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【紫 霊夢 蓮子 メリー】こん-fuse

東方夜伽話に投稿しました。
前作が微妙な結果に終わったので、何か心機一転したいなと思っていたのですが
結局そんなこともなく
携帯電話の中に入っている書きかけで終わっていないものを完成させる
いつもの感じと相成りました。

なんだかなあ。


こん-fuse



実は大昔に書き始めたSSで、
直前の「八紅一憂」と同じように
コンペに出そうと思って色テーマに改変しようとしたけど
やっぱりやめたものです。

作品自体が更にその昔に書いた
「れ-fuse」の別解釈として描かれたいきさつを持つものだったので
コンペに出すわけにはいかんだろうと思って
これも没にしました。


これもやっぱり東方アレンジ曲を基点に書き始めたSSで、
「Alstroemeria Records」の「Greenwitch In the Sky」という曲が想起点になってます。

この曲を聞いたのが、
このSSの関連策となる「れ-fuse」を終了してしばらくしてからだったんですが
この「Greenwitch In the Sky」を聞いたときに

「蓮子とメリーが
何者かの設置した引力に強引に惹かれて
歪な欲望を以って崩壊を伴う禍々しい融合を果たす」

という私の中のイメージにぴったり過ぎたので
(この曲がそういうイメージで作られたものだとは思っていませんが)
この曲ベースにまた書き直してみたいという
完全な自己満足の下に始まったものです。



もう一曲がコンペを意識して調味料を加算するつもりで加えたもので
「SYNC.ART'S」の「BICHROME」というもろ世界+2色、二人、というテーマを扱った曲。
テーマ的に絶好ではあったのですが前述の理由で没。
SSの中に私が勝手な解釈で分解した歌詞がちりばめられています。



そういった経緯で
「れ-fuse」というだいぶ昔のSSからややしばらくたった程度の
やはり大昔に着手したSSであるにもかかわらず
もっと付け足すと、半分以上書き進んであったにもかかわらず
完成していなかったSSだったのですが
コンペを期に書こうと若干の修正をし
やはり没とした、何度も殺されたSSですが
「八紅一憂」が出来たときに

「あ、これは結局、私は同じこと(色というテーマではなく)を言いたくて書き始めたSSだったんだな」

だいぶ遅れた自覚を持つに至りました。
この二本のSSは同じ土壌を持ったSSとして扱うことが出来ると思っていて
この二つのSSの接続詞になるSSを書くのもいいなと、いずれやりたいしだいです。




以下、アーカイブ。
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 いかなる存在も彼女の血統を根絶することは出来ない。事実上の不傷契約はこの幻想郷において約款にも等しいのだ。不随意に彼女に対してそれは約束され、絶対に不可侵。それこそがこの世界を成立させるこの王国の柱なのだ。
 その柱は一本の太い柱のように見えるだろうか。その実しかし、螺旋を描いて絡み合う二本の細い枝に過ぎず、二重螺旋の脆弱が辛うじて精々支えているという事実を、知る者は少ない。
 だが、少なくていいのだ。これは隠匿されたリスクの一つに過ぎない。この世界にはこうしたリスクが草木か苔、もしくは宝石か貴金属のようにはびこっていて、だからこそそれを守る行為が世界を活力あるものに変えているのだ。
 私と彼女は世界を成し、失われた片方を補完しながら、求め拒絶し礎となりながら破壊を望む矛盾した管理者。
 二者一対。しかし非対称の色に染まった羽を持つアゲハは、永遠に羽ばたき続け、対称性を取り戻すことはないだろう。アンバランスな羽ばたきは、蝶をぐるぐるとさまよわせるのだから。

「紹介しますわ。これが、新しい博麗の巫女よ。よろしくしてあげてね」

 妖怪、人間、魔女、神。そのいずれにとっても博麗の当主交代は重要なイベントだ。誰もが彼女に新しい時代を感じ、変革を恐れ、歓迎し、訝しみ、無関心な者は誰一人いない。殊、吸血鬼の姫に関してはこの儀礼をもっとも複雑な目で見ることだろう。
 それは柱の入れ替えである。片翼のすげ替えである。だがそういったことに、興味を以て望む者はあれど、もしくは別れ、小さな崩壊に嘆く者はあれど、それ以上に膨らむことはない。
 だってそのリスクは、私と彼女の間にしか見えないものなのだから。
 私が手で示す方には、白と赤の装束に身を包んだ巫女が佇んでいる。
 彼女は――あなたは――、思い出すことはないでしょう。その二重螺旋が、元は本当に美しく羽ばたく対称の、整った色をまとう蝶であったことを。いや、思い出すだろうか。私がそうであったように、私を否定して、あなたの描く私を強いようとする日が、再び来るだろうか。
 蛹の時間を永続化しておくことに、そう、私も、あなたも、我慢がならなかったのなら。
 あの日。

 嘗て、自分がそこにいた。
 今は、自分がここにいる。

 春。草木は息吹き花は蕾を膨らませる。雪解けに呼び覚まされて白一色に覆われた大地が色付いてゆく。
 季節は廻り、あなたと私が廻る、この場所で孵る二色の蝶が、世界に色を落とすためにはらはらと、舞い始めた。
 でもそれは、あなたが描いた蝶ではないものね。次の蝶が、あなたか、もしかしたら私の中に蛹をなして、やり直せるという幻想に捕らわれてしまえば。それが何度目なのか、私にも、あなたにも、記憶できていないけれど。

「霊夢は、どこに行っちゃったんだ?」

 魔理沙は私と彼女を見て、惜別を嘆いている。でも、それは別れではない。私も、彼女も、こうして目の前にいるのだから。ただ、ただ、細切れなのだ。ただ、ただ、それは歪なのだ。ただ、ただ、求め合う不可能が、合うことのない鍵と鍵穴が、そこにはある。
 その不可能をそれでもと望む二色への幻想こそが、私とあなたを、世界を成す起源なのだから。







「お菓子は?」
「たんまりと」

 これから起こるイベントのお供に、甘いものは必須だ。
 チョコレート、飴玉、ゼリー、綿菓子。アイスクリームを模した砂糖菓子、生クリーム風ペーストたっぷりのケーキ、果物風味0果汁パイ、調味炭酸ガスムース。カスタード味食用樹脂。食用変形菌由来の人造果物。デザート用人工甘味肉。
 あ、貴重な天然物の果物だっていくつか持ってきた。でもこれはクライマックスにサプライズに出すって決めているから、メリーにはまだ内緒。
 しつこいようだが、これから起こるイベントを観測するイベントに、甘いものは必須だ。私の行動にメリーが、メリーの言葉に私が付き物であるのと、ちょうど同じように。

「今日のはちょっと、様子が違うのよ」
「へえ、どんな風に?」

 歴史的建造物に名も連ねない、小さな名も無き寺院跡。かつて玉砂利が敷き詰めてあったかもしれない(今はただの)草原に、緩衝シートを広げ、使い捨て温室フィールドフィードを撒きながら、メリーは言い、私はそれに問うた。
 そのシートの上に、可逆質量変転式クッションを、彼女と私の二つ分、展開してから、私を見るメリー。私はクッションの間に指向重力固定デバイスを起動して、テーブル用のセッティングを指示する。携帯型時空冷蔵庫から次々取り出される、夜を盛り上げるエッセンスを重力テーブルに並べてから、私はクッションに腰を下ろす。
 そうして一息付いたところで、メリーはようやく答えた。

「って、言うことにしておけば、この粗悪なお菓子もまあ美味しくなるってものでしょう?」
「そうね、それには同意するわ。でも人が用意してきたものを粗悪だと言われたら、これからのイベントを鑑賞するイベントも、私が起こすイベントで上書きされてしまうわよ」

 早速に好物のチョコレート味海綿に手を出すと、先にキノコ(食用変形菌の愛称。味はするが美味しくはない)食べないと残す羽目になるわよ、と釘を差される。
 悪かったわね粗悪品のお菓子で、と舌を出すと、苦笑いしたメリーは妥協をはかった。

「わるかった、わるかったわ。素敵な夜にしましょう。甘い夜にしましょう。二人でこのヨを抜け出すロマンを二人で眺める夜にしましょう。甘美で淫靡な、二人の夜に。」
「不埒な良い夜」
「二つの世は寄る」

 なんて、格好は付けてみた私達だったけど、別に今夜は外でえっちするつもりもないし、ましてやこの世からおさらば、心中するつもりだってさらさらない。宇宙の向こうへ飛び立つようなロケットだって持っていない。
 ただ、甘いものを食べながら、メリーが予言する不思議事件を体験する。それが秘封倶楽部の趣旨だ。今回は特にビジュアルライクな事件なので、こうして腰を据えて鑑賞しようと、ただそれだけだった。

「どんな結界が見られるのかしら」
「どんな結界がみたい?」
「自分でどうにか出来るような口利いちゃって」
「いつかどうにか出来るかも?エロイムエッサイム、異界の門よ、開け!」
「魂持ってかれなさいな」

 メリー曰く、この間の地震であちこちに歪みが生じているらしい。この世というのは全てが透明な壁で区切られていて、あらゆるものには「隣」と「向こう側」が存在するのだとか。
 なるほどそういわれれば、今まで出会ってきた不思議事件にも一応の理由はつく。説明はつかないが。
 地震で大地や空間が歪んで、その透明な壁に軋轢が生じている。だから、ここしばらくは秘封倶楽部は満員御礼(二人しかいないけど)で多忙を極めるということだった。
 あの地震からややもたつが、その影響はまだあちこちに残っていて、私とメリーのデートスポットは、それと同じかそれよりも多く存在していた。

「今何時?」

 メリーが聞いてきたので、空を見上げる。星々は私に時空を囁いた。

「ちょうど0:00ね。」
「始まるわ。昨日と今日が、今日と明日に重なる時。」

 この能力を使う度に、先の話ではないが、魂を持って行かれるのではないかとさえ思う。地球から遙か彼方離れた無数の星達が、私の問いに答えるのだ。空というスクリーンの向こうで傍観を決め込む気まぐれな神々が、私の些細な問いに答えてくれているような、そして、それ本来は私には(人間には)持て余すほどのコストを要する行為な気がする。人間よりもっと大きな何かだけが行使できるメソッド。気まぐれにその知識の破片を授かると、人間では受け止めきれずに発狂するという、異界の神々……が、いるかどうかは知らないけれど、そんなものを、膨大なエネルギーを使って従えて、くだらない遣いっ走りにするような。それで、ただ時間を知ろうだなんて、ご飯を炊くのに核燃料を使うような。
 そのコストを、私はいつか雁首そろえて支払わさせられるのだろうか。お金どころか命でも足りないような気がする。
 だが、だからといって、それをやめる気にはならなかった。それを授かったのは、何かの運命。メリーには「境目」を見抜く能力があり、私には「時空」を知る能力がある。その二人が享楽を満たすためだけに、この力を行使するのだ。
 ただ、ただ純粋に、享楽。そのためだけに。
 コストが大きければ大きいほどに、酔狂な楽しみは味わいを増すというものだった。

「見て。開くわ」

 メリーがテーブルの上で私の手を握る。
 彼女が指さす天空の隅。真っ黒い天空に、黒ではなく虚無がゆっくりと裂け現れ、そこから暗い滴を落としていた。メリーの手から伝わるじりじりした波が、私にもその口を見ることを可能にしている。
 暗黒星雲のようにも見えるそれは、しかし余りに距離が近くて輪郭がぼやけている様が、逆にはっきりとわかる。あの口でつながるこっちとあっちを、いつか行き来できるのだろうか。科学が、世界を、解き明かすのなら。
 と。私の手を握るメリーのそれに、ぎゅ、と力がこもる。こんなもの、私はともかくメリーは見慣れているんじゃないのだろうか?
 どんな顔をしてそれを見ているのかと思って彼女の方を見ると、メリーの視線は真っ直ぐに私を見ていた。

「め、メリー、どこ見てるの」
「蓮子」

 悪びれもせずに答えるメリーは、私の頬に指をなぞらせて。

「え」
「クリームついてる」

 意識してしまった私が情けない。
 でも、メリーの方だって全然そんなつもりが無かった訳でもないみたいで。クリームをすくった指を舐める仕草は妙にコケティッシュ。視線がこちらを撫でている。月でも星でも亀裂でもなく私を見つめるメリーの頬は少し朱が差していた。

「さすがに地震でひびが入っただけのものね。小さいしいびつだわ」

 それでも思わせぶりな仕草の域を出ないままに、彼女の言葉は私ではなく秘密を封じた世界の蓋を対象にした。行き場を失わされる私の狼狽えは、彼女の思惑通りに膨らんでしまう。

「そうね。でも、ちんけな結界の亀裂でも、甘いものがあれば楽しいんじゃない?」

 メリーがそういうつもりなら、私も真正面から向き合ってあげない。彼女が私の気持ちから軸をずらして世界の蓋を指すのなら、私はそれを外して甘いもの。お菓子は乙女心の象徴だもん、それくらい許されるよね。
 そうして指向重力固定デバイス(つまりはテーブル)に乗ったお菓子を指さして皮肉を口にすると、口の端にクリーム付けてるくらいに楽しめれば、それもそうね、なんて笑って何を食べようかなんて指をさまよわせていた。
 こんな関係が、私は大好きだった。メリーのことが大好きなことに間違いはないけど、それと同じくらいかもしくはそれ以上に、メリーとの関係性が好きだった。
 彼女は気にしているらしい。私とメリーとの相対性、つまり平たく言えば友好関係に、不測の変化がもたらされることを。
 彼女曰く、それは不安定と、ひいては崩壊を導くリスクを負っているのだという。でも、それって本当にそれでいいのだろうか?もちろん彼女もいいとは思っていないみたいで、だからこそああして私を誘って私にそれを崩させようとしているのだろう。彼女はそれを明言はしないけれど、時折姿を見せる弱い彼女は、暗にそんなことをちらつかせる。
 彼女には結界が見える。それは、こうして私たちが今世界観測をしているのと同じように、人が外界に向けて展開する壁に対しても同じだった。それは、人であれば誰もが持つ唯一の恣意的な結界に他ならないのだから。そういう環境で育った彼女は、人間関係における結界に対して、受動的なんだろう。私はメリーに対してなるだけ秘密を作らないようにして、言葉以外のところで彼女への気持ちを示さなければならない。積極的に、私とメリーの間にある結界を薄く薄く、していかなければならない。
 その結界のあり方を、私と彼女が、私と彼女である対称性を、決して一つになれない苦い宿命を、それでも私は心地よく思っていた。二人で別々だからこそ、照らし合わせて笑いあって、時にけなしあって、支え合って。
 私もメリーも弱々しいただの一本の「世界の枝」だ。私たちはお互いに折れないように、そしてお互いの世界を支えるために絡み合い、螺旋を重ねて耐えるのだ。
 そう、自分の信念を持っていても、でも、なんだか私の方もおかしくなってきた。私もメリーに毒されてきている?いや、ここのところ、私の方が「一つになりたい」願望が強い。
 性別とかセックスとか、雄雌とか雌雌とか、そういうんじゃなくて、統一感って言うか一体感って言うか。
 いけない。考えて意識すれば、無駄にそれが強くなってしまう。
 そうだ、果物。
 思いだした私はメインディッシュと言わんばかりに、持って来た天然物の果物をお菓子と一緒にテーブルの上に並べた。

「きゃーーーーーー!天然果物!!なんでもっと早く出さないのよ!ああああん、蓮子大好き愛してるっ!実家を皆殺しにしたいくらいあなたしか見えない!」

 目をきらきらさせて、空の亀裂や、もはや私さえ目に入っていない様子でテーブルに並んだ果物を見比べているメリー。やっぱり念じれば通じるものね、天然果物が食べたい、なんて。

「喜んでくれて嬉しいわ。ちんけで粗悪なお菓子だけれど」
「失言でしたごめんなさい」

 念じていたというメリーの行為に頬が緩む。
 だが、実際のところ彼女の祈りだとか念には一定の効果があるようにも思えた。これは友達(?)としての贔屓目を除いてもそうだ。
 彼女の「結界を見る能力」は、徐々に「結界を操作する能力」へ変化しているようにも見える。
 仮にそうだとするのなら、私の「一つになりたい願望」が強くなっていっているのは、私自身が彼女の能力に晒されている結果なんじゃないだろうか。

 どれを、どれをたべる?なんて言っているメリーだったが、その動きがぴたりと止まる。
 お、やっぱりそれね。
 メリーのために用意したとっておきが、それだった。それを目の前にして固まっていた。

「これ、なに」

 聞かれた私は思わずしたり顔で答えてしまった。ああ、メリーが喜んでくれると思うと得意にもなってしまうわ。

「たけのこ。好きでしょ?」
「たけのこは果物じゃないでしょう」
「うそっ!?」
「甘くないし」
「だましたわね……」
「だましてないわよ!」

 空の亀裂はいつの間にか閉じようとしていた。







そやついや
のえまずく

やがごもも
えきめやた

がつにえつ

きく、が。
をる、き。

 私が祝詞をあげ終えると同時に、紫が印を切る。八重結界が二重に展開されてそれを塞ぎ、結界は何事もなく元通りになった。
 立ちこめていたおろし金のような空気はやみ、油を塗ったようなぬめる闇が再び辺りを支配する。

「ご苦労様」
「疲れたわ。吸血鬼や亡霊を相手するのよりもよっぽど堪える」

 墨色の血をぶちまけたみたいなざらざらの天空に、心臓の月がホルマリン漬けのまま虫ピンで留まっていた。空を覆うその腥くて薄い薄い膜の向こうに、世界の内臓みたいなモノが詰まっていて、そんなモノで仕切られた腔洞が、この幻想郷を抱いているんだ。
 今封じたのはそんな薄皮の向こう側が口を開いてしまった、その顎。口から異界の星をこぼし、生温い汚闇を招き入れるそれを封じるのは、私と紫の仕事だった。
 私はこの薄膜の向こうに何があるのか知らない。知りたい気もするが、本能がそれを拒んでいた。宗教心(信仰心ではない)というモノがあるというなら、こういうものなのだろうか。もしそうだとすれば、なんてグロテスクなのだろうか。
 でも、この世界は、この世界に住まう者達は、そんな血の滲んだ粘膜みたいなもので区切られて、危うく危うく存在しているのだ。脆弱にアンバランスで、だからこそ自分たちの存在を強く強く願う。そういうあり方。
 紫はどうしてこんな方法で幻想郷を切り出そうと思ったのだろうか。それとも、彼女自身も望まぬ形なのだろうか。
 今の私達のように。

「この間の大地震であちこち結界が傷んでる。もう少し付き合って頂戴」
「はいはい、よろこんで」

 私の皮肉った返答に対して、少し苦そうに笑う紫。困らせるつもりじゃないんだけど、ああ、もう、悪い癖だった。

「ごめん、嫌なわけじゃないの。面倒くさいのも確かなんだけど」
「いいのよ」

 付き合ってくれるのだけでも有難いわ。そう付け足して、私の隣に座る紫。

「紫、私が何で不機嫌なのか、わかってないでしょう」
「面倒くさい作業に付き合わされたけど、それは私のせいではなくて、あなたのせいでもなくて、地震という自然災害のせいだから誰かに当り散らすこともできなくて。違う?」
「ぜんっぜん違うわ」

 5%くらいはあっているけど。
 隣に座っている紫の方を見てやらない。紫は覗き込むみたいに体をひねって私の正面に顔を覗かせるが、私はさらに逆方向に顔を反らせて逃げる。

「どうしたのよう」
「賢い紫さんは私のことなんて、本当はわかってるくせに」
「わかる事もあるしわからない事もあるわ。でも、どちらにしたって、霊夢が言葉に直して私にぶつけてくれないと嫌だもの」
「いいたくない」

 言葉に置き換えると、巧く伝わらないから。そうして伝達ミスが生じて、ノイズとバグが蓄積して最後に崩れるの。神の要らないバベルだわ。

「あんたみたいに器用じゃないの」
「歪でも、不足でも、飛躍していても理解不能でも、そうして自らの感情に対して能動的であることは必要だと思うわ」

 紫の方を向くと、すごく近かった。
 じゃあゆってあげる、その顔に吐きかけるように、その次の言葉も含めて投げつけてやった。

「セックスしたい」

 装飾も道草もなしに結果だけを出力するなら、それが一番適切だと思った。

「ふふ、あはは。いいわ、思慮深いのに直情的で、優しいのに不親切。霊夢らしい」
「悪かったわね」
「いいえ、ぜんぜん。そういうところ、好きよ」
「好きなんてゆってない、セックスしたいってゆったの」
「嫌い?」
「そんなことゆっていないわ」
「好きじゃない?」
「それもゆっていない」

 くすっ、と笑って紫はやはり困った顔をする。素直じゃないな、私も。

「あんたが、久しぶりに起きて来て、久しぶりに会えたと思ったのに、いきなり結界の修復でさ」

 折角、久しぶりに会ったんだから、もっと。だから。

「デートとかお喋りとか、お菓子を一緒に食べたり、一緒に空を見たり?」
「それもあるけど、なんていうのかな、最後にはスルでしょ?勿論セックスだけが目的じゃないけどさ、だからって、それがわかってるのに、通過儀礼を目的みたいに言い逃れて、求める気持ちをオブラートに包んで隠してまで、あんたと一緒にいたいんじゃないの。」

 紫と一緒にいるだけで幸せだ。体温を感じるだけで心が安らぐし、肌が触れ合っているだけで満ち足りた気分になる。一緒のものを見ているだけで一つになれたような気がして、手を握るだけでも全身が繋がったみたいに一体感に浸れる。そうして夜空を見上げて、大好きな甘いものを食べて、ゆっくり流れる夜の時間を贅沢に浪費して、それだけだって、私は別に、いい。
 でも、でもじゃあ、本当にそれだけでいいのかって言われたら、嘘で、紫も私のことを受け入れてくれていて、好きになっちゃったら、セックスしたいし、だったら、そんな風に触れているだけのデートを目的だなんて、ただの欺瞞で。
 彼女の言葉を聞かぬまま、私は紫を、結界の閉じたばかりの空の下に、押し倒す。紫も抵抗せず、私が圧し掛かるままに、むしろ私を引き倒すくらいに導いて倒れこみ、私の目をしっかりと見据えていた。
 私は、紫の被造物だ。私にとって紫は母親であり神であり、だのに他人で種族さえ違う。そこにある距離は、天と地ほどの悠遠。たとい私が紫につくられた肉体と人格だとしても、それはもはや遠すぎて。でも、だからこそ、私はこうして紫を。紫が。紫に。

「あんたは遊びかもしれないけど、遊ぶんなら、私の本気に付き合ってくれてもいいでしょ?」
「遊びだなんて、心外だわ」

 起きあがった紫の顔から少し顔をずらして、その中に空にぶら下がってる月の現身を置いてみたけど、並べてみても彼女と月は全然似ていなかった。あの妖しく燈る月を以ってしても、紫に敵わない。
 自分の蕩け具合が痛々しくて、私はごまかすみたいにまたキスをねだる。紫は体全体を抱くようにしてそれを受け止めてくれた。
 彼女の長いブロンドを指に絡めて弄んでみると、それは霧のようにふわふわと夜の濃紺に響く。それを感じた彼女もまた私の髪の毛を指に包んだが、私のそれは融けた樹脂みたいに不快で、紫はそれでも飽きずに私を夜漆に梳いた。

「最近欲求不満みたいなの。誰かのせいで」
「あら、誰かしら」
「見せ付けてあげましょうか?」

 躊躇いなく一気に装束を脱いでそれをその辺に捨てると、さして自慢できるわけでもない体を紫に見せ付ける。

「こんな貧相な体でもね、悲しいことに、いっちょまえに性欲はあるの。」

 するりと彼女の服の下に手を忍ばせて、嫉妬するほどに滑らかな柔肌を探りまわる。お腹、脇腹、胸。その間に顔を寄せて、キスを迫った。
 私を見上げるその表情は、いつも不真面目な彼女をして疑わしいほどに、まっすぐ。頭の後ろに細い手が回されたと思うと、ぐいと寄せられて迫った唇を逆に奪われた。紫が私を求めている。それだけでお腹の下がきゅんと熱くなって揺れる。

「ゆかり」
「霊夢」

 彼女もまた、私にまさぐられている体を包む服をするすると脱いで、滴る墨色の血みたいな夜の下で、全裸を晒けあった。重ねた唇を食み合い、互いの吐息をを聞きながら、それが私の(願わくば紫も)興奮を湧き水のように高めていく。
 おでこ同士をくっつけて、至近距離の瞳を交える。紫の目に映ってる私は、変じゃないだろうか。紫とエッチしたくて欲しがり顔になってないだろうか。
 私の心配をよそに、紫は私の鼻先をぺろっとなめてから頬を摘む。

「お菓子より甘いし柔らかい」
「子供扱いしてない?」
「別に子供扱いはしてないけど……子供みたいよ、霊夢」

 子供扱いじゃないか。
 否定する材料を持ち合わせていないので、黙って紫に口づけをせがむ。唇、舌。一度口を離して、首、肩。白い肌にほんのりと紅の跡が刻まれて、紫に私の跡を残したみたいな優越感に浸る。

「甘えんぼよね」
「……紫しか、甘えられる相手なんて、いないし」

 口に出した瞬間、ずきりと胸が痛む。
 それを酌み取ったのか、紫は静かに私の頭を撫でている。髪を行き来する紫の手の感触に、酷く惨めなものを感じて、私は頭を上げた。

「違う、紫、違うの。」
「なに?」
「私は、こんなのじゃなくて、セックスがしたいの」

 半ば照れ隠しではあったが、本音でもあった。
 好きだからセックスしたい、じゃない。まだ、私にはそんな潔い感情は持てなかった。
 好きなのは間違いがないのに、自分の気持ちに自信が持てない。恋とは、ただの欲望に過ぎなくて、我儘で独善的で、それにまつわる気持ちも全ても恋に対して恣意的。そんなものを、その相手に振りかざして、どうすればいいのかなんて、わかりはしない。
 ただひとつ間違いがないのは、紫とつながりたいという欲望だけで、それを紫を大切に思っているとかそういう潔癖なまっさらなシルクに例える気になんてなれなかった。
 所詮、性欲。恋なんて錯覚。それを受け入れてくれるなんて妄想。

「素直じゃないのね」
「素直よ、性欲に。それ以外はわからないだけ。謎かけと頓知はもう十分だわ。」

 それをしているのは、自分だというのに。紫のせいにして、私、ばかみたい。

「まあ、ゆっくりでいいんじゃない?」

 紫はそう言ってから、ぎゅっと私を抱いた。
 その温もりは、なんだかいつも私に懐かしさを感じさせる。それは、紫の母性のようなものだろうか。私の子供っぽさだろうか。それとも何か別の。
 駄々をこねるような仕方の無い私の発言を、紫はそれごと包んでくれる。

「ごめん、ガキっぽいね」
「可愛いけどね」

 髪を梳きながらおでこにちょんとキスをしてくれて、私はすごく気恥ずかしくなって。

「そんな風に可愛くしてると、いじめちゃうわよ?」
「……いいよ」

 紫の胸の中に潜り込むみたいに抱きついて、いっそあかんぼのように胸に吸い付いた。空いた手でもう片方の乳房をこねるようにまさぐる。

「えっちなあかちゃんだ」
「だから、えっちしたいの」

 紫がこうやって抱いてくれているだけでも、どきどきが止まらないって言うのに。私は右手を自分の股間に運んで紫がなかなかしてくれないそこを自分で慰めようとした。と。

「がまんできない?」

 紫の手が私の手を捕まえてそれを止めた。

「紫がしてくれないから」
「私のせいなんだ」
「紫が、言えって言ったのに、紫はぜんぜんその気じゃないんだもん」
「そんなこと、ないわよ」

 紫はそう小さく含み笑ってから、唇を重ねてきた。今度は、荒っぽく私の口の中を嘗め回すような舌の動き。唾液はひっきりなしに注ぎこまれ、舌先は頬、歯、歯茎、唇の裏っかわ、上顎、舌の付け根から全てをくまなく嘗め回し、そうして口の中を愛撫され犯される私は、たった一つのキスだけで体中が弛緩してしまう。
 そのまま伸びる紫の舌は妖怪のそれで、人間の長さを常識としない。口の中をめちゃくちゃに蹂躙した後、その長い舌は私の喉の奥へと入り込んできた。滑る舌先が、食道へと進入してくる。だが不思議とえづく感じはない。それどころか私の喉は紫の舌の挿入を受けて快感をさえ感じていた。

「ふっぐ、ん、んぶっ」

 喉が、膣壁のように滑る。愛液の代わりに唾液がだらだらと溢れ出し、普段は何も感じない喉彦が淫核のように鋭い快感を返してくる。人あらざる者と対峙するために形作られ存在する博麗と言う器は、その性感もまた人を超越したあり方に対して柔軟に適応してしまっていた。そう、他でもない、紫の手によって、私の体は異常性感を開発され尽くしていた。その箇所は口に限定されない。それはあらゆる意味であらゆる箇所であり、紫が望む場所全て。紫が私のことをどう思っているのかなど私には計り知れないが、私はもう紫にすっかりと染め上げられていた。
 下半身で感じるセックスの快感を脳みそに近い上半身にぶち込まれる感覚。下半身で準備が出来ていた私は、しかしより強烈な快感を与えられて喜びに喜んでいた。喉を串刺しにされながら、紫の体にぎゅうと抱きついて快感をアピールする。摩擦される喉膣が時折快楽の高波をぶつけてくるので、私の体はその度に性感電流に撃たれてビクッっと跳ねた。
興奮で心拍数が上がり、息が荒くなる。が、口は封じられていてまるで浅ましい豚のように鼻息を鳴らして紫にしがみついていた。息苦しさなのか、いや、与えられる快感が飽和して流出しているのだろう涙が、そして荒くなりすぎた鼻息に燻り出される鼻水が、愛液の変わりに挿入を要求する唾液が、私の肩から上をぐしょぐしょに濡らしている。それはまさしくマン汁でぐずぐずにふやける生殖器同士の交尾の光景と、なんら変わらない状態だった。

「ふご、ぉ゛ん゛っ、うがり゛、んっぶ」

 使えない喉を無理やりにしてでも、私は紫の名を呼んだ。愛おしい思いをどうしても出力したくて。それは声だけじゃない。体中を使って、私は紫に愛されて幸せであることを、アピールしたい。もう離さないといわんばかりに両手両足で私の上に圧し掛かる紫の体に抱きついているのもそうだし、その中で、腰をくねらせて上半身同様にほぐれまくっている下半身を擦り付けてしまうのもそう。
 快感のアピールといえばどうにも聞こえがよいが、一重にそれは紫に肉欲をねだって媚びる浅ましい牝の行為にも等しかった。でも、私はそれでいいと思っている。紫もそれに応えてくれるし、私が紫を求める感情と言うのは、肉欲か、それ以前のそれではない何かでしかない。
 そして、それと同時に不安でもあった。
 私と紫が繋がっていられる理由は、恋とか愛とかそういうわかりやすいものではなくて、快楽とかセックスとかそういうもので求めているのは私から一方的なんじゃないか。欲しがっているのはいつも私で、応えてくれている紫の感情はいつも向こう岸に見える風景みたいにかすんでいる。それこそ結界のように手が届かない何かにさえ見えて、私はこうして紫の体に手が届けば、それが溺れる中の藁であるかのように必死にしがみついて喘ぎ声を上げる。喘ぎ声は「もっともっと」と求める声で、でもその奥底には「すてないで」という哀れな嘆きが隠れていることに、私は既に気付いていた。

「下の口にも欲しいの?」

 紫が囁く。舌は私の喉を貫いたままで、その声がどこから発せられているのか私にはわからない。そんなことはどうでもいい。もう蕩けきった上半身に加えて下半身にもくれると言うならと、私は卑しく腰を振って欲しがり主張をしてしまう。

「ふふ、欲張りな子猫ちゃん。でもあんまり与えすぎると躾によくないから、指で我慢なさいね?」

 撫でるような声で私の被虐を煽り、そして飼い殺されている私への褒美は指先での愛撫だった。
 指の腹でゆったりとラヴィアの縁をなぞっては焦らし、焦れた私は腰を押し付ける。紫の指は私が無様に腰を振って求めるのを見越して、指を立てた手を固く固定している。前に腰を突き出せば立った指がラヴィアを掻き分けて膣壁へと導かれる。伸びた爪が膣壁を引っ掻き回すが、都合よく作り上げられた私の膣は裂けることなくその刺激を鋭い快感として感受していた。舌イラマチオに汁を撒き散らし泡立つ口。膣口の方はたった一本の指に与えられる刺激を求めてひくついていた。

「んっぐ♥ふっん、んぅっ、っ♥」

 口も利けない牝豚。まさにそんな形容が、今の私にはぴったりだった。なんて無様。なんて惨め。なんて、なんて快感。紫に与えられるままに快楽に溺れるのが、幸せで堪らない。一瞬の至福。涙と涎と鼻水を垂らしながら、愛液を撒き散らして腰を振り乱しながら、幸福感に堕ちて行く。

「いいわ、霊夢。あなたの喉まんこ、気持ちいいっ。下の口も欲しがっちゃって、指一本しか入れてないのに、すっごいくいつき。どんな短小チンポでも搾り取れちゃうわね。頭の上からケツの先まで淫乱に出来てるなんて、今までの博麗でも最高だわ。霊夢、あなたを永遠に私のモノにしておきたい。永遠に、私と、霊夢と、一緒にこうして溶け合っていましょう?」
「ほっ、ん゛ごっ♥んぶぶごぉお゛っ♥」

 永遠のプロポーズとも取れる紫の言葉と、同時に差し出された追加の三本の指に、上の口も下の口も、ヨガリ泣いて汁を撒き散らした。
紫の舌は、今は性器のようだった。私の喉がすっかりと膣であるように、紫の舌はすっかりとペニスで、私が快感に溺れ沈み堕ちているのと同じように紫の方も実は喉挿入の摩擦に夢中だった。
 焦らしていた筈のヴァギナに添えられた手はいつの間にか4本の指で私のまんこをぶちゅぶちゅとめちゃくちゃにかき混ぜている。まとまって押し込まれると掌の半ばまでが埋まり、最奥で口を窄める子宮口を押し潰してきた。
 ごりごりと抉る感触がお腹の底から伝わってくる。指の先が固く閉じた子宮口をこじ開けて侵入しようとしてくる。乱暴にこじって小さな穴を拡張しようとする紫の指に、私の子宮は応えようとしていた。固く抱きついたまま腰をくねらせて指を奥へ奥へ導いてしまう私。最奥までを紫に犯し尽くされたくて腰を押し付ける。押し出したときに奥をほじくられるのと同時にクリトリスが紫の手首辺りに触れると大声で喘ぎまくりたい欲求に駆られる。指先が最奥を抉ると、瞬間で体中の力が抜けて意識が一瞬抜ける。喉を貫かれていなければ首がカクついていることだろう。
 喉マンコから注ぎ込まれる横暴な快感に、ヴァギナから植えつけられる絶対的な愉悦。
だが喜びに涎を垂らしまくって淫核を固くし凝らせているまんこから、紫の指は抜き去られてしまう。

「んーっ、ぅっ……」

 名残惜しくラヴィアを伸ばし、淫液の橋をかける淫ら口。腰もそれを名残惜しく追いかけて突き出すが、指は抜かれてしまう。紫の手の形に馴染んで形を残す淫裂。ぽっかりと口を開けて最奥までの道のりを晒し、肉ビラをと媚肉壁をひくつかせて置き去りにされた哀れな様を呈している。クリトリスがフル勃起で刺激を求めていた。

「意地悪しているのでは、ないわよ?っん、すぐに、代わりをあげるわ。もっとイイ、モノっ」

 紫の方も切なそうな、それでいて気を急いたような声。抜かれた指の代わりに、すぐに私の淫裂には、別の熱い塊が宛がわれた。これは。

「これを、欲しいのでしょう?躾のためにお預けにするつもりだったけれど、だめね、主人の堪え性が、っ足らない、みたいっ♥」

 おちんちんっ!紫の、紫のおちんちんっ!来た、きたのぉっ!おまんこにもらえる、ちんぽ、大好きなおちんぽ、ぬるぬる寂しがりマンコに、ちんぽもらえるっ!
 ふーっ、ふーっ!と鼻息を更に荒くして、その挿入に期待してしまう。喉マンコをきゅっと締め付けて、紫にお礼を言う。

「んふっぅっ!喉っ、しめつけちゃって♥ありがとうございますってアピールかしら?いいわ、霊夢、かわいいわっ♥それに、すっごく気持ちいいっ♥」
「ん゛っ、んぶ、ぐっ!ぶぶっ、ぢゅ、んぶっ!んごっ、ごぉっ♥」

 声を出せないのも構わず、締め付けた喉で喘ぎを漏らすと、かくっ、と紫の体から一瞬力が抜けた。
 紫も、イきかけ、なのかな。舌ちんぽで、アクメっちゃうのかな。
 そう考えると愛おしさが爆発するみたいに高まってしまって、私は喉を絞めるだけじゃなくて、それを嚥下する動きを何度も繰り返して紫の舌に奉仕する。

「んっ、ひ、れ、霊夢、それっ、しょれ、しゅごいっ! 」

 紫が、私で感じてる。
 その事実だけで、私の文脈は瓦解した。白く塗りつぶされた上に浮き上がる、脈絡と根拠のない欲。原始的で絶対の「ほしい」。恋とか愛じゃない、ただの性欲でもない。
 私と紫が私と紫であるが故に生じる窮めて社会的なのに同時に前本能的な、何か。同一、融合、無境界。
 私と紫の体に横たわる、皮膚が肉が骨が体全部が、じゃまくさい。別物であるのが。私と紫が私と紫であることそのものが、強烈な欲求につながり、愛に恋に錯覚して肉欲を催させるのだ。

「んが、ひぃ……♥」

 求めても求めても得られぬ苦しみ、だが得られぬが故に求める矛盾。紫と、私の間に展開された名前という結界。
 ずるりと引き抜かれる舌。唾液と少しの胃液が混じった粘りけのある液体が糸を引いて滴った。
 抜け去った舌を惜しむように、空洞を広げる口、喉、食道。ぞくぞく快感を伝えてくる粘膜が、その薄い境界さえをも越えられぬ事を悔やんで震えている。

「霊夢、霊夢、私、霊夢のことが大好きよ。ずっと霊夢とこうして、霊夢と抱いていたい。霊夢を可愛がって愛し続けたい。」

 うれしい。
 母親に褒められて無条件の喜びを感じる子供と、恋人に求められて無上の喜びを感じる女。その両方の愉悦に浸りながら、でも、少しだけ、不安感が拭えないでいた。不安?焦り?
 さみしい。
 母親の腹の中から追い出されてしまう寂寞と、求め合う欠損であることの痛感。女のまんなかにあるこの濡れた溝を埋めて欲しい?ちがう。もっと、もっと一つ。
 私は、紫、どうしてあなたと別の存在なの。

「れいむ?」

 涙を流す私に、そしてその涙が快感に咽ぶそれでないことを察した紫が、舌を抜き去って私の目をのぞき込んでいた。

「つらい?」
「……つらい。」

 紫の目を真っ直ぐに見て言うと、紫は黙って私の頭を胸の中に抱いた。

「つらいから、ちゃんと、忘れさせて」

 紫の背中に指を這わせ背筋のラインと肩胛骨の膨らみを指の腹で舐めた。
 紫はなにも言わずに、私が欲しがった肉棒を使い、今度はただただ貪り奪うようなセックスをしてくれる。
 これが、欲しかった。よけいな感情を伴わない、純粋な純粋な肉欲。そうしなければ、そうでなければ、悲しい。

「紫、もっと」

 もっと強くして。もっとひどく、もっと激しく、もっといたく。
 でも、これ以上、心に中に広がらないで。これ以上、あなたを好きになりたくない。怖い、欲しがる自分が。欲しがり続けるのに、手に入らないことに悔しくて寂しくて辛くて切なくて、苦しいのは、もうこれ以上いらない。
 セックス。セックスだけ。
 その純化が、私の恋心の究極、純愛だった。

「ほかには、なにも、いらないの。もっと、感じさせて」

 淫蕩極まりない、女として最低のせりふ。でも、これ以外に、言いようがない。
 紫は一言も発さずに私が求めるセックスをしてくれて、粘膜という粘膜がすり切れそうなくらい、もう白くないところがないくらい、セックスをしてくれて、そして、一言言葉を飲んだ様子を、私はどこか冷徹な目で、見ていた。







 私達は大学近くの「カフェテラス」で、次の講義を待っていた。一講目の次が四講目、暇という言葉以外にない。今はその半ばほどの時間をつぶし終え、残り半分をどうすべきかと手持ちぶさたの時間を転がして遊んでいた。
 カフェテラスの壁は、コンクリートの打ちっ放しで、カルシウムの川が不規則模様を描いていてる。通気ダクトはむき出しに錆び付いていて清浄な空気の代わりに草のツタと細い水の川を吐き出していた。窓枠らしいものには開閉するものはおろかサッシさえなく、ぽっかりと口を開けた空のキャンバスがあるだけ。
 緩やかに中と外を区切るコンクリート壁がある以外に、それが生活空間であることを示すものはない。人工の岩石で作られた岩山と言われてしまえばそれまでだった。
 その壁の外側は草木が生い茂り、忘れられたその一帯を記憶と認識から覆い隠している。特筆すべきは壁の内側も全くその通りの様であり、痛んだコンクリート壁はそれを覆い隠す草木と一体となってこのカフェテラスを構成していて、そこは違う意味でのコンクリートジャングルとなっている点だった。
 生命力の弱いコンクリートが強い草木に食い尽くされているという当たり前の自然が、そこにあるのだ。これほどに倒錯的で退廃的、寓話的で幻想的、なのにこの上なく現実的な光景はそうそうない。
 ここは大昔に誰かが何かの目的で使用していた何らかの建造物。もうその実態を知る術はない。ただ、ぼろぼろに崩れた床の上に、固定据え付け型のイスやテーブルの跡が残り、ヒビの入ったコンクリートがカウンターやテラスを構成するその様をして、カフェであるか、バーであるか、レストランであるか、つまりそう言うものだったのだという予想が出来るだけ。
 私とメリーはこの場所をお気に入りの溜まり場にしていた。ここを「カフェテラス」と言い出したのはメリーで、私もそれを気に入っていた。
 こんな場所に人は来ない。昔はどうだったのかは知らないけれど、今はこんな「命と時間、死滅と再生が入り乱れた場所」と言うものを生理的に避けてしまうものらしい。それはすっかりと科学の要塞で管理された人間の感覚が至る皮肉な生命維持機制だったかもしれない。
 昔の言葉で言う「ヒッピー」と言うのが、私とメリーを指す周りの評価で、でも私達はそれで良かった。それ自体に快感を得ているのではない。そうしていることで私達は私達の時空を独占して使えるし、そもそも私やメリーが何故か備えてしまっている能力は、現代の常識や慣習に切れ目を入れるには十分すぎた。
 私達は子供が大人の目に隠れて火遊びをするのと同じ様な感覚で、私達の世界で私たちの能力を使い、私たちの世界に私達の花を添えていた。
 それは、私達の力が現代科学を凌駕している証、ではない。私達の能力を使ったところで、私達が学んでいる学問のほんの少しの解決にもつながってはいないのだから。だからつまり、根本が違うのだ。パラダイムを別にする二つ以上の世界が同時に重なっていて、そのどちらを知るかは各々個人の経験とほんの少しの小さなチャンスによってのみなのだろう。
 だなんて尤もらしい理由を付けて、私とメリーはいつも二人でいられる口実を求め、その実現方法としてこの場所に入り浸っているだけだった。
 メリーはその一角、カウンター席に向いたイスのような形をしたコンクリートの上にハンカチを敷いて腰を下ろしている。緑色のカーテンが緩やかに覆い隠すそこは日光の波打ち際となって、さらさら差し込む明かりがメリーと、ついでに私を照らしていた。
 食用木質に人工カカオマスと化学甘味料を混ぜたペーストを塗り、手で持つための隙間を残したところで凝固させた細長いお菓子を、ぽきぽきと食べながら何事かぼやいているメリー。肘を突いた手でそのお菓子を食べながら、雑誌を読んでいるのだ。
 彼女の読書スピードはハンパない。私が1ページ読み終えるかどうかと言うところで、いつも3ページは進んでいる。
 目でさらさらっと記事をなで、気になるところがあれば引き返す。黒目の動きはそんな様子を見せつけた後で、さくさくページめくり領域へと視線を運ぶ。視線を感知した雑誌はそれに応じてページを更新するのだが、私がその様を見ているに、本当に読んでいるのか疑わしい速度。
 それでもランダムサンプリングしたキーワードについて問うと、正しく「その雑誌の内容に則した」答えが返ってきて、私はぐうの音も出なくなる。確かに、読んでいるらしかった。
 目を見張る、というのにさえもう飽きた私は、鞄から手鏡とファンデ、リップを出して化粧を直す。夏の暑い盛りはすぐに崩れて、イヤだ。
 細長いお菓子を一本食べきったところで、彼女は次のそれを口に運ぶ手を止めた。手に持ったその先端で、記事の一つをつつくように指しながら、私の方を見た。

「自分にないものを相手に求めるって、なんかわがままだよね」

 指している記事を見ると、恋バナというか恋愛指南というか、それを思い切りミーハーに崩した記事だった。
 リップを塗り直していた私は、口を開けた間抜けな顔のままその方を見て固まってしまう。上下の唇を合わせてそれを整えている振りをしながら、返す言葉を選んでいた。なかなか言葉が出ない間に、グロスまでなじませてから出てきたのは何とも詰まらない言葉で。

「メリーもこういうの読むんだ?」
「蓮子がこういうの読まないからね」
「……私わがまま言ったかな」
「いいえ。私のわがまま」
「言ってることが逆なのだけど」

 メリーの言うことは時たま不可解だ。いや、時たまではなくしょっちゅうか。何となく真面目に答えるのを諦めている私がいて、それでもメリーの答えはいつでも先読み後出しじゃんけんみたいなもの。後になってから、やっと笑いのツボが理解できて、そのころにはすっかり笑えなくなっているボケと同じだった。
 彼女は雑誌の画面の端にあるパレットを指定して雑誌の画像情報に指で墨色を落とし「相手にないものを身につけて、恋愛偏差値に一工夫」と書かれている辺りを塗りつぶした。さらにその上から赤文字で「好きなら好きと言え」と書き込み、そこから矢印を引っ張って「セックス」という文字を付け足す。ご丁寧にハートまで書いてある。何を書いてるんだか。

「相手を知らず、問いを知らず、でもそれにこたえようとする、わがままだわ」
「求めてほしい?」
「めんどくさい。」
「だめじゃん」
「だめね、これじゃ」

 閉じるボタンを押下して棒状になった雑誌をぽきりと折るメリー。そのままお菓子の空箱と一緒にゴミ箱(と決めている一時集積所)へ放り投げナイスシュート。
 お菓子の最後の一本を食べて、時間か、と呟いた。学習端末をテーブルに載せて、抱え込むような姿勢でその上にぽすんと顎を落とす。

「蓮子、私のどこが好き?」
「急ね。何が急って、いきなり普通の言葉が出てくるところ」

 私は普通よ。あら初耳。
 そんなやりとりをして、伏した状態からふと上がったその顔と唇を捕まえる。のぞき込むみたいに顔に被りついて、そのままキス。

「全部に決まってるじゃない。ちがうな、全体、かな。メリーはメリーだもの。どことかどれとか、ないよ。」

 それは私がメリーに向けた言葉だったのに、メリーが私に投げかけて来た問(こえ)のように感じられた。
 それはマエリベリー・ハーンであるべきであって、それに付随するいかに大きな、もしくはいかに小さなその断片的情報であってもならないはずだった。
 勿論それは理想論でしかなく、現実的には部分/記号/断片ごとに一つかそれ以上複数のパラミタが用意されていて、受け手たる私がそれを受信するに際してそのパラミタへ加重値を算した結果の、その収支バランスによって決定されると言うことくらいはわかっている。
 だってメリーのおっぱい好きだもん。少し声低いのに少し気怠そうで甘ったるい喋り方するところとか、長くて細い指とか、引っ張ると結構伸びるほっぺたとか、キスするときに寄りすぎると引っかかりそうになる長いまつげとか、少し浮いたそばかすとか。
 でも、そういうのじゃない。
 私がメリーに問われてその答えに詰まるのは、私がメリーを好きだという結果につながる「ほしい」とは別枠に据えられた、全く別のパラミタを持った「ほしい」が存在するから。
 加重値に統一感はない。それがマエリベリー・ハーンの一部であるが故に好きである。それがためにマエリベリー・ハーンを好きになる。そう言うのとは全く関わり合いのない「ほしい」。
 それは羨望に近いのかもしれないが、私自身はそれをとても嫌いだったりもする。絶対に要らないと思うことも、「ほしい」を孕んでいた。

「蓮子が欲しい私って、どんな私?」
「メリーに、幻想なんて抱いてないよ。私のメリーはこんな素敵な人のはずよ、なんて夢見る子供じゃないわ。ひっくるめて、好きなんだもん、良いとこも、悪いとこも。ひっくるめた全体。」

 メリーには、私にはないものがびっしり詰まっている。それは確かだった。だからって、それを欲しいからと言う理由で好きになるのは違うと思うし、でももっと違うと思うのは、それが好きの理由にさえ結びつかない「ほしい」であること。
 「すき」と「ほしい」は別だった。
 私の右手の人差し指は、メリーの左膝を求めてる。メリーの髪を撫でると、私の胃がくくっと鳴く。まったく関係のないもの同士だし、メリーの膝が別段切って持って帰りたいほどに綺麗だと思って見ているわけでもない。綺麗だけど。それは理由ではなく作用のようだった。
 整理できない磁石の間にくっついた砂鉄みたいに、しっかりしていながら居住まいが悪い感覚を胸の奥に押し込もうとしながら、「自分へと」言葉を返す。
 だがメリーの口から帰ってきたのは意外な言葉だった。

「私は、違うかな」
「へっ?」
「私は、蓮子に塗りつぶされたいかも。好きに彩って欲しいかも。私の中の、蓮子が欲しいと思う全てを、盗み去って欲しいかも。ほしいと思われた通りに、ありたい」

 そう言うメリーの目はどことなく虚ろで、昼下がりのカフェテラスで惰眠を貪る学生のそれともまた違って。表面を荒く削りざらざらにしたトルコ石みたいな、深い色だけど輝かない瞳。
 メリーのこの目は、秘封クラブで活動しているときたまにみるものだった。だからって、どうなるというわけではないのだけど。変なことを口走るのはいつもだし、それが二人っきりの時にしか見れないというのも、今は同じだった。
 なんていうか、ただ、私は空恐ろしさを感じるのだ。メリーのこの目を見る度に、何か脆くも大切なものに、ぴしりぴしりとヒビが深まっていくような気がして。
 怖くなった私は話を茶化して逃げる。お化け屋敷で無理にはしゃぐ子供みたいに。

「さっきと言ってること、違わない?」
「違わないわよ。わがまま言いたいんじゃないの。蓮子に、わがままに振る舞って欲しいの」
「奇特ね」
「愛かな」
「愛かしら」
「違うなあ。欲しい、かなあ」
「くすっ、なによ、それ」
「セックスしようってこと」

 でも、メリーとしたいのは、本当だった。
 いつだってえっちしたい、なんて言うとひどくだらしない女みたいだけど、メリーとセックスしたいのは、やっぱり好きだから。傍にいたら可愛くて、可愛いから触れたくて、触れるには、やっぱり。
 やっぱり、やらしいかな。

「もう、これから講義なのよ?」
「サボっちゃおうよ。講義じゃ気持ちよくなれないよ?」
「何のためにここに来たのよ」
「メリーとふたりっきりになるため」
「……まあ、間違ってはいないわね」

 違うけどね。
 二人になるためじゃない。二色であることを認めるためじゃない。
 一つになるためだ。一色に。
 メリーが私に投げた問(こえ)。それは私の懊悩を見抜いてのことだったのではないのか。いや、そうに違いない。仮に全てが知れていないにしろ、私がメリーに対して愛欲でも支配欲でも物欲でもない何かに燃え上がりそうになっているその焦臭さくらいは、おそらく伝わってしまっている。察しのいい人だから。私のその感覚に対して、彼女もまた私同様、それをどう扱っていいのか見極めかねているに違いなかった。
 私は、マエリベリー・ハーンという存在を細切れにして、私はその中から欲しいものを取り出して自分のものにしたいのだ。「ほしい」のだ、メリーの中の何かが。
 メリーがさっき塗り潰した言葉を、私はメリーに実践されているのではないか。私にないもの、と言えば可愛らしくもあるが、しかしそれは飢えや渇きに近く、恋バナやら恋愛相談で見かけるそれとは比べ物にならないほど重苦しく、汚くて、輝きや気持ちよさとはほど遠い粘質だった。
 セックスしたいのは、一つになりたいのは、その一つのメソッドに過ぎない。勿論、その感覚とは別にメリーのことは大好きで、セックスへの欲求はそこにもつながってはいるのだが。

「やだ、強引」
「好き?」
「確かにセックスは嫌いじゃないけど」
「違うよ、私のこと」
「好きよ」

 違う。その「好き」じゃない。
 目を見て淀みなくそれを口にしてくれるメリー。「好き」の余韻を残した唇からその味を掬い取って嘗めるみたいに、私はメリーの唇を食む。彼女の気持ちには私自身も確信に近いものを持っているし、それに応える準備も万端ではある。でもそれじゃ満足できない焦げ付いた臭いが胸の中をもうもうと満たしていた。
 テーブルに突っ伏す姿勢のメリーに、後ろから覆い被さるみたいにして密着してうなじや耳の裏を嘗める。ぴくんと小さく跳ねるメリーの体をすくい上げて白いブラウスの下に手を潜らせると、彼女は私を受け入れるみたいに少し、体を浮かせた。
 そんな風に受け入れられたら、講義なんて出る気ゼロ。私はリップを塗り直した洗いたての唇で、もう一度メリーを求めた。

「メリーが、欲しいよ」
「染めてくれる?」
「メリーが望むなら。注ぎすぎた絵の具に、私さえ溺れるみたいに」
「愛欲?」
「性欲かな。恋愛っていう欲が嫌い。飾ってて。愛とか、恋とかさ、押しつけがましい。ほんとうなのは、相手が欲しいっていうだけ。それ以外は不定形だもの。」

 そういうと、私を見たまま気持ちよさそうに笑うメリー。らしい、らしい、だって。
 私は背中から被さったまま、シャツの下を這わせていた腕を、今度はブラの下へ。メリーの体温は上がってきていて、指で触れるたわわな乳房は、その柔らかさに埋める指に仄熱さを伝えてきている。
 はぁっ、息を吐きながら同時に体を弛緩させるメリー。私を受け入れる合図だと受け取った私は、胸をまさぐる指に緩急を付け、白く覗いている彼女のうなじに口付ける。キスなんかじゃない。唾液を垂らして舌でねぶる、それは愛撫。同じように、指先は堅くなり始めている乳輪にさしかかり、滑らかな肌と艶めかしいその境界を焦らすように行き来する。

「おっぱい、好きね」
「うん。メリーのおっぱい、大好き」

 攻めているのは私の筈なのに、彼女の声は煽るみたいで、私の声は掠れかけていた。
 メリーの首筋に垂らすつもりだった新しい唾液をごくりと飲み込んで、乾き強ばった喉を潤し解す。そのままかぶりつくくみたいにうなじへの舌唇での愛撫を続ける。嘗め尽くすように、彼女の首周りを這い回させる。口が動いて舌が撫でる度、彼女の背が時折ぴくっと跳ねる。その様子に私は興奮を覚えながら、いよいよ指を胸の先端へ。掌全体でこねるような動きを止めないまま指先でそれに触れると、そこは弾力をもって私を迎えてきた。

「んっ」

 円柱を保つ堅く凝った乳首、その両方の先端を人差し指の腹で回すように、時に押し込むように刺激すると、テーブルに倒れ込むような上半身から可愛い声が漏れる。

「め、りー」

 覆い被さって、前に回した胸だけでなく、私自身の胸を彼女の背中に擦り付け、ゆっくりと揺れるように彼女への愛撫を続けた。私が首筋を舐め、胸をこね、耳に舌を差し入れて体を揺する度、メリーの掠れた声が零れ出た。まるで蜂蜜を入れた容器を横にしたみたいに、テーブルには甘ったるい声と吐息が溢れ、流れ、滴っている。

「あ、っん」
「メリー、めりぃっ……」
「蓮子ぉ」

 体を密着させて互いを感じ合っていると、メリーの、そして恐らく私も、体が加熱していく。吐息も熱を帯び、声を漏らすのは彼女だけではなく私の方もそうで、メリーの胸を刺激して、それを得て淫らな声を上げる彼女の様子に、私の方が感じさせられていた。

「メリーの肌すべすべできもちい」
「もう」

 胸だけでなくて、おなか、おへそ、わき腹。口をうなじ、耳、そして後ろから無理にほっぺたに。そのどこをさわっても、どこに口づけても、メリーの体は甘くて、柔らかくて、いとおしい。そして、そのどこにさわっても、どこに口づけても、メリーの口から漏れる甘ったるい声は、私の頭の中を蜂蜜中毒に汚染してやまない。

「めりー、めりー」
「れんこ、ぁんっ!」

 耳に、少しだけ強く噛みつくと、メリーは一際高い声を上げた。痛みによってだけではない、しっとり色づいた言葉で、私の耳を感じさせてくる。息を荒くして、彼女の体をまさぐり続ける私。少し汗ばんできたその肌に、私の掌も、体中も汗を滲ませている。
 と、そこまでテーブルにしがみつくのに腐心していた手が、するりと下に消える。そしてそれはすぐに姿を現した。

「んふぁ、あっ!」
「れんこ、ばっかり」

 私に覆い被さられる姿勢で今まで好いようにされていたメリーの、反撃だった。その手は私の脚の付け根に潜り込んでいて、付け加えるなら、私の脚は彼女の体を貪る内に、いつの間にかそれをすんなり受け入れるように、大きく開かれていた。

「あっ、ん、んうぅうぅうっん!っは、め、めり、あ、あ、ゆ、ゆびぃっ」
「れん、こっ、いつまで、こんな姿勢で、お預けさせる、気ぃっ?」

 私のそこはすっかりぬかるみ易々とメリーの指を二本、受け入れていた。自分でもわかるくらいにその進入に歓喜して、強く、そして勝手に、締め付けてしまう。指が奥に入れば体中の神経にシロップを塗りたくられたみたいに甘くとろけ、抜かれれば名残惜しく涎を垂らす、私のソコ。

「するっ、すぐ、するぅっお預けなんてしないよう」
「こんなとこで、するの?」
「だって、メリーの家までがまんできないもん」

 講義のことは頭から抜け落ちていた。ただメリーと性欲を埋めあいたい。いや、私の性欲を、埋めてもらいたいだけか。

「みたして。みたしてみたして、そめあげて」

 譫言みたいな私の声に、メリーは私のあそこに入れた二本の指を、焦らすように蠢かす。もっと強い刺激、激しい挿入を望んでいる私はメリーの「おあずけ」に耐えられない。
 メリーの腕を捕まえて、まるでバイブを押し込むみたいに自分の股間に突き入れる。ごりっ、と無慈悲な刺激が下腹部に響き、そこからじんわりと快感が広がっていった。

「蓮子、まって、強くしてあげるから、あんまり乱暴は」

 私の焦りを宥めるみたいに、メリーの手は私を優しくとろかせる。快感を急いてきゅうきゅう締め付けてしまう私のそこをほぐして掘り進むみたいにゆっくり、じっくり。

「あ、んっ♥めり、ぃ」
「蓮子ってば、とろとろ♪」

 快感。肉欲に直結した、浅い快感。
 快感自体はとても強くって、体の深いところから溶鉱炉みたいにぐつぐつクるんだけど、私にはその肉欲で覆い隠してしまいたい、より深淵のからの欲望があった。

「メリーと、ひとつに、なりたい」
「ええ、なりましょう、蓮子」

 そう言って、私のぬかるみをもっと熱くもっと淫らに、同時に私の心をもっと冷たくもっと貪欲に、させるメリーの手。

「メリぃ、メリぃっ」
「蓮子、イいの?」

 イい。ううん、ヨくないっ!
 肉欲に火をつけられて、体に燃え移った炎が私を焼いて灰にしていく度、燃えずに残ってしまう禍々しい欲望がその姿をはっきりと露わそうとする。
 見てはいけない、欲求。でも、身に心に、こびりついて取れない!

「メリー、セックスってどうして、どうして」

 言いたいことがわからない。
 一つになりたい、一緒にいたい、融け合って何もかもが区別を失いメリーでも蓮子でもないものになってしまいたい、そう願うのは、私とメリーが一つでない、一緒にいられない、融け合うことのないメリーであり蓮子である別物であるからこそであって、その矛盾した欲求は、決して叶えられるべきではない。
 なのに、どうして。

「蓮子を、感じられる。気持ちいいから。蓮子は、違う?」

 そうじゃないのに。
 メリーの言うそうじゃないのに!
 私を外において、私をそうやって結界の外から眺めるのは、メリーが望むことなの!?
 メリーは私を遠ざけて、別物でありたいと境界を明確にしたいの?
 じゃあ私のこの欲望は、どうしてなの?
 メリーが私に、境界を越えさせようとしてるんじゃ、ないの?

「そう、もっと、もっとキモチヨく、して……!」

 メリーが座るイスの横にある、同じイスに浅く腰掛けて、股を開いてぐずぐずに煮崩れた淫裂をメリーへ向ける。メリーは淫蕩な笑みを浮かべて今度は私に覆い被さり、雌臭を放つそこを愛撫、もっと正確に言うなら掘削し始める。
 私は、その肉感に沈み染まり切ろうと声を出し、メリーの上目の瞳に恋をして、涎と淫らな言葉を垂れながしてそれを受け止める。
 メリーが与えてくる、硫酸みたいな快感を、もっと強く、もっと深く、もっと激しく、もっと痛く、求めてしまう。
 それだけが、それだけが、"忘れられる聖域"だった。






 ぱちりと、目が覚めてしまった。日は出ているが、おそらくまだ早朝だ。鳥の鳴き声が聞こえ、光に照らされる割にきんと冷えた空気が頬を叩いた。
 目が覚めて、意識が私に舞い降りてくる。感覚の一つ一つが頭、おなか、指先の一つまでするりと入り込んできてぴったりと私の体通りの形に満たされる。そうしてからその一つ一つと意識が結合して、私は体と意識を一つにした私になる。
 瞬き。脳味噌が、目玉を動かして、入ってくる情報を解析する。まだ、寝ているかな。歯車が軋みを上げてゆっくる回り始めるみたいに、頭の中も目を覚ます。
 なんだ、いつもの私の寝室じゃないか。

(たしか、紫とセックスしてて)

 紫がしてくれる行為一つ一つに、犬のように忠実に悦び、あるいは紫に媚びて、与えられる快感に溺れて、それ以外の全てを意識と記憶の中から押し出すみたいに貪った。
 魔理沙やアリスが見たら、きっと軽蔑される、そんなひどい有様の雌媚び。紫に対する思いは、恋心であると同時に、もっと異常な、依存症にも近い何かであるようだった。
 快感そのものは、大きく、しかしそれ以上に、紫に抱いてもらっている、構ってもらっている、紫が私の体に触れ、求め、私に言葉をかけ、その瞳に私が映っているという事実への安堵感が、私を中毒にしている。
 紫は悪くない。私が、おかしいのだ。
 こんなにも紫を求めて、狂ってしまいそうなほど求めて、それでも足りずに求めて、私の欲求は紫と恋仲で体を重ねお互いの気持ちに答え続ける関係だけでは、今は、足りなくなってしまっている。
 私が紫を欲しいと思う具不得苦。隣にいて欲しいのとも、セックスしたいだけとも、違っている。私が紫にセックスをせがむのは、セックスの快感、オーガズムの爆風、腰を振って紫を求める一心でいる酩酊、紫に媚びを売って感じてもらう信奉、紫が私にしてくれること全てへの歓喜によって、それ以外の得られぬ欲望を忘れるためにほかならなかった。

(紫、帰っちゃったかな)

 いつも紫は私を抱いたら、私が寝ている間にマヨヒガへ帰ってしまう。紫が隣で寝ていてくれる安心感を得られるのは、セックスの後、私が快感にふわふわと揺れている間だけで、朝起きたら隣には誰もいないのだ。
 寂しいと、口にしたことはない。むしろ、この忌むべき願望が叶わぬことに、寝ている間に涙しているかもしれないことを考えると、それを見られぬうちに帰ってもらっているのは、救いだった。
 うそ。ほんとは、見て、気付いて欲しい。
 セックスしてて、紫に「つらい?」と聞かれて、私は肯定してしまった。紫は、肉の交わりに焦れて言った言葉だと思っているだろう。私もそういう類の問いだとは、わかっていた。それでも、私はつらいと肯定してしまった。
 紫を、皮膚の外に感じ続け、その粘膜をも抜けられない別のモノであることが、つらくて、私はつい、そう答えてしまったのだ。
 横を見ると、紫の寝顔があった。

(――っ)

 それだけで、心臓が口から出てしまいそう。そうしてから指先まで満たされた意識がようやく気付いたのは、私の左手に紫の指がしっかり絡みついて、握ってくれていたことだった。
 嬉しい。
 ああ、もう、わたし、バカみたいに喜んでる。こんなことくらいで、嬉しくて嬉しくて、でも、つながった手に二人を分かつ境界を感じて、悲しくて、悲しくて、私は声をかみ殺して泣いてしまう。
 紫の寝顔は、すごく綺麗で、女神みたいなのに、無防備でどっか微笑ましい。少しだけ開いた口は三角形になっていて、私を愛してくれる、あるいは責めてくれる言葉を紡ぐ赤い唇が、朝の白い光を返して艶めかしい。長い睫には朝日の欠片が降ってきらきらしてる。
 左手を握ってもらったまま、私は、その唇にキスをした。起こすといけないから、本当に、軽く触れるだけ。握ってもらっている左手と、唇の先とに感覚を凝縮して、精一杯それを受け取る。
 おなかの下あたりがきゅんってなって、同時に、涙がまた、こぼれてしまった。

 れいむ?

 はっ、と聞こえた声に、私は顔を背けてしまう。
 起こさないように、してたつもりだったのに。後悔の念が湧上がる。寝てる間にキスなんて、甘えてるみたいなことしてるのを、知られたくなかった。

「おはよう」
「……おはよ」

 紫が体を起こす。手は繋いだままだ。

「何で、まだいるのよ」

 いつもはとっとと帰るくせに。
 私が問うても、紫は答えない。後頭部に、ちりちり紫の視線を感じる。一晩、一緒にいてくれて、手まで繋いだままでいてくれたのに、私はその手を離そうとした。が。

「霊夢」

 紫は手を離してくれなかった。

「離して」
「いやよ」

 手を引いても、しっかり絡んだ指が、私の手から離れない。それどころか、強く、握り返してきた。

「離して!」

 私が強く言うと、紫は、ゆっくりと指を解いていく。離れていく。ほら、ほら、私と紫は私と紫で、別々のもので、手を繋ぐとか、セックスするとか、そういうことじゃ繋がれないんだ。
 一つには、なれないんだ。

「霊夢、泣いてるの?」
「しらない」

 紫が、回り込んで私の顔を見ようとする。私は背けて逃げて、真っ赤になった目を見られないように。でも、そうすることで、私が泣いてることを紫は確信してしまう。

「霊夢、昨日から、なんだか様子が変だったから。ううん、昨日だけじゃない、最近ずっと」
「わかんない」
「だって。じゃあ、顔を上げて?泣いてないわよばーかって、笑って見せてよ?」

 できない。
 私は顔を伏せたまま、首を振った。
 やばい。声を上げて、泣き出してしまいそうだった。暴れかける横隔膜を制して、瞼を閉じてあふれる涙を堰止めて、堪える。

「霊夢、どうしたの」
「わかんないって言ってるでしょう!」

 声を荒げてしまった。

「わかん、ないのよ。紫にどうして欲しいのか、紫とどうなりたいのか、私にも、わかんない」
「大丈夫?」

 紫の言葉が、疑問から、心配へ、変化した。
 しまった。さっきから、後悔しっぱなしだ。紫にぶつけても仕方のない、子供みたいな想い。紫にはあまり見せたくないのに、いつもいつも、見せ付けてしまう。
 本当は見せたいの。心配して欲しいの。包み込んで、甘えさせて欲しいの。大丈夫だよっていって欲しくて、いつもみたいに憎たらしい方法で私の悩みを吹き飛ばして欲しいの。その後で、よしよしって、頭を撫でて抱いて欲しいの。
 でも、そんなの。そんなこと、いえるわけがない。言いたくない。見せたくない。紫に幻滅されてしまうだろうし、私自身も私を許せなくなる。

「紫が、欲しいの。……ほしいの」

 他に、伝えようがない。
 事実、私の願望はその一言に集約されていて、私の悲しみも同時にその一言に起因するのだから。
 私の不調を案ずる紫に、裏切るみたいに応えた。平気なはずがない。こんな不快感は他にはないのだから。焦点の合わないぼやけた像が、気持ち悪くて。もっと離れるか、もっとくっつくか、しなければいつまでも気持ちの悪いままだろう。だが離れるなんてできない。だから、私は。
 ほしい。
 でも言葉に直すと、やっぱり違う。
 だというのに、ほしいという以外に適当な言葉がなかった。
 胸の中に残る違和感を吐き出しきれないで、ただただ紫に抱き付いていると、宥めるみたいに落ち着いた声で紫が囁く。

「じゃあ、しましょうか」

 紫の申し出に対して、私は無言で目の前にある白い素肌に口付けて応える。さっきみたいに「するよ」と言う歩幅合わせはしない。最初から、恣のキス。それを受け止めた紫の指が、私の頭を撫でていた。

「ん、ぷぁ、ゆか、だめよ、今、起きたばっかりで、きたな」
「霊夢に汚いところなんて無いわ」

 それは紫の優しさだったのか、それともただの性癖なのか、私には計り知れない。
 でも、もはやそれもどうでもよかった。とにかく紫が「欲しかった」のだ。それが恋なのか、ただの偏執なのか、物欲なのか、それとももっと別の何かなのか。わからない。わからないけど、紫との同一化願望だけがその焦点を合わさせないままに際限なく膨れ上がっていく。
 欲しい、欲しい、欲しい!一つに、1+1でなくて、2でなくて、一つになりたい。
 容量が大きすぎる1は1でいられず分裂するだろう。私は、それを望んでいるんだろうか。ぐちゃぐちゃに溶け合って、あらゆる矛盾も整合も内に抱えてから、欲しい紫を集めて私にしたい。
 その感情を恋と言っていいのかわからないまま、浴びせているキスをやんで、紫の胸に顔を埋めた。

「えっちがしたいんじゃないの」
「そう?」

 私は、したいわ。なんて耳元でぞわりと囁く紫。股間の辺りに、硬いものが当たって、時折ぴくんと震えるのが伝わってくる。

「もう。あわてんぼ」
「エッチはしたくない?」
「ずるい」

 そうされたら抗えるはずがない。エッチが目的?そんな気がする。少なくともなんだか詩にでもなりそうな歯が浮く感情じゃない。でも、セックスするのが、本当に目的という気もしない。
 なんか、こう、木になっている果物を毟り取って自分のものにしたいような。独占欲とかそう言うのでもない。掠奪したい。紫の持っている、そうだ、紫の持っている私を。紫の持ってる私?
 でも、その方法なんてわからない。そもそも言葉になった途端意味が分からない。わからなくってわからないまま求めると、それって性欲にそっくり。
 今は、今は紫に抱かれて、快感に咽びたい。中に激しく射精され満たされる感覚を、欲しいに直結させると私は、やっぱりどうにもならなくなった。
 紫と、セックスしたい。忘れたい、他の事を。やっぱり、セックス依存症だろうか。
 私が紫の股間で硬くなり始めているものを触ろうとすると、しかし、するりと抜け出されてしまう。

「えっ」

 あれよあれよという間に、私は四つん這いの形で大地に縛り付けられてしまった。両手両足は地面から生える何か得体の知れないものに絡め取られて身動きが取れない。

「ちょっと、紫、悪趣味……」
「ええ、今日は特別、悪趣味な趣向を凝らそうと思うわ」
「そんなのいつもじゃない」
「じゃあそろそろそれが悪趣味にならないように、慣れて貰わなくちゃ」

 四つん這いになった私の目の前に、紫の股間が近づいて、見る見る肉幹が生え屹立した。いつぞやに喉の奥どころか胃の中まで貫いた紫の雄根は、しかし今は人並みのから少し大きいくらいに落ち着いている。
 それでも凶悪にえらの張った亀頭と筋の浮いた竿、何より目を引いたのは大量の吐精を想像させる、大きな鈴口。今は私の鼻先に衝き付けられて、甘いキスとやり取りで期待に緩んだそこから、じわりと先走りが垂れている。

「も、もうガマン汁たれてるの?」
「ええ。霊夢の言葉を借りるなら、セックスしたくて、疼いてるわ」

 私の眼前に性器を曝け出して、紫はうっとり声で返す。見上げるとその顔はすっかり淫蕩な美貌の妖怪のそれに変貌していて、だめ、その目を見たら、心を持っていかれる……見てしまった。

「目、向けないでっ」
「いやよ。霊夢のエッチなところ、見ていたいもの」

 別に、何かの術を使われているわけではない。使うこともできるのだろうけれど、ただ、紫に見られてると思うだけで、凄く、淫らになってしまう。つくづく、好き物なのだと痛感する。
 鼻の先で滴るえっち汁が、凄い匂いを漂わせ始めた。もう、体が覚えてしまっている。カウパーやザーメンや、本気マン汁、紫の唾液、果ては紫の汗や排泄物の匂いまで、ダイレクトに性感にアクセスしてくるように、エッチを繰り返しているうちに自然と調教されてしまった。だから。

「ふっ、ぅ、ん、すんっ、すんすんっ」
「霊夢ったら、犬みたいに鼻鳴らしちゃって」

 気がついたら無心の内にその匂いを貪っていた。鼻から脳みそへの伝線と、まんこから脳みそへの伝線が、結線して、その匂いがもろに淫裂を刺激する。紫のちんぽ臭が鼻腔を通り抜ける度に、微弱な電流が膣道を通り抜ける錯覚を感じ、私のメスはそれに仰々しく反応して雌穴を綻ばせ、じんわりと愛液を滲ませていた。

「だ、だって」
「私も期待しちゃってる。だからこんなにお漏らししてるんじゃない。どうして欲しいか、わかるわよね?」

 紫がペニスの先端をゆらゆらと目の前で揺らすと、私の視線はそれと糸で結び付けられてるみたいに追い続けた。鼻息が荒くなって、少しばかり開いていた口がいよいよ大きく広がって、舌を出して視線と一緒にそれを追いかけてしまう。
 ああ、本当に、私、雌犬になってる。紫とセックスしたくて、プライド捨てちゃってる。
 紫と二人でいるとき以外は、常に博麗の巫女としての自分を装い、不要にその仮面に縋って自己を維持しているけれど、紫の前では、そんなものは不要だった。私の巫女としての立場は彼女の前では全く底が知れたものであって、そもそもそれ自体彼女が設定したもので。
 私は紫にべた惚れしてるただの雌に堕ちる。でもそれは、元々私が望んだ姿であって、甘えられる紫というのは、こういう姿を見せられるという意味でもあって。

「はっ、はあっ、と、とどかないよぉっ」

 くすっ、紫が笑う。でもそれは蔑んだ目ではなくて、可愛らしいペットを見るような、優しく柔らかい眼差し。そういう風に見られることにさえ快感を感じて、私の胸はどんどんどきどきしていく。ううん、それを通り越して、ぞくぞく背筋が震えていた。
 舌を出して紫のペニスをねだる内、どろりと唾液が滴って、本当に浅ましい姿を晒してしまう。そう自覚した瞬間、陰唇もふわりと割れて、その隙間かの湿りがじっとりと濃くなった。太腿の内側から淫裂、尻にかけての肌が敏感な神経とバトンタッチして、そよそよと撫でる風さえも感じ取るほどに性器然としてしまう。私にペニスがあったら、きっともう、紫みたいに勃起が収まらず、屹立した先端から四つん這いに開かれた股間に覗く地面へ、ぽたぽたと汁を滴らせていることだろう。

「はい、あーん♪」
「ぁあむっ!っちゅ、んぶ、ぶぶっぷはぁっ!ん、れろ、っちゅ、ちゅっ」

 待ち望んでいた肉棒が射程圏内に入ってきたので、貪りついた。吸えばそのまま口の中へと入り込んできて、喉の入り口くらいまで。少し首を引いて最奥への刺激を避けていると、紫は少しだけ腰を引いてくれた。そのまま、首と唇と舌を使ってフェラチオを始める。

「んっ、ふ、いい、わぁ、霊夢、フェラうまくなったわよ、ねっ」
「んるぉ、っちゅ、だれか、が、んっぷちゅ、誰かが、ぁむっ、ぶっ、ちゅぶっ、嫌がるのを無視して、ちゅっ、ちゅるっ、はふ、教え込んだから、でしょぉっ、かぷっ、ぶちゅ、ちゅるるっ」

 紫のペニスが口の中でびくびく震えてる。先っちょから苦渋いとろみが溢れてきて、その風味が喉、鼻腔、それを通り抜けて頭の中いっぱいに広がった。
 舌で亀頭を嘗め上げて、カリの出っ張りの縁をなぞる。と紫の顔はどんどんだらしなくなっていく。唾液を溜込んで、頬をすぼめてバキュームすると、凛とした大妖怪の表情なんて面影もない。柔らかい刺激の中に、たまに顎の上側に先端を擦り付けるような少し強い刺激を加えてやると、半開きになった口から声なのか呻きなのかわからない音が漏れて、少し遅れて涎が垂れた。

「あはっ、ん♥霊夢、霊夢れいむぅっ♪気持ちいいわ、れいむのクチまんこ、さいこうっ♥調教した甲斐があったのぉっ♥調教済みの私専用雌に、調教した本人が、もうメロメロっ♥好物のちんぽ与えて、おねだりを拒否できないのっ♪わたし、お預けできないダメ主人っ♥」

 紫を攻めている。……というわけでもなかった。
 紫に奥までちんぽ挿入されたのどまんこは、ひと突き毎に私を絶頂の手前まで打ち上げる。粘膜にこびりつく雄汁とペニス臭は気化媚薬になって脳髄を快楽機関に作り替えていた。口マンコと喉膣は紫の雌肉棒を擦り付けられるだけでびりびりとアクメ誘導信号を発していて、私はフェラチオをするだけでもイケちゃう淫乱雌巫女にすっかりと堕していた。

「んふぉっ、ふぉごっぉぉおぉおおっ、ん♥んぶっ♪んっふぅぅん♥ぶちゅ、ぴんぽ、ゆきゃぃのひんぽぉぉおっ♪」
(すごい、すごいよぉっ♥ちんぽの匂いで、味で、頭クラクラするっ♥マンコにじんじん響いちゃう♪ずるっずるって、クチ粘膜擦られたら、リアル膣まで響いてアクメくるっ、マンコイジってないのに、勝手にイきマンコに進化しちゃうよおっ♥おぼえてるっ、体が覚えてるイキ感覚を、呼び覚まされちゃうっ♥)

 紫が快楽に呻いて少し多めのカウパーを吹いちゃうなら、私は同じ頻度で口アクメに酔いしれて、触れてもいない股間からだらだらとマン汁を垂らして、そこは直接刺激への期待に強烈な快感飢餓状態にうち震えていた。
 オーガズムを繰り返すも条件付けで無理やり結線された触覚と性感のリンクは、しかし直接刺激に比べればわずかに物足りない。
 いつの間にか私の頭をがっちりと押さえてイラマチオに興じている紫から、私は逃れることができず、つまり口マンコのアクメ地獄からも、紫が満足するまで抜け出すことができない。私は何度も何度もイっているのに、紫はまだ一度も達していない。不公平。いや、私ばっかり気持ちよくなって、満足だけど、少しだけ申し訳なくて。でもだからってこの悦楽を手放す気なんてさらさらなかった。快感を貪ったまま、紫にもそれを与えるべくがんばる。
 喉の奥まで侵入してきた亀頭を、きゅっと飲み込むように締め付けて、唇の肉を被せた歯でその締め付けから逃げようとする肉棒を引っ掛けて刺激する。舌は出るときも入るときも紫のそれをねちっこく送り迎えしながら、唾液のローションを丹念にメスチンポ粘膜に刷り込んでいく。

「っは、んっ♪お、ほぉおおぉっ♥れいむ、霊夢くちまんこ上手すぎっ♪夢中っ、れいむの献身的奴隷口マンコに私夢中なのぉっ♥いけない、いけないわ、こんなザマでは、イってしまうっ♥いけない、ううん、いけなくないっ、いけなくなんかない、いっちゃう、イっちゃうわぁぁあっ♥ねばねばの本気汁唾液が絡むのっ♥キスのときはさらさらなのに、くちまんこしたらどろっどろの粘っこい唾液出して、れいむのおクチってば本気でクチまんこぉっ♪締まりもいいし深くまでぶち込めるしっ♥最高、さいこうよぉっ♥」
「んっ♥んぶっ、んご、ぉお゛っ♥んぼっ、ごぼぉっ、じゅっ♥ぶばっ♪」
(びくびくって♥紫のチンポ、喉の奥でびくびくっ♥寸前ケイレンきてるっ♥限界ちんぽガマン状態になってるぅんっ♥しゅごぉっ、しゅごおぃひいっ♥喉の奥でカウパー、だっくだくっ♥雄ガマン汁だばだば凄い量なのっ♥喉奥だから抗えないっ♥強制溜飲しちゃうっ♥)

 体が、精液を欲して沸き立っている。紫の生臭い、濃厚でゼリーみたいにぷるっぷるで膣道に絡みつくザーメンを、体のどこにでもいいから触れたいって、欲しがりモードになってる。
 早く紫に射精して欲しい一身で口と喉を使う。ピストンは紫がコントロールしてるけど、イキかけでそれを緩めるようなら私が動いてそれを許さない。紫にだって、私みたいに脳内エロ一色色キチガイになって欲しい。

「んがりっ、っぶっ♥らひへ、んっぶっじゅっ♥らーへんどっばどびゃわらひにらしへえぇぇえええっ♥」
「だ、だぁめ……今日は、悪趣味なプレイするって、っくふ、ゆったで、しょおっ」」

 紫はずるりと私の喉の奥からペニスを抜き去って私から離れた。

「あ、ぁぁ、ぁ……」

 舌を出してそれを追いかけるけど届かない。鈴口がぱっくり開いてひくひくしてる。えらに粘液が絡みついて、えげつなくエロいおちんちんが、ああ、離れていっちゃった。

「はーっ、はーっ……、ゆかり、ずるいっ、わたしばっかりイかへて、じゅゆいっ♪紫もザーメン出して、ぶゅーびゅー射精っ、チンポアクメさせてあげるのおっ♪」

 あの紫の顔。イきたくてイきたくて堪らないって我慢顔じゃない。それとも私のフェラじゃダメだった……?
 紫はそんなことないよと頭を梳いてそのまま頬を撫でて、親指を私の口へ。私はそれを美味しい飴みたいに受け入れて、舌と唇で舐める。紫も親指を奥へと差し込んで、頬や歯茎を触って口の中を優しく犯した。

「霊夢」

 紫が小さく囁いて、私の涎でドロドロになった右手の掌を左手の指先で、つうっと一筋、中指の先から首にかけて、一本線を引くようになぞる。

「私、これからオナニーするわ。霊夢はそこで見ていてね」
「ええっ?」

 な、なんでっ?
 お預けのつもり?
 紫のことイかせてあげたいのに、ここでオナニーなんて……。
 紫をイかせたいなんて恩着せがましいことを考えているけど、その本心は、早くおまんこして欲しいってところだった。疼きまくってガマン汁で濡れ濡れになってるアソコに、一発貰えるだけで多分昇天できちゃう。欲しい、欲しいよう。
 でも紫は四つん這いになった私の尻肉を掴むどころか、私の目の前で肉棒を掴もうとしている。そうじゃない、そうじゃないのにぃっ!
 紫はそこにぺたりと腰を落として、大きく股を開く。中心には勃起したまま湯気でも上げそうなほどに熱気と水気、そして強烈な臭気に包まれた、男根。
 挑発するような目で、紫は私を見て小さく舌なめずりをする。ゆっくりと右手を、その淫肉棒に被せて……

「!?」

 紫が右手をペニスに触れた途端、私のアソコにピリッと刺激が走った。

(え、今の、何……?また、何か変な……?)

 紫の「悪趣味な」という言葉を思い出して、私は思わず身震いした。あの手は、きっと。身震いは悪趣味さや不気味さに対してではなく、期待の余り。
 いつも紫がしてくれるめちゃくちゃなセックスは、私の雌を深く抉って、私の体にそれを刻み込む。人間同士じゃ到底できない荒唐無稽な快楽を、体に脳に心に焼き付けて、私はそれから逃れる術なんて知らない。逃れたいと思わない。
 これを、「好き」と言っていいのかわからないけど。
 紫が自身のペニスをを握ってゆっくりと手を上下すると、私の膣壁はまさに擦り上げられる肉感を得た。

「ゆか、りっ、こ、れって……」

 待ち望んでいた感覚。でも少しだけ違うそれに、私は戸惑いと歓喜の入り混じった声をあげてしまう。

「掌の触覚と、霊夢のナカの触覚、つないでみたの。どうかしら」
 
 答えを聞くまもなく、紫は自分のペニスを容赦なく扱き立てた。既に濡れに濡れていた肉棒は、上下に擦られるたびにぬめりを広げて、カリや裏筋の凹凸に空気が混じっては粘り気のあるいやらしい音を立てて泡立った。紫自身既に絶頂への期待に体が備えていたせいもあってか、先走りの量は凄まじく、ペニスの根元へペニスをコッキングした瞬間、それはまさに汁弾のように飛び散っては新しい淫滑を与えていった。
 そしてその肉棒を猛スピードで扱き続ける掌の感触は、私の膣壁に直結していて、つまり。

「んほ、ほぉおおぉぉおおんっ♥きた、きたのぉおっ♪紫のちんぽ、おまんこにキタぁあっ♥おっきい、ゆかりの、すごくおっきっ♪それにピストンすごすぎるよぉおっ♪擦り切れちゃう、おまんこのナカ、擦り切れちゃうよぉおおっ♥っはひ、ひぃぃいん♥せっくしゅ、ゆかりと遠隔せっくしゅぅ♥おちんぽ目の前にあるのに、膣壁紫の手にわーぷしひゃっへ、お、お゛っほぉおおっ?めひゃくひゃあぁっ♪そんなちんこ挿入ありえなひっ♥ピストンっ♪ねじりぇっ♥あへぁあぁあっん♥おまんこ締め付け具合まで、紫に操作されひゃっへるぅぅううっん♥」

 紫が手コキをするたびに、私の膣内に甘い摩擦感が生まれる。
 紫が掌にカリ首の感覚を押し付けるたびに、私の膣内に高温の性感が刷り込まれる。

「み、みて、霊夢、快感共有オナニーみてぇっ♥んっふ、ふぅうっ♥すっごいの、腰振るより、激しくピストンできちゃうのぉっ♥締め付けも、ぜんぶ、私しだいっ♪ほら、ほらぁっ♪こんなにまんこ食いしばっちゃって、霊夢ったら、インランっ♥」
「ちっ、ちがぁっ♥それ、それは、ゆかぃが、ゆかりがぎゅってシコってるからへ、んほ、っほぉおおぉおっ♥はやすぎ、きつすぎ、いっ♥かってに、勝手にありえない締め付けっ♥まんこ超えぐりぇぇへえっ♪食いしばりマンコきつきつ過ぎて、紫のちんぽの形、膣でわかっちゃう♪ごりごりっ♥まんこゴリゴリされひぇるのぉおっ♪カリの高いとこ、限界締め付けっつ♥摩擦つよすぎへ、スグいっきゅ、いっひゃぅうぅうん♥」
「はあっ、はぁあっ♥ガチ締めもがばがばも自由自在おまんこよぉっ♥霊夢、れいむのエロマンコ直結手コキさいこうなのぉっ♪はあっ、はぁああっん♥手チンすればするほど霊夢がアヘるって素敵、すてきぃっ♥センズリで霊夢犯しちゃってるのぉっ♥はあっ、はあぁあんっ♥チンずり、思いっきりチンずりぃっ♥」

 紫の手の動きはヒートアップの一途を辿り、ぶちゅぶちゅと淫らな音を立てて淫液をまき散らしている。その手と感覚結合された私のアソコは、全くそれに触れていないにも拘わらず自分でするときよりも激しく愛液を垂らし、雌媚肉はぷっくりと充血して快感を貪る猥花を咲かせていた。手足を拘束され、理性を削り取る快感を与えられながらも自分で達することの出来ないもどかしさに、私はいつしか腰を必死にくねらせ、紫の見えないペニスを求めて下品なダンスを踊っていた。

「ゆかぃ、ゆかりぃぃん♥はげし、手コキせっくすはげししゅぎゆぅぅううっ♥おっほ、んほぉおおおっ♪見えないちんぽが、ぴっちり締まった状態の濡れまんこをピストンっ、ぴしゅとんはげしぃのおっ♥」
「きもちいい?気に入ってくれたぁ?非接触式セックス、気に入ってくれたかしらぁ?すごいわ、ただのオナニーと全然違うのぉっ♥目の前で霊夢がよだれ垂らしてアヘってるし、私がこうやってっ」
「んぎぃひいいいぃいっ♥」
「奥の奥まで抉ったり、こんなふうに」
「ぉ、ぉおぉっ……んっほぉぁぁ……♥」
「ねちっこくゆっくりこね回したり」
「んぉっほぉおおおぉおおおお♥?おっき、おきしゅぎぃいひいいいいっ♥」
「自分のちんぽ握りしめるくらい強くしたら」
「いぢわるぅっ♥イってるのに攻め攻めいぢわりゅぅぅっ♥指一本触れてないまんこが、かってに、かっへにおまんこエア締め付けっ♥ずりゅい、ずりゅいぃいっ、まんこ食いしばっても何もなくって、締まるも緩むも紫次第にゃんへ、反則焦らしと反則不意打ちっ♥」

 入り口は溶け、中は閉まり、奥は再び受け入れ態勢。完全に性服された淫雌に堕した私の、その患部がセックス依存症の症状を悪化させていく。紫を求める本来の願望が巨大に膨れ上がっていくに従い、それを覆い隠すためにもっともっと巨大なセックスの快感がなければならない。
 そうでなければ、気が狂ってしまう。いや、もう狂っているのかもしれない。

「もっと、もっと紫の手コキせっくすっ、もっとしてっ♥こんなのしゅごしゅぎっ♥こんな高速ピストンっ、きもひよっひゅぎりゅぅっ♥イっ、イってるとこに♥もっとイき重ね♥さいこうなのぉっ♥おまんこっ、おまんこ完全にっ♥完全に陥落ぅっ♥紫のおちんぽ欲しいって、マン汁吹いてきゅうきゅうくるっちゃってるよぉっ♥あっ、だめ、緩めちゃっ緩めちゃダメぇっ♥もっと、もっとほしいのにっ♥本物おまんこは締め付けまくりなのに、ガバガバでぜんぜんユルい感覚っ♥紫っ、ゆかりぃ、いじわるしないでぇっ、手コキぎゅうぅうって、手コキちんぽもっとギュってしめてぇっ♥」
「だぁ、め、淫乱霊夢には、堪え性を、おぼえてもらわ、ないと」
「やぁだ、やだぁっ♥おまんこ、おまんこさみしぃっ、つらいのぉっ♥紫のチンこ感覚欲しくて、欲しくて、ほ、ほら、ほらぁっ!指で開いても、奥が閉まってうねってるのぉっ、見て、紫、私の欲しがりになってるエロ穴、ちゃんとみてぇっ!」
「ほんとう、ねっ♥いつも子宮口までぽっかり見えてるのに、今日はすっごく締まってる♥いやらしいお汁、膣圧だけでとろとろ押し出されてすっごいわ♥」
「ゆかっ、ぃ、ゆかりぃっ♥もう、わたしもう、もう、欲しいのっ、手コキ遠隔セックスすっごいけど、おなかの奥が、奥が、紫を欲しいって、きゅうきゅうないてるのっ♥満たして欲しいって、紫の精液で、たぷたぷぷっくりおなかにして欲しいって、雌豚妊娠欲求が、紫のそのキンタマに詰まったどろどろ子種汁欲しいってゆってる♥ホンモノちんぽで奥までごりってされて、くぱぁした子宮口ホジって、その奥にタネ付けされて妊娠アクメしたいの、したいのぉっ♥♥♥」
「もうっ、もうっ♥霊夢ったらエロ過ぎ、可愛すぎよぉっ♥そんな風に雌豚白状とタネ付けおねだりされたら、センズリコキまくってる勃起チンポが、リアル肉壷に入りたがっていっそう膨れてしまうわっ♥お尻の穴とおまんこの穴の間辺りがきゅぅってなって、タマ袋の中がククって上がって射精に備えてるのぉっ♥♥ダメっ、だめぇっ♥ワガママおちんぽが、霊夢の膣内に入りたがってるっ♥今日はリアルおまんこはおあずけっていいきかせてたのに、このっ、この、だだっこおちんぽが、雌豚霊夢を孕ませたいって、キンタマが精液生産過剰キンタマが、霊夢の子袋にだぶだぶ大量射精したいって、臨戦態勢完了しちゃったのぉっ♥霊夢がっ♥霊夢がエロいからぁ♥霊夢が悪いんだから、ぜんぶっ、私がフル勃起に収まらなくって、亀頭破裂しちゃいそうにぷっくりして、おへそに当たりそうなくらいエグく反り返って、カリ首広がって牝ヒダ引っ掻き準備OKになっちゃったのはぁ♥霊夢が、霊夢がエロ可愛いからなんだからぁっ♥♥♥」
「挿入れてっ♥紫のバキバキ勃起ちんぽ、挿入れ……んおぉおっほおおおおおおおおおおおん♥♥♥♥♥♥♥♥キ、きた、きひゃぁああっ♥♥♥♥イク、イクぅっ♥挿入喰らっただけで、アクメっ♥♥♥♥オお゛お゛お゛お゛ぁぁぉおぉおおっ♥♥♥しきゅ、こ、ホジっ♥♥♥出産経験ないのに、あい、ちゃうぅっ♥♥♥紫の長マラがぁ、子宮口までレイプ中っ♥♥♥私のメスが、陥落寸前っ♥完全征服目前なのっ♥♥♥子宮口ほじられて、空いたアナからキンタマに詰まったこってりザーメン注がれちゃったら♥っ♥~~~っ♥そ、想像しただけで、わらひ、まひゃ、イっひゃっら♥♥♥んっひ、ぐひぃいいいいぃっ♥アクメ膣をぉっ♥まだ容赦なくチンコキっ♥ピストン始まったぁっ♥肉ポールで私の媚肉をボーリング検査っ♥♥♥やぁん♥やぁんやぁん♥♥♥そんな検査しなくっても、私の牝アナはぁっ♥紫に見られただけですぐ発情しちゃって♥紫にチンポ入れられたらいつでも強制排卵しちゃうの、しってるでしょぉっ♥そのたびに"まだそのときじゃないわ"って受精卵を潰しちゃうんじゃない♥♥もっと恋人セックスしたいからって、私がまだ少女だから犯し放題だからってぇ、ただの妊娠欲求不満少女にして、おチンポ様の奴隷にしたの、紫じゃないぃっ♥検査なんて不要っ♥いつでも準備OKなんだからぁぁっ♥♥っほおっごほぉおおっ♥♥はげ、し、おなかの下ンとこ、ぼこぉって♥紫のでかちんぽ丸呑みしちゃう食いしん坊まんこから入った孕ませ棒が、ボルチオにボーリング検査するたび、おなかボコォしてるぅ♥摩擦しゅごいっ♥衝撃がっ♥紫の性欲(あい)が、おなかの中に、ひびぃてるのぉおっ♥♥っく、またイクぅ♥♥紫のザーメン欲しすぎて、イキ堪えできないっ♥♥一突き一アクメっ♥ちょうだいっ♥ザーメンいっぱい、中にちょうだぃいいぃいっ♥」
「もうっ♥んもうっ♥霊夢ってば受精口上エロすぎよっ♥変態っ♥まるでド変態の牝豚っ♥そんなに下品な言葉使いまくって、分かってるわよっ♥おちんぽの感覚から伝わってきてるんだから、霊夢が今バルーンになってること♥、ソコまでして妊娠汁を奥にほしいのっ?♥子宮口降りて、ザーメン中にたっぷりためる体勢になっちゃって♥可愛いっ、霊夢かわいいっ♥♥いいわ、いいわよぉっ♥生産過剰精虫、霊夢のバルーン膣とその奥でぷっくり口あけちゃってる子袋にたっぷたぷ注いであげる♥♥イクわよっ♥霊夢、ザーメンいくわよっ♥私の精液は受精率100%なんだからっ♥もう何度も卵レイプでアクメしてるから分かるわよね?イク……イクわっ♥霊夢、連続ボルチオ絶頂中のバルーンおまんこに、受精率100%の牝レイプ用のオス汁をぶち込んであげるから、イクのよ?いっしょ、に、イクのよぉっ♥♥♥」
「はひっ♥ばかぁっ♥なに、が、いっひょにイケよぉっ♥もう、いきまくひっれ♥♥♥んんっ♥おおぉおっ♥♥イき続けひぇ♥♥あたまぱかになひゃうょおっ♥♥はやく、はやきゅ♥♥♥はやきゅじゃーめんもらへないと、飢え死にっ♥ザーメンなくてうえじにしちゃうんらからぁっ♥♥はやく、はやくはやくはやくぅぅぅうううっ♥♥」
「っ♥っっっっっっ♥♥いいわ、だしてあげりゅ、豚霊夢にトドメのザー汁いっぱいっ♥でっ、っるっぅうううううううぅぅううっ♥♥♥びゅるびゅるザーメンが射精管駆け抜けて、ゲル精子がチンポを中から刺激っ♥射精促進キちゃうぅっ♥♥外側は霊夢のおまんこコキ、内側からザーメン圧のセルフコキで、射精♥射精とまらないぃっ♥♥♥腰だけかくかく振りまくるエロダンスしか出来ない、私今射精マシーンっ♥妊娠牝豚霊夢のスキマにザーメン送ることしか考えられない、ちんぽバカになってるっ♥♥♥」
「ほっひ♥んっひぃいいっ♥♥♥ザーメンっ♥熱々出したてザーメンっ、キタぁっ♥♥♥しゅごぉおっ♥♥♥膣粘膜に、シミるのぉっ♥♥バルーン膣がザーメンごくごくっ♥飲み込んでっ♥子宮の中に送……っあ♥子宮口に、紫のデカマラっ♥鈴口と子宮口が、キッス、キッスゥ♥射精中の鈴口キッスは、キケンっ♥それはキケンなのぉっ♥ザーメン直飲み子宮の奥壁、悦び過ぎてあっつくなって、とろけちゃうんんっ♥♥ああっ♥ん♥ザーメンこぽこぽ直接注入で、強制排卵されたスクランブル卵子が、いきなり精虫から集中レイプ中♥♥♥抗えないっ♥受精を免れない、強力徹甲精子っ♥受精、受精したぁっ♥今っ♥弾着、今なのっ♥ほぉおっんほぉおおっ♥♥♥♥」







 メリーが私を無意識のうちに拒絶しているのは、わかっていた。それが彼女の能力の災禍であることもわかっているつもりだった。
 私はメリーと、限りなく近い「二人」でいようと彼女のそばに居続けた、たまには喧嘩もして少し距離がほんの少し離れることはあっても、繋いだ手は離さなかったし、二人の間に生じたノイズも、殊更努めて除染しているつもりだった。

「メリーが、ほし、い」

 だというのに。
 口から出たその音色に、私は自分のことにも拘らず驚いてしまった。それは死人の口から音が漏れるみたいな、生気のない声。
 冒された。
 私の脳はそう判断を下していた。これは私の意志ではない。こんな、禍々しい恋心があるか。
 肉の一切れ、血の一滴まで。髪の毛の一本、目玉の一つさえ。二本の腕の二本とも、脚は一本でよかったが、うなじで蠢く骨をそこから抜き去って一本丸侭飲み込みたい。私の動脈と彼女の静脈をつないで、神経を半田付けしたい。唇同士を縫い合わせて舌と舌をボルトとナットでがっちりと止めるの。繋いだ手は二度と離さないで、脳みそ同士をハードワイヤードして。意識も精神も、正規化なんかしないでただ馬鹿みたいに結合する。百科事典よ。表紙は私で彼女が裏表紙。ページをめくるたびに私メリーメリー私私私メリー私メリーメリー私私、私、私わたし、わた
 私何を考えて……?
 冒された、これは、冒されたんだ。メリーの能力に、私が引きずられてる。メリーの能力は境界をひずませている。
 それを操作するほどに成長していないメリーの能力。境界を観測し認識する能力は、彼女を彼女として私から彼女を区別し線引きして分離し拒絶する、名前、物質、認識、空間、自我、シリアル、時間軸を、そのように扱うための呪いだ。
 いや、それが正しい!
 だのにその整合、条理、矛盾なき両立が、私には恐ろしく寂寥で惜別、餓えや渇きに近いものだった。
 メリー。私はあなたの力に染め上げられて、メリーの外郭を破壊する外部デバイスになり、その末一つになるでしょう。
 あなたに、おそらくその自覚は、メリー、ないでしょう。
 メリー。私がメリーを犯し、その越境を強いるイレギュラー、私がこそその呪縛を解き放ち、禁断の欲望の蓋を開け放つ災厄のように思っているでしょう。
 メリー。でもそれは違う。私は、メリーの境界に関わる能力群の成長・進化あるいは変化・変容の過程で生じる歪み、いわゆる成長痛であるか、反抗期の煽りを受けて、その深淵の欲望を権現し背負ってしまった。
 メリー。あなたは私の空間に係る能力を、さらに我がものとしてから知るでしょう。あなたの能力はそして完全なものとなる。
 メリー。あなたはその能力と、私を"そうさせた"真実を自覚した後、何をするかしら。その完全な能力を使って、私をあなたから分離させようとする?私切り離すためのクリーンルーム、試行錯誤と反復を永遠に繰り返すための無間回廊を作り上げるかもしれない。

 メリーが私を恐れて(もとめて)私を見ている。
 今、私とメリーは真の意味で境界を失い二つの別物から一つの何かへ補完されようとしている。
 もう、頭蓋以外は一つになっていた。

(めりー)

 もうじき意味を失うだろうその言葉を、私はメリーを、そのいとおしい人の名前を優しく、大切に、呼んだ。

(そんな、めで、みないで)

 メリーの気持ちが流れ込んでくる。
 もう、私は、メリー(私)の欲望を、受け止める。あなたがそうしたいなら、私を使てその欲望の通りにするがいい。
 同一化欲求も、それを拒否する理性も、私のものではなった。いや私のものだった。二人のものであって、それはひとつの願望だった。
 もはや、私が望んだものだったのか、彼女が望んだものだったのか、それを踏み越える境界操作がそこに介在したのかしなかったのか、二つに認識されていた空間と時間をひとつに統合する意思が介在したのかしなかったのか、分からない。どうでもいい。

 yuukkarrrreeennmmiiiio

 ばらばらに砕かれた二人の欠片が、絡み合っている。
 ばらばらに砕かれた二人の欠片が、別のものを呼び出している。ひとつになれない許容量超過が、別のものへの編成を「私」へ強いていた。私と私の相対性は崩れ、崩壊と再構成が始まる。
 私達はきっと、ばらばらになった記号元素が再びゆっくり引力と静電気によって引き合ったときに別のものになっているだろう。
 私達の見た夢「幻想狂(ヒプノロピ)」。何もかもが、めちゃくちゃだった。求めたことも、出会ったことも、惹かれあったことも、こうしてひとつになったことも。現実世界と、どこか、そうあの日見たどこか別の世界にあるもっと違う何かに狂わされて、魅入られて。私達二人の能力は、最初からこれを宿命付けられているようでもあった。
 私達の恋は、記号の崩壊として幕を下ろしたのだった。








 思い出した。
 私はそれを知っていたのだ。昔々から、私が博麗のひとつとして生を受けたときから、脳髄の奥に封印された記憶として構築されない分断された神経回路の配列として、それが備え付けられていた、いや、痕跡として残されてしまっていたのだ。私はそれを記憶として結合して情報を認識してしまった。
 欠落している。私は私であるためには欠落しており、私が他の私と結合するために必要なアロステリズムを受けてあるべき受容器へ収まろうとしているのを、しかしそれは連綿と続く博麗の歴史の中で失敗の連鎖であったことを知ってしまった。
 世界を描く二重螺旋、世界を彩る二羽の蝶は、左右非対称の羽で苦しみもがき歪なはばたき飛行を続けながら今に至るのだ。
 その阻害を行っているのは、私と紫がいつまでも「二人」であることを強いているのは、他でもない紫だった。私が紫を求めひとつになりたいと思う願望が、私にのみ備わり彼女のほうから行使されないこと、その不平等、私が紫を思うように実は紫は私を思っていないのではないかという疑惑(それは恐怖にさえ近い)が、胸の中を渦巻いた。
 これは思い出さなくてもよい記録であったのだろう。
 私は紫との距離感、博麗霊夢と八雲紫の現在の安定した相対性心理を破壊しようとする願望、この記憶の同定がそれを破壊する刑期であることに間違いはなく、私は、私が紫を望むことを、紫自身に否定されているということに対して、失望と憤怒と欲情と疑心と憧憬をもって対峙しなければならなくなった。
 紫は、目の前にいる。
 パンドラの箱を開けてその中身をのぞいてしまった私を罰そうというのか。彼女の方から私に仕掛けてくることは、初めてだった。

そやついや
のえまずく

やがごもも
えきめやた

がつにえつ

きく、が。
をる、き。

 紫が印を切って結界をなす呪言を唱える。

「幻想郷を外の世界から切り取る博麗大結界。それは巨大で強力な特別製の八重結界。私があなたを、あなたが私を、この世界を、守るための八重垣なのよ」
「守るですって?嘘よ。その結界は、あなたと私を区切る壁になっている。紫の作った結界は、私と紫の妨げになっているわ!」
「私はあなたと混ざり合うために、この狭い世界に逃げ込んだ。そうでしょう?私はこの世界を守るために存在している。幻想郷は、あなたと、私が、やり直すための巨大な実験場。繰り返す揺籃地。」
「だったら……!」
「でも、それは叶わない。もう、ばらばらになった私達は、私達の欠片は、二度と元の姿に戻ることはない。何度も試したわ。博麗の巫女を喰らい、何度も私の中から私ではないあなたを綺麗に分離しようとした。閻魔に掛け合って理を歪めてまで。でも私をなす私も、あなたをなすあなたも、その逆も、もう、何度やっても正しく元通りに結合できないの。この世界は静電気と引力が満ちてる。」
「諦めた?」
「諦め。そう、それが近いのかもしれないわ。この世界は、私が作った分娩室。それももう、皹入り崩れ朽ち果てて、他の住人を受け入れるほどになったわ。」

 ならば。私と、紫で、世界のヒビを修繕して回っていたアレは、なんだったのか。
 やり直しをするための密室は、もう私達では作り出せないというのか。

「私の主張はこう。『元通りの二色になんかなれない。だから今の私達を享受するの』」

 紫の目が光る。赤く、禍々しい妖怪の目だ。私に向けてそれが向けられたのは、生まれて、いや、今の私と紫になって初めてだった。
 それでも、一度開かれてしまった目は、閉じることが出来ない。私は、どうしても。

「私は逆よ。やり直したい、何度でも、何度でも。あの頃の私とあなたに、あのころの色に戻って……。紫は、あなたは違うの!?」
「違わない」
「だったらなんで!?」
「私とあなたはただの背反。あなたがそれを望むなら私はそれ以外を望む。どちらかが打ち倒されるだけ。」
「そんなの、間違ってる」

 おそらく間違ってなどいないのだろう。私が何かの拍子にこの違和感に気付いてしまったから、出口のないリドルに絡め取られたのだ。
 でも、その感情は、私が紫を欲しいと思う感情に、何か名前を付けるのならば、それは恋というもの以外に焦点を合わせることが出来なかった。
 私は間違っていたのか?
 それでも私は、世界を、すなわち私と彼女を、混沌に戻して色を失う一つから、元の色合いを作り直したかった。やり直したかった。
 もしくは、そんなこと間違いなんだって、紫に染め尽くして欲しい。私の意識を、紫色に塗りつぶして染め上げて欲しい。だったら、こんな風に、求め合いながら斥力を持つことはないだろう。

「霊夢。あなたが私との同一を願うというのなら、私の未来を盗んでごらんなさい。あなたの手で私を撃ち落とせると言うなら。この八重垣を、見事打ち砕いて見せなさいな!」
「紫こそ、あんたが思い描くあんたと私の姿をどうしてもというのなら、まずは私を好きに彩ってごらんよ。全てを混ぜ直したい私を、止めてごらんなさいよ!」







 何か大きな存在の囁きが引き合わせ、私達は元の姿に戻ろうとする。私達は、乖離した霊的存在根(レジストリ)が再結合した、いわば安定した混色失敗作。無限大長たるその組み合わせのコントラストを、永遠に延々とトライアンドエラーで求め合うキーの欲求は、引き合う電子と核の向安定性。
 嘗て存在したオリジンと、それが犯した原罪。融合の後分裂した原初の存在は、幻想の向こうで、元の姿に戻ろうとしながら永遠の繰返しに求め合う。

 そうして無限の時間を相容れない内的矛盾の中で、互いの中にある私の中にはない私を求め、一つになりたい二色を繰り返し続ける。
 それが、あなたが私といるための条件(やくそく)。

 まっさらな世界に私とあなた。二色で彩るBichrome。
 どんなに長い時間をかけても、私とあなたは惹かれあい、出会う限り身を裂いて、不完全な私とあなたを繰り返すでしょう。

 私とあなたが一つでいるのは、永遠の中で二秒くらいの小さな時間。
 二人出会うのは、幻想郷という名の世界の狭間。そこで還るものがある。
 二秒に一度の恋をして、二色で彩る世界を塗り潰しては、一つに還るのだ。
 やがて羽ばたく蝶を成功させるために。

 この世界で混ざり合う、私達の本当の色は――







 その中でも不敵な笑みを浮かべ、私達を皮肉る口元、だがそれも温かみを湛えた表情でみているのは、この世界では比較的新しい住人である吸血鬼だった。

(なるほど、貴様らがそれほどに躍起に私を阻害したのは、貴様らも所詮同じだったからということか)

 吸血鬼は、私と霊夢を、しかしある意味でこの状態を歓迎するような声色でテレパスを送りつけてきた。それに対して異を唱える余地がないほどに、レミリア・スカーレットは、ある意味では一番私と霊夢の「状態」をよく知っている人物であったのだ。

 かつて博麗と呼ばれた私は、今は八雲と呼ばれている。新しい博麗を向かえて、その博麗には、私が欲していた他者が、そしておそらく新しい博麗が求める記号も、お互いの中にある。
 私達は「不完全」。互いの持つ自分に、困惑し、困惑させながら、永遠に求め合い繰り返す「不完全」。

「霊夢は、どこに行っちゃったんだ?」

 旧来の友人が、私を捜していた。
 悲しんでいる。
 私はガラス容器で劣化をしらないが、彼女は可塑性のある粘土。私が冷たく固形でいる間に、彼女は成長して私を包み込むほどだった。私にとって彼女は、いつしか神様のイコンみたいになっていて。それは恋心ではなくて、それでも大切で、信仰心みたいなモノを、私はただの人間に抱いていて、縋っていて。でも、かなわなかった。
 そんな彼女は、無意識に気付いているようだった。隣に佇んでいる新しい博麗、私の断片と彼女の断片の歪な構造物に向かって、いなくなった私を、博麗ではなく八雲に向けて、探そうとしている。
 それでも理性が、かき消した。私が博麗の一部で、八雲の一部で、今は八雲に近いと言う融合と分離を、彼女の理性は否定する。当たり前だ、彼女は、魔法使いとはいえ、人間なのだから。

「魔理沙」
「っ?」

 私がつい彼女の名を呼んでしまうと、彼女は跳ね上がるように私を見た。霖之助さんが隣で気遣っている。

「な、なんだよ。霊夢みたいな呼び方、すんなよ……紫、なんだろう?」

 本当に、気付いているのかも知れない。勘のいい奴だし。

「からかっただけよ。さあ、新しい博麗に、祝福を頂戴。これから幻想郷を支える、新しい女神に」

 霖之助さんに促されて、魔理沙は、悲しげな目で新しい博麗に向けて手を差し出した。かつての私は、少し高慢そうにその手を見てから、それでも少しはにかんで、よろしく、とそれを握る。あの態度は紫だなあ。それに、私だ。
 魔理沙の手が、あれほどに皺皺になっていなければ、また新しい関係を築くことも出来たかも知れない。でも、そうはならなかった。魔女として生まれながら、彼女は人間としての生を全うすつもりらしかった。
 彼女の中では、私は、彼女と同じように、死ぬべきなのだ。
 歪な二色をなす博麗と八雲。二色蓮花蝶。
 八雲には八雲の、博麗には博麗の、世界と二色で彩られた蝶を抱いている。だから、悲しまないで欲しい。探さないで欲しい。でもそれは、無理そうだった。
 懐古と惜別の念を入り交えながら、私は答える。

「霊夢」
「博麗霊夢は、ここにいるわ。あなたも、ここにいる。」

 博麗と八雲は、決してかつての二色に戻ることはないだろう。だが、その不可能性が、私達を一対の翼でいさせてくれる。永遠に美しく分離しない混濁がこそ、救いなのだ。

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