼女の頭を抱いてしまう。口だけじゃなくて鼻、頬、額、顔全部が胸の間に押しつけられて、私も、アソコがじゅんって、なる。
 彼女の引けた腰の奥で屹立するクリトリスは、先端から愛液を垂らしてびくびく震えている。私はクリトリスを解放し頭をくしゃくしゃと撫でてから、再び腕を頭上で組んで彼女の奉仕を促す。何とか自分の足で立つ彼女は、私に胸の谷間に押し込む口の動きを一層激しいものにして、貪るようにホックの辺りをまさぐっている。そして、それはぷつんと音を立てて外れた。
 無茶な奉仕を強いていたと思ってが、本当に口だけで外すなんて。と感心していたが、彼女は歯でホックを噛みちぎったのだった。

「はっ、はぁっ」
「あーあ、噛み切っちゃうなんて。」
「アルが、挑発するからっ」

 ああ、なんて可愛いのだろう。その拗ねた顔、それでも露わになった私の乳房から目を離せないでいる、焦れた顔。
もういいでしょう、とでも言いたげな、急いた仕草で、今度は私のスカートのホックを今度は器用に手早く口だけで外し、ストッキングのベルトを解放する。

「ほんとう、犬みたいね。全部お口でここまでしちゃうなんて」
「どうせ、私は、変態の倒錯者です。」

 拗ねて頬を膨らませ、いよいよショーツ一枚になった私の前に、クリを立たせたまま立ち膝になっているシィ。少年そのままの姿でスカートを膨らませた彼は服を着たままだが、私はもう半裸。挑発しているのは私だけど、私はマゾっ気をくすぐられて、はやる気持ちを抑えるのに苦労するようになってきた。

「拗ねないでよ。……私だって、あなたに口で体中まさぐられて、もう、こんななのよ?」

 やはりどこかでこうなることを予想していたのだ、私は。私はシィの眼前に向けて股を大きく開き、前の部分にO型に穴の開いたショーツのその穴から指を差し入れて、その奥ですっかり充血して襞を膨らませ、どろどろに濡れたアソコを、開いて見せつける。指を入れてくつろげるとき、くちゃ、と濡れた肉の音が響いて、私自身の背筋に快感電流が走ってしまう。

「あ、あ」

 シィが口を半開きにさせたまま惚けたような目でそれをじっと見、クリトリスを掴むが、私はやはりそれを制止した。

「だぁめ」
「きゃ」

 彼の頭を、股間に抱き寄せる。口が、敏感な場所に触れると、おへその下がきゅんってなって、愛液がアソコの湿りが増したような気がする。

「むぐ」
「ん、あっ@あと、一枚よ?ちゃんと剥いて?」

 私の声も震えてしまっている。早く、あの太いクリトリスが、欲しい。
 もう、獣の表情はせっぱ詰まった切なさではちきれそうになっている。彼の愛液もそのクリトリスを伝ってトロリと一筋滴るほどで、上の口でも、下の口でも、それにかぶりついて味わいたくて堪らない。膣はもうその気になって、まだ何も入っていないというのに奥へ奥へと送り込む動きで蠕動している。愛液も増して、口がぶつかっただけで愛撫されているわけでもないのに、それは少し白味がかってきていた。

「やん、あんまり臭いおまんこ、くんくんしないで。欲しがってるお汁で、もっと臭っちゃってるの@」

 シィは私のショーツの端を歯で下げようと、賢明にもがいている。その動きの合間に、しっかりと舌で淫蜜を舐め取ったり、鼻をクンクンと鳴らして、私に羞恥心を植え付けてくる。させている私が、追い込まれていく。もう袋小路にいるシィと、私も同じところに入り込んで、早く絡み合いたかった。




◆スパイク虫
 次に私が気がついたのは、私はその経緯をもはや一篇たりとも思い出すことは出来ず、その間どうやってあの氷河の壁と軽快なリフレインを振り切ったのか身に覚えがないのではあるが、自宅のベッドの上で、窓から差し込む光が記憶の向こうに沈みかけているおぞましい体験を嘘だ忘れろと宥めているような優しい朝に包まれてのことで、そういえば完全に失念していたが私が迎えに行くはずだった娘達には時間に間に合わなかったどころか迎えにさえ来なかった不甲斐ない父親と口汚く罵られ、ついでに言うのであれば妻にも失望感を与えてしまった、そんな嘘のように平和な自宅だった。
 昨晩私がどうやって帰宅したのかと家の者に聞いても、誰一人として私の帰宅を知る者はなく、どうやら私は玄関さえ開けずに窓か何処かから入り込んで、妻にも子供たちにも気付かれることなく自室へ戻ってベッドの上に着の身着のまま斃れこむように寝ていたらしいことが、周りのものの言葉と、周りに残された状況が、否定しがたく証明していた。
 昨晩のアレは一体なんであったのか、私は、恐らく私は、ここでこれを掘り返そうとすることなく、平和な自宅、妻と娘達のいるいたって平穏な日常に身も心も埋没させて、あんな暗い小径、響くリフレイン、取り囲む凍える壁、蠢く節足、おぞましいあの空間に佇み、危うく何事か恐ろしい事態に巻き込まれるのを回避したであろう夢、いやあるいはひた隠された記憶の向こうにある出来事のことなど、この優しく明るい陽光に溶かして忘れてしまうべきであったのに間違いないはずなのに、私はどうしてか、どうしてかそれを解明したくて堪らない気分に襲われてしまって、普段から幽霊だのポルターガイストだのと怪奇現象の話に尾ひれ背ひれを増やして私に話を振ってくるしょうのない友人一人に声をかけて、このことを一つ一つ記憶の泥沼から綱引いてそれらを引き上げるようにしながら話してしまっていたのだった。伝えるために闇に潜んで消えようとしていたあの夜の記憶は、それは自分でも信じがたいほどに詳細に、色も、形も、温度も、音も、その時に見えたもの感じたもの聞こえたもの、全てを事細かに説明することが出来て、そうであってしまったからこそ、その怪奇現象を求めてやまない友人は、すっかりと私のその荒唐無稽な話に興味を持ってしまい、では明日の夜、再びそこへ向かって、あの夜のことは本当であったのか、それともただの夢遊であったのかを判明させた上で、もし本当であったのであればその欠片、物象、あるいはそれが無理であるのなら、今回のような(話そうとしたことで詳細に思い出すことが出来たとはいえ、それは私一人の中に相互認識もなく存在するだけの情報でしかない)うっすらとした記憶ではなく、何か写真か、録音か、その場の筆記であるかいずれをしっかりと残してこようと言う風な話になり、私と友人はその夜に向けて簡単な計画を練ることになった。
 夜は私達が創造していたよりも、随分と足早に私達の元へやってきた。
 懐中電灯と、カメラ、テープレコーダー、そして万が一のときに備えて拳銃を備え、あとはついでに気休め程度にと、祖父が第二次世界大戦で日本軍から押収したと言うものの中から横流しを受けて手に入れたと股渡しで貰い受けた、東洋のお守りらしい紙片を、ポケットに押し込んだ。私達はあの日私が誘われるように入り込んだ小径を探して、あの夜と同じくらいの夜の時間を選んで街を歩くと、その小径は程なくして見つかった。と言うのも、どうにもやはり私はその道に誘われているような感覚を拭い去ることが出来ず、最初はそれを信じることが出来ずに自らの理性的な記憶と自制の利く足によってあの小径を見つけ出そうと思っていたのだが、全く記憶に合致する風景を見つけ出すことが出来なかったために、いよいよ仕方なくその感覚を疑うのをやめ素直に従い足を運んでいくと、なんと信じがたいことではあるが、概ね10分も道を行けばそれらしい、明らかに異質を放つ――だと言うのに、矛盾に満ちてはいるが、見た目は全く普通の――小道を見つけることが出来たからだった。
 私が怖気ついていると、なんと友人はすたすたとその小径へ入っていくではないか。当たり前だ、彼はあの恐ろしい体験をしていないし、そもそもそういう恐怖や奇異を日頃から求めてやまない奇特な(そして愚かな)人種であるのだから。だがそれを差し置いても、こうして小径の入り口から噴出す邪悪で忌々しく、不快感を禁じえない空気を前にして、全く彼はひるむことなく進んでいくと言うのはどうにも腑に落ちないところではあったが、私が始めてこの道に足を踏み入れた時のことを振り返ってみると、なるほど彼も恐らく軽快なリフレインに導かれて恐怖心と不安感を麻痺させられ、同時にその音に導かれ、闇の中にある何者かへの好奇心を増幅させられ、止まろうと思えば冷え冷えとした冷気の刃で脅迫されているのだろうと思うと、それは酷く合点がいくと同時に、気の毒でもあったが、私も彼も、この奥にある何者かの正体を、もしくは真偽を知りたいと思っているところは間違いないのであって、であるのならば彼も私も足を止めないと言うことは最低限必要なところであった。
 あの日の夜とは様子が違っていた。それは、あの夜は、まず闇が覆い軽快なリフレインが響き渡り、刃に脅されながら進んだ先に広場めいたところがあったのだが、今宵はそうではなく、私達は突如として月明かりも星明りもない、真っ暗な空間へと落とし込まれてしまい、前後不覚に陥ってしばらく二人散り散りに歩き回ってしまった。それが良くなかったのだ、今にして思えば。
 全くぬるりとぬめるように肌に絡み付いてくる生きている霧のような闇の中を、掻き進むように、昨夜の記憶と感覚だけを頼りに、自分ではまっすぐ此方だと思う方向へ歩いていくと、同じように氷の刃を喉元に突きつけられた。その脅迫はまこと恐ろしいものではあったが、同時に、あの夜と同じ場所へ至ることが出来たと確信を得て、私はカメラを手に取り、録音機のRECボタンを押下した上で、友人の名を呼んで、暗くて見えぬがこここそが話した広場めいたところに違いないのだと伝えると、しかし彼の返事は聞こえない。恐らく全く方向感覚を失ってしまって、遠くまで行ってしまったのだろう。見事氷河の壁を越えることができたのであれば、あの日の私と同じように気がつけば自宅にいると言う顛末に至るだろう。ならば、もうあの日と同じ、私は私のみ一つでこの空間に残されてしまったようだった。
 軽快なリフレインは、耳に入り込んでくる最初から軽快さを持ってなどおらず、その音を認識したときから既に呪詛めいた忌々しい空気の波であったし、闇は形の無いはずの姿をしかししっかりと質量を持ったように私の体中に絡み付けてきて血に飢えているだろうことを私の耳元で囁いていて、闇の中にうっすらと浮かんで舞っているのは身を切る零下の宇宙の入り口であった。その奥には、ぐったりと横たわったまま動かない巨大な芋虫めいたものが、呼吸であるのか、鼓動であるのか、私には皆目見当のつかない様子の脈打っているのが見え、私はその光景の、余りのおぞましさ、恐怖、あるいは冒涜めいた様に、声も上げることができないまま気を失いそうになるが、膝から下の力が抜けて動けなくなっただけで自我を保ってしまった。
 私は後悔した。やはり、やはり戻ってくるべきなどではなかったのだ。やはり来てはならない、何らか呪われた、忌み場所だったのだ、この場所は。私は後悔の念にと、恐怖、本能の向こうが伝えてくる未分化な回避指令に押しつぶされそうになりながら、しかし動かない下半身のためにそこから逃げ出すことも出来ずに、ぽっかりと口を開けた宇宙の穴、いやそれ自体が小さな宇宙の球体だったのかもしれない、その中にあるおぞましく忌々しい、無数の目を備え、芋虫の姿に複数の腕と役に立たない足、そして四段に分かれた口を備え、身じろぎ一つごとに悪臭と精神汚染波を撒き散らす、王然としたものが、その宇宙の外に向けて無限の呪詛、恨み言、あるいはSOSを発信して弱り果てているのが見えた。
 周りにはその王を取り巻く、その姿を小さくしたような芋虫がうぞうぞと大量に、視界を埋め尽くすほどに、いて、それらは王へ奉仕し続けていた。不思議な光景だが、王はその奉仕者の背中から湧き出す何か液体のようなものを啜り、すると王の背中にはそれと似たような液体が流れ出て、その液体は溜まり澱んで固まると、再び小さな奉仕者へと形を変えていくではないか。闇はそのおぞましい円環を包み込むように抱き、奉仕者の町立を司るのは、あの鳴り響いていた軽快なリフレインであった。彼ら腕足芋虫生物は、どうやら低温で代謝を下げることで生き長らえている節があるようで、切り裂く冷気のように感じられたのは、その保護のためらしい。相であるのなら、あの腕足芋虫とそれらを取り巻く複数の環境形成存在が、この宇宙を生しているのだろう。
 私は、恐怖で気が狂いそうになり、しかし声を上げることも逃げ出すことも出来ず、その光景を涙を流しながら見ているしか出来ない。程なくして奉仕者が外から何かを引きずり寄せて王の下へ差し出している。あれは、ああ、あれは、見るも無残に、顔らしいものを潰されて失い、手足は6個所程でグネグネと曲げられ、よく見れば上半身と下半身は270度程ねじれているが、間違いなく、友人の凄惨な死体だった。声が聞こえなくなったのは、この広場めいた空間から逃げ出したのではなく、彼らに見つかり殺されてしまったかららしい。私はいよいよ発狂しそうになりながら、しかし友人が王の前に捧げられる光景から目を離せないでいた。
 王がその死体を認識したように身をよじると、軽快なリフレイン、血に飢えた闇、氷河の壁が、一様にこの世のものとは思えない、この地球上にある汚らしく冒涜的で下劣なものを全て集めて凝集しても嗚呼はなるまいと思わされる、唾棄すべき、名状し難い姿をとって具現化し始めたのだ。次に王に捧げられた友人の死体に群がってその肉を骨を千切っては、口のようにも見える穴へ送り込んでいる。それは、私の友人を、無残に死に果てた彼を、まさしく食べているのだ!

「っ!っ!!っ!!」

 私は声を発することが出来ないながらも、足を動かすことが出来ないながらも、声を上げてそこから逃げようと体に指令を出すが、それも巧くいかず、呻きのような音を喉から搾り出し、身をよじってずるずると数十センチを移動するだけに留まった。だが、それだけではすまなかった。その音は、かの四則に私の存在を知らしめる事となってしまい、彼等は私を次の目標に決定したようだった。
 絶望、という言葉では生易しい、何にも形容しえない感情が、私を押しつぶそうとしている。死、そう、死が、救いとさえ思える、凄まじい重圧はそうでありながら全く穴のように空虚であって、見つめても見つめても何物も返さず、ただただ恐怖だけを生む。
 異世界の四則が私を、私を、私を。

「ヒ     ぁ……     !」

 銃、銃だ、拳銃を持ってきただろう!
 私はそれを取り出し、スライドを引いてから震える手で引き金を引く。余りに力の入らない手では狙いさえ定まらず、当たっているのか当たっていないのかさえわからない。恐怖に駆られ、正体の知れぬ感情に襲われている私は理性的な判断などとうに失っており、ただ闇雲に引き金を引き続け、やがてかちりとむなしい音を立てるだけの哀れな金属のおもちゃへと変わり果ててしまった。
 もう、だめだ、私は、死に、食われ、あの世界に取り込まれてしまうのだ。
 私は拳銃を放り投げ、懐中電灯を放り投げ、録音機材を放り投げ、カメラを放り投げ、最後、あのお守りらしい紙片を放り投げる。
 いずれも何の効果も無いように、がしゃりがしゃりと音を立てて地面に崩れたが、最後の、ぼろぼろに崩れ賭けだった紙っぺら一枚がひらひらと地面に落ちたその時。



◆理性とは障害であり、理性的であることがこそ病質である



 シィは私の様子に気付いたようで、執拗に前の開いた淫らな下着のその穴、向こう側にある淫裂にせわしなく舌を這わせてくる。

「んっ@だめえっ、ぺろぺろしたら、エッチな汁がもっともっとあふれちゃうわ。シィのデカクリを欲しがって、奥の方からウヅいてる肉襞、もうきゅんきゅん精子取り込み運動始めちゃってるの@早く、早くシてっ@早く脱がせて、シィの勃起クリでぬぽぬぽしてっ@」
「あ、あるっ、ぁむ……ん、ぐ、すんすんっ、アルのおまんこ、すっごくクサいよっ!マン汁でぐずぐずになってて、メス臭いっ!はあっ!はあっ!」

 前歯にひっかけて、ショーツを下げるシィ。ベッドを伝い、壁によしかかって、ショーツから片足を抜いて輪に残った方の脚を高くあげる。

「これを、抜いたら、最後よ@立ち膝のまま、このパンツをとりなさいっ@」
「は、はひ!あむ……ん」

 私は脚の高さを、シィが立ち膝のままで顎を上げ、舌を伸ばしてやっと届く高さに調整する。脚の間ではギンギンに勃起した”クリトリス”が先走りを垂らしながら自分のへそに当たるくらいに反り返っており、私のショーツを何とか食んで脱がそうとする動作の度に、ふるふると振れて”愛液”を垂らしている。

「あとちょっと@後ちょっとで、シィの反り返り勃起クリが、準備万端でぬめぬめになった私のおまんこを、めちゃくちゃにほじくり回すのね@一月溜まりっぱなしの欲求不満クリが、私のぐちょマンをぬぷぬぷっっっって♪奥まで入り込んできたら、私、ほしがっちゃってきゅうきゅう締めちゃう@シィのクリトリス、ぬるぬるのひだひだで、ずぼずぼしごいちゃうわっ@」
「ぬるぬる……ずぼずぼぉっ@きゅうきゅう、しめつけぇっ@」

 シィの歯は少しずつ私のショーツを脱がせていく。彼女の腰はくねり、クリトリスは突き刺す先もない空を必死に突いていて、腰が動く度に糸を引いた愛液がその先端から飛び散っている。
 彼女の視線は、高くあげられた脚と私の軸足の間で濡れそぼって開く、淫ら肉穴に吸い込まれ、そこから動けなくなっている。彼女の視線がわずかにずれる度「今は私の股間の、どこを見てるのだろう、開いた淫唇だろうか、皮を突き出た淫核だろうか、手入れの甘い陰毛?きっと膣口も見えちゃっているし、ああ、尿道口かもしれない」と妄想がぐるぐると回って、股間を更に熱く濡らしてしまう。

「ああ、もう、ぱんつが踝のところまで来てるっ@これが抜けたら私、シィに獣みたいに滅茶苦茶に犯されるのねっ@欲しがりトロけまんこが、シィのエグく反り返ったクリトリスでホジまくられて、私、シィの愛汁が欲しい欲しいって、喘がされちゃうんだわ@ちょうだいね?クリちゃん、私のアツアツ肉穴にぬっぷぅぅぅ♪って奥まで挿入したら、一番奥の淫乱袋に、シィの愛液、とろっとろの愛液、たくさん注いでね@私がんばって締めるから@シィのクリちゃん、ぬる汁まみれにして、肉ビラ絡めて、じゅぼじゅぼ泡立っちゃうくらい締め付けてコスっちゃうからぁっ@」
「じゅぼ、じゅぼ@とろとろ、おまんこ、おまんこぉ、んぷぬぷぅっ@おおおまんこぉっ……@」

 舌を出し、後わずか、10数センチを引けばこのたった一枚の布切れを私から剥ぎ取ることが出来るというところで、彼女の体は一息強ばり、腰がかくんと振れた。張りつめ破裂しそうになっていた彼のクリトリスは、それよりも幾度か細かく振れ、その先端から白濁した液体を、大量に吐き出す。

「あ……ひぁ……あ、あっ@で、でちゃ、ぁ@」

 彼は、指一つ触れないまま、私の煽りと淫猥ポーズ、そして自身の妄想とマゾ気質ひとつで、オーガズムに至った。全く触ってもいないというのにその射精量は多く、何度も痙攣を繰り返して最後の最後まで私の軸足に向けて真っ白い飛沫をまき散らしていく。

「あやや、出しちゃったのね♪全然触ってもいないのに、クリちゃんビクビクさせて、私に真っ白いマーキングして、可愛いわんちゃんね@もうっ、私の足が、シィの愛液でどろっどろじゃないの」
「はっ…はぁっ、はっ…」

 射精後の脱力で、立ち膝さえできずにへたり込んでしまう彼女を私は見下ろす。
 足にかけられた彼女の愛液――ザーメン――を指で救い、口に運ぶ。その味は濃厚で、その辺の男なんかよりもずっとずっと媚力に富んでいて、男らしく、だと言うのに私の眼下で息を荒げている姿は女よりも可愛らしい。

「シィは、ずるいなあ」
「んえ」

 彼女の顎を、足先で上げさせる。

「綺麗にして?」

 私が言うと、彼女は素直に従って私の足に大量にぶちまけられた、彼自身の精液を舐め取っていく。引かれた白い筋、飛沫を描く白い溜まり、ダマになっている白いゼリー状、全て唇で食み、舌で掬い、口に含んで飲み下していく。私がそうしろと言えば、飲み下す前に口に溜めたそれを私に見せてから、よく噛んで、それでうがいをするようにして、鼻からザーメン臭い息を一つ吐き、喉を蠢かせるのを見せつけながら飲んだ。

「よく出来たわ。いい子ね」
「あ、アル、じゃあ、今度はいれさせ……」
「次は、私がしてあげる番ね」
「えっ」

 期待していたセックスをまたも先延ばしにする発言が、私の口から飛び出したことに、さすがにシィは戸惑いの色を強くする。だが、私は頑として譲るつもりは無かった。これは、面白そうだと思ったからだ。

「そこに四つん這いになりなさい」
「アル、私、してくれなくていいから」
「だめよ、それじゃあ不公平じゃない」

 私のアソコは疼きに疼いていたが、これはこれで面白そうであったので、今度は彼に入れてあげることにしたのだ。自分の指を二本まとめて自分の口に入れ、たっぷりの唾液をまぶしてから彼女の口の前に持っていく。とっさに閉じられたその唇を、無理やりに割り開いて指を口の中に押し入れた。

「でも、あ、んぶ」

 私が四つん這いになった彼の口に指を突っ込むと、従順な彼はそれに歯を立てることなく、むしろ舌を絡めて唇をすぼめ、唾液をまぶして、見事な指フェラで奉仕してくる。

「んぶ、っちゅ、ちゅば、っ@~っ@」
「んふふ、私の指ちんぽ、美味しいかしら?」

 答えを望んでの質問ではない。指を抜くどころかより深くまで押し込み、喉の奥の粘膜が指先に触れ、それがえづいて吐き出そうとする反射運動をさえ感じるところを、執拗にこね回していじめる。

「んご、んっ、ふっ@お゛@ぉおおっんっ@」

 彼のクリトリスが再び膨れ上がってくる。私もマゾ気質だが、彼ほどではない。喉の奥を指で無理やりに犯されていると言うのに、勃起するなんて。なんて。なんて可愛いのだろう。
 私はそうして彼女の喉まんこを犯しながら、同時に、彼の太いクリトリスで自分の喉を同じように貫かれることを想像して、軽い恍惚と忘我の内に、ついついもっともっと奥まで指をいれてしまい、それはさすがに彼女を取り返しのつかない反応へ追いやってしまう。

「ご、んぶっ!ごべっ!げ、うぉ゛ぁぇ゛ぇぇぇっ゛!っげ、がほっ!んぼ、ごぶっ、ん゛げがぁぁあ゛ぁぁぁぁぁぁっっ!」

 まずい、と思って慌てて指を引いた。そうでなければと社物の逆流で窒息させてしまっていたかもしれない。とにかく、彼女は私の指で無理やり嘔吐させられ、それは見事悪臭のする薄黄色いどろりと粘性を持った花を、床に撒き散らして咲かせることになった。

「やりすぎ……でもなかったかな」

 一瞬後悔しかけた私だったが、すぐにそれは杞憂だったと思いなおす。と言うのも、四つん這いになった腰の下で、彼女のクリトリスは未だに反り返るほどにそそり立ち、あまつさえ嘔吐しながら射精していたのだ。

「お……がへっ@あヒ……@あ、りゅぅっ@」

 べちょ、と薄汚い水音を立てて、彼は崩れ落ちた。ベッドの上で彼のケツ穴に指を入れてイかせようと思っていたのだけど、それをする前に彼は満足して喜悦の果てに気を失っているようだった。



◆四則と鍵、閉じた世界を凍えながら待つ



 あの札がどういった性質のものだったのか、私にはもうることが出来ない。あの広場めいた別の宇宙から、私は辛くも逃げ出すことが出来たのだが、あのときに放り出した録音機もカメラも懐中電灯も、友人の死体も、恐らく私を救ってくれたのだろうあの古い紙のお守りも、もはや私の元にはないからだ。その符が私を助け出して私を命からがら再び人間の文明の光の下に連れ出してくれたと言うのは、この上ない幸運、一度なら図二度までも愚かな探索を行ってしまった私には慈悲としかいい得ない幸運ではあったのだが、しかしあの光景を目にし、あの体験を明瞭な記憶と共に持ち帰ってきてしまったと言うのに、私を救ってくれたお守りは既にここにはないと言うことが、私を終わりのない恐怖の中に陥れることとなってしまったらしい。
 私の正気というものが、隣り合わせた何か薄膜の向こう側で暗く冷たく蠢き鳴り響くあの悪魔的な四則、いやもっと邪悪な、しかし寂しくぎりぎりのところで耐え忍びながら、身を寄せ合って潜み続ける彼らへの恐怖と畏怖と嫌悪感、そして強烈なで忌まわしい憐憫によって引き裂かれてしまう前に、私はこれを書き残しておかなければならなかったのだ。
 先に書いたとおり警告ではあり、それは間違いなくリスクの高い警告であることに違いはないのだが、これを然るべき者が読み、然るべき認識の元に、然るべき手続きを踏み、嗚呼、これはすでに狂気に囚われ私の動機は既に彼等の手の内、私は彼等のメッセンジャとなっているのかも知れないが、然るべき方法を以てこの四則を破り彼等を回廊から押し出すことで、ここではないどこか、我々の知り得ない世界が閉じて押し出され、再びその嘗ては暖かかったであろう隣り合わせの彼方に戻ることを望んで今も四柱が身を寄せ合い、必要な食料、必要な水、必要な空間の四等分にも満たないそれを分け合って細々と、冷たい氷の下、塞いだ闇の奥、蠢く蛆虫の中、鳴り響く騒音の中で、今を苦なく生きるありとあらゆる存在を呪い続け救いを求め続ける彼等を、そこからそっとすくい上げてやって欲しいと、そう願ってこれを書いているのだ。
 その四則は、捕食するか、救いを望むか、とかく誰かを求め続け、私とともに好奇心からそこへ顔を突き入れた者を引きずり込んだのと同じように、あるいは私をこうして心底の泥沼から手を伸ばして溶かし続けるのと同じように、してしまうのだ。
 宇宙を隔てる脆弱な薄皮をメスで切り開き、あるいは溶解液で溶かし、囚われた者をその向こうに連れて行き、そうでなくとも、自らの安住の力は決して見えない何かを網膜、脳、意識、精神へ投影してくることによって、それに囚われた者(それは疾患患者と形容しても差し支えないだろう)を、その二つの狭間に立たせ区別を失わせてしまうのだ。



◆幻想狂(ヒュプノロピ)



「ゃ……さま」

 シィの口から、聞き慣れない名前が、漏れた。

「誰?」
「えっ」
「今呼んだの、誰の名前よ」

 聞きなれたようでもあったが、幾ら反芻してもその名前に一致する人物の顔は浮かんでこなかった。



◆古い表紙の手記、あるいは媒物的伝染病



 私はそうしたいと思ってのことではない、決してそうではないのではあるが、私がそうしたのと同じように、これを誰かがこうして認め残し続けることが、彼等の叫びの代わりになっているというのであれば、この手記自体、読んではならないのかも知れないし、これは余程の決意であるか、あるいは祝福の元に読まなければならない、鍵と化しているのかも知れないが、悲しいかな、私はもう、あの四則に、囚われているようだ。
 その証拠に、私の恐れに気付いていながら、筆を止めることが出来ないでいる。書き終えた後にこの手記を、誰の目にも留まらぬよう焼き捨ててしまおうと今こうして思っていても、おそらく私はそれを成し得ない。これ書き終えたところで、私は自らをくびり殺すだろう予想が出来ている。恐ろしくて堪らない。自らの手で自分を殺すなど、それならば人を殺した方がましだと思えるほどに恐ろしい。それでも、あの四則に囚われ続ける恐怖に、私は身も心もすり減り、ついには体のコントロールさえ奪われようとしているのだ。彼等のメッセージから離れたことを記しているせいか、もう、手が巧く動かないのだ。意識も途切れ途切れになっている。
 言い換えよう、心して読めという前置きを。だがもう、これを手に取ったあなたにとっては手遅れかも知れない。
 願わくば、この呪われた独白を、あなたの手で消し去り、次の誰へも、伝えぬようにして欲しい。
 勿論、これを然るべき者が読んだ場合はその限りではない。だから、これが消し去られるべき文書であるかどうかは、これを読んだあなたに判断して欲しい。

 そのために、この文書を消し去るためのキーワードを、【表紙】に書き記しておく。

 ミスティックワードが散るのは、廻り狂うトゥルー、身、あるいは愚かの四則によってのみである。

 神よ、あるいはこれを読んだ強きものよ、願わくば、かの四則に、

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