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【妖夢_うどんげ】ロマンスは刀の輝き

夜伽に登校しました。

ロマンスは刀の輝き

タイトルには意味はありません。
ロマ剣なつかしいですね。

あんまり意味があって書いたわけではないんですが
まあもともとそのうちかこうかなと思っていたネタで
とある作家さんの女装SSよんで刺激を受けたので書いてしまいました。

もともと30kくらいで終わるだろうと思っていたのに
「自信」なんてテーマを入れて
それを昇華させる一連を女装と絡めてしまったために
想像以上に長大に。

あとまあ自分がコスするときに勉強した内容を入れています。
ここまで手間かけませんけど。


以下、アーカイブ
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「妖夢はさあ」

 鈴仙さんは、別に向精神効果が出てなくとも真っ赤な、彼特有の赤ビードロみたいな瞳で僕を覗き込んでくる。
 紺のジャケット、胸元には月姫様の近衛隊を示すのらしいエンブレムが縫い付けられていて、それ以外にも目立たないが幾つもついた襟章が彼の多大な(今はそれを誇る対象はほとんどいないけれど)勲を示している。鈴仙さんは、月姫様の優秀なボディガードで、一人で永遠亭全般の安全保障を担う"スーパーエージェント"でもあるのだ。かっこいい男の人。
 でも、実はちょっと変わった人で、それは、今鈴仙さんが着ている服を見ればわかる。ジャケットの下には……スカートが合わせてあるのだ。
 スカート男子、とかそういうレベルではない。スカートの下には綺麗な生足、以前"じゃんっ!"とか見せられたのは女の子用のしましまぱんつで、おちんちんはその中で窮屈そうにしていた(びっくりして思い切り蹴り上げてしまった)。長い髪に元から整った顔立ちはメイクも含めて手入れされていて……そう、鈴仙さんは、カンペキな、女装子さんなのです。

「は、はい?」
「自信が無さ過ぎなんだよー」
「自信、といわれても……」

 ずいいっ、と乗り出してきて、わわ、顔が近い。切れ長の目、通った鼻筋、整った唇、ずるいっていうくらい綺麗な顔立ちは、女装を肯定するほどの端正。鈴仙さん曰く「姫様の趣味。あの人、男が近くにいると鳥肌が立つらしいから」とのことだけど、嫌々やっているようにも見えない。あの館にお住いの方々は、よくわからない。まあウチの主人も何考えてるのかわからない方だけど。

「こぉんなにかわいー顔してるのにさっ」

 僕の頬をふにふにと触る。鈴仙さん。

「か、かわいいってですね、僕、男なんですけど」
「関係ある?」

 鈴仙さんがその文脈を真顔でいうのはズルい。こんな綺麗な顔の人にそんなこと言われたら、説得力を超えて言いくるめ力があり過ぎで反論できない。

「そりゃ、鈴仙さんは……その、顔も体も、理想にできるじゃないですか」
「私は外見保存率95%以上で義体設定してるから、そんなことないよ。違うのはこの壊れちゃった耳<アンテナ>くらいかなあ。あ、私達玉兎は全身義体のメカって訳じゃないんだよ、そうしてる子もいるけど。元々こういう形の体で生まれてくるんだよ?ロボットとかアンドロイドじゃないから、"生得の外見"ってものが存在するし」
「ああ、それは、前に八意先生に聞きしましたけど……」

 聞けば、鈴仙さんを含む玉兎という種族は、魔造水銀<ミスリクリウス>と緋緋色金<ヒヒイロカネ>の合金である青生生魂<アボイタカラ>に有機活動プログラムを書き込んだ、自ら生き成長し産まれる金属<ドラウプニリウム>を用いた複雑系金属細胞共生法<デレメタリカ>による魔法生物に近い存在であって……って、八意先生から聞いたままの言葉なので、何いってんだかよくわからなかったけど、まあ、ロボットではないのだという。

 でもそれだと、私生まれた時から綺麗だから、って言っているようなものだ。やっぱ根本から違うじゃないか。

「それにしたって、関係はあります。僕は男ですから。そういうの、自信の有無には興味無いですし」

 そういうの、と濁した時点で意識してるのがバレバレだったかもしれない。
 元々僕は見た目が女々しいってことでよくからかわれる。幽々子様をお護りする強さを持たなければいけないのに、体は小さいままで筋力は足らないし(勿論剣術は筋力ではないけれど、基礎筋力が高ければしなやかさを保った上でのパワーも段違いなのだから、これはハンディになる)、闘争心というか負けん気も足らず上達も今一つ。男なのに頼りないと、幽々子様直々に言われてしまったこともある。妖忌じいちゃんは強くて頼れる男だったので、それと比較されて僕の評価は散々なもの。
 僕の周りにはいつも「おんなのこみたい」という言葉が、呪いみたいについて回った。
 それに比べれば、鈴仙さんは、本当の女性みたいに綺麗で、なのに強さも兼ね備えてて最強に見える。まあ、色々悩みはあるみたいだし、ああした自負も何かの出来事を経て得たものらしいので、一概にズルいと言ってしまうのは、間違っているかもしれないけど。
 興味がないとかあるとかではなくて、そういうの、が、いちいちいろんなところに影を落としていることに自覚はあった。

「まあ、男かどうかってのはこの際、置いといてさ。妖夢は自信が無さ過ぎるんだよ。剣の腕だって、自信の無さで成長にキャップかけちゃってるように見えるし」
「そんなこと……わかってます」

 一歩の踏込、読み合いでの駆け引き、切り結ぶ咄嗟の見極め、足運びや位置取りの判断。それに、相手と対峙した時の気配のぶつけ合い。そこで差が出てくる。その天井の低さをベースにしか鍛錬できなくなるのだから、自信(それは過信であってはならない)の無さは、自分の限界を低めているという自覚があった。

「そんなんじゃ、練習試合で私に勝てる日は遠いね」
「ぅぅ」
「特に私のアレは、意志力の低い人にはテキメンに効いちゃうからね、妖夢はカモ。だからその刀二本はネギだね」
「言い返せない~」

 とはいっても、じゃあ何が足りないのか。いや、そんなものはわかっている。自信だ。それがないから、自分がどこまでできてどこが出来ないのか、どこを鍛錬すればいいのかもわからないし、試合に置いて実力を出し切れないのだ。

「妖夢、自分を変えてみよう」
「は、はあ」

 そんなことは昔から耳が痛いほど言われている。それが出来るならこんなことで苦悩などしないのだ。

「妖夢クン、ここで私に、いーかんがえがある」

 鈴仙さんのその表情、完全にてゐさんからうつったものだと思うけど、表情だけじゃない、この顔の時は、ろくなことを言い出さないのだ。







「無駄な毛があると台無しだからねー!」

 お風呂の戸の向こうに、鈴仙さんのシルエットが見える。

「わ、わかりましたってばあ」

 なんでこんなことになったのか、もうよくわからない。鈴仙さんの口車に乗せられて、というのが正しいような気もするが、もともと、興味のあったことだ。鈴仙さんとはもう、随分と長くお付き合い(そういう意味じゃないよ!)させてもらっていて、いろんな悩みも聞いてもらっている。
 なんか、男の人なのか女の人なのかわからないっていうより、どっちでもあるっていう感じで、視野がすごく広い。月や永遠亭でいろいろあったのだろうという人生経験の豊富さもあるのだろうけど、論理的な思考を展開するときの男の人の芯の強さと女の人の柔軟さ、あるいは情緒的なことを基底にするときは全くその逆、それを自在に使い分けてアドバイスをくれる感じ。だから、口車に乗せられたと思う反面、導いてもらったという変な信頼があるのかもしれない。

 でなきゃ、女装を教わるなんてこと。

 自分を変えるために、まずは殻を破ろう!と無駄に意気揚々と、鈴仙さんは僕にそれを教えようというのだ。そんなことで自分の殻が破れるものかと思ってはいる。でも、鈴仙さんの言うことは、はじめて、だったのだ。

 女っぽいことを肯定しろ、と。

 今まで誰一人としてそんなことをいう人はいなかった。幽々子様をお守りしなければいけない立場もあるし、庭師という肉体労働もこなさなければならない。僕は逞しい男性でいなければならないと周囲から言われ続け、でもものの見事にそれを裏切ってきている。

 でも鈴仙さんはそれとは真逆を言った。

「女の子のまねをしたら、自分が結局そうじゃないってのもわかるかもしれないし、もしかしたら、そっちのほうがよかったって思うかもしれないでしょ?ここはおねーさんにだまされたと思って、いっかい身を委ねてみなってー」

 なんて言われて、どう答えていいのかわからないまま「はい」って言ってしまったが最後、現地を取られたものだからずるずるとこうなってしまった。
 でも、心のどこかでは、期待もしているのだ。もしかしたら、これで変わることが出来るのかもしれないと。それは、否定できない。

"まずはムダ毛の処理ね。大前提だし、全身のことだから最初にやろ"

 なんて言われて、僕は今、永遠亭のお風呂にいる。渡されたのはT字剃刀。これで、男にはあるけど女には生えてないだろうところの毛を剃って来いと言われたのだ。

(顔、腕、手、腿、脛、足、胸はないけど、臍のずっと下あたり)

 結構多い。女の人にもある毛でも量を減らして来いと言われた。正直もうよくわからない。
 剃刀を持ったまま鏡の前で立ち尽くす。男のくせに細くて、剣術をやっている筈なのに全然逞しくない体が映っている。なよなよでめめしくて、全然男らしくない。
 だからって、女の子の格好になろうというのが正しいとは、まだ思えない。だって僕はやっぱり、男なのだ。
 その証拠に、股に有るものは、否定しきれない。

(うーん、突っ立ってても仕方がないか。毛はまた生えてくるし……)

 そんな風に思っていると、突然お風呂の戸が開いた。鈴仙さんが顔を覗かせている。

「やっぱ剃ってあげよっか」
「けーっこーですーーっ!」

 ぴしゃり!

(もう)

 と、恥ずかしがってしまいはしたが、よく考えれば鈴仙さんだって男なのだ。何も恥ずかしいことなんてなかったような気がする……が、鈴仙さんの完璧な女装を日々目の当たりにして、完全に男の人だと思えと言うのは今更もう無理な話である。正直、女の人にしか思えない。

 ええい、ままよ、と剃刀を当てる。
 今まで全然気にしたことがなかったけれど、顔には随分ひげ以外にも毛が生えるものらしい。髪を切ってもらう時に一緒に剃ってもらいはするが、それきりだ。剃刀を当てて滑らせると、想像以上に沢山、細い毛が剃れた。これが女性には生えていないものなのかどうか、わからない。そもそもこんなものを見るような視線で女性を見たことがないのだ。でも、顔に化粧をしたりするのに、こんなものが生えていては邪魔くさいに違いないだろうことを考えると、やっぱり剃って正解だろうか。
 腕にも結構、生えているものなんだなあ。妖忌じいちゃんは目に見えて生えていたけれど、僕はあんまり生えていないなと思っていた。でも剃ってみるとかなりある。
 鈴仙さんは、手の甲や指も気を付けろと言っていた。よくよく見ると確かに、手の甲や指の甲にも生えているこれも剃った。
 脚。太腿や脛に生えている自覚はあったのでそれを剃る。でも、膝や、背中側の太腿については、意識したことがなかった。ここも生えているので剃る。膝はともかく、太腿の後ろ側は、かなり変なポーズで剃ることになった。こんなことしてるところ、男とか女とか関係なく人に見られたくない。かなり、間抜けだ。

(足なんて、靴下はいちゃうから関係ないんじゃないのかなあ)

 脚の甲や足の指も、手と同じく地味に生えていたのでこれも剃る。
 それと、股の間。

(減らせ、と言われてもな)

 とりあえず面積を狭めることにした。うわあ、これは……死ぬほど恥ずかしい。一人でやってても恥ずかしい。人に見られたりなんかしたら、暴れそうだ。
 太腿の内側や、二の腕、胸も一応チェックする。生えているようには見えないのだがよくわからないので一通り剃刀を滑らせて、剃り終わったということにする。
 そうして改めて鏡を見る。鏡に映る姿自体にはそう差はないように見える。

(わ、あ、これ、すごいや)

 でも、苦笑いしか出なかった。よくよく見れば際だつ、実際に剃って一切の毛感が無くなった自分の腕や足の白さ、それに、触ったときのつるつるとした感じ。まるで自分の体ではないように思えるのだが、まさしく自分の体なのだと認識すると、それだけで顔から火が出るほど恥ずかしい。

(やっぱやめときゃよかったかなああああああ)

 と、後悔するももう遅い。鈴仙さんが戸の向こうから声をかけてきた。

「服、おいとくねー」

 もう女の子の服が置いてあるらしかった。
 どんな服が、用意してあるのだろう。それを想像しただけでも、心臓が沸騰しそうだった。恥ずかしいのか、それとも。

 がらがらと扉を開けておいてある服を見て、ちょっと拍子抜けした。いつもの僕のジャケットだったからだ。
 でも、よくよく見ると……違う。

(すかーと、だ)

 僕のジャケットと同系色のスカートは、合わせても違和感がなさそうだ。
 それに、ジャケットとスカートの下に、下着も置いてあった。
 下着は、完全に女性ものだ。なんて言うか、"細い"。流石に、手が震えた。

「もう私は穿かないけど、いつか妖夢に穿かせようと思って置いといたスカート、おさがりだよ。この色ならいつものジャケットと合うでしょ。」
「いつか、って……」

 もっと前から僕に女装させようとしていたのか。

「それとブラとぱんつとリボンもあげる。あ、下着は未使用だから安心してね」
「は、はあ」

 置いてあった下着も、そう言うことらしい。

「つけかたわかる?きさせたげよっか?」
「わ、わかります!」

 判るわけがない。

 ぱんつは穿けばいいのだけど股間のその……きょ、許容量が……。とは言っても穿き方云々でこれが収まるようになるとは思えないので、何かの拍子に自己主張し始めないことを祈りながら、穿いた。きつい。
 ブラ。どうせ肩からかけて胸を覆うだけだろうと思っていたら、これがなかなかどうして訳が分からない。ただの紐を巧く襷掛けするようにしか感じられない。傍目から見ればあんなにももどかしいほど布地があるのに。

「ほんとー?ブラつけれる?背中に手回る?」
「だいじょーぶですからぁ!」

 そうか、背中であわせるのか……。
 ヒントを得て何とか身につけてみる。

「Aサイズだからまあ、胸なくっても少し寂しい程度で何とかなると思うけど、だめそうならヌーブラ貸そうか」
「いーりーまーせーんー」
「あら残念」

 ブラの胸は、若干すかすかと寂しかったが、ここに何か詰めるほど僕はまだ覚悟が決まっていなかったようだ。何となく着付けられたので、シャツを着て、いよいよ。

「す、すかーと」

 ジャケットの色に合ったスカート。脚を通すが、ズボンと全然違う。穿いた、といっても感じるのはウェストのリングだけで、ひらひらの部分のなんと涼しげ()なことか。さっき穿いたぱつんぱつんになったパンツを、何者も守ってはくれない。ウェストはぴったりで、鈴仙さんの目の別の意味での性能を思い知った。

(これが、スカート……)

 スカートと言えば女性の象徴のような衣装だ。女装と言って、これを抜くことは難しく、これを穿いていれば女装と言っても概ね差し支えないくらい。

(け、けっこう、みじかい)

 膝上だった。こうなってしまうと、さっき毛を剃ったことに意味が出てきてしまう。穿いて立ってみると、ただ穿いているという意識が、恥ずかしい。

「きれたー?」
「き、きれましたからっ」

 姿見の前に立ってみる。今の状態では、ただスーカトを穿いただけの男でしかない。意識が、過剰に恥ずかしがらせているようだった。服は、特に女らしくもない。そう思っていたが。

(あれ、ネクタイ……)

 ネクタイがなくなっている。その代わりに、リボンが置いてあった。代わりにこっちを襟に結べと言うことか。
 結び方は判らないが、スカーフのようなものと思えばネクタイと同じでいいのかも知れない。とりあえずそうやって結んでみると、胸元が急にフェミニン。スカートで下半身を、そしてこのリボンで上半身を、異性装として統一感を出しているようだ。リボンを着けてから鏡の前に立つと、急に、首から上が男であることが逆に恥ずかしく思えてきた。
 でも、この違和感もすぐに解消するのかも知れない。

「ほーらー、着られたならでといでよお。メイクするから」
「は、はあい」

 そう、これから、鈴仙さんによるお化粧実践講座、なのだ。







 更衣室をでると、満面の笑みの鈴仙さんが迎えてくれた。

「じゃ、メイクしようね」
「めいく」
「お化粧」
「そ、それくらいは、わかってます」
「よろしい」

 じゃ、こっちに来て。私の部屋でしよ。
 装促されてつれられていく。鈴仙さんの部屋は、途中までは病院の診察室と薬学の研究室をくっつけたような空間だが、さらに奥へ行くと急に生活感のある部屋に変わる。生活感と言っても、男の僕の部屋とは全然違って、つまり、女の人の部屋だなあって感じる清潔感とどことなく漂う可愛らしさ。
 僕はさらにその奥へ導かれて、すごくプライベート空間っぽい場所に通される。箪笥とか、ベッドとか置いてあって、その一角に、化粧台。

「はい、ここでメイクしようか」

 当然といえば当然だが、鈴仙さんの個人部屋、普段お化粧とかをしている場所を貸して貰うのらしい。なんだか酷く背徳感がある。普通、あんまり人に見せない部屋だよね。僕だって幽々子様のお世話はするけど、寝室には、掃除以外では、着付けとかでどうしてもということで呼ばれたりしない限りは入らない。

「は、はい」

 僕は椅子に座らされて、鏡に向かう。さっき見た、女の子の服を着ているだけの、アンバランスな男の図が見えるだけだ。
 鈴仙さんはその僕に向かって何か透明な液体の入った小瓶を差し出す。

「まずこれ、化粧水だよ。本当は普段から使っておくんだけど、今はスキンケアの話は置いておこう。お化粧の前にはこれで肌を潤してからだよ」

 早速始まるらしい。

「うる……?」
「手に取って、顔に塗るの。しみこませるって感じで、掌で押さえる」

 そういって化粧水をなじませる仕草を僕に見せてくれるので、僕もボトルのキャップを開けて手に取り、鈴仙さんがして見せてくれている通りにした。

「化粧水は冷蔵庫冷やしておくといいっていうよ。その方が肌によく染み込むらしい。でも、そこまでする必要があるかは、人それぞれの感覚かな。私はしてないな。次は乳液。お肌の基本は、水で加湿してから油で覆って保湿。化粧水が水、乳液は油脂分が入ってるからこれでパックして保湿するの。肌がしっとりしてると、メイクののりも全然違うからね。下準備は大事だよ」

 二、三度そうして化粧水を肌になじませると乳液は顔に塗り広げるように。
 それが終わると鈴仙さんは、今度は下地だね、とチューブに入ったものを手渡してくれた。化粧下地、というらしい。言葉の意味的にファンデーションというものと同じだと思っていたけど、別にあるものだったんだ。

「妖夢はもともと肌が綺麗だから薄めの色作りしよっか。私より少し血色いい位の色合いだね。ん、この色にしよ。まずは下地。毛穴を隠して肌理を整えるの。はい、これ顔に薄く塗ってみて。手でもパフでもいいよ」

 鈴仙さんは手で塗ってもいいと言っているけど、僕は「じゃあ、これで」とスポンジを手に取った。色の白いやつ。

「ふふっ、そうだよね、お化粧に興味があったら、パフ、使いたくなるよね」
「あ、いや」

 スポンジを選択しただけでそんなことを見透かされてしまって。どんどん裸にされていくみたい。

「今更照れない照れない。パフには色の白いのとか茶色いのとかあるけど、下地の色に合わせて見やすいほうを使えばいいし、気にしなくてもいいよ。じゃあ、ぬってみよ。」

 僕は下地、というらしいクリームをスポンジにとって……よくわからないのでほっぺたに乗せた。そのまま塗り広げていく。

「ん。毛穴を隠す意味があるから、下から上に撫で上げるようにするといいよ、基本的に毛穴は上から下に向いてるの。あごのラインは輪郭に沿うように上へなぞって、頬は鼻のあたりからこめかみに向けて斜めに持ち上げるみたいにね。そうそう。」

 鈴仙さんが言うのを素直に聞きながら、下地を塗っていく。顔がみるみる色白になって、肌理が細かくなったように見える。

「女の人のメイクと違って、肌を作るくらいにやらないとダメだから。下地は顎の下側くらいまで、顔の前面だけにしちゃうと首と顔で色が違いすぎるってことにもなりかねないからね、馴染ませるのも重要」
「はあ」
「首の初めくらいまで塗る勢いがあってもいいかもね、パフで地肌に伸ばしてグラデーションさせるイメージ。あんま下まで塗っちゃうと服の襟に付いちゃうから気を付けてね」

 まだドレッサーに並んだ無数の小瓶や道具のほんの少ししか使っていないというのに、覚えることが多すぎて頭がパンクしそう。それに、女の人はあんなに簡単そうにやってることなのに、すごく考えることが多いのに驚いた。

「大体いいかな。ちょっと顔貸して。あと、額と、眉の間から鼻のてっぺんにかけては少し念入りに塗るつもりでね。男は皮脂が多めだから、これの手を抜くとノリが悪くなっちゃうんだ。」

 と、後ろから、鏡越しに僕の顔を覗き込んで、鈴仙さんが僕の顔を、同じ下地を取ったパフで撫でる。額から鼻、それにほっぺたも少し。顔と顔が同じ方を見てすごく近いのに、鏡越しに目が合う。この距離感って、視線平行なのに交差、同じものを見ながら見つめ合ってるみたいで、なんか、どきどきする。

「じゃあ次はファンデーション。女の人と違って、下地とファンデで強めに肌を作らないとダメなんだ。男は色も濃いし、肌理も粗いからね。下地とファンデで大分印象変わるよ。」
「はあ」

 未知の世界過ぎて頷くしか出来ない。

「まあよく見るのはこの二つかな。パウダーのやつと、リキッドのやつ。パウダーはメイクが楽。クリームは面倒だけど、しっかり肌が作れる。」
「じゃあ……リキッドの方がいい……んですか?」
「理想はリキッドを薄く塗って複数の色あいのスキンパウダーで影を作ったりして仕上げ。でも、しっかりできるのも大切だけど、毎日とか日常になるとラクっていうのはすごく重要なことだから。続けられないと、意味がないからね」

 これから妖夢が女装子になるんだったら続けられるようにその辺も視野に入れてね、とちょっと妖しい笑顔で僕を見てくる。

「は、はい」
「細かく分けるともっと色んな種類あるけど、一旦はおいとこ。それに、妖夢は肌もともと綺麗だから、あんまり作りこまなくて大丈夫そう。今日はリキッドとパウダーを一種類ずつでやってみよっか」

 俎板の上の鯉ならぬ、ドレッサーの前のいじられキャラ、だ。

「影を付けるの。光が差し込む方を意識して、凹凸をつけたいところに、濃い色のファンデを置いたり逆に塗らずに残したりていくよ。あ、パフは使い捨てだからね。新しい面を使うか、別の新しいの使っちゃって。影は、頬の奥、あごの縁ってところかな。ワンポイントで目尻の先とか、下唇のちょっとしたとかに濃い色を置くのもアリ。逆に、鼻筋とかほっぺたのてっぺんとか、凸らせたいところに明るい色を置くこともあるよ。今回は明るい色を置く代わりに、下地の色をファンデで消さない程度に残そう。妖夢は元が可愛いからそんなに凹凸強調しないでナチュラルにしとこ。ほら、残したところは白くて出っ張った感じ、濃いパウダー塗ったところはへっこんで、顔が立体的になったでしょ」
「ほ、ほんとだ」

 下地を塗っただけのときは白くのっぺりとしていたのに、リキッドファンデを塗ると急に肌っぽくなって、更に濃い色のパウダーで明暗を付けると輪郭や顔のつくりがくっきりして、華やかになった。不思議。画家の描く絵が、平面に書いているはずなのにどんどん立体になってくのとすごく似ている。

「立体感をイメージして、影と光を、顔に描いていく。どういう風にメイクを作るかビジョンをしっかり持ってね」
「むずかしいですね……」
「まぁねえ。でも、毎日鏡を見てたら、だんだん一致してくるものよ。……妖夢、鏡、嫌いでしょう?」

 嫌いというか、幽霊なので普通の鏡ではうっすらとしか映らないから必然的に見る機会は少ない。白玉楼にはいくつかだけ、霊体の鏡像を映し出せる特別の鏡が置いてある。そのほとんどは幽々子様用で、僕にも姿見が一つ与えられていたが、ほとんど使ったことがない。なんとなくその姿見を見るのも避けているような自覚は、確かにあった。
 僕は、自分の姿が、嫌いなのだ。

「見るようにした方がいいよ。慣れ、ってのもあるし、脳みそがね、自分と鏡像のイメージを一致させるように頑張ってくれるから。これは持論で根拠はないけど、割とあってると思ってるんだ。可愛い顔を作ってるとね、可愛く、なれるよ」
「そうなんですか」

 でも、それも、鏡に映る姿を肯定的に捉えられれば、という前提付きな気がする。そうでなければ、心だって頭だって、鏡を見ることに対してストレスを感じて反発してしまうと思う。鈴仙さんは、自信があるから、そう言えるのではないか。

「さて、順序は色々だけど、これはデモンストレーションだから、わかりやすくパーツごとに完成させちゃうね。肌の色が整ったら、チーク。これで顔に赤みを入れて可愛らしくするよ」

 そういって、ピンク色の粉の入った瓶を取り出す。ふたを開けるとふわふわのぼんぼりがついていて、それに粉を取るようになっているみたい。ほっぺたに、塗るのかな。

「赤色の置き方は個性が出るところだから。とりあえずほっぺたの一番膨らんでるところ、そのほんの少し上だね。黒目の下から、目尻かそれより少し外側に、ほんのり色を乗せる。そそ。色の濃さとか位置で全然表情が変わっちゃうデリケートなものだから、ちゃんと鏡を見てね。ほっぺの赤くする場所を少しずらすしたり広くしたりするだけでも印象が変わるよ。それは、自分で探して調整してみてね」
「あ、左の方が強くなり過ぎた……かな」
「まあ好みだからね、私はこれくらいでもいいかなって思うけど、やり過ぎたと思ったら広がらない程度にパフでとっちゃってもいいし、化粧落としで落としてからファンデやり直してもいいし、めんどくさかったらファンデで塗りつぶしちゃうのも最終手段かな。あんまり濃くないから、パフで軽くこすったら薄くなるんじゃないかな」

 スポンジで撫でて、左右の色を均等に調整する。確かに、赤みが差しただけで表情が生き生きしてきた気がする。あと、赤色はやっぱり、華やかさが出て可愛らしく見える。

「頬からこめかみの方に向けて全部ほんのり赤くしちゃうとか、赤を乗せる前に真っ白を置いておくとか、鼻筋も少しピンク色にするとか、バリエーションが多いしそれぞれで全然表情が違ってくるから……そこは自分で探求してね。妖夢のセンスの見せ所だよ」
「ふえぇぇ」

 今は鈴仙さんが見てくれてるからまともに見えるだけで、一人でやることがあったらちゃんとできる気がしない。そういえば幽々子様は赤い面積が広い気がする。目の周りにも、赤があったような気がするけど、あれは別のお化粧かな。似合うものを探すというのも、大変なのだろうなあ。
 でも、もし、お化粧で、まあ幽々子様にかなうとは思えないけれど、ああいう風に綺麗に(あるいは可愛く)なれるのだとしたら。そう考えると、やる気のような妙な意欲が出てくるのも感じていた。

「次はほんとは目をやりたいけど、難しいから今は後回しにしよ。それより、赤つながりで唇をしようか。変化がわかることから順に見せてあげたいし。頬と唇が赤い華やかさが出るし、その二つはバランス感が結構重要だから、リンクさせて覚えておくとやり易くなると思う。……赤以外のリップ、使ってみたい?一応、青とか緑とか紫とか、持ってるけど」
「い、いえ、赤でいいです」
「よかった。赤の彩度明度がいろいろあるの。ほら、こっちは鮮やかな赤、こっちは暗いけど赤みはしっかりしてるでしょ?こっちのはピンクっぽいし、こっちのは少し肌色っぽさもある。唇だけ妙に目だったりするのはバランスが悪いからね。もちろんリップをばんって押し出す作り方もありだけど、今回は普通でいこう。今は全体的にナチュラルにしてあるから、唇の色もピンク寄りくらいにしとこっか。透明感を出そう」

 またこれも選ぶのが大変なのらしい。自分に合ったひとつだけを持っていればいいような気もするのだけど、鈴仙さんはすごくたくさん持っている。"つくりかた"を変えることもあるのだろう。

「あとはグロスね」
「なんですか、これ」
「唇を飾るのは口紅だけじゃないんだよー?グロスって、まあ、普通のリップクリームでやっちゃう人もいるけどね。唇の艶出し。」

 じゃあリップクリーム普通に塗って、と言われて、これから口紅塗るのになんでリップクリーム塗るんだろうとか考えていたら、鈴仙さんのフォロー。

「男の唇は基本的にカサカサしてて皮膚も厚いから、そのままリップを塗ってもノリが悪いんだ。だから、先にリップクリームで加湿したり、保湿や色合いの下地を作るってのが常套手段。しっかりやるには輪郭取りと下地塗りに唇用のペンシルを使う人もいるよ」

 さっきから、男は、という下りがよく登場する。もしかして女装の化粧って、女の人の化粧よりも面倒なんだろうか。と、考えはしたが聞けそうな相手がいないので永遠の謎のままになるのだろう。

「リップクリーム塗ったらしばらく待ってから、ティッシュで軽くふき取る。で、口紅だね。リップブラシは知ってる?口紅ってこっから直接塗ってるイメージ強いけど」
「あ、幽々子様は筆でやってらっしゃいますね」
「幽々子さんは唇の形をリップで調整してるみたいだからね、ブラシのほうが都合がよさそう。唇全体を塗ってるわけじゃないから、今度見てみなよ。」

 そ、そうなんだ……。
 いつもそばにいる僕が気付いてないのに、鈴仙さんはそういうところ見るんだなあ。

「はい、このブラシでリップ取って、唇に塗ってく。先に輪郭を取ってから、内側を塗っていく感じがいいよ。あんまり濃く塗る必要はないからね、べとべとに塗っても格好悪いし、最初はどうしても塗り過ぎちゃうから、気持ち少なめのつもりで」
「ぬ、ぬいまひら」
「じゃあ唇同士をこするみたいに、むにむにーってやって、馴染ませて。そそ。で、ティッシュを一枚取って口に当てて、唇で軽く挟む。で、グロスをぺとぺとって乗せて……はい完成。どう?唇が赤くなると目立つでしょ。チークの赤とちゃんとバランスが取れると、顔全体が華やぐから、意識してみてね」

 鏡に映っている自分の顔を見て、僕は驚いてばっかり。ファンデーションで肌も綺麗に見えて、まるで自分じゃないみたいになったのに、今度は頬紅と口紅で、顔全体が華やかになってる。

「じゃあ最後、目だね。これは私もまだ苦手でねー、へたくそでも怒らないでね?」
「そんな……」

 そんなことを言われても、正直上手いもも下手もわかったものではない。

「目のメイクは大きく分けて、眉、睫毛、目の輪郭、瞼の4か所を強調するものよ。まあ、眉の形は変えてないから眉はカットして整えるだけだけど、他は結構めんどくさいんだ」

 そういって鈴仙さんは小さなはさみで僕の眉毛を小さく、ちょき、ちょきと切っていく。

「男ってあんまし眉毛整えないよね。よっぽど気を付けてる人は切ったり抜いたりしてるみたいだけど。でも女装するようになると、普段から気を付けないといけないポイントになるからね。今は眉の形を矯正はしないけど、そういうのをすることもあるのだけ、覚えといて。そうでなければコームで眉毛を立てながらはさみで長さを一定にカットしてくだけ。あー、妖夢はもともと眉の形いいね、厚みもカーブも、あんまり手入れなくてもいいや。ずるーい」

 左のほんの少しを手本で作業しただけで、あとは僕がやることになった。小さい眉毛用の櫛(コームって呼んでたな)で立ててみると、眉毛って自覚していたよりも長いんだなって驚いた。小さいはさみで長さを整えて見てみると。

「う、や、やり過ぎちゃったでしょうか……」

 明らかに薄い。肌色が透けちゃってる。妖忌じいちゃんが僕の髪を切り過ぎた時みたいな嫌な汗が出てきた。

「あはは、大丈夫、そんなもんだよ。眉毛は最後描いて整えることがほとんどだからね、薄く剃っちゃっても大丈夫。幽々子さんも、眉、描いてるでしょ?うちの姫様なんか全剃りだよ?」

 ああ、そういえば、墨を入れていたような気がする。けど、どんな道具でどういう風にしてるのか、全然知らない。鈴仙さんに女装の指南を受けて初めて意識するなんて、従者として恥ずかしい気がする。ああ、僕って幽々子様のこと全然わかってないんだなあ……。
 ……マテ、妖忌じいちゃんは、どうだったのだろう。
 想像がつかないし、想像にしかならないので、考えるのをやめた。

「順番が前後しちゃったね、ウィッグをえらぼっか」
「うぃっぐ?」
「カツラだよ。女の子らしい髪型をつけるの。」
「あ……」

 そっか、鈴仙さんのあの綺麗な髪って、かつらなのか。全然、わかんないや。かつらを取った鈴仙さんって、見たことないし。そういえば女装してない姿も見たことないや。
 僕は、"かわいいはつくれる"という言葉を思い出した。







「こっちきて」と導かれて、化粧半ばの顔のまま鈴仙さんに連れられて部屋の奥へ。「ドレッサーのある部屋の傍にしたかったんだけど、魔法縮重空間だから安易に模様替えもできなくってねー」と笑っている。永遠亭も、紅魔館とかと同じで、空間の神様の目をちょろまかしている。外から見るより中から見た方が広いというわけらしい。随分と奥まで来て、一つの扉を開いた。

「この中から好きなの、選んでいいよ」
「ふぇ……」

 歩いた距離は結構あったのだけど、扉の向こうに広がっている部屋が劇的に広いというわけではなかった。ただ、単にこうして「かつら保存するための部屋」としては、信じ難いほど広い。頭部マネキンや、恐らくかつら専用のハンガーのようなものがずらりと並んでいて、それ一つ一つにかつらが被さっている。

「こっち半分は、全部私の普段使いのだから、ほとんど同じでつまんないけど、こっち半分は色々あるでしょ」

 扉を開けて左半分の空間には、薄菫色のロングヘアのかつらばかりがたくさん並んでいる。今鈴仙さんが被っているのらしいものと同じかつらのように見えたが、いずれもよくよく見れば、微妙に長さが違ったり、髪型のつくりが違ったりしている。

「こっち、同じのばっかりでびっくりした?一応フォーマルの仕事着になってるからね、毎日同じ恰好だから、替えとか、季節ごととか、ちょっとの気分転換にセミロングくらいにしたりとか。そんで、こんな量になっちゃった」

 少しはにかんだように笑う鈴仙さん。そっか、作り物と思えないほどのカンペキ女装子さんの姿は、並大抵の努力じゃないってことなんだ。

「どのウィッグにする?あ、同じのかぶって義理姉妹設定にしよっか!耳もあるでよ、あるでよ」
「い、いえそれは……」

 "中材"の品質が違いすぎるので、ちょっと避けたい。
 僕は扉から向かって右にある、今の鈴仙さんとは違うかつらを見比べる。赤とかピンクとか明るい色もあれば、灰黒茶なんて普通っぽいのもある。髪型もすっごい長いのから、短めのもあるし、分け目とかもいろいろ。その脇にはきっと付けかつら、少しだけたすための髪の毛の束も置いてあった。正直目が回る。

「お店が開けそうなくらいありますね」
「あっはは、色々集めてる内に、ね」

 その中で一つ、他のウィッグから心なしか隔離された上等そうな光沢を放つウィッグが一つ。真っ黒のロングヘア。そしてもう一つは青みがかったシルバーのロング。これって。

「あ、それは、ダメ。私が姫様と師匠に変装するときのだから。仕事道具。」
「お仕事で、変装なんてするんですか?」
「うん。身代わりとか、囮とか」

 そっか。そういう背景のある人なんだっけ、鈴仙さんって。

「まあ、あのお二人はもう死なないから、あんまり使うことはないかもしれないけどね。生け捕られる可能性がありそうなときには、私が影武者することもあるよ。これでも私、昔は命はって仕事してたんだから。お二人の代わりに死ぬ覚悟もあった。まあ、お二人とも蓬莱の秘薬飲んじゃったから、今となってはバカみたいな話だけれど」

 僕は、幽々子様のために、死ぬ覚悟があるだろうか。半分しか生きてないけど。
 自信、というものを考えた時に、その隣に、覚悟、がないのはおかしいのかもしれない。だから、僕はダメなのかな。

「あは、そう重く捉えないで。昔まだ地球に来たばっかりの頃に、変装して姫様への求婚者と面通ししたこともあるんだよ。‟相手はどうせ私の顔を知らないんだから、何か適当に難題を吹っかけて追い返して‟なんて言われたから、地球にはありもしない宝物の名前を出してみたりね。笑っちゃうよね。実際はそんな程度の仕事の方が多いんだから」
「そ、それは……」

 相手はノンケなのに、別人の男相手に、必死に言い寄っていたのか。不憫すぎる。

「まあ、確かに命の危険を感じたことはあるけど、元々そういう風に作られてる種族だから、玉兎は。捕虜になったら自決することも選択肢に入ってるし。でも、蓬莱山輝夜だと思って捕えてみたらオスウサギだった、なんて相手にしてみれば激怒ものだよね、あははは」

 鈴仙さんの、片方だけ形が違う耳(アンテナらしいけど)を見る。なんで、元の形に修繕しないのかと、いつも不思議だった。パーツがなくって、と笑って言うのを前に聞いたことはあるけど、どこかごまかしているように聞こえた記憶がある。そういえば、妖忌じいちゃんは、体の傷跡なんかを指して「お嬢様をお守りした時の勲章」と言っていた。小説だの漫画だのではよく目にする陳腐な台詞だと当時は思っていたけれど、覚悟、ってそういうものなのかもしれない。鈴仙さんの耳にも、何か、意味があるのだろう。
 まだ傷一つない自分の体を、なんだか、情けなく思った。

「あの、じゃあ、これ」
「あれ、それでいいの?ロングのやつ選ぶと思ったんだけど」

 僕が選んだのは、ぱっつんボブの銀髪のかつら。

「ロングは、まだ、こわいです。似合わなさそうですし……」
「そーお?似合うと思うけどなー。ま、妖夢がそれがいいっていうなら、それにしよ。ロングは手入れも面倒だしね」

 僕が指さしたかつらを、鈴仙さんは手に取ってひっくり返す。うん、大きさ調整できる奴だから大丈夫だね、と言ってそれを僕に手渡した。

「女の子になりたい子は基本的に女の子の象徴を身につけたがるから、絶対ロングウィッグにすると思ったのになあ、もしかしたら妖夢はもっと高みにいるのかも」
「た、高みって、なんですか」
「"女の子の記号"を身に着けるだけで満足するって段階の、更にその向こう」
「はあ」

 将来有望っ、と怪しい笑みを浮かべて、元いたドレスルームに戻るよう促してくる。僕はその後ろについて行った。
 鈴仙さんの歩く姿を見て、なびくロングヘアを見て、あんなに自然できれいに見えるものが地毛ではないのだとはにわかに信じがたい。それと同じものだろうものが今、自分の手の中にある。これをかぶったら、僕もあんな風な、綺麗な女の子に、なれるのだろうか。
 心臓が、言うことを聞かずに、早鐘を打っていた。







「ほんとは先にウィッグを選んで貰うべきだったね。髪色で、肌の色の作り方のバランスも、ちょっと変わったりするから。でもシルバーならま、あんまし邪魔にならないから大丈夫。ウィッグが銀だから、アイメイクもそれの影響を受けるよ。まずさっき慌ててた眉だね」

 あ、銀か灰のペンシルなんてあったかなあ。なんて、鈴仙さんは引き出しをガチャガチャと探し始める。

「ごめん、いい色の持ち合わせがなかったよ。代わりに白でいこう」

 と、色鉛筆のようなものを渡される。

「その鉛筆で、眉を塗るよ。ウィッグの色、地毛と違う色を選んだからね、すこし違和感があるかもしれないけど」

 あ、そっか。髪の毛の色と眉毛とか睫毛の色って、同じになるんだもんなあ。全然考えたことなかった。

「形はさっき整えたからね。そこからはみ出さないように、塗りつぶす。そんなに念入りに塗りつぶさなくてもいいよ、気休めみたいなものだから。きっちりやりたければ、眉は完全に剃って書くようにするとか、眉も染めちゃうって手があるけど、妖夢はまだお試し期間だから、そこまではね?」
「は、はい」

 鉛筆だ。今まで見たお化粧道具の中で一番なじみのある形をしていた。そうしてみれば、眉以外にも、鈴仙さんが用意してくれている目のお化粧道具は、ペン型のものが多い。あと……絵の具のパレットみたいなやつ。パレットみたいなやつはファンデーションのフェイズでも登場したけれど、今はそこまではいいね、と鈴仙さんは今回は使わなかった。
 鉛筆型の道具は、形自体は馴染みがあったので少しほっとしたが、こうまで沢山あると逆に不安が湧いてくる。鉛筆、筆、パレット。これは、苦手な「絵を描くときの道具」ととても似ていて、いくら描いてもまともにならない嫌な記憶を呼び起こすのだ。願わくば、せめてこのパレットに入った絵の具のような奴は、今回も使わないで欲しいと願ってしまった。

 白色鉛筆で眉をなぞる。芯が柔らかくて肌にも色が乗る。剃り過ぎちゃった眉に白を乗せて、眉毛を改めて書いていく感じ。

「左右の形が違っちゃうと変だから、気を付けてね。うん、上手上手」

 鈴仙さんが、僕と顔を並べて鏡越しに僕の目を確認する。こうやって見ると、鈴仙さんの目も、すごく作りこまれている。睫毛は長いし、目の輪郭がくっきりと描かれていて、目の印象がすごく強い。上瞼や下瞼にも色が乗っていて、目全体が真っ赤な瞳と負けないくらいグラマラスで、でもその瞼に乗った色のせいでもともと大きい目は可愛らしさにもつながっている。目の強さとチーク、ファンデーション、それに赤い唇のバランスが良くて、色の配置で鋭すぎず程よい立体感が出ている。鈴仙さんの顔には、見事に"キレイかわいい"が出来上がっていた。すごいなあ。
 僕も、こうなれるのかな。

「目は一番難しいけど、一番重要だからね。目は口ほどにものを言うって、云うでしょ?」

 確かにその通りだが、鈴仙さんが"目は口ほどにものを"なんて言うのは、反則なような気がした。その鈴仙さんが重要だという目のお化粧に取り掛かる。

「じゃあ次これ。アイシャドウだけど……って、どしたの?」
「な、なんか難しそうだなあって。これ、いっぱい色あるし」

 掌程度の大きさのパレットに、5種類も6種類も色が入っててこれを使うのらしい。濃度の違う茶色、オレンジ、黒、青や紫まで入っている。

「そうだねー。でもこれは全部使わなくてもいいんだよ。服の色とか、その時のメイクのイメージとかに合わせて、色を濃くしたり、青みを入れたり紫にしたり、赤っぽくしたり。でもそれは難しいからね、この、茶色のところだけでいいよ」

 鈴仙さんが指さしたのは、5色も6色も入っているパレットの、茶色い2、3色だけだった。

「ファンデーションのときにもゆったけれど、メイクはイメージと立体感が大事なの。本当に大まかに言って、骨にある目の穴、ここが凹んでいて、瞼の眼球がか被ってるところ少しだけ凸ているように出来れば、あとは目の形を好きなイメージに近づけていくだけ」

 だけ、と言われても……。

「まあ、やってみよ。まずは目の凹みを把握しよう。まあ触ればわかるけど、目の玉が入っている穴、これが分かればいいよ。ファンデのときに顔の輪郭付近を濃くして鼻のてっぺんや頬のてっぺんを白く残したでしょう?あれの続きをやるの。眼孔が凹んでいるように見せられれば、顔全体の堀が深く見えるでしょ?だから、基本は肌より少し暗い色を置くよ。でも、妖夢は可愛いふんわりにした方が似合うと思うから、濃すぎないようにね」

 片目を閉じて、瞼全体に一番薄いアイシャドウを塗っていく。肌よりも少し濃いめの色がついた。

「で、上瞼の縁っちょに濃い色を塗っていくよ。目の形をくっきりさせるの。この色を瞼に沿って、そそ。あんまり神経質に細くしなくてもいいよ、均等であれば」

 気楽にやれと言われているのだろうが、そうもいかない。何とか濃い色を塗り終えた。

「中間の色を取って、今の濃い色と最初の色の境界を少しぼかす。色の境目を擦るみたいにね」

 こ、こまかいじゃないかー。とても気楽ではない。

「じゃ、おまけで、眼孔のくぼみを少しだけ強調しよう。今の中間色、濃すぎずちょっとだけ濃い色ね。これを、上瞼の目頭側辺りに置く。あと目尻の方にも少しだけ。下瞼は、目頭にほんの少しと目尻の瞼のラインに沿って。で、今度はそれを最初の色で境界をぼかす。境界だけだよ、引っ張って大きく塗っちゃったりしたら変になるからね」
「ふ、ふぁぁい」

 言ってることが難しいよぉ。
 色を置くとか、ぼかすとか、絵心がないとできないじゃないかぁ。
 こんなの一人でできるようになるのだろうか。

「スパルタですー」
「なにゆってるの。女の子はみんなやるんだから。男の子が女の子になろうと思ったら、これくらい大変なのよ。これでもだいぶ省いてるんだから」
「ふぇぇ」

 もう泣きそうだ。でもこれが一番難しいらしいので、これができれば何とかなるだろうか。

「次。アイラインを入れよう。このペン使うからね」

 開けてみると、面相筆のようになっていて、黒いインクがついてる。

「睫毛の生え際に、うまくこれで黒を入れていくよ。太さは……今回はそんなに強く入れないでおこう2ミリくらいかな」
「に、にみり……」

 だんだん感覚で分かってくるから、なんて笑って言う鈴仙さんだが、僕の方はもう頭がパンクしそうである。
 勝手がわからず緊張して、筆ペンの先がプルプルしてしまう。睫毛の生え際、と言われても、その睫毛のせいで横一直線に引くことはできない。睫毛を巻き込むみたいに、何度か重ねるみたいにして横に伸ばしていった。

「うまいうまい。目尻のほうだけ少し、筆の腰を使って太くしよっか。心持ち強く書いて、すっと抜く。お習字の筆と同じだよ。好みで下瞼の、そうだなあ目尻の方にも線を入れよう。」

 しゅ、習字は両目で見ながら書くし平面に置いてやるよぉ……

 人の顔は球体だから、瞼のラインを横一直線に引くにしても、本当に一直線に引くことができない。球面に沿うように角度を付けながら、おっかなびっくり伸ばしていき、目尻の方は少し、強く塗った。そして筆を上げると、そうか、ぶつっと黒が切れてしまうのか。だから、筆を抜けと言っていたんだなあ。僕はもう一度筆をおいて、目尻から球面に沿うようにほんの少し上に向けて、筆を抜いた。すっと細まって消える黒。睫毛が伸びたみたいに見える。
 下瞼はそんなに強く入れなくてもいいからね、といわれたのでさらに神経質に細く、目尻の方にだけ黒い線で瞼をなぞった。
 目全体の輪郭がくっきりとして、肌の赤と相まって華やかさが出た。なんていうか……色っぽい。

「おー、上手!できたじゃん!!」
「は、はい」
「うんうん、そんな感じ。じゃあ同じように両目ともやってね」

 う、そうだった。右目からやって、まだ半分しか終わっていない。右目だけでも大変だったのに今度は左目。右利きだから、右目がやり易かったのか、左目はとにかくやりづらかった。筆が、目が、遠い……。

「アイシャドウとかラインの入れ方、左右同じようにね。ずれると、変になっちゃうよ」
「はあいぃ」

 そういわれると同じようにするのは大変だった。眉は線を引くだけだったからよかったものの、塗りの面積が違ったりすると目を開いた時の印象が違って……。

「ああああ……」

 案の定ずれた。

「まあ目くらいだったら、一回そこだけ小さく化粧落としで落として、下地塗りからやるといいよ。私もよくやるよくやる」

 そういって、ティッシュみたいな、拭くだけタイプの化粧落としを貸してくれる。
 もう一度やって、ようやく大体同じように目を塗ることができた。

「うんー、いんじゃない?ほら、改めて鏡、見てみなよ」

 鈴仙さんに促されて、少し上半身を後ろに引いて、目を開いて、顎を引いて、自分の顔を見直してみる。

「肌がきれいになって目がくっきりして華やか。チークで入れた赤味も可愛いでしょ?色を使い分けた効果で、顔も小さくなった。」

 その通りだった。自分じゃ、ないみたい。本当に、女の子みたいだ。

「こうやって、だんだん妖夢の"可愛い"ができてくんだよ。じゃ、目はまだ睫毛が残ってるからね。これ」

 手渡されたのは、鋏と洗濯バサミを無理やりくっつけたような妙な道具。何だこれ。

「妖夢は男の子なのにもともと睫毛長いからなー、やんなくってもいいかもしんないけど。これを目に当てて、睫毛を挟んで形を作る道具だよ。あ、肌に当てるから、先に汚れてないか確認してね。一番先と、このゴムパッキンみたいなところを、化粧落としとか除光液で先に拭いとくと安全」

 さっきのティッシュみたいな化粧落としを渡されたので、鋏のお化けみたいな道具を拭く。

「で。取っ手を開いたらここが開くから、ここに、睫毛だけはさむ。挟んだら顎を引いて下を向くよ。で、ビューラ、あ、これね。これを上に向ける。睫毛を上に折り曲げるイメージね。挟むだけでも丸みは出るようにできてるんだけどね。あっ、ちょっと、そんな、上瞼めくれるまでしなくていいからwwww」

 うっ、なんか変だと思ったんだ……。

「ぎゅっぎゅって押し曲げたら終わり。両目にやってね」

 ぎゅっぎゅっ。
 なんかあんまり変わったという感じはしない。

「じゃあ上向いた睫毛にマスカラを塗ろうね。これは、黒い塗料が入ってるんだけど、細かい繊維質が混じった塗料で、睫毛に塗ると塗料同士で絡み合って睫毛が長くなってボリュームを増やすの。最初は、ちょっと怖いかな、目に近いから」

 渡されたペンのようなもののふたを開けると、キャップに棒がついていて、先端にはもじゃもじゃしたブラシがついてる。

「ブラシのカーブを利用して、睫毛に塗料を塗っていくよ。塗るっていうか、粘着質だから絡み付けるっていう感じかな。実際には睫毛の流れとは垂直に、横に細かく動かしたほうがよく塗れる。目尻のほうを少し強めにね。下睫毛も、少ないけどちゃんとやると、違うよ。イメージは、さっき描いたアイラインから睫毛がすらっと長く伸びてる感じ」

 睫毛にだけ塗るなんて、作業が細かすぎて辛い。恐る恐るもじゃもじゃを睫毛に当てる。確かに、睫毛の流れに沿って動かしても全然ついてくれない。歯ブラシするみたいに横に小刻みに動かしながら上に撫で上げると、ついてくれた。

「睫毛の下側だけじゃなくって、上からも塗ると、長持ちするよ」
「上?」
「目を開いてそうやって塗ると、下側しか塗れないでしょ?」
「ああ、確かにそうですね」
「目を閉じて、下におろすように塗り重ねるの。そそ」

 鈴仙さんの言うとおりにすると、確かに睫毛が少し伸びたように見える。でも、睫毛の真ん中くらいからしか塗れてないんだよなあ。もうちょっと根元から付けた方がいいのかな……と思って根元に攻めた瞬間。

「あっ」
「あ、ついちゃった?根元塗ろうとするとブレてつくよね」
「ま、瞼……やり直しだぁ……」

 マスカラの真っ黒が、点、点、と瞼についてしまった。とても見栄えが悪いが、この点のために瞼をやり直すのは大変な気がするし、何よりもう塗ってあるマスカラを考えるとこれも落とさないと悲惨なことになるのではないか。そう思っていたところに、鈴仙さんは割って入って来た。

「ふふー、先輩に任せなさい。こういうちょっとした汚れは、リップクリームと綿棒で落とせるんだよ。さっきのアイラインもほんのちょっとだけのミスならこれで修正できるから。あんまり広い範囲はできないけどね」

 そういって、さっき使ったリップクリームを綿棒の先にとって渡してくれる。それで瞼についたマスカラの黒点を突っつくと、徐々に溶けるように取れるではないか。

「取れました!」
「うんうん。綿棒だけじゃだめで、リップクリームを塗らないと取れないからね。なんかこれに入ってる油分がマスカラ落としに効果があるんだってさ。以上、裏ワザ。」

 教わった裏ワザを使ってミスを修正し、何とか両目ともマスカラを塗ることができた。

「じゃ、この櫛で整えて。睫毛同士、くっついちゃってるでしょ。これで梳かして」

 こんな櫛があるんだ。お化粧って専用道具が細か過ぎて凄い。

「最後にもう一回ビューラで睫毛を上げて……うん。はい、お化粧はこれで終わりだよ。お疲れさま」

 さっき鏡を見た時より、睫毛が長くなって、可愛くなってる。全体的に、顔の前面は、女の子みたいに華やかになった。すごい。

 でも、今は何にもしてなくて顔だけお化粧してるから、短い髪の毛が逆に変。確かに顔は可愛くなってるけど、頭全体としてみると顔だけケバく見える。さすがに中途半端の状態は気味が悪いなあ。ウィッグを被ったらこれが収まるのだろうか。それとも大して変わったりなんかしなくて、これが僕の限界(?)なのだろうか。
 と、思ってたら。

「あーん、この、女装した男の子の、ウィッグつけてなくて顔だけ女の子になってるアンバランスな感じ大好き!妖夢かわいいよお」

 だそうな。さすがに僕はまだその境地にはない……。

「今回は変化を見てもらいたかったから変な順番でやったけど、基本は、下地、ファンデ、目、眉、チーク、唇ってやるといいよ。まあこれも慣れだから、目、眉、チーク、唇、は好きにやり易い順番でいいと思うけど。……覚えた?」
「ひえっ!?い、一回じゃ無理、です」
「まー、そっか。何回か自分でやってみるといいよ。慣れたらそんなに難しいもんじゃないから。大切なのは、イメージすること。自分でこういう風にしたいっていうビジョンを固定して、その通りに作れるようになることだよ」

 そしたら服と合わせたり、ウィッグに合わせたり、気分で雰囲気を変えたりもできるから。そう付け足す鈴仙さん。そしてもう一言。

「お化粧はね、人にしてあげる場合は別として、自分でするときは、私達みたいな"内に籠りがちな性格"の奴は、強いよ。内面に強いイメージ抱えてるから。問題は、それを、ちゃんと出力できること。勿論、万人が似合ってるというかどうかは違うけど、やりたいお化粧をするって点では、間違いない。だから、ね」
「は、はい」

 イメージを、ちゃんと出力できること。それは、自信を持てない僕の、苦手なことかもしれない。
 鈴仙さんは、僕にそういうことを知らせたくてお化粧を……?

「やーん、これで妖夢も立派な、じょ・そ・こ。あー、妖夢と"女の子"同士でどこかにお出かけするの、楽しみだなあ!」

 甘い考えだった。やっぱただ楽しんでやってるな。

「出かけませんよ!鈴仙さんみたいにみんなに理解得られてるわけじゃないですし」
「みんなに見てもらわないと、理解は得られないぞぉ?それに、妖夢ならパスできるって。こんなに可愛い」
「ぱす?」
「外で、ちゃんと女性として扱われるってこと。ほらほら、ウィッグかぶって」
「あ、ええ、ああ」

 促されるままに、選んだウィッグを受け取って、それをかぶる。被ろうとするとなかなか中央がわからない。前髪が耳のほうに来ちゃったり、やたら後ろにずれたり。なかなかうまくかぶれなくて鈴仙さんが手伝ってくれてようやくだ。櫛を手渡されたので、それで毛を整える。

「はーい、かんせー☆"女の子"妖夢ちゃん、でっきあがりー☆うわーーーかわいい、かわいいよおおお♥」

 鈴仙さんは飛び跳ねそうなくらいはしゃいで僕を見ている。
 頭をなでたり、目を覗き込んだり。手を繋いで振ったり、側頭部どうしこつんってくっつけて鏡に向かってみたり。

「ほんと、ほんとにかわいいから♥もうこのまま外に連れてきたい!!♥」
「いーやーでーすーー」
「えー、どうしてー、かわいーのにーーーー!」

 テンション高すぎの鈴仙さんを横に感じながら僕は、鏡に映った僕の姿を見る。
 ちゃんとお化粧して、ウィッグをかぶって、自分ならこうかなって思った自分が、目の前にいて。
 鈴仙さんの黄色い声はだんだんと遠ざかって行く。僕は、鏡の向こうにいる僕から目を離せなかった。

 こんなに、なっちゃうなんて。

 信じられなかった。そして、鏡の向こうにいる"私"に、僕は――。

(ちゃんとした道具を、貸してもらったからかなあ。僕、初めてなのにこんなにきちんとしたもの使わせてもらって)

 僕が初めて刀を持ったとき、それは竹刀だった。木刀だって持たせてくれるまでに随分かかったものだ。自分のイメージと、実際の動きや体の使い方の乖離を埋めて、そしてまた一歩進んだイメージを描いて理想に近づけていく。それまでに竹刀も木刀も経なければいけなかったし、僕はまだ人を斬ったことがない。本当のシアイでどう動けば勝てるのか(生き残れるのか、相手を殺せるのか)全くイメージができなくて、動きにもそれが出ている気がしていた。自信を付けたりイメージ力を向上させれば、何かが違うのかもしれない。それができなきゃ……本当に人を斬って学習するしかない。でも、そんなことはできない。
 だから、ふっとこんな疑問が浮かんでしまった。

「初めてで、こんなちゃんとしたもの使っても、いいんですか?」
「えっ?」

 ばかげた質問だったかもしれない。でも、ズブの素人なのにこんな風にウィッグもお化粧品もしっかりしたものを使ってもらって、そうすることでイメージは一足飛びにリアリティを持って頭に入ってくる。そういうのが驚きだったのは確かだった。でも、その根底にあるのは、メイクというものがイメージの具現化であるということだ。

「まあ……刀とか銃とかと違ってね、別に人を殺すものじゃあ、ないから。なりたいように、なればいいの。だから、イメージに近づけるならツールは最短距離でいい、倫理だ道徳だ方法論だって、おまけみたいなもんだから。メイクは女の子のものだからね、根性論はないよ。でも、手間を我慢するっていう忍耐はいるかも?」

 最後茶化したように笑っていったが、鈴仙さんは僕の言いたいことを汲み取ったかのように、"刀"という言葉を含んだ。

「メイクはね、こういう顔にしたい、こういう色合いにしたいっていう想いを、ストレートに自分の体に描くものなんだよ。妖夢は顔が優しいから、ふんわりした色合いで陰影も柔らかく、そのために使うものの色の差を抑え目にして、シャドウは付けすぎないように、とかね。それは、妖夢がきっと今そうだと思っている妖夢の姿を、より強く綺麗に描き直すって意味。逆にもっと強そうな顔になりたい、って思ったら陰影を強くつけて、使う色も激しくする。強いイメージを具現化するためのメイクをするんだよ」

 ウィッグにブラシを通しながら、僕を女の子にする最終調整。鏡に映る鈴仙さんは、どこか優しい表情をしていた。

「そうやって、自分の"なりたい"をイメージしたものが、メイクすることで本当に自分の体の一部になったとき、すごく、自己実現を感じるの」

 そして、僕のウィッグの毛先を遊びながら、でも鈴仙さんの目はウィッグなんか見ていなくて、鏡越しに、僕の目をまっすぐ見ている。そのまま一言、付け足した。

「それって、自信、ってやつだと思うんだ」
「自信……」

 勿論、逆にすっぴんに自信がなくなるとか、そういうのもあるけどね。そう笑う鈴仙さんだけど、その"自信"のあり方に、すごく勇気づけられた気がする。

「お化粧に、そんな力があったなんて」
「元々、化粧はBuff効果を期待した魔術行為だからね。効果は魅了<チャーム>ばかりじゃないんだよ。鏡もね、そうやって自分にかけた魔術を、より強くする増幅器<タリスマン>になるの、使い様よ」

 鏡は使いよう、と言った時の鈴仙さんの目が、普段とは違う色を宿したような気がした、けれど僕にはその中身なんか全然わからなくって。
 自信、とか言うものについて、僕は昔から色々と精神論は言われ続けてきた。それを叩き込もうとしても、でも全然身に入らなくて、お前は不能者だと言われたこともあるし、実際にそう自覚せざるを得ない場面も多くて。
 でも、鈴仙さんのくれた女装(自信)は、たったこんなことで、すぅぅっと、胸の奥に入ってきた、不思議なくらい。自信というのが、イメージと実態の一致だということは頭では嫌というほどわかっていて、でも全然心で理解できてなかったのに、化粧をしてみてそれがいきなり明るく開けた。
 こんな、気持ちのいいものだったなんて。

「まー、あとは自分で何度もやってみることかな。失敗して悲惨な顔になって全部落とすとか言うこともあるけど、忍耐&継続。それは、今までずっと男だ女だなんてクソみたいな境界で我慢したり、剣術もずっと頑張って来た妖夢ならもう、出来ると思うし」
「はい……。ありがとうございます」

 僕は、鏡に映った自分の姿を、改めて見直す。
 お腹の底が、じんわりと心地の良い熱を持っているのを感じた。







 草木も眠る丑三つ時。幽霊の住まいである白玉楼にとってはこの時間こそが真昼のようなものだが、この世界の幽霊は外界に慣れきっていて……幽々子様はこんな夜中にはぐっすり眠っている。普段なら、僕も寝ているところだった。
 でも、今日は、起きている。
 鈴仙さんにしてもらったメイクを、一人でやってみようと思ったのだ。貰ったスカートや下着も、ちゃんとある。あの日にした女装を、化粧さえきちんとできれば再現できる状態ではあった。さっきお風呂で……脚と腕の毛は、処理してきた。実行するだけだった。どきどきする。だれも、見ていやしないのに。
 
 せっかく教えてもらったからちゃんと覚えなきゃ、なんていうのは自分への言い訳で、実際は鈴仙さんの言っていた通りなのだ。メイクして女の子の服を着て鏡の前に立った時、脚の先から頭のてっぺんまで、酷く"しっくり"来たあの感覚が、忘れられなかった。胸の奥から、じわじわと熱い安心感があった。安心感っていうのは、静かで穏やかでもっと波打たないものだと思っていたけど、あの激しく脈打つ煮えたぎったような感覚は、間違いなく安心感だった。満足感と直結していたかもしれない。

 自信。

 女の子の格好をすることで得られる自信なんて、と馬鹿にされるような気はしていたけど、今までどうしてもどうしても手に入らなかったあの昂る感覚、でも脚は地にしっかりついていて自覚、まさにあれは自信と言えるものを、心の底からやっと初めて感じた瞬間だった。
 僕は、あれを手に入れなければいけないのだと思う。
 どんな言葉にも直せない、表現できない全能感と、だのにどっしりと腰が落ちる感じ。
 それに。
 
(きもち、よかった)

 肩を、抱いてしまう。あの時上がった心拍数。過熱した呼吸。鏡を見ている間、瞬きだって惜しかった。自信以外に感じたのは鏡の向こうにいたもう一人の自分への感動、自分があんな姿になれるなんて。自分の理想像など描いたことなかったけれど、もしかしたら、あの鏡像が、そうなのかも知れない。それを、確かめたかった。

 自分用の姿見、ちゃんと使える鏡は自分の管理下にはこれしかなかった。姿見の前にテーブルを置いて、鈴仙さんの部屋にあったドレッサーのロケーションを真似る。鈴仙さんからおさがりで貰ったお化粧品ひと揃えを並べて、その前にちょこんと座ってみる。
 鏡に映る自分の姿は、滑稽なくらい男だ。男らしさのかけらもないといわれる外見だけど、こうやって見るとどう見ても男なのだ。男らしくないのに男でしかないなんて、なんて惨め。でも、そこから踏み出そう。
 僕は頬っぺたを掌で挟むようにぱんぱんと叩いて、鈴仙さんに教わった順序を思い出しながら、‟女の子の僕‟を作り始める。

 やっぱり目周りで失敗しちゃって塗り直しをしたりしたけれど、同じようにできた。鈴仙さんは出来上がりをイメージしてそのビジョンを自分の顔に描くように、と言っていたけれど、そんなことをする余裕はなかった。ただ、言われたことを思い出してその通りに再現するのでやっと。
 でも、十分だった。

(でき、た)

 1時間くらいかかっただろうか。不慣れなメイクでも、一通りようやくこなして、ドレッサー代わりの姿見とテーブルの前で、ふう、と息を吐いた。
 あの日に見た‟女の子の僕‟が、鏡の前にいる。鈴仙さんにしてもらったのと比べたらちょっとへたくそかもしれないけど、男からは遠ざかっていた。何より、それを「自分の手で作り上げた」という実感が自分の体にしみこんでくる感じ。化粧が魔術だと言っていた鈴仙さんの言う通りだ。
 ウィッグを被って髪の毛を整える。シャツのネクタイをリボンに変えて仕事着のジャケットを着直す、頭に、控えめだけど女の子らしくヘアバンド。ズボンは……スカートに差し替えてある。ジャケパンではズボンに隠れてしまうのでほとんど意識しない靴下だけどスカート姿になると靴下も重要なファッション、そうして見える靴下に包まれた足も、もはや男のものではない。おかっぱに切られているけどそれでも前髪が長めになっているウィッグは普段の髪の毛の色と別で、視界にちらちらと入るたびにウィッグの存在を意識させられる。ふくらはぎから太腿にかけて、着衣状態とは思えない風通し。スカートをはいているんだ、女の子の格好をしているんだ、という実感が込み上げてきた。

「これ、僕……」

 化粧台代わりにしていたテーブルをよけて、姿見の前に立つ。
 おかっぱの髪型は、幽々子様の波打つセミロングと対比して、失礼にならない範囲で被らないように、を考えたものだったけど、もしかしたら、これが、僕の中の、理想だったのかも知れない。すごく、しっくりきていた。

 銀髪ウィッグにヘアバンド、リボンで飾った胸元にスカート生足。女の子の姿で、僕は帯刀してみた。物凄い罪悪感。妖忌じいちゃんから受け継いだ銘刀を、女装姿で帯びるなんて、なんて罪深いのだろう。
 鏡に映った僕、胸元にひらひらゆれるリボンに、動くたびに揺れるスカートは、可愛らしい。そこからのびた脚は白くてすらりと綺麗。ちらりと見える太腿、形のいいふくらはぎはソックスに包まれて引き締まっている。足首はくびれていて踝まで続く曲線は、健康的な艶めかしさを宿している。

 僕、なの?これ、僕なの?こんなに、こんなに、僕……。
 これが、僕。これが、僕だなんて。僕、こんなに、可愛くなれるんだ。

 鈴仙さんにしてもらったときは、こんな風に自分を凝視出来なかった。こんな風に、自分の姿を、嘗め回すみたいにできなかった。一人で女装して、初めて、こんな風に見れて、自覚出来て……あの日よりもずっとどきどきしてる。

「かわ……い、い」

 鏡の向こうの僕、チークを強く入れすぎちゃった?いや、僕の顔が、赤くなってる。ドキドキして、呼吸も熱くて。銀髪に包まれた、綺麗に整えられた肌理と、くっきりの目、紅の差す頬、艶のある唇。鏡の向こうの僕の姿に、僕は、見惚れていた。鏡を掴んで、鏡の向こうにいる僕自身の肩を掴んでるみたいな錯覚。自分の顔に、見入って、すごく近く近く寄せる。鏡の向こうの僕と、キス出来ちゃいそうなくらい。

「私、可愛い」

 自分で、自分の名前を呼んだ。自分が可愛いだなんてきちがいだ。でも、その言葉を口にした瞬間に、体中が燃えるように熱くなった。体中を巡る血流が炎を宿したみたい。熱い、激しい……気持ちいい、嬉しい!
 でも、でも、私にはこの姿が、一番、しっくりきたんだ。今までで一番、自分を感じた。
 これが、魂魄妖夢だって、心の底から、感じた。これが、私だって。

(自己、実現……)

 鈴仙さんは、女装を自己実現だと言っていた。こうすることで、望んだ自分のイメージと実態を一致させられるという、自己同一性の自覚。
 
 即ち、自信。

 左手を刀の頭に乗せた状態で、上半身を少し前に倒して右飛手の人差指を唇に添えてポーズをつけてみる。立体感をつけることで小さく見えるようになった顔、アイメイクでくっきり大きく見える目、赤みの差す頬、グロスで照り返す唇、女の子らしい髪型、リボン、スカート。鏡の向こうの私、女の子だ。ちゃんと、ちゃんと可愛い女の子だ。
 再び鏡の向こうの自分に目を奪われる。自分がこんなに可愛いなんて思っていなかった。可愛いなら、可愛いでいいじゃないか。男らしいなんて、手に入らないのならもう、要らない。可愛いがあればいい。これが、私で、いいじゃないか。こんなにも、可愛くなれるんだから。

「妖夢、私、魂魄妖夢……」

 譫言みたいに独り言を言いながら、姿見にかじりついて離れられない。鏡の向こうにいる私が、愛おしい。私の姿が、愛しい。だって理想の姿なんだもん。可愛いんだもん。安心できるし、完全なんだもん!

 ふと、私の後ろ辺りでふよふよと浮かぶ、私の半分、が鏡越しに目に入った。







 それはいつも私の深層心理をくみ取って半自律で僕の後ろをくっついてくる。放っておけばとくに何をするでもないのだけど、そうしようと思えば"一応は"自由に使うことが出来た。半霊。
 妖忌じいちゃんは三本目の腕があるような感覚、と言っていた。人間の脳は人間の体を動かすように神経内命令系統が出来上がっているのだけど、訓練次第で半霊も体の部位一つとして直接伝達の命令回路が形成されるのらしい。僕はまだそこまでではなくて、予め半霊に自律行動を許可する指令を出しておくか、逐一集中して半霊を対象にした思考モードの時間を作らなくてはいけない。……と、思っているし、実際そうしなければあの子を使うことが出来ないでいるのだけど、妖忌じいちゃんは‟自分で出来ないと思っているだけだ‟と僕をいつも叱っていたし、幽々子様も半霊をクッションか何かのように抱いては「もうこの子を自由に使える段階にいると思うのだけどねえ」と仰っている。
 つまり、僕がただうまく使えないだけなのだ。足は完治しているはずの車椅子の子が、未だに立てないでいるのは、ただの気の持ちようでしかないという、例えばそういうやつなのらしい。そうはわかっていても、やはり三本目の腕があるとかそう言う感覚にはなれなかった。

 ……さっきまでは。

(すごい、私、だ)

 女の子の格好をした自分の姿を見て、まるではめようとしていたパズルのピースが裏表逆だったと気付いてしまったように、そうして裏返してみればはまらないのは当たり前であることもわかったし、何よりそれがぴったりと、本当に寸分のずれもなく鳥肌が立つくらい一致してしまったような、安心感と爽快感と全能感と、そして恍惚感。自信はそういうところから突然に表れて、僕の体を私の形に形作ったのだ。世界の中にぼんやりと輪郭を持たない不安定な存在だった僕が、くっきりと私の形に出来上がった。
 自他境界輪郭の認識がはっきりすると、僕の体は頭のてっぺんから足の先まで完全に僕のもので、その隅から隅まで僕のものだという自覚が生まれた。まるで頭から指先まで通じていた神経全てがすっかり高性能の新品に入れ替わったみたいに、感覚は鋭敏でクリア。どこかおもりを括ったようだった僕の体は、今はその鈍重さから解放されている。

 そうした状態で半霊を見ると、それも例外ではなかった。

 あの子はあんな霧の塊のような姿をしているが、形が違うだけの人間の幽霊なのだ、人間と同じ五感が備わっている。どこに目鼻口があるのかは知らないが、‟視え‟たりもする。その、あの子が得ている感覚を、今までは頭の中にそれ用の思考空間を用意したり占有させたりして別々に処理しなければならなかった。つまり、例えばあの子に持ってきて貰ったモノを僕の手で受け取ってあっちに持っていく、というリレーをするとき、ここまで持って来て貰うもらうのにはあの子になりきってすっかりと思考をそちらに譲渡しなければならず、逆に受け取ってからはあの子はただ僕の後ろをくっついて歩く浮遊物でしかなくなってしまったのだ。
 でも、今は違う。
 姿見の向こうにいた半霊が目に入ったとき、それは後ろに浮いている別体の半身、ではなく、まるで自分の体の本当の一部がそこに映っているという認識に変わっていたのだ。これが、妖忌じいちゃんのいっていた三本目の腕感覚なのかもしれない。僕は"こっちにこい"とか"あっちにいけ"とかそう言う指示によってではなく、まるで自分の足で歩いていくときと同じように、あの子を別の場所に誘導できた。刀を遠く置いて自分の所までもってくるのに、"持ってこさせる"のではなく、ただあの遠く離れた刀のところまで手を伸ばすのと同じような感覚で刀を懐に持ってくることが出来た。如意、とはこのことと知ったし、これが、自信、あるいは自己同一性を得たことによる効果であるのなら、僕は、私を認識することで、生まれ変わったのに違いなかった。

 僕の姿は、この私の姿で、正しいんだと認識した時、僕は半霊を、すっかり自分の姿と同じ形に作り上げることが出来るようになっていた。姿見に映っていた私と同じ、完全な私の姿を、自分の外側に描くことが出来るようになっていた。
 今、半霊は、完全に僕と同じ姿になっている。化粧をして女の子の姿になった可愛い私の形になって、僕の前に立っている。

「私、だ………」

 鏡像と違って、立体的に触ることが出来る。くりくりした目、柔らかそうなほっぺた、ぷっくり艶のある唇。私ってこんなに肩、細かったんだ。腕も、何もしていない子に比べれば筋肉質だが、武道家というには程遠い。でも妖忌じいちゃんと違って、ほとんどを霊力でフォローする使い方をしているからか、余り筋力が発達していない。そういう使い方をするならそういう鍛錬をしなければいけないのに、自信がなかったからそう踏み出すこともできず、どっちつかずになっていた。脚もそうだ。見栄えはいいけれど、敏捷が必要な場合には霊力飛翔でカバーするようにしていたから、引き締まってはいるものの一見すればこんな足でけられたところで痛くも痒くもなさそう(それなりの威力は確保しているつもりだけど)。
 でも、それを含めて、今なら自分の目指す型を自分で決められる気がした。

 半霊の、私の肩を、触る。細い。華奢で、ぽきりと折ってしまえそう。でもそれが愛おしい。抱き寄せてぎゅうと締め付けたくなった。

「妖、夢……可愛い、よ」

 目の前の私を、呼ぶ。メイクで作り上げられた綺麗な顔立ちの私が、その目で、私を見返した。
 かっと、体が熱くなる。自分で、自分から目を逸らしてしまった。恥ずかしい?いや、目の前にいる可愛い女の子に視線を貰って、僕は照れてしまったのだ。

「ぁぅ」

 勿論、目の前の私は私自身でしかなくて、体は二つに分かれているけど思考は一つに統一されている。私を見る僕の目は、僕が見る私と等しい。わかっているのに、目の前の子が可愛いのと、自分がこんなに可愛いのと、二重に、頭と胸が沸騰する。
 私は僕なのだから、好きにしたって構わないのだ、抱き寄せたいと思ったから、恥ずかしいけど、そうしてみた。
 とん、と僕の胸に倒れ込んでくる私。私は何も言わない、でも、‟あ‟と言いそうな口の動きのまま僕の胸の中にしなだれてきた。胸同士が重なるが、女の子のような厚みはない、でもその薄っぺらさが庇護欲さえ掻き立ててきて仕方がない。ふわり、ウィッグが靡いて倒れ込む瞬間の上目が、僕を見ていた。上目遣いの私、物憂げで、儚そうな雰囲気、でも男のカドがほんの少し残ったエキゾチックな幼さ。こんなに可愛い私を、僕は好きにできる。

(僕、なに、考えてんだろ)

 抱き寄せた私に、僕は、そのまま口付けた。リップクリームと口紅、それにグロスで潤い過剰の私の唇は、ぷるん、と弾力を以って僕を受け止めた。

‟んっ‟

 反射的に漏れた私の声は、僕が出したものではない。呼吸の一環で漏れたのだから僕の意識下を離れている。そのせいで、私が僕じゃないように感じられて、その吐息の色っぽさは僕の情欲を増幅するのに十分だった。そばで感じる私の匂いは、化粧の芳香。女性の象徴みたいな香りが僕と同じ姿の私から漂って、僕は心臓が爆発しそうになってしまう。

 僕は幽々子様以外に、身近な女の人を知らない。幽々子様の従僕である以上、次に顔を合わせる機会の多い紫様は、そういった存在ではなく、遥か高みにいる方。それ以外にはもう、近しい女性は知らなかった。鈴仙さんをそこに含めていいのかは疑問であるが、鈴仙さんつながりでお顔を拝見する方も、近しいとは言い難い。
 それに加えて、目の前の私は、自分の理想の女性像かもしれない。だって、可愛い。こんな私が、僕だなんて。女の子の自分が、今の僕にとってはとんでもなく性対象だった。

 私の唇は、吸い付くみたいだった。メイクのせいでしっとりと湿っていたからだけれど、その感触は僕には余りにも刺激的。一回離れて、私を見る。閉じてられていた瞼、睫毛は長くてくるんとカールしている。それに守られるみたいにくりくり動く瞳は、アイラインに輪郭を艶めかしく象られている。僕は私の目に視線を吸い込まれて呼吸が止まってしまう。柔らかそうな頬っぺた、私の唇を離れた僕の唇は、頬に導かれる。何度も何度も、お化粧品の香りを胸いっぱいに含んで、可愛い私を掻き抱いて、ほっぺたにもいっぱいキスした。そのまま耳元の髪にまで鼻先を突っ込んで耳にもキスをしたら、ウィッグの下にある黒い髪が少し覗いた。女装の証拠を目の当たりにしても尚、私に欲情している僕を、もう否定できなくなっていた。

「妖夢……っ」

 僕は、私の名前を呼んで、私を畳の上に押し倒した。もう一度、唇を吸い合う。

(妖夢っ、妖夢ぅっ♥)

 頭の中で私の名前を呼びながら、僕は何度も何度も私にキスをして、唇を割って舌を入れた。僕の舌はねっとりと体温が上がった唾液を含んでいて、私の舌とすごくいやらしく絡み合って音を立てている。

"んっ、ぅ"
「ふぁっ……ん」

 可愛い、私、可愛いよぉっ♥

 僕は私のジャケットの前ボタンをはずす。リボンを解こうとした手が、どきどきで震えていた。するすると結びを引っ張るが、乱暴をしてしまいそう。僕なんだから乱暴したって平気なのだけど、もうよくわからなくなっていた。目の前の私は僕にとっては体を許してくれる可愛い女の子にしか見えなくなっていた。
 リボンを抜き取って、シャツのボタンを外そうとする。だが、いつも着替えをお手伝いしている幽々子様の服とは、合わせの上下が違ってなかなか巧く外すことが出来ない。手間取る僕を見て、私は僕の手を制して自分でボタンを外して見せた。私が一つずつ、一つずつゆっくりボタンを外すと、僕の目はゆっくり開いていく私の胸元を瞬きも推しそうに見ていた。だがゆっくりとボタンを外す私に焦れたのかその目がどんどんぎらついていき、そしていよいよ僕は私の手を払いのけて乱暴にシャツの前を引きちぎるように開けてしまう。私はブラを着けていたけれど、僕にはもう私の背中に手を回してブラをきちんと外すような余裕なんかなくて、ただ荒々しく上に押し上げて私を半裸に剥き上げた。
 本物の女の子ではないのだから、当然ブラの下に膨らみはない。それでも男にしては貧弱すぎて薄い胸板はまだ二次性徴の現れていない女児のようでもあり、そこから連続する鎖骨のふくらみはほっそりとして華奢さを感じさせる。そこに出来るくぼみの曲線は性アピールする部分ではないにも拘わらず妙に、そそるものがある。

「妖夢ぅっ」

 僕は私の名を呼んで、それはまるで求愛の声。僕は自分のシャツの前も開けて、私と同じように白い肌を晒した。それを脱ぐときの仕草が、自分でも判るくらい女。お互い上半身をはだけ合って、白い肌を見せ合う。興奮する。私、こんなにきれいなカラダして……僕は思わずもう一度私に口付ける。今度はそのまま上半身を倒して、はだけた肌同士を擦り付けた。思ったより、熱くなっていて自分でもびっくりした。どきどきが、想像以上。

「こんな、にっ」

 上半身同士をくっつけると、胸が、ぴったりの位置。当たり前、私の体と僕の体は、同じなんだから。乳首同士が、ぷりぷりと頭を当て合って、快感電流が生まれる。男でも、キモチイイ場所だったなんて。

「あっ♥ああっん♥僕の、乳首、ぴりぴりするっ♥」

 粘膜ではないのに、他の皮膚とは違う柔らかな場所。男の子はそこを触ったり感じたりしない場所。でも、今の僕は、私とその場所を擦りあわせて気持ちよくなっている。
 サイズぴったりの私と僕、唇を合わせたままで胸も同じ場所。それに、あそこも。

「は……あ、こ、こ……」

 鈴仙さんにしてもらったときはとてもそれどころではなかったのでなりはしなかったのだけど、今こうして一人でだれの目もない夜、目の前にいる可愛い私と上半身をはだけてキスしながら乳首を擦りあわせたりなんかして、そう、ならないわけない。

「おちんちん、おっきく、なっちゃう……♥」

 鈴仙さんからもらったシンプルだけどちゃんと女の子用のぱんつ。とてもおちんちんを中にしまっておくような許容量はなくって、こんな風に大きくなってきちゃったりすると、すっごく窮屈……ううん、あっという間に外に出ちゃった。僕のそれは今はすっかりスカートを持ち上げてるけど、その先には同じようにスカートを持ち上げてる私のおちんちんがあって。その先端同士が当たると、もどかしい快感が走った。

「ふあ、おちんちん……同士……っ♥」

 誰の目もないこんなところで、何かを憚ることもない。僕はすぐにスカートの裾を持ち上げて、私も同じようにする。はだかんぼになったおちんちん同士を、僕と私は、キス、させた。

「ぁあぁっ!♥こ、これっ♥」

 すごい。目の前にいる私、こんなにもかわいい女の子なのに、おちんちんが生えていて僕のそれと当たってるなんて。とくん、とくんと先っちょからえっちなお汁が溢れる。先端同士がちゅっちゅってするたびに、二人のおちんちんがまん汁がくっついて、擦れるとぬるり、そして離れると名残惜しく糸を引く。

「きも、ち、おちんちん同士って、こすれたら、こんなぁぁっ♥」

 粘り銀糸が途切れる前に、僕はたまらずまた先端同士をくっつけた。ううん、今度はもっと深く。僕は私をぎゅって抱き寄せてまたキス。乳首同士をくりくり擦り付けながら、僕はおちんちんの先で、私のおちんちんの裏っかわを上下に擦る。亀頭に摩擦以上の熱が生じて、燃焼する快感で膝が笑う。

「んおぉっ♥おちん、ちんんっ♥」

 私の裏筋を先端で往復するだけで、僕の視界は焦点を失っていた。焦点が合わずにぼんやりと白みがかった視界の奥で、また私にキスする。今度はディープキス。さっきから何回もキスをしているせいで、私の唾液はどろっと固く粘っている。それが、もっと気持ちいい。口付けながら、手で私の乳首を左右とも優しくなでる。指の腹でぽっちと勃った乳首を左右に撫で上げ、乳輪を円を描くみたいにくるくる回す。同じことを、私も僕にしてくる。すごく、キモチイイ。

「ン♥んぅぅうっ♥ちくびっ♥僕、乳首で感じる女の子になっちゃったっ♥すごいっ、胸の先っちょがこりこりに勃っちゃってる♥」

 そういいながら、腰をくねらせておちんちん同士を擦りあわせる。体がくっついていることが幸福感を生むと気づいてからは、お互いのおちんちんをおなかとおなかで挟んで上下に擦るような動きに変わっていった。二人の先走りがお互いのおちんちんとお腹をぬるぬるに濡らす。ぬるぬるに濡れると、擦れた時もっとキモチイイ。

「っあ♥ああぁあん♥妖夢、妖夢のおちんちん、きもちいいっ♥僕のおちんちんきもちいいよぉっ♥おちんちん同士ぬるぬるさせるの、止まんないよぉっ♥」

 再び体を密着させて、手とて、口と口、胸と胸、乳首と乳首、おなかとおなかとおちんちんとおちんちん、吐息と喘ぎを二人でくっつけて擦りあわせる。
 こりこりにしこった乳首は、そこに当たる私の乳首の形を伝えてくる。口はもう唾液で洪水。自分とするきすがこんなにも甘美で気持ちよかったなんて。サイズがぴったりだからなのか、口の中の気持ちいいところを無意識の内に自分で攻めてしまうからなのか、キスだけでもぞくぞく興奮する。全身を上下に揺らして擦って、体のどこでだって私の体と触れ合うと気持ちよくて幸せになる。

 すりっ、すりっすりっ

 全身を擦り付けて。

「ちゅっ……くちゅ、んっはふ♥」

 口と口を溶けあわせて。

 こりっくりこりっ

 乳首同士を重ね合わせて。

 にちゅっ、くちゅっ、ずるっぬるっ

 おちんちんどうしを擦りあわせて。

 僕は自分の体に完全に欲情して、自分の体とえっちなことするのに、没頭してしまう。
 だって、こんなに可愛い女の子なんだよ?私、こんなにえっちで、僕とおんなじところが気持ちよくて、でも女の子で、ココだけ男の子で。

「ようむっ……かわいいっ、ぼくかわいいよぉっ♥」

 自分の体に欲情するなんて、最低だ。でも、でもこんなに気持ちいいのは、自分の姿はこれなんだってわかった解放感と幸福感、全能感と充足感、自信、そんなものが全部合わさって、恍惚感に変化しているからだ。
 自分の手でするのとは全然違う。
 自分じゃない誰かとエッチなことをする自他境界は今まで苦手で全然だめだった。でもこれは自分だから。自分だってちゃんとわかった自分、しかもこんなに可愛い。いつでも自分の傍にいて、いつでもえっちできるもう一つの体。

「ぼく、じぶん大好きになっちゃうよぉ……♥」

 漏れる声は女の子。愛欲に媚に媚びているけど、男。それに、目の前にいる求愛相手は自分自身で、相手も男。なんて、倒錯。

ふーっ、ふぅぅぅっ♥

 おちんちん同士の摩擦がどんどん早くなる。上下に動かすだけじゃなくて、雁首の左右両方で感じられるように腰角度を変えながら、体ごと揺すって擦る。雁首の反り返りが、亀頭の先端で突かれて、雁首同士引っかかってそれごとに脳みそが上の方に引っ張られるみたいな快感失神寸前を行き来する。膝に力が入らなくて、僕は私を壁に押し付けて、壁に体重を預けながら体を密着させている。

「あっ、あっあっあっあっあああっ」
”あっ、あっあっあっあっあああっ”
「んぅっ、妖夢、妖夢妖夢、おちんちんきもちぃいいっ♥」
”んぅっ、妖夢、妖夢妖夢、おちんちんきもちぃいいっ♥”
「イクの、僕、可愛い僕、自分の女の子の姿とエッチなことしていくの♥女の子になったのに男の子でイクの♥」
”イクの、僕、可愛い僕、自分の女の子の姿とエッチなことしていくの♥女の子になったのに男の子でイクの♥”
「可愛い、可愛いよ妖夢、可愛いっえっち、えっちな妖夢かわいいっ♥」
”可愛い、可愛いよ妖夢、可愛いっえっち、えっちな妖夢かわいいっ♥”
「あっ、イク、イクイク、おちんちんイク♥可愛い妖夢とおちんちんえっちして、イクっイクぅっ♥」
”あっ、イク、イクイク、おちんちんイク♥可愛い妖夢とおちんちんえっちして、イクっイクぅっ♥”

「”妖夢、妖夢妖夢妖夢可愛い妖夢、可愛い、可愛いっ♥僕可愛いの、えっちなの、僕キモチイイ可愛いっつおちんちんイク♥僕、僕のおちんちんで、僕気持ちよくなってる♥可愛い僕、イク、イクイクイクっ♥いっくぅぅっぁぁああああああああああぁぁぁあああっ♥”」

 びゅくん♥びゅくびゅくっ♥

「ハ……ひ♥」

 僕と私のおちんちんは同時に射精してお互いのお腹に、今までで一番沢山の精子を吐き出した。簡単に止まらなくて、おちんちんが射精痙攣するとお互いのおちんちんに触れて擦れてまた射精して。目の前にいる可愛い僕の顔が愛おしくてキスして、乳首摘まんで、また射精して。私の体を壁との間に挟んで押せば、融合できちゃうんじゃないかってくらいぎゅうぎゅう押し付けて、息するのももったいないくらいキスして、また射精して。お腹の間が精液でべとべと。ぬるぬるでお腹同士に糸を引く。ぬるぬるした感触が気持ちよくてまた擦りあわせちゃって、またイク。

「んっ♥うぅっ♥おわん、にゃひ♥僕可愛すぎて、僕とのえっち終われない♥」

 そのまま、余計に数十分もペッティングで射精を繰り返して、自分の体を愛した。

 流石に膝が経たなくなって、二人で崩れる様に壁際にへたり込む。それでもまだ、僕は可愛い私にキスをやめられない。お互いのおちんちんを手で触りあって、もう射精するものが何も残っていないまま、ただ射精痙攣だけを繰り返す。

「んっ♥ふひ♥も、もぉ、おちんちんこわれちゃう♥でも、とまんない♥可愛い僕に手コキされて、もう何も出ないのに、またイク……♥」

 意識がどんどん遠のいていく。僕も私も虚ろな意識のままお互いの体を愛撫し合って、最後にぷつっと、僕も私も、眠りに落ちてしまった。







 久しぶりの弾幕ごっこだ。
 と言っても、僕と鈴仙さんの間の弾幕ごっこはちょっと性格が違う。
 弾幕ごっこと言っても、僕は刀と少しの霊弾が主体だし、鈴仙さんは銃とCQCが主体。儀式色や遊戯性の高い普段の弾幕ごっことは違って、練習試合の色合いが強い。お互いに守らなければいけない人がいるから、その鍛錬も兼ねている。ちょっと本気モードなのだ。下手をすると、リアル負傷もある拡張ルールで行う。

 毎回毎回、僕が負けている。
 前にも言われたけど、その理由は明らかに、僕に自信がないからだった。

 でも、今日は、違う。

 試合会場にはいつも竹林の深くにある開けた空間を使っている。幻想郷としてもはずれの方にあるし、この竹林は色々な魔術がかかった空間で多少ヒドイ暴れ方をしても平気なのだという。
 今日も、ここだった。
 試合会場に現れた僕を見て、鈴仙さんは目を見開いた。そして、満面の笑み。嬉しそう。そりゃあそうだろう、鈴仙さんからすれば、思惑通りでもあるのだ。

「わあ!妖夢、女の子の格好で来たんだ!試合で女装かあ、おねーさんうれしい!可愛いよ、すっごくにあってる。メイクもばっちりだし……何より、今までと雰囲気、全然違うよ」

 最後、鈴仙さんの声が、トーンダウンする。もう、試合モード。でも、それだけじゃない?

「雰囲気、可愛らしくなったとかじゃなくって、強くなったみたい。オーラが全然違うよ。――吹っ切れた?」
「たぶん、お陰様で」

 僕は、鈴仙さんにもらった、女の子の格好で試合に臨んでいる。ウィッグが風になびくけど、それももう、一体感。自分の体は、こうだっていう、統一感。同一性。

「そっか、じゃあ私も気合入れないと、だめかな」

 鈴仙さんの顔が、引き締まる。
 私も、呼吸を整えた。

「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」

 お互いに軽く一礼。
 僕は、楼観剣の頭に手をかける。

「……先に、どうぞ」

 僕の一撃からはじめるということらしい。僕が踏み込み、あるいは牽制の霊弾を発射するところから試合開始になる。
 鈴仙さんは一見何も装備していない丸腰のようだが、そうではないことくらいはもう何度も手合わせしてもらっているので知っている。必要に応じてどこからともなく銃を手中に生じて射撃を行うのだ。弾幕ごっこでのスタンスは、もともとの鈴仙さんの戦闘スタイルを遊びに砕いたものらしい。
 僕は弾幕ごっこのときと違い刀での攻撃がほとんどで、申し訳程度に中距離への射撃を用いる。得物とスタンスから言って極端な近接タイプ。対して鈴仙さんは、射撃をメインにする遠距離タイプ……というわけではない。遠距離では狙撃銃、中距離ではアサルトライフル、近距離では銃剣化した二挺拳銃(アンダーマウントにナイフが付き、トリガーガードは厚く少し広くカスタムされている)での独自CQCと、オールラウンドに立ち回る術を持っている。
 ただ、鈴仙さんのCQCは優秀だけれど、近距離に踏み込めば僕に分がある。ついでに言えば、僕の楼観剣は物干竿と揶揄されるほど、長い。リーチに収めるには普通の刀よりかは、有利なはず。アサルトライフルでは近すぎて立ち回りづらく、拳銃剣では不足な距離は、僕の距離だ。それはわかっている。わかってはいたけど、それがずっと実践できないままだった――

――この間、までは!

 僕は腰を落とし、鈴仙さん間での距離を測る。8メートル。この距離なら、一足だ。だが、それは鈴仙さんも承知していることだろう。僕が動けば即座に回避行動に入り、そこからカウンターの射撃が来る。問題は、一足踏み込むときの、速度と、深さ。

(足りるか?)

 前までの僕なら、一足の判断はしなかったかもしれない。中ほどでもう一歩をはさみ、その一歩で相手の動きを判断しようと、優柔不断をやっただろう。でも、今は違うんだ。

(届く。鈴仙さんは、左に体をそらして、拳銃剣を差し込んでくる。それごと、薙ぎ飛ばす!)

 絶対の信頼、自分へ。失敗したらそのとき対応「できる」。

「いきます!」

 僕は、腰を落とした体勢から太腿、脹脛、足の裏に一気に力を込めて踏み込む。鈴仙さんの手前?いや。

(回避する方向その奥まで!)「ハぁっ!」

 僕の踏み込み速度と距離を見越してほんの少しスウェイバック、そのまま左に逸れて拳銃剣を差し込もうとしたが、それは僕が思ったとおりでもある!回避行動そのものを飲み込む深い踏み込み、躊躇の無い飛水断ち。

「っ!?深い!?」

 想定外の踏み込みの深さに、回避モーションが大きくなる鈴仙さん。楼観剣の長さ、パワーを十分に発揮して放たれる水平に断つ斬撃は、上下どちらかに交わさなければならない。鈴仙さんは下方へそれを回避し、しかし回避しただけではなくあろうことか横に飛ぶ刀を銃床で上へ弾く。並大抵の動体視力ではない。受け止めるのではなくただ想定外の方向へ力を加えて弾かれるだけでも、こちらの攻撃後ディレイは格段に大きくなってしまうのだ、流石、鈴仙さん。
 僅かに遅れた僕の体勢リカバリの間に、鈴仙さんは低い姿勢のまま腕を伸ばして、刀を弾いたのとは別の方の拳銃剣の銃口を僕に向ける。射線は通っている、弾が放たれればHITだ。本来はそこで回避行動を取るべきなのだろうけど、僕はここで楼観剣の重心を利用してさらに一歩踏み込んだ。

「うっそぉ!」

 流石に鈴仙さんはいったん離脱して仕切りなおそうとする。鏡像を設置して飛び退き、どちらかまったく区別をつけられないままの僕もいったんその離脱を許す。

 距離が離れたところで、鈴仙さんが、口を開いた。

「くは!マジ?見違えちゃった!ぜんぜん立ち回り違うよ!動きに切れがあるし迷いが無くって、すごく相手しづらい。まいったな」

 まいったな、といいながら、どこか楽しそうに口角が上がっている鈴仙さん。
 僕も、楽しい、かも。自信がついてから、体が自由に動くようになってから、剣を振るうのが楽しい。全力で鈴仙さんと遣り合って、もっと強く慣れるかもしれないのが、嬉しい。

「鈴仙さんのおかげで、僕、強くなりました。……今日は、僕が勝ちますね」
「わぁ、妖夢ってば、そんな自信つけちゃったんだぁ。それ、過信じゃなきゃ、いいけどネっ!」






 お互いに決定打のないまま、随分試合が続いていた。
 通常の弾幕ごっこであれば長くて5分、僕と鈴仙さんの試合は通常の弾幕ごっこのような祭儀行為ではなくただ相手を打ち砕くための試合なので、もっと短くてあっという間に決着がつくことが多かったが、今日はもう10分も続いている。

「やるぅ。本当に、全然動き違うよ。女装してここまで強くなるなんて、ちょっと予想外」
「敵に塩を送ったってやつですね!」
「砂糖のつもりだったんだけどね」

 間違いない。あんな甘いものを送られて、塩を送られるよりも救われた気がする。
 僕が、ふふっと笑うと、鈴仙さんも笑う。

「でも、そんなもんかー。女装して試合に来たんだから、もっととんでもないことになってるかと思ったのに」

 鈴仙さんがアサルトライフルを肩に乗っけて口角を上げる。
 挑発、なんだろうけど、きっと本心ではない。単に、そろそろ片を付けようって言っているだけだ。鈴仙さんは、今の僕を認めてくれている。今の僕にはその自覚があった。

「や、でもほんとに驚いたよ。これで、もっともっと強くなるね、妖夢」
「はい。でも、今のままでも、こんなもんじゃないですよ。今からそれをお見せしますね」

 僕は姿勢を落として縮地、一気に鈴仙さんまでの距離を詰める。後ろに跳躍して拳銃の射撃で応戦。着地後、生まれた距離をアサルトライフルで弾幕を張る。
 僕はそれを更に掻い潜って接近、かわしきれない弾丸を

「はっ!」

 斬り弾く。

「ハァ!?銃弾斬るってどうなってんのよ!」

 接近を許した鈴仙さんは拳銃剣で僕の刀を弾いて射撃。直線にしか飛ばない銃弾は、接近戦ではさして脅威ではない。リーチが長い突きでしかない。むしろ軌道が蛇のように曲がる拳銃剣のナイフと、もっと近づいたときに腕ごと絡め取って関節を極めようとしてくる方が恐ろしい。鈴仙さんの接近戦は武道ではなく完全な武術、なんとしても刀をメインで戦おうとする僕と違って、銃が使えなければ銃を捨てて素手でも蹴りでも頭突きでも何でもしてくるのが怖いのだ。

 拳銃の弾丸を紙一重でかわしながら斬撃。鈴仙さんに刀を"防御させ"たいのだ。
 それでも、鈴仙さんの基本スタンスがガンスリングである以上、剣撃を回避ではなく防御するのは最終手段に違いない。そこまで、追い詰められるか。近付き過ぎれば絡め手に取られる、離れれば防御させられない。その中間で、何度も斬撃を繰り出して、地形を利用し、防御を誘う。

「確かに前までと違って踏み込みもいちいち深いし、速い。けど、それだけ?」

 鈴仙さんがほんの一瞬、停止する。罠か?でも斬るチャンスでもあるし防御行動を取らせられる。僕は大振りではなく、攻撃力と行動後硬直のバランスがいい横薙ぎで対応する。が、目の前の鈴仙さんは微動だにせず、太刀筋はその姿を水平に裂いた。手応えは、ない。

――幻影!

 本物鈴仙さんは、幻影の陰で大きく後ろに跳躍して距離を取っていた。
 そこから、アサルトライフルの制圧射撃。さっきの一時停止を隙だと思って大技を出していたらこの射撃に食われていただろう。僕は楼観剣をくるりと回して鏡面霊壁を形成する。が、霊壁に弾丸が当たる感触はない。アサルトライフルを撃っている鈴仙さんから、更に横に抜けるもう一つの姿。アサルトライフルを撃っているのも幻影だ。横に抜けた姿が、拳銃を放ってきた。

「っ」

 跳び退いて距離を取ったら思うつぼだ。僕は弾丸をグレイズし、さらに前へ踏み込む。グレイズするときに、それが実弾だとわかる。幻影で有効射撃の数倍の手数を見せつけ攪乱して、疲弊したところを実体で刈り取る。鈴仙さんの真骨頂だ。
 距離を詰めたい僕と、こうして距離を離し続ける鈴仙さんの、根競べだ。前までは僕は全然鈴仙さんに追いつけず、あっという間にチェックメイトを食らっていたのだけど、今日は、食い下がっている。いや、僕はまだ、隠し玉を秘めている。

――防御さえ、させられれば。

「はぁっ!」

 半霊を先行させて射撃を制しながら、距離を詰める。幻影の攻撃は、それが幻影かどうか全く判断がつかないので回避しなければならないのがもどかしいが、それでも速さに任せて距離を詰めることは出来そうだ。半霊の操作も、今は早く正確にできる。一つや二つ幻影を出されたところで即座に潰して本体をあぶり出せた。

「そこっ!」
「っ?」

 本体の移動を追って一気に距離を詰める。楼観剣のリーチに入ったのを確認して下から斜め上へ斬り上げると、鈴仙さんはそれを十字に重ねた拳銃剣で"受け止めた"。

(きたっ!)

 防御させた、これを待っていた!

 ふっ!!

 僕は短く、でも強く息を吐く。一瞬に集約したスペルコールだ。
 霊魂に満たない小さな霊気が僕の周りに集まって、そのまま鈴仙さんの背後へ。鈴仙さんの背後には半霊が配置されていて、半霊はその幽体をまとって存在感を増す。それは一瞬の出来事だったが、その一瞬の間に、鈴仙さんの背後にもう一人の僕が現れる。半霊が今の僕と全く同じ姿に化けたのだ。半霊は僕の腰にあった白楼剣を構えている。

「えっ」
「魂符"幽明の苦輪"!」

 鈴仙さんの背後で半霊が白楼剣を振り下ろした。

「っく!!」

 鈴仙さんは僕の刀を押さえていた銃を離し、離脱しようとする。幻影を生み出すが、それは即座に射撃で潰した。

「半霊をそんな風に使えるなんて」

 僕は距離を離さないようにぴったりと鈴仙さんにくっついて剣を振る。
 半霊と自分と、鈴仙さんの三つの位置取りが想定と一致するのを待つ。半霊は僕の攻撃をフォローしつつ幻影と本体を割り出す補佐を続けながら、位置取りを模索する。

 鈴仙さんが、逆に距離をゼロに詰めてこようとする。刀を取り上げるつもりだろうが、今度は僕が跳び退いて距離を維持する。その勢いに乗じて中距離に離れようとするのを半霊で阻止する。

 そして、位置取りがぴったりと、合う。
 今だ!
 僕と半霊は、同時に大振りの上段を構えて、振り下ろした。
 鈴仙さんの幻影と違って、僕の半霊は今、実体を持っている。どちらの攻撃が当たっても、ヒットだ。

(絶対に、どっちかは通る!)

 二人の僕は、全く別の、片方を意識していればもう片方は確実に死角になる二方向から、同時に上段袈裟を仕掛けた。片方を防げばその視線がもう片方を視界から外す。もう片方を見ていれば、片方を見ることが出来ない。その角度から放たれた斬撃、かわされるはずが無い、そう信じて振りおろした刀だったが。

 がきっ!!

「う、うそ」
「質量のある幽霊って……何よその技、やばいって」

 二刀とも、左右の拳銃剣で受け止められていた。僕の楼観剣は、右手の銃剣とマズル下部の角で。時間差で振った半霊の白楼剣は、左手の銃身とトリガーガードの角で。

(なん、で)

 何故、同時の二刀の太刀筋が、完全に把握できているんだ。月の主力兵器だったというのは、伊達じゃないっていうことだろうか。そういえば以前の大地震騒ぎの時、鈴仙さんは各勢力の筆頭戦力とばかり武力交渉させられたと言っていた。それも、これほどの立ち回りが出来るからと言うことだろう。そうでなければ、プリンセスガードなど任されるはずもない。

 半霊が、僕の形を失って元のエクトプラズム状の浮遊物に戻る。時間切れだ。
 鈴仙さんは、警戒して一旦距離を取ろうとする。ただ後退するだけじゃない。幻影の分身を無数に用意してそれら全てが拳銃剣で警戒しながらだ。
 さっき僕がやった「幽明の苦輪」と違って、鈴仙さんの幻影には一切質量が存在しないのだ、触れもしないし撃たれても斬られても透けるだけ、見せられているだけの幻なのだけど、かといって実際に当たったら実は本物でしたというリスクを考えると、全てを本物と考える以外の対応は出来ない。もっと厄介なのは、この幻の中のどれかが本物、という訳ではないところだ。光の波長を弄っているのだ、見えているのは全て偽物という可能性もある。

     「大口と思ってたけど」
    「『想像以上だったから』」
   「「『びっくりしちゃった』」」
  「『「「このまんまだと私が」」』」
 『「「「「じり貧みたいだから」」」」』
「『「「「「けりを、つけよっか」」」」』」

 鈴仙さんの姿はさっきまでの一つや二つではなくなっていた。僕を取り囲んでいて、それらすべてが同時に同じ科白を言う。そして全ての鈴仙さんが、同時に仕掛けてきた。今は8人。動くたびに更にそれが増えていく。消えていくものもあるが、それ故に余計どれが本物かわからない。だって、地面を蹴る時の砂利の動きまでが、全ての鈴仙さんについているんだ。実体がないからと言って、どこまでただの映像でしかないのか、僕には未だによくわかっていない。何度か手合わせをした中では、何故か最初の一撃を食らっても、何回かの攻撃をやり過ごしてから何度目かの攻撃を食らっても、結局喰らったものは本物だった、という信じ難い結果になっているのだ。
 それは、僕が何回目の攻撃で回避し切れなくなるのかまで見抜かれていて、だったのかもしれない。幻影とやりあっている僕を見て、取れると思ったときに、本体が動くのかもしれない。とにかく、全部が本物という訳ではないことだけは、確なのだ。
 結局、読み合いで負けているに過ぎないのかもしれない。

 それは、自信がなくて、精神的に退いた瞬間に付け込まれているのだ。鈴仙さん自身が、そういっていた。幻影は、僕に自信がないから、ますますなおのこと効果があるのだと。

 幻影が拳銃剣を構えて挟撃を仕掛けてくる。僕はそれを跳躍して回避すると、挟撃した二つの姿はぶつかることなく交差し、再び僕を捕捉する。両方とも、‟あるいはどちらかが"幻影だった。あれに当たっても何も起こらなかったかもしれないが、もしかしたら片方が実体だったかもしれない。そんなこと結局喰らってみなければわからないのだ。
 片方以上が幻影であるのだから、当然だが、フレンドリファイアが発生しない。これを強みにした位置取りでの挟撃と言うのは、鈴仙さんでしか体験したことがない。未だに有効な立ち回りが身につかない。
 二方向、三方向、軸が合えば六方向でも八方向でも、同時に仕掛けてくる。CQCと同時に拳銃の銃撃、あるいは中距離以遠からの射撃を織り交ぜてくるときもある。厄介すぎる。迎撃するだけなら、出来なくもないかもしれないが、どれが本物かわからない以上、迎撃であっても本体に対して隙を晒す結果になりかねない。

「「「「『「かごめかごめ」』」」」」

 全ての幻影が、同時に童謡を口ずさむ。この謡唱が、影分身で相手を封殺する術の術詠唱なのらしい。
 籠の中の鳥、とは、まさに今の僕のことだ。一旦この包囲を抜け出そうとしても、この"籠"は距離を一切崩すことなく付いてきて振り払えない。
 鈴仙さんの幻影は、射撃に対して全く回避行動をしない者もいれば、回避行動をする幻影もいる。回避行動をする姿が実体だろうと思って切りかかったこともあったが、そんなことはなかった。回避行動をする姿としない姿とが混在していること自体がフェイクなのだ。回避行動を取る奴だけを記憶したこともあるが、回避行動を取る幻影と取らない幻影が、空間上重なり合った瞬間にどちらがどちらだかわからなくなる。そのラベリングはごく短時間しか通用しない。
 でも、何か打開するすべはある筈だ。鈴仙さんの本体はこのフィールドにいて、僕を見ている。その喉元に刀を突きつければ、僕の勝ちなんだ。沢山鈴仙さんの姿が見えても、本当は、一対一でしかないんだ。

「「「『「「かごのなかのとりは、いついつでやる」」』」」」

 籠目。そう完全な籠なんか、存在しないはずだ。どこかに、結び目があるはず。
 いつ出るか、いや出られまい。そんな歌なのだろうけど、そうは、いかない。

『「「「「「よあけのばんに」」」」」』

 攻撃を、受け止める。が、これは幻影だった。拳銃剣と鍔競るつもりが、それはするりと向こうに抜ける。同時に仕掛けて来ていた弾丸は、念のため跳躍して回避した。地面には何も残らない。これも幻影。次の攻撃、ナイフの切っ先をすれすれで回避すると、ウィッグの毛先がちりりと切れた。

(実体!)

 目で追うが、すぐに幻影と重なり合いどれがどれだかわからなくなる。
 後方を半霊の射撃で制圧しつつ、逆方向の幻影を僕自身からの射撃と刀でしらみつぶしに仕掛けるが、回避行動を取る幻影に手間取ると、結局他の判断が無効になってしまう。

(ちがう、こんなやりかたじゃ、今までと同じ)

 そうだ。籠の編み目を探す方法の時点から、僕は惑っていて。目に見えるものを追っかけていて。

(自信なんて、目に見えないものだった。僕自身の中の奥深くにあるなにかを、どうやって引っ張り上げるか、たったそれだけだった。今までこれが出来なかったんだから、今もできないだろうなんて、目の前のことを分析することも大切だけど、それだけじゃなかった。)

「「「「「『つるとかめがすべった』」」」」」

 鈴仙さんの姿が、拳銃剣で仕掛けてくる。安易な仕掛け方じゃない。軸がずれているから、僕が反撃するにはワンテンポ使って軸合わせをしてからじゃないといけないから、攻め有利。でも、だからこそだ!

 僕は、その攻撃を、無視した。

 鈴仙さんの拳銃剣の切っ先が僕の喉元を突き刺す、が、それはそのまま透けて通り過ぎた。アサルトライフルの地上掃射は跳躍してかわすが、それを地対空迎撃しようとする狙撃銃は、無視。

 がんっ!!!!

 銃の発射音とは思えない爆音に近い射撃音を響かせて、指ほどもある巨大な銃弾が正確無比に僕の頭を狙う。が、それも僕の霊玉を割ることなくそのまま通り過ぎた。もう一人の幻影が、着地地点で待ち構えている。半霊に突撃を指示し、相殺。着地後に二人の幻影が仕掛けてくるが、間合いが違いすぎる。拳銃剣のリーチに入る前に楼観剣で切り伏せて、返しざま抜いた白楼剣で放たれた拳銃の弾丸を叩き斬る、が、これも幻影。
 僕が目指してるのは、とある一点だ。そこには何もないように見える。一人、他と何も変わらない幻影が立っているが、それ以外には何の変哲もない空間だ。でも。
 鈴仙さんの幻影が、仕掛けてくる。ほとんどが効果のないただの幻だが、回避を蔑ろにしてその中にどれか一つでも実弾が入っていたら、終わりだ。でも、惑わない。自分が信じた一つだけが実体だと、疑わないで、一直線に‟そこ‟を目指す。

 ふと、真後ろから、物凄い存在感のある鈴仙さんの姿が、狙撃銃を構えているのに気付いた。
 他の幻影も、自然を装ってはいるが、それとなく射線を遮らないように動いている。僕がどこに動いても、その狙撃銃と僕の間には、幻影が決して入り込んでこない。

『「「「「「うしろのしょうめん、だぁれ」」」」」』

 他の幻影と比べて、恐ろしく殺気がある。スコープに片目は隠されていたが、見える口は、にい、と邪悪な笑みを浮かべている。
 他の幻影を相手していればそれでも、あるいは今の僕の様に別の一点を目指して行動しているならそれでも、一旦回避行動を取らないとまずい。
 雰囲気も殺気も、あれが鈴仙さんの実体だと、物語っている。

――うしろの、しょうめん?

 魂魄の家に伝わるこの白楼剣を、僕は授かっている。
 迷いを断ち切るこの剣を、僕はちゃんと、妖忌じいちゃんから受け継いだ。ただ、跡取りがいなかったからもらえたわけじゃない。僕にはちゃんと、ちゃんと、その力があったから。
 でもその力を引き出せないでいたのは、この刀に僕自身が負けていたからだ。
 先だって幽明の苦輪で、半霊に持たせた白楼剣を、鈴仙さんはしっかりと防御行動で受け止めていた。
 刀を扱うことが出来るようになって、白楼剣はもう刃として機能している。もう僕はもう白楼剣を扱えるし、楼観剣の扱いだって、ううん、からだ全部が、僕自身が、この前までの僕とは違う。

 鈴仙さんの幻影の多重攻撃の合間に見えた、一瞬の隙。
 そこで僕は、ウィッグの向きを直す。よし。
 前髪をチェックして、ヘアバンドのすわりを調整する。うん。
 リボンの曲がりを直して、胸元の存在感を、確認。おっけー。
 ウィッグも、リボンも、そしてスカートも、凛々しく可憐に、風に翻っている。

 背後の鈴仙さんの狙撃銃が、放たれる。狙撃銃の弾速なら、もはや回避間に合わない。これが本物なら、僕の負けだ。

 でも、僕はそれを無視した。
 幻影だって、確信があったから。僕がいま見ている方が、籠の目だって、自信があったから。

 僕は、生まれ変わったんだから。
 だって、だって――



「だって‟私は、女の子だから‟!!」



 僕がここにいると感じたんだ、絶対、籠の目は、ここだ!

 放たれた狙撃銃の弾丸が、背中側から僕の左胸を貫く。
 それは、
 映像だった。

「うしろのしょうめんは、ここだ!人符、現世斬!!」

 僕を貫いた幻の弾丸にも、幻で描き出された鈴仙さんの姿にも目もくれず、僕は"そこ"に刀を振りかざす。そこには一見何もいない。空虚な場所に突っ込んで、虚空を薙いだようにしか見えないかもしれない。でも。
 僕を後ろから狙って放たれた狙撃銃弾は、虚空へ飛び抜けて、消えた。
 一瞬の沈黙ののちに、周囲にあった鈴仙さんの姿も、全て、消え去った。

「ッ……こんな変わるなんて逆に反則だわ……」

 そしてふっと現れる、鈴仙さんの実像。目には何もいないように見える空虚な空間、でも刀を突きつけたその先に、鈴仙さんの姿は現れた。
 まさか見破られるとは思わなかったのだろう、咄嗟に刀を止めようとした左の拳銃の銃身が、今度はまっぷたつに分かれた。右の拳銃は、僕にヒットさせるタイミングを見計らっていたのだろう、撃鉄が上がり銃口が前に向いたままの状態。刀は振りぬいてはいなかったが、翻った鈴仙さんのウィッグの毛を何本かはらりと舞わせ、もし振りぬいていれば肩から袈裟懸けに刃が入っていただろうことを示している。

 鈴仙さんの霊玉が、ぱきん、と割れた。

「……降参。私の負けよ」

 鈴仙さんは銃を消して肘から先を上にあげる。僕も刀を収めた。

 ありがとうございました、双方礼をして、試合終了。
 
 初めて、鈴仙さんに勝った瞬間。
 なにより、僕の自信が裏付けられた瞬間だった。







「初めて、勝っちゃいました」
「信じらんない。女装ひとつ教えただけで、ここまでなる、普通?」

 え、確証があったから教えてくれたんじゃなかったの……?

 でも、今はそんなことはどうでもいい。
 あれから自分の体が本当に自分のものになったみたいに、動きが全然違っているのだ。言うことをきく、時には自分の期待以上のはたらきだってしてくれる。これが、自信ってやつなのだろうか。

「ふうっ、で、どお、一皮剥けた感覚は?」
「気持ち、いいです。自信がもてて、強くなって、もっと自信が出て、最っ高ぉ」

 ぞくぞく、恍惚にも近い感覚。自分が自分と一致するというのが、これほどに快感だとは思わなかった。
 そんな僕をみて、鈴仙さんは苦笑い。

「妖夢は感受性が強いから自己暗示で殻を破れるって思ったんだけど、これほど効果が出ちゃうなんて。教え甲斐があったとは思うけど、効きすぎて、ちょっとひくわー」
「は、はは……」

 でも、鈴仙さん、"目"を全然使ってなかった。光の波長を操作するのは、鈴仙さんの"耳"の調波能のものだ。僕自身の精神に働きかけたり、そもそももう一つの射撃の選択肢として目から光線を放ったりもできる筈なのに、それは出てこなかった。やっぱりまだ手を抜いてもらっているのだろうか。

 それにしてもさ、と鈴仙さん。

「半霊に自分の姿を取らせて同時に仕掛ける、なんて、前の妖夢じゃ絶対やらなかったよね」

 確かに、そうだと思う。半霊はその通り自分の半身だけど、自分の姿が嫌いで自信がなければ、あんな使い方をしようとは思えなかった。前は自分の姿がもう一つそこにあるなんてだけで、鏡自体にいい気分がしなかったのだから。まだ付け焼刃かもしれないけど、自信が付いたから、そうできたんだ。それにきっと、ああして描き出されるもう一人の僕が、女の子の姿になるということが、意味を持っていたんだと思う。

「それもこれも、鈴仙さんのおかげです。どうしてくれるんですか、こんな趣味にされてしまって」
「なによう。責任とれっていうのなら、お婿にもらったげようか」
「えー!"お婿"って女装を教えた相手に言う言葉ですかぁ!?」
「あー、まあ、そうねえ」

 そういってくすくす笑う鈴仙さん。
 女装なんて、まあ興味がなかったわけではないが、理性で抑えていた。それを無理やり引っ張り出されて、でもそれがあんまりにもしっくりきていたのだ。
 理性で押さえていたそれ自体が、自信を抑圧していたということなのかもしれない。

「まあ、自信、なんてさ」
「はい」
「根拠なんてないし、客観的なもんとも限らないから。時には分析もかなぐり捨てて、どこまでも自己愛じゃないと、出来なもんだしさ」

 だからそれでいいんだと思うよ。鈴仙さんが、頭を撫でてくれる。
 やっぱり、遊びで女装を教えてくれたわけでは、ないらしかった。







 一回勝ったくらいで、と笑われてしまうのかもしれないけれど、僕にとってこの一勝はすごく大きな意味を持っていた。今まで重ねていた負けの回数についてもそうだし、この価値をもぎ取るために得たもの、鈴仙さんからもらったもの、そうして自覚したもの、とにかくいっぱい、得るものがあって。

「わー、いつも以上に汚れちゃったね。妖夢の攻め、激しいんだもん」
「えへへ……」
「もー、さっきから"えへへ"ばっかりで会話にならないんだけど」
「そ、そうですか?えへへ」
「だめだこりゃ」

 練習試合の後は、永遠亭でお風呂に入って帰るのが通例になっていた。時間によってはご飯を頂いて帰ることもあったけど、その度におうちに帰ったら幽々子様が餓死しそうに(もう死んでるのに)なっているので、少しお持ち帰りを頂いちゃうことも。
 今日も竹林の試合場?からてくてくと歩いて帰る。この歩いて帰る幾らかの時間と、お風呂に入ってすっきりしてしばらくの時間が、鈴仙さんといろいろお話しする時間だった。

「ただいま戻りましたー」

 っていっても誰も出てこないんだけどね、この家。と鈴仙さんは苦笑い。なんせこういう出迎えをするのは鈴仙さんがもっぱらなのだ。永遠亭の方々は、何気に働き手が多い。病院だったり、学校だったり、薪や炭だったり。輝夜姫はまあ別格だが、出迎えに出てくるような立場でもない。

「姫様は――寝てるか。朝までモニター付いてたしまた何かしてたんでしょ。いい加減にすればいいのに」
「はあ……」

 君主に忠心があるのかないのかよくわからないのが、この家の人たちだ。

「お風呂、沸かしてくるから」

 もう恒例なのだ。いつも、この間に僕は永遠亭の客間に向かう。そこでお風呂が沸くのを待つのだ。でも、今日は違った。

「ああ、私の部屋に行ってていいよ――その恰好、直したいでしょ?」

 その恰好、とは、女装が、試合でボロボロになった姿だ。
 永遠亭のお風呂はとにかく大きくて、沸かすのに時間がかかる。
 その間、ずっとこのボロでいるのはちょっと辛かった。男の格好でいるときはそれもまあ気にならなかったんだけど、こうしてウィッグの果てまでつけていると、ちゃんと整っていないのは何もしていないのよりもより見栄えが悪い。

「あー……はい」

 素直でよろしい、と鈴仙さんは笑う。

 沸きっぱなしにしていた時期もあったようだが、どうやらまき割り担当かつ火力監視担当の藤原さんがストライキを起こして以来、まとまって使う時間だけに減ったらしい。それ以外のこういう臨時の使用は各自で沸かすか、誰かに頼むかするらしい。当然藤原さんがいれば結局藤原さんに頼むこともあるようだ。
 前に試合帰りに藤原さんがいた時は「はあ?何のために時間制限作ったと思ってんだよ。それ以外は各自で沸かすって言ったろ」とか言いながら結局全部やってくれて、鈴仙さんと二人で入った。何気に優しい人が、僕は恐縮すぎて死ぬほど申し訳なかった。

「着替えは用意してあるから」
「え、なんで」
「女装を教えたおねーさんの、責任?」
「は、はあ」







「好き、です」

 お風呂から出てきた鈴仙さんに、僕は何の脈絡もなく、言った。

「えっ、ちょっと、妖夢?」

 勝てたから、って誤解されたらいやだな、って思った。
 でも、それはちょっとだけあるかな。

「ど、どどどど、どうしたの、急に」
「急にじゃ、ないです。ほんとは、ずっとずっと前からで……でも、僕は鈴仙さんにとっていっつもよわっちい弟分でしかなくって、そんなの、言えるわけないって思ってて」

 鈴仙さんはちょっと苦笑いしながら、まあまあここにすわんなさいな、とソファに腰を下ろさせる。
 とりあえずソファに座りはするが、もう、喉の奥にあったはずのダムは決壊していて、頭の中で渦巻いてる思いの丈は、何者にもさえぎられることなくどんどん口に出てきてしまう。

「鈴仙さんに、こんなこと、教えてもらって。他の人がなんて言うかわからないですけど、きっと僕にとって最善の答えをくれて。女の子の恰好して自信を得て、鈴仙さんに一回でも勝てて、やっと対等に気持ちを伝える勇気が持てたんです」

 もうずいぶん長いこと悩んでいたのだ。あんなこと。今にして思えばくだらないことに悩んでいたものだと思うけれど、それは過ぎたから思えたことだ。
 僕は元々、鈴仙さんを女の人としてしか見れていなかった。中が男の人だって知っても。色々付き合ってくれたり相談に乗ってくれたり、そして、こんなことを教えてくれて、八方ふさがりの穴から引き揚げてくれた。だから。

「鈴仙さんは、ぼ……私の、王子様、です」

 僕の言葉に鈴仙さんは、一瞬面喰ったように目を見開いて、そしてすぐ優しい笑顔。そのまま今度は悪戯っぽい目に変わって、言う。

「えー、王子様、なんて"女の子に向かって言うセリフじゃないなー"」
「ご、ごめんなさい、でも」

 鈴仙さんの目が、すい、と僕から離れた。そして、目が僕の方を見ないまま、腕だけが、僕を引き寄せる。ふわって、お風呂上がりの鈴仙さんの、すごくいい香り。どきどきする。

「やだな。ずっと言ってるじゃん。‟妖夢可愛い‟って。そんな風に言われたら私……とめらんないよ?」
「いいです、とめないで、ください」

 僕が、OK、のサインを出すと、今度は鈴仙さんの声が、すこし。

「私、女のつもりだって言ってるじゃない。それを"王子様"なんていう人はなー」
「ぇぅ」
「でも、可愛いからゆるす。そして、王子様は、お姫様を、頂いちゃうのだ」

 そのまま、鈴仙さんの唇が、私の唇を奪い去った。
 やわらかい、これ、ほんとに男の人の唇?
 鼓動が、乱れる。どきどき早くて、体中に酸素過剰供給。思考がぐるぐるして、あ、あっ。
 キスしてくれた鈴仙さんを、僕はなんか、凄く慌てたみたいに、ソファに押し倒してしまう。唇はくっつけたまま。鼻で息するのを忘れて、息が苦しくなって、一瞬離して、またくっつける。
 そんな僕の肩を押して離す鈴仙さん。

「ぁ、ぁっ」
「こら、慌てないで。……私は逃げたりしないから」

 鈴仙さんを押し倒してしまった僕だけれど、逆にそのまま抱き寄せられて耳元で

「じゃあ……いっぱい、しよ?」

 なんて言われたら、もう堪んない。
 僕、いつか半霊の自分とエッチなことをした時を思い出して、鈴仙さんの体におちんちんを擦り付けるみたいに腰を振ってしまう。スカートとぱんつ越しのもどかしい刺激が、勃起しきったおちんちんの先端、裏側、に伝わってくる。

「はっ、はっ、れ、鈴仙、さんっ」
「もうっ。これじゃ男の子じゃない。……一回抜かないと落ち着かないかな?」

 しよ、なんて言われて、僕、完全に男になっちゃって。
 射精に向けて猪突猛進してしまう僕の股間に、鈴仙さんは手を差し入れた。

「ふひゃ……アっ」

 半霊の自分と対面おなかオナニーしたときも、僕は半霊の自分に攻めさせたりはしなかった。だから積極的に刺激を与えられるのは初めてで、その不意で甘美な刺激に、僕は思わず腰を引いてしまった。その一瞬で、鈴仙さんは力を込めてくる。鈴仙さんを組み敷いていたはずの僕は、あっという間に、鈴仙さんの下に追いやられてしまう。

「かわいい」

 鈴仙さんは僕の顎を掴んで引き上げ、キスをくれた。最初から容赦なく舌が入ってくる。

んっ……っちゅ
ぁむ、っちゅうぅっ
はむ、んっ、ちゅぱっ、ちゅぅぅっ

 部屋には、僕と鈴仙さんの舌と唾液が絡み合う、僅かに粘性を持った水音が響く。鈴仙さんは少しだけ口の端を開けて空気を取り込んだりして、わざと音が立つようにキスをくれる。その音が、耳から僕をさらに追い込んでくるのだ。
 鈴仙さんは僕の舌を口の中で絡め捕ったかと思うと、めちゃくちゃに擦り合わせたり吸い付いたり、そうされるものだから僕もそうしなきゃいけないと思ってそうすると、鈴仙さんの舌はまるで指相撲のように僕の舌をあっという間に籠絡してしまう。
 キスは最初に覚えて最初に実践するセックス、そう思わされるくらい。舌同士が絡み合って唾液がまじりあうその感覚だけで、体中の毛穴が開いてぞわぞわとそこから全身の正常感覚が霧散していくよう。代わりに沸騰した心臓と脳みそで味付けされた媚薬血液が全身を敏感に仕立てていく。

んっ、んぅぅっ……んーっっ
ちゅぷっ、くちゅくちゅっ

 鈴仙さんも同じみたい。重なっている肌があっという間にしっとりとしてきて、熱い。僕と同じように鈴仙さんも興奮しているのかなと考えたら、途端に僕の心臓は血中蜂蜜濃度をガン上げして体中を甘く作り変えようとする。いつ食べられても平気なように、僕の体は、自分を甘く味付けし始めたみたい。今ならメスで血管を開かれて出てくるのは、きっと高濃度愛欲汚染された蜜血。むしろそうされたいと思ってしまっていた。

(あ、僕、鈴仙さんにメス媚びしちゃってるんだ……男なのに、本当の女の人みたいにきれいな鈴仙さんに、女の子にされたがってるんだ)

 男のくせに桃色い喘ぎ声で、トロけ顔を晒しながら鈴仙さんのキスに応えて僕は、頭の後ろ側からじんじんと女の子に塗り替わっていくのを感じる。
 鈴仙さんの舌にリードされて舌を吸ったり吸われたり。攻められるのも攻めさせられて逆襲されるのも、きっと鈴仙さんの戦略なのであったらしい、しばらく鈴仙さんとの舌同士の粘りぬめる摩擦を無心に貪っている内に僕の口は、舌も顎も唇もすっかり疲弊して力を入れられなくなっていた。

「もっと唾を出して。キスだけで、いっぱいきもちよくなれるから」
「ふぁ、ひ」

 力の入らない口周りで、舌の付け根を動かして唾液の分泌を促し、それをぬらぬら絡み合う舌キスに送り込む。過剰投与された媚薬唾は、しかし疲労でうまく操れない舌と唇で堰き止めることが出来ず、開いた口の端からだらだらと溢れて零れてしまう。

「わぶ……くちゅ」
「ふふ、出してって言ったけど、いくらなんでも出過ぎだよ、妖夢。そんなにキス、気持ちいい?」

 いじわる。
 そんなの、気持ちいいに決まってるのに、そうしてるのは鈴仙さんなのに、僕に言わせるんだ。
 ぞくり、と背筋から尾てい骨、それに蟻の門渡りあたりに向けて媚電流が走る。抗うことはできない、強迫的な程の悦欲。

「きもひ、いぃ、れす」
「いいよ妖夢、女の子の顔してる。かわいい」

 疲れ切った中更に唾液の押し出しを強要されて疲労が回復しない舌は呂律を回せず舌っ足らずの声色で答えてしまうが、今のふわふわした意識レベルと比較すれば、それが妥当かもしれない。鈴仙さんはそんな僕を見て満面の笑みでまた口を吸ってくる。
 舌が口の中が、歯茎がほっぺたの裏が、こんなに敏感粘膜だったなんて知らなかった。男にも女にも備わってるのに、女の子になって初めて気づいた。女の子の方が、えっちに敏感?ううん、きっと、すきなひとが相手だからだ。
 キスだけ。くっついてるのは唇と、いくらかの肌だけ。なのに体中すっかり敏感されて、鈴仙さんからもらう「ようむ」「かわいい」の言葉だけで、全身が催淫鼓膜になったみたいに、びくびく感じる。
 鈴仙さんは、唾液を口の中に収める動作を一切しないまま、僕の唇から離れていく。僕の口の中にあった鈴仙さんと僕の混ざり液は、どろりと口の端を割って溢れ、頬と首筋を濡らす。鈴仙さんの閉じるつもりのない口からも破水して、僕の顔中を、そして鈴仙さんが口を這わせた鎖骨から胸元をべっとりと濡らす。

「ふふ、やらし」

 ローションを垂らしたように塗れテカる僕の顔、首元、胸を、熱っぽい目で見降ろす鈴仙さん。そのまま、僕の首にかぶりつくみたいに口を付けてきた。唇の中で舌が蠢いて、僕の首を舐める。筋を書いて表面張力で盛ったまま垂れていた唾液を、塗り広げながら。

「……首は、見えちゃうからまずいね」

 って言ってそのまま少し急いで鎖骨。張った骨の凸、筋との間の凹み、肩まで続く直線を、舐め、そして胸。半霊の自分とえっちしたときからなんだって変っていないのだから、僕の胸はやっぱりぺったんこ、でもそれを鈴仙さんは本当にいとおしそうに舐めている。舌を出して、唇で啄むみたいにして。首を上げて、その表情に見惚れてしまうほど、鈴仙さんが僕の胸を舐めるときの顔は、いやらしくて、きれいだ。
 鈴仙さんは、そんな僕の視線に気づいていたのか、僕の視線を絡め取ってもろとも僕の目の中に押し込んでくるみたいな目で、僕を見た。そして。

ちゅぅぅぅっ!ぷちゅっ!

「ふぁ、ぁっ?」

 私のモノだって跡、付けちゃうから。
 何も言い返させないほどの目力を宿す、でも淫蕩な顔で、鈴仙さんは僕を黙らせる。鈴仙さんの唇が、僕の胸の表面に吸い付いていた。強い。吸い付いた唇の間で膨らんだ肌は鋭敏化して、吸われながら舐められるとびりびりするほど。鈴仙さんは何回も何回も僕の胸にそんな強いキスをくれた。

「明日からしばらく私の跡が消えないわよ?」

(そうか、この強く吸うキス、キスマーク付けてるんだ。鈴仙さんのものだって証拠を体に刻まれちゃってるんだ)

 そう考えたら、胸の奥から幸せがきゅんきゅん溢れてきて、鈴仙さんの口は今僕の胸にそれをしている最中だってわかっているのに、おくち同士のキスをしたくなる。

「どお?男にキスマーク付けられちゃう気分は?」
「うれひい、れす……それに、れーせんさんは、おんなのこ、です」
「ふふ、うれしい」

 腕を回して抱きついておくちキスのおねだりをすると、鈴仙さんはまた好きなだけキスをさせてくれた。また口が疲れてしまって涎でべとべとになるまで、鈴仙さんは「もう、妖夢はあまえんぼさんね」と笑いながら、体中が口から溶けてくっつくほど、してくれた。
 鈴仙さんは僕のキスおねだりに応えたり上半身のあちこちにマーキングしながら、いよいよ手を、僕の股の間へ運ぶ。

「あ……ふあぁあぁ」
「妖夢ったら、ほんとうに、完全に女の子の顔してるわよ。でも、ここはちゃぁんと、オトコノコのまんまね?」

 僕は待ちわびていた刺激に、甘ったるい声を漏らしてしまう。
 仰向けになっている僕の股にあるものは、鈴仙さんから借りた可愛い女の子ぱんつとを窮屈に押しのけて、スカートを高々と持ち上げてしまっていた。鈴仙さんの手は、その先端を、スカート越しに包むように触っている。

「ごめんなさい、おちんちんだけおとこのこで、ごめんな、さい……ふあ、あっ、ああっ♥」
「そんなに腰を持ち上げて、おちんちん、してほしいの?」

 鈴仙さんの手はスカート越しに僕の先のほうを包んでいるだけ。僕はもっと強く触って欲しくて、腰を浮かせて鈴仙さんの手を求めてしまっていた。でも、鈴仙さんの手はまた上に逃げてしまって、僕はどんどん浅ましく腰を持ち上げて、あっという間にいやらしいブリッヂ体勢で鈴仙さんに、おちんぽ懇願してしまった。

「してほしい、れす、おちんちん、もっとにぎにぎ、してほしいれすぅ」
「あー、もー、妖夢は男の子でも女の子でも可愛いっ♥いいよ、してあげる。おちんちんいっぱいシコシコしてあげる」

 鈴仙さんはブリッジしている僕の横に座って腕を伸ばし、スカートの上から僕のおちんちんを、ぎゅって、握る。

「ふきゅぅぅぅっ♥」

 スカートの裏地が、握られて亀頭に強くくっつく。そのまま撫でまわされると繊維の編織感が先端に感じられたけど、それは一瞬だけだった。スカートの裏地はあっという間に先走りで濡れてぬるぬるになり、そのまま擦られる。鈴仙さんの手の高さは変わらないままで、僕は高い位置で腰を振ってへんたいちっくなダンスを踊っているみたい。恥ずかしい。でも、でも、気持ちいいの。僕を包む鈴仙さんの手が、少しずつ先端だけじゃなくて雁首くらいまで含むように変わってくる。そうされると、僕のキモチイイもどんどん大きくなって、鈴仙さんの手の動きに合わせてより強く腰をくねらせてしまう。

「妖夢ったら、女の子なのに、おちんぽしごき、がっつき過ぎ♥」
「んぅぅっ、ふぅぅっんっ♥もっと、もっとぉっ♥」

 鈴仙さんの手を求めるあまりに先端に触ってもらえている図を凝視していた僕だけれど、ふと視線を横にずらすと、座った鈴仙さんの太腿。すらりと綺麗な脚はスカートに抱かれていて、そのスカートは、僕と同じように膨らんでいた。

(ああ、鈴仙さんも、興奮、してるんだ……僕で、僕でおちんちん、おっきくしてるんだ)

 そう思ったら、急にその膨らみが愛おしくなって、僕はブリッヂを落として、脚を折って座る鈴仙さんのスカートの膨らみに、一直線。本当の女性に比べれば少し太くて硬い腰回りに抱きついて、スカートの中に顔を突っ込んだ。

「ちょ、っ、妖夢!?……っは、ぁあっっ♥」

 僕と、おんなじだった。
 スカートの中ではしましまパンツがたまたまを窮屈そうに締め付けながら、おちんちんはその上側に逃げ出している。

 すんっ……すんすんっ

 スカートの中の匂いを、僕は鼻を鳴らして嗅いでしまう。
 女の子の爽やかな香りに加えて……知ってる、僕これ知ってるよ、これ、男の子の匂いだよね、おちんちんの、匂い……♥
 鈴仙さん、こんなにきれいな人なのに、ここ、すっごいオス臭いっ♥
 鈴仙さんの牡臭を胸いっぱい吸い込むと、僕のおちんちんはじゅわって先走りをたくさん出しちゃった。鈴口をたくさんお汁が通り抜けるのが分かる。鈴仙さんは僕のおちんちんを触る手を早くしてきて、スカートの裏地のくちゅくちゅが亀頭に擦れて、気が飛びそうなほど気持ちいい。僕はその快感に逆らうことなく流されながら、女の子の香りとオスの淫臭を漂わせる鈴仙さんの勃起おちんぽに口を付けた。そのまま、ぱんつから逃げ出して裸になっているそれを、ぱくりと口に含んだ。鈴仙さんの腰が、跳ねる。

「れーふぇん、ひゃぁん……むぐ♥」
「よ、妖夢っ♥ふぇ、フェラっ?おっん♥」

 とろっ、僕の口の中で、鈴仙さんの先っちょからお汁が溢れてくる。僕はそれを舌で掬って塗り広げる。

「あっっん、妖夢、きもち、いっ」

 ちゅっ、ちゅぷっ、あむ……っ

(僕、男なのに女の子の恰好して、女の子の恰好した男の人のおちんちんに、ご奉仕してる……)

 自分の状況を認識すると、興奮は爆発するみたいに広がった。半霊の自分とおちんちん合わせしたときと、違う。自分以外にも女の子になりたい男の人がいて、女の子同士を好き合う感覚でえっちしてるのに、今してるのは、お互いのおちんちんを慰めあう、男同士のえっち。
 昔の僕なら、興奮しなかったかもしれない。こんな自分を、肯定できなかったのだから。でも、今は違うの。女の子になりたい男である自分、を、受け入れたから。こんなえっちは、大好き。同じように思える人と一緒に気持ち良くなれることは、こんなにも幸せなんだ。

(鈴仙さんに、気持ちよくなってほしい)

 口淫なんて、初めて。したこともされたこともありはしない。けど、自分についているものをどうすればいいのか、想像はできた。僕が気持ちいいと思うことを、鈴仙さんも気持ちいいと思ってくれたら、それって、すごいことかもしれない。相手を想う気持ちで、自分を肯定できる。何としても、僕の口淫で気持ち良くなって欲しくて、僕は必死に唇と舌、そして首を動かす。

「ぁ、ふあ、よ、妖夢っ……私、女装姿でフェラチオなんて、されたこと、なくてっ♥っは、すごい、すごいよぉっ♥」
(そっか、鈴仙さんも、女の子の恰好で、男えっちしたことなんて、ないんだ……僕が、初めて、なんだ)

 ますます熱を持っていく、僕の口淫。涎をたくさん口に含んで、舌で、きっと気持ちいい先端のすべすべから、反り返ったエラのところをなぞる。そのまま裏筋に舌を這わせる間は、手で亀頭と雁首を撫でまわした。

「あっ!ん、っは、あっ!よ、妖夢、どこで、こんなの、覚え……くうっぅぅうんっ♥」

 鈴仙さんは、僕のおくちで気持ち良くなってくれてる一方で、さっきまで撫でていた僕の股愛撫を再開する。スカートをめくって、ぱんつからはみ出しちゃってるおちんちんを、直に手で撫でる。

「んっ!ふぅぅっっはひ♥れ、れーせんさんの、すべすべの、手ぇ、僕のおちんちん、可愛がってくれてるぅ♥」
「妖夢っ、おちんちんキッス、やめないで……すごいの、男の子にされるの、こんな気持ちいなんて……♥」

 女の人にならされたことがあるのだろうか、と考えてから、永遠亭のかたっ型と鳴らしたことがあるのかもしれないと思い直した。さもしい嫉妬心だ、永遠亭の方々と鈴仙さんの間に、僕なんかが入り込める余地はないのだろう。でも、もしかしたら、と思うところは、あったんだ。こんなこと、なったのだから。
 鈴仙さんは右手で僕のおちんちんを撫でながら、左手で僕の頭を優しく自分のものに寄せる。僕は促されるまま口淫を続けた。鈴仙さんが求めてくれてる、今まで僕をリードしてた鈴仙さんが、僕のおくちであんな風に気持ちよさそうな顔で、僕を求めてくれている。それがすごく嬉しくて幸せで、一生懸命奉仕する。ぴくんぴくんって跳ねて、ちょっとしょっぱいお汁が僕の口の中にどんどん出てくる。これと同じのが、今、僕のおちんちんを擦る鈴仙さんの手にもいっぱいでてびちょびちょに濡れているんだ。同じ性別、同じ性癖、同じ感じ方して、お互いに求め合って。

「れいせんさん、ぼく、しあわせ……れいせんさん、らいすき♥もっといっぱい、しますぅ♥」
「や、あぁっ♥おちんちん舐められながら、好きなんて言われたら、私、私ももっともっと好きになっちゃうぅ♥」

 鈴仙さんの手は僕の頭から床に移っていて、僕の首の動きに合わせて腰を浮かせて動いてくる。その動きと息を合わせながら、舌を這わせたり唇で吸ったり、口の中に挿入したり。でも、僕のおちんちんを攻める右手の動きは疎かになったりしてない。むしろ、僕が鈴仙さんを感じさせようと色んな刺激を試していくと、それに応えるように僕も手コキで気持ち良くなっていく。鈴仙さんのおちんちんは僕の唾液と鈴仙さんのえっち汁でべとべとだけど、僕のおちんちんは今は僕のえっち汁だけでぐちゅぐちゅ嫌らしい音を立てていた。

「きもち、い、よぉ、妖夢ぅっ♥おちんちん、とけそぉっ♥女装して女装子にフェラさせるの、こんなに興奮、するなんて、しらなかったわぁっ♥」
「ぁむっ、ん♥んっ、れーせんさんの手、もぉっ♥おちんちん、すっごいキモチイイの、自分でするのとゼンゼン違うのぉっ♥」

 鈴仙さんの手は片手にもかかわらず指全てがばらばらの意思を持ってるみたいに気持ちのいいところをそれぞれで刺激してくる。先っちょの丸み、雁の縁、裏筋と雁首の縫い目、鈴口。下に降りて行っても雁から指が離れないまま竿を上下にシコシコされて、玉袋を包まれながら裏筋は上下にくすぐられて。ぬちょぬちょになって鈴仙さんの手と僕のおちんちんの間で空気の撹拌される音が聞こえる。

「妖夢、濡れやすいんだ、女の子が本気になっちゃったときみたいに、濡れてるよ?」

 僕が鈴仙さんにする口淫では唾液とおちんちん汁に唇で建ててる音が、僕のおちんちんでは手と男の子えっち汁で鳴っていた。すごい、僕、男の子なのに、濡れ過ぎ……。

「ちゅっ、だっ、だって、僕、今は女の子、だもんっ……♥あむ、っちゅ、女の子みたいに濡れるの、当たり前、だよぉっ♥」

 鈴仙さんのおちんぽを舐めながら、僕は反論する。それに、鈴仙さんだって、ものすごくガマン汁溢れてる。

「んっ……♥そう、だねっ、妖夢、今は女の子だもんねっ♥」
「鈴仙さんも、女の子、ですっ♥おちんちん立派だけど、僕で気持ち良くなってくれてる時のお顔、女の子っ♥かわいい、ですっ♥」

 なまいきにっ、鈴仙さんはそう言ってから、ぐい、と姿勢を変えた。僕が鈴仙さんの股の間に顔を入れてるように、鈴仙さんの口も、僕のおちんちんを射程内に捉えてる……♥これって、もしかして、お互いにおくちで、しちゃうのかな♥

「ここは先輩の威厳を、保たなくっちゃ」
「ふえ?――あ、あぁぁっ♥」

 鈴仙さんの口は、あっという間に僕のおちんちんを剥き上げて裸になったそれを包み込んでしまった。

「ふぁぁぁっ♥す、すっごぉぉっ♥これ、これがぁっ、おくちマンコぉぉっ♥」
「ちゅっ、ちゅっぷ♥どお?妖夢のおくち、すっごく気持ちいいけど、私だって負けないんだから♥ちゅるるっ♥んっぶ、ぶぽっ、ぶちゅぅっ♥」
「あっひ♥おほぉおぉんっ♥これがぁっ、これがれーせんさんの、おくちマンコぉ♥とける、おちんちんがお砂糖みたいに溶けちゃうよぉぉっ♥」
「くちゅっ、ちゅぶ♥こら妖夢、急におくちがお留守になっちゃってるわよぉ?」

 鈴仙さんがそういうので、僕はいやらしい声が口からどんどん出てこようとするのをなんとか飲み込んで、鈴仙さんのおちんちんへ奉仕を続ける。鈴仙さんも僕のおちんちんをいっぱいくちゅくちゅしてくれて、おちんちんとお臍の下がきゅぅぅっってせり上がって快感がどんどん頭の方に流れ込んでくる。エッチな声が出そうになるけどおくちは鈴仙さんのおちんちんでふさがってて、やらしい声は行き場を失って鼻から漏れてくる。それは、鈴仙さんもおんなじで、僕と鈴仙さんはお互いのおちんちんをおくちと両手で一心不乱に奉仕しながら、ぴちゃぴちゃ舐める音と鼻から漏れる淫声、それにたまにだけ口からする呼吸とお互いをえっちに煽って応える声を交わしていく。

「んっ♥んふぅんっ♥ふーっ♥んぅぅぅんっ♥」
「はふっ♥んっちゅ♥っちゅちゅちゅうっぅうっ♥んっはふ♥れ、れいせんさん、僕、女の子なのに、おちんちんキモチイイのとまんないっ♥鈴仙さんのおくち気持ちよくて、女の子なのにオスアヘしちゃってるのぉっ♥」
「ぶぼっ♥ぶちゅっぶぼっ♥くちゅくちゅぅっ♥なにゆってるの?今の妖夢、かんっぜんにアヘりメスよぉっ♥男に媚びて臭いちんぽに平気でむしゃぶりついちゃう、淫乱牝♥っは、ぁああっ♥いい、いいわぁっ♥妖夢のフェラ、どんどんザーメンおねだりフェラになってきてる♥喉の奥が精飲モードぐねってる♥あああっ♥すご、ぉぉっ♥私っ、私がオスに変えられてるっ♥メス化妖夢くんに、私、オス化対応させられてるっ……♥私がっ、私の方が先に、女の子になるって決めてたのに、負けちゃうっ、おちんぽ気持ちよくて、まけちゃぅっ♥」

 僕のくちまんこ気持ちよくて、鈴仙さん、おちんぽイキしちゃうんだ♥僕が女の子で、鈴仙さんを気持ちよくしちゃうんだっ♥
 僕は口の中で舌を一層激しく動かして、雁首を嘗め回す。

(イっちゃえ♥鈴仙さん、男の子としてイっちゃえっ♥鈴仙さんをオスイキさせて、僕が、女の子になるのっ♥)

「だめ、だめぇっ♥負けない♥私だって女の子なんだからっ♥おちんちんくらいで男の子になってたまるもんかっ♥ぶっちゅぅぅっ♥ぶぼっ♥ぶぼぼっ♥ぐちゅっぐちゅちゅっ♥」
「ふひゃぁっ!?♥お、っひ♥しゅっ♥っご♥」

 鈴仙さんの逆襲キちゃった♥すごい♥あんなに激しく頭振って、んっふぅぅっ♥唇すぼまったとこにおちんぽの雁、亀頭、竿ぉっ♥手でたまたま優しく触られて、裏筋指先でなぞられて、全方位刺激っ♥お馬さんに乗ってるみたいに、激しく頭振って、おちんぽくちまんこでずぼずぼされたらっ♥ぎゃ、ぎゃくてんされちゃうぅぅっ♥こっからじゃ見えないけど、鈴仙さんってば、絶対すごくやらしい顔してるの♥頬っぺた窄めて唇とんがらせて、あんな激しく動いてるのに鼻呼吸、荒くして、すっごい浅ましい顔で僕のおちんちんにご奉仕してるのぉっ♥

「れ、れーへんひゃん♥おっヒ♥おちんっぽぉっ♥しゅごぃっ♥これ、とけるとかりゃないっ♥おちんぽぬけひゃう♥亀頭からぽろってとれて、せーし止められないおちんぽばかになっちゃう♥むり、むりぃぃっ♥こんなの耐えられないっ♥僕、男の子に逆戻りしちゃうよぉっ♥おちんぽ快感に勝てなくて、男の子になっちゃう♥女の子になりたかったのに、鈴仙さんのおくちマンコのせいで男の子にさせられちゃうっ♥チンポイキっ♥チンポイキ我慢できない♥もう精子あがってきてる♥女の子になって用済み器官になる予定だった精巣、今、フルスロットルで精子製造してるっ♥鈴仙さんに再オス化改造されてるっ♥精子の管をぞるぞる登ってきてる、活きよすぎな若い精蟲ぎっしりで、精子管渋滞中なのぉっ♥だめっ、だめだめぇっ♥吸いだされたら、そんな風におちんぽストローされたら♥チンポ管奥から吸いだすみたいにじゅるじゅるされたら僕、オスになっちゃう♥」

 鈴仙さんのおくちがすごい♥僕が自分でおちんぽしこしこするときみたいなスピードで頭を上下に振ってるの♥でもおちんぽ包んでるのは手より何倍も気持ちいい唇と舌で、それは自分で操作してなくて大好きな鈴仙さんが、僕をイカせようとして動いているのだ。肉体的にも、精神的にも、僕、もう、とろとろになっちゃって、おちんぽの奥、我慢できなくなっちゃって……♥

ぶぼっ♥っぶちゅっぐちゅぐちゅぐちゅっ♥ぶぶぶっ♥ふっ、ふーっ、ふーっ♥

「鈴仙さん、れーせんさんっ、僕、まけっ♥まけちゃっ♥んひ、んっひぃぃっチンポ♥おちんぽきもちぃぃっ♥僕、僕オスっ♥おちんぽ快感でオスになっちゃ……♥んっひんほおぉぉっ、も、もうだめ、おちんぽ我慢限界っ♥僕、メスになりたいとかゆって結局オスアクメしちゃうヘタレですぅっ♥ちんぽいくちんぽいく♥ちんぽいくちんぽいく♥ちんぽいくちんぽいくっ♥ちんぽ♥いく♥ちんぽいく♥いく♥いく♥いく♥いく♥いくっぅぅう♥」

 遂に射精欲に耐え切れなくなった僕は、鈴仙さんの先走り汁の匂いを胸いっぱいに吸い込みながら、精液を噴出してしまう。

「あーっ♥あああーーーっ♥だめ、だぁめぇぇっ♥せーしとまんない、僕、女の子になりたかったのに、オス汁噴いてチンポイキしちゃってるよぉっ♥」
「んっぶっ♥わぷっ♥すっご、い♥っん、わっ……♥かおっ、妖夢の精液で、パックされちゃうっ♥すごい量……匂いもキツいし、ヨーグルトみたいに濃いぃぃ♥顔真っ白になっちゃうっ♥」

 鈴仙さんは僕の射精から顔を背けることなく、むしろ手を顔の脇に広げて僕の堪え性の無い精噴を顔で受け止めている。僕の精子が、鈴仙さんの綺麗な顔を、汚辱して見えなくしていく。興奮、する。鈴仙さんに顔射する興奮で、僕はダメ押しのひと噴き、ふた噴き、ううん、結局また何度も吐精して、ようやく収まった。

「れ、鈴仙さん、ごめんなさい、こんな」

 体を起こして、まだ横たわったままの鈴仙さんの、僕の精液まみれの顔を覗き込む。むわっとひどい匂いの精液が、鈴仙さんの顔にたっぷりとデコーレションされている。いやらしい、でも、これも、きれい……。

「すっごい出たね♥それで、これ、どうすればいいのかな」
「あの、今拭くものを」

 タオルなりティッシュなりが無いか辺りを見回すために膝立ちになろうとした僕の腕を、鈴仙さんは掴んだ。

「ち・が・う・でしょ?」
「え」
「この顔にたぁっぷりかかってる臭い生クリーム、私はどうすればいいのかな?♥」

 生唾を、飲み込んだ。こっそり読んでるえっちな本では、もうテンプレ、でも、僕がそれを、鈴仙さんに言ってしまってもいいのだろうか。
 想像しただけで、僕はまたおちんちんが大きくなってきてしまう。

「よ、う、む?」

 言う。鈴仙さんが僕に言わせたいことは、もうわかった。それを見たら僕は、また、堪らなく興奮してしまうだろう。否、すでにもう。
 僕はさっき射精したばかりでぬらりてらりと鈍く光るペニスを手で握って、ゆっくりと前後に擦りながら、言った。

「顔にかかった僕の臭い精子、全部舐め取って、飲み込んで、下さい」

 鈴仙さんは声では答えず、精液塗れの口角を上げて笑い、そして口をあけてあの、さっき僕をすっかりと翻弄した舌を伸ばして口の周りの精液を口の中に運ぶ。そのときに、舌の上に乗っけたゲル状精子を僕に見せ付けるように舌を伸ばして、それから口に含んだ。

「えっち、です、鈴仙さん……淫乱女性、ですっ」

 それを飲み込んだ後、今度は顔中にへばりついている精液溜りを手で受け止めて、掌から舌でそれを掬って飲む。ほんの少し喉仏の浮いた喉が上下して、さっき僕が吐き出した精液が嚥下されていくのが見えた。

「んっふ♥おい、しぃっ♥」

 目を細めて淫蕩に笑う鈴仙さん。僕の精液を、飲んで、そんな、えっちな、顔……。
 僕は食ザーする鈴仙さんをオカズにまた自分のペニスを扱いていた。鈴仙さんが見ているのも、もう気にならない。だって興奮が、また、我慢できない。顔からこぼれて飲みきれなかった僅かの精液雫が、胸や太ももに糸を引いて滴る。その光景も含めてエッチすぎる鈴仙さんの姿が、また、オス欲を高めてくる。

「ごちそうさま♥これはもう言い逃れできないわね?妖夢はやっぱり、男の子だったのね」
「ぁぅ」

 そんなのって、そんなのってないよ。だって僕は、女の子の格好をして、女の子の格好の鈴仙さんにエッチなことをされたから、イっちゃったのに。こんな風に僕に女装を教えて、女装でえっちなことするの知っちゃうきっかけをくれたのは、鈴仙さんなのに……。

「だって、だって……だって、ぼく」

 あんなふうにおちんちん攻められたら、オスイキしちゃうのなんて我慢できないよ。あんな激しいおくちまんこしたのは、鈴仙さんなのに……。
 後ろめたさと同時に、鈴仙さんに反論したい気分。
 だって僕はまだ、女の子でいたいと思うのだもん。女の子の格好の私が、僕だって、思っているのだもん。
 そうやってふわふわとどうすればいいのかわからないまま目を伏していると、鈴仙さんは膝立ちになって、まだイってないおちんちんを僕に向けて、にんまりと笑う。

「まだ、あるよね?妖夢が女の子でいられる、方法。ひとつだけ、残ってるよね?」

 僕だけ勝手に射精して果てた。鈴仙さんはまだ、おちんちんこんなにびくびくさせて先走りを垂らしていて、僕には後ひとつだけ、女の子になる方法がある。
 そんなの、そんなのなんなのか、わかっちゃう、わかっちゃうよぉ……♥

「は、い」

 僕は起こしていた体を再び横たえて仰向けになる。股を開いて、浮かせた膝を手で抱えて、お尻を鈴仙さんの目の前に晒した。おちんちんの先っちょが僕の顔のほうを向いている。鈴仙さんの顔に向けて、たまたまと、お尻の、穴。

「僕を、鈴仙さんのおちんぽで、女の子に、してください……♥」

 僕の回答に満足したのか、鈴仙さんの表情は、まるで兎なんて思えない肉食獣みたいで、でも笑ってる。ちょっと怖い。

「100点満点っ♥」

 鈴仙さんは僕の口に指を寄せる。

「濡らしておこうね?」

 鈴仙さんの指が、僕の口に添えられる。僕はごく自然にその指を口に含んで、唾液を沢山塗す。そうしたら、鈴仙さんの指がもう一本増えて、またそれも加えてたっぷり濡らす。しばらく口の中を、指で滅茶苦茶にかき回された。下を摘ままれてほっぺたの裏側をぐりぐりされて、たまに喉の奥にまで指が入ってきて、僕はそれを必死に呑み込んで。

「妖夢、いい顔。指フェラでそんな牝面出来るなんて、やっぱ女の子ね♥」
「ありがふぉぉごらいまひゅ……♥」

 ゆっくりと、鈴仙さんの指が僕のくちまんこから抜かれていく。ぬとぉぉぉっと唾液の糸が引いて舌とつながったままだ。鈴仙さんは僕の唾液がたっぷり絡まった指を、自分の口に運んだ。口に含んで、べちゃべ茶と嘗め回す。

 ああ、僕の、僕のおくちまんこ汁、あんな風に舐められちゃってるぅ

「はっ♥はっ♥」
「ふふ。私が妖夢のローションでセルフ指フェラしてるとこ、そんなにエロい?すっごいもの欲しそうな顔してる♥」
「はい♥鈴仙さん、えっちです……鈴仙さんのフェラ顔で僕、おしりマンコうずいてますっ♥欲しいんです、早く、早くおしりホジホジしてほしいですっ♥」

 僕のおしり、鈴仙さんのおちんちん早く入れてほしくて、穴をぱくっぱくってしちゃってる……。えっちだよぉ、僕、えっちな女の子になりたいよぉ♥

「わぁ、妖夢のおまんこ、すっごいひくひくしてる。穴が開いたりすぼんだりして……ファックしてほしそうにしてるよ♥」
「はいっ♥鈴仙さんにファックしてほしいですっ♥オトコノコマンコ、鈴仙さんのでずぼずぼファックしてほしいんですっ♥鈴仙さんのおちんちんで、僕、女の子になりたいんですぅっ♥」
「うふふっ♥りょーかい♥お姉さんに任せて?」

 鈴仙さんのべとべとになった指が、僕のひくつくおまんこあなの縁をつんつん突く。合図。これから犯すよって。僕は力を抜いて、穴をくぱぁって広げて見せた。

「メス化希望のケツマンコれすっ♥おかひてくらひゃ……ふぅぅぅうっぅうううっ!!♥」

 鈴仙さんの指が、いきなり二本、入って来た。もう、あっという間に根元まで。奥の方まで来て、折れ曲がってるのが、わかる♥

「ほヒ……♥僕の処女、鈴仙さんに、ささげちゃいましたぁ♥指っ鈴仙さんの指にっ♥」
「はぁい、確かに、いただいたよ、妖夢ちゃん♥」

 妖夢ちゃん。そういわれてまた、続々と快感が背筋を駆け抜ける。甘い電流が全身に火花を散らして、幸福感。
 鈴仙さん指が、中でうねりうねりと動いて、何かを探すみたいに。おちんちんの根元辺りを押したりこすったりしてる。そして、あるポイントに触れた時。

「っフぃっ♥そ、コぉっ♥」
「あ、ここ?妖夢のメスイキツボ♥ふふっ、自己申告なんて、いい子ね。覚えるわよ、私、妖夢のメスイキのツボ覚えちゃうよ?いいの?これから先、私、妖夢のこと本気でメス化させちゃうよ?毎日毎日ここで妖夢をメスアクメさせて、女性ホルモン過剰分泌させちゃうよ?」
「くきゅぅっぅっ♥いいっ♥ソコこりこりされるの、おちんちんに響くっ♥はいっ♥はいっ♥僕のこと、ほんとの女の子にしてください♥おっオぉぉおっ♥っふひぃぃっ♥オスとして不能になってもいいですから、ココ……メスツボで、僕のこと女の子に改造♥してくださいっ♥」

 鈴仙さんの指が、おしりまんこの一番気持ちいいところばっかりをぐりぐり押し込んだりこりこり揺らしたりしてくる。おちんちんを根元から刺激されてる遺体で、でも、快感が深い。すごく深いところにずんずんってくるあっつい快感、女の子が子宮で感じるのと同じ悦びなのかな。

「んォぉおォおオオっ♥しゅごい、そこされると、おちんちん、射精してないのに、イッてる、僕、おちんちんびゅるびゅるしてないのに、アクメキテルっ♥なにこれ、なにこれぇっ♥」
「すっごい、妖夢ちゃん、もうドライ覚えちゃったの?才能あり過ぎ♥ふふ、これ憶えたら、妖夢はもう終わりだわ。もうメス化確定。ふふ、もっとしてあげる♥」
「おっ、おぉぉおおおっひ、ふっくぅ♥んっ、~~~~~~っ♥っあ、~~~~~~っ♥とぶ、ぼく、とんぢゃ~~~~~っ♥っ♥ぁっ♥」

 オーガズムは感じてるのに、おちんちんは精子を吐き出していなかった。ただ透明な、先走り汁がだらだらとすごく沢山流れ出てる。
 鈴仙さんの指に僕のお尻の穴、どんどん広げられて、気持ちいいこといっぱい憶えされられて、どんどん女の子になっていく。

 そして、最後の仕上げ。

「じゃ、妖夢。もう準備万端って感じだね。女の子に、なろっか♥」
「ふぁぁい♥」

 鈴仙さんが、本当に女の人の欲張り顔のまま、おちんちんを持っている。それを、僕の女の子になりたがってるおマンコの入り口に、宛がった。

「くるっ♥鈴仙さんのおちんちんが、僕を女の子にしにっ♥僕の男の子にトドメさしにくるっ♥」
「ふふ、カクゴは出来てるみたいね?じゃあ妖夢、男の子の自分にばいばいしようね♥」
「はい、しますっ、ぼ……私、男の子の僕に、バイバイして、鈴仙さんのおよめさんになりますぅっ♥」
「あらぁ、私も女の子なのよぉ?こんなものがついてるだけで。妖夢がお嫁さんなら、私はお婿さんじゃない。ひどぉい」
「しってましゅ、しってましゅぅっ♥鈴仙さんは女の子ですっ♥おちんちんがついてるだけのきれいなおんなのこですっ♥だって私を女の子にしてくれるくらい、女の子なんだもん、女の子じゃないわけがないですぅっ♥ふたりともっ、ふたりともおよめさんっ♥」
「もうっ♥妖夢ったらほんと可愛い♥嬉しいよ、妖夢。私をそんなにも女って認めてくれるの、妖夢が初めてかも。でも、今はちょっとの間だけ、男になっちゃうかも♥」
「は、はひぃっ♥」

 ぐりぐり、鈴仙さんのおちんちんが僕のおまんこを押し広げてくる。つぷ、と先端が入りこんで来た。さっき指でいっぱい広げてもらったから、すんなり入ってく♥

「きてますっ♥きてますぅっ♥鈴仙さんのおちんちん、僕を女の子に堕とすおちんちん、どんどん奥まできてますぅっ♥」
「っくぅ、妖夢のおまんこ、ほんとに、女の子みたいに、うねうね動いてて、す、すいこまれてくわっ♥もう完全に立派なメスマンコに、なってるじゃないっ♥っはンっ♥な、ナカ、締めたり緩めたりするの、ナシっ♥もっと奥行かなきゃいけないのに、そんなにオシリマンコで愛されちゃったら、おちんぽ途中でギブアップしちゃう♥」
「だって、だってぇ♥おしりが、おしりが勝手に、鈴仙さんのおちんちんラブラブってぇ♥吸い付いちゃうんですっ♥いっぱいだいすきって、ご奉仕しちゃうんですっ♥」
「ああ、ようむっ♥妖夢かわいっ♥じゃあ、イケるよね、女の子イキ、出来るよね?私のおちんちん、もう、妖夢のメスイキツボ射程内だよ♥もう妖夢のメスアクメのスイッチおせちゃうよ?♥」
「おして、おしてくださいっ♥メスアクメのコリコリボタン、おしてくださいっ♥僕を女の子アクメで、完全に堕としてください♥鈴仙さんのおちんぽで、男の子にバイバイさせてくだしゃいぃぃっ♥」

 わかっ、た♥
 と、鈴仙さんが少し力を入れた瞬間、鈴仙さんのおちんちんが僕の奥まで一気に入り込んでくる。にゅるにゅると直腸粘膜が熱を以て快感を弾けさせる。鈴仙さんのおちんちんを受け入れているっていう意識が、頭の奥にも愉悦スパークを閃かせた。でもそれだけじゃない。鈴仙さんの狙いはもう、完全に的確。奥に入ったおちんちんの先端は、正確に僕の、さっきのツボのところに当たっていた。

「ふ、きゅぅぅうううん♥っは、あ、あ♥あっあっあっ♥そこ、そこぉぉおっ♥さっきのトコさっき僕女の子に堕ちかけたイキツボぉっ♥」
「そうよ♥妖夢のオスGスポット♥もうこれ、おぼえちゃったもんね♥いくよ、妖夢の男の子に、トドメ刺すよ。女の子になってもらうよ?♥」
「おっ♥ヒ♥くりくりっ♥オスGスポくりくり♥らめぇっ♥きもひぃぃ♥僕、おしりでしあわせになってるぅ♥」
「じゃあね、妖夢‟君‟♥」

 そういって、鈴仙さんは、いきなり体重を僕のおしりの中に押し込むみたいに、おちんぽであのツボを押し込んで来た。でもそれはすぐに離れて……でも離れたと思ったらまたごりって♥また離れて、またくりくりくりっ♥責められてる♥メスイキツボ、徹底的に責められてる♥

「オほぉぉぉおっ♥っくひ♥おくっ♥僕の男の子が、絶体絶命っ♥男の子の奥にあるメスポイント徹底的に仕込まれてる♥僕のメスツボが、おちんちんの味おぼちゃう♥あーーーっ♥ああああっ♥だめ、だめっ♥~~~~~~っ♥っかひゅっ♥んんんんんんっ♥イク、イクイクイクっ♥~~~~~~~~~~~~~~~~っ♥♥♥」

 鈴仙さんに奥をぐりぐり徹底的に刺激されて、僕はあっという間に昇天してしまった。背筋と足がぴんと張って、反り返る。でも、射精してない。出てるのは、どろどろと先走りみたいな透明の汁。すごい量がおちんちんからお腹の上に垂れていた。

「一回イッただけじゃおわらないわよ♥妖夢から誘ってきたんだからね♥今日は妖夢を徹底的に、メス化調教するんだからっ♥」

 そういって、まだオーガズムの波が引かずに頭の中が綿菓子みたいになってるところで、構わずまたピストン。勿論またあのメスイキツボをこりこり責め上げたりがんがん突き上げたり。
 激し過ぎて、僕も、鈴仙さんも、ウィッグがずれて下の黒い短い髪が漏れている。鈴仙さんも地毛は、黒なんだなあ、なんて。でも、そんなのはもうお構いなしだった。ううん、僕はもう、逆に、そうやって鈴仙さんの本当の姿が見えかけたのが、逆に幸せで。あの鈴仙さんがそうなっちゃうくらい激しく僕とエッチしてくれてることが嬉しくて。その幸せが、オーガズムに直結しちゃうくらい、今の僕はえっちになってる。

「ああああっ♥ま、まらああぁあぁ♥僕、僕まだメスイキ中っ♥なのにっ♥んおほぉぉおぉおおっ♥射精なしでアクメキメてる最中なのに、またそこおぉぉ♥」
「当たり前♥よっ♥これでアクメするたびに、妖夢は女の子になってくんだからっ♥ほらっ♥ほらほらっ♥またイっちゃえ、また前立腺でメスイキしちゃえっ♥」

 こりっ、こりこりっ、こつんっ、ぐりぐりぐりっ

「ふゅぅううっ♥~~~~っ♥ーーーーーっ♥あ、あひ、……っ♥かっひゅ♥」
「またイっちゃったね。潮吹きすっごいよ♥妖夢のお腹、妖夢がメスイキした証拠のお汁でもうべっとべと♥うふふ♥」
「はーーーっ♥はーーっ♥ぼくぼくぅっ♥」
「でも、まーだ♥」

 ずんっ、ずんずんっ、ごり、ごりっ、ぐぐぐぐぐっ、くりっ

「ヒへぁあぁぁ…………あ♥、あ、♥っひ♥も、もお……♥」
「もっともっとイって、メスイキ狂いになっちゃえ♥」

 ぐりっ、ぱんっぱんぱんっ、ずぼっ、ずぶっ、ぐぼっぶぼっ
 鈴仙さんのおちんぽは、容赦なく僕の前立腺を刺激してくる。強制的にアクメに追いやられて、カウパーをぶちゅぶちゅ押し出される。ちんぽ快感はない、ただ、直接与えられるオーガズム、そしてこれは女用の快感。

「を゛……んっ♥ひ♥~~~~~っ♥――――♥ッ♥」
「ふふっ♥白目剥いて、潮吹いて、かわいいっ♥妖夢、でも、まだよ♥」

 意識は飛びかけてる。気持ちよすぎて、頭の中ショートしてる。でも気持ちがいいっていうのだけ、頭の中をぎゅうぎゅうに満たしていて、射精感はないのに、すごい法悦。僕を侵してる鈴仙さんに、ラブの感情だけ爆発的に広がっていく。こんなことされなくっても、僕、鈴仙のこと好きだったけど、こんなことされたらもう、男の子メス愛奴隷だよぉ♥

「はっ♥はーっ♥妖夢、可愛いし、妖夢のおまんこウネウネでキモチイイし、おちんぽイきそうっ♥出すね、妖夢のおまんこのGスポットに、私のオスザーメンかけるからねっ!これで妖夢、完全に女の子だよ♥もしかしたらおしりで妊娠しちゃうかも♥尻膣内射精で、最後にいちばんおっきなアクメで潮吹いてね♥妖夢、妖夢っ♥」

 にんしんっ♥おとこのこどうしだけど、おまんこなかだしで、にんしんっ♥したい♥れーせんさんのせーしで、ぼくのおまんこにんしんしたいっ♥

 もう言葉を発することが出来ない。何か言おうとしても、口の端から唾液の泡がこぼれるばっかり。でも苦痛じゃない、幸せ。すごく気持ちいい。大好き、大好き鈴仙さん、中出しして、妊娠させて、それを言葉で伝えられない代わりに、僕は。

「んっ♥よ、ようむったら♥お返事はアナル締めって、わけっ♥もうっ、もうもうもうっ♥可愛いっ♥完全にメス媚びじゃないそれってっ♥そんな風に求愛されたら、私耐えらんないっ♥」
「~~~~っ♥、♥っ♥っっっ!♥」
「ああほんともうダメ、私もっと自信あったのにっ、妖夢のケツマンコ名器すぎて、可愛すぎてたえらんないっ♥もう出すよ、妖夢、ザーメン女の子の妖夢のお腹の中にだすよっ♥っ♥イク、イクっ♥イクイクイクイクイクイク♥♥♥♥♥」

 どぶんっ!ってお腹の中に響くくらい、すっごい量の精液が、一吹きごとに僕のメスイキツボに吹き付けられる♥おちんぽで突き上げる時のような鋭い快感はないけれど、優しく包まれる気持ちよさがあって、それに鈴仙さんの愛を感じてしまって僕はまた、アクメする。ほとんど声が出せないけど、もしこんなおっきなキモチイイに流されて声が出せたら、完全に女の子の、鈴仙さんに媚まくりの声を出してたに違いない。

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ♥っ♥はああぁっ♥んっ♥~~~~っ♥」
「っは、っ♥はーっ♥すっご、こんな、に、出たの、久しぶりっ♥いま、わたし、男になっちゃった……♥妖夢が、可愛すぎるんだもん♥」

 にゅぽんっ、と鈴仙さんのおちんちんが、僕のおマンコから抜ける。

「ぁ……め……れれ、ひゃ……」

 せっかく中に出してもらった鈴仙さんの精液。お尻の穴が上手く閉じられなくて、とぽとぽこぼれちゃってる。もったいない、もったいないのに、止められないっ……

「ふふっ、私の精子、惜しんでくれるの?うれしいよ、妖夢♥」

 そういって鈴仙さんは僕のおまんこから垂れる精子を掬い取って、お尻の穴に戻すようなにしてくれる。でもそれは優しくて全部戻すような感じじゃない。ちゃんとはいってるからねって、僕にわからせるために撫でているだけ。
 でもその掬ったものを指で持ってきて。

「妖夢」

 ぁむ……っちゅっ♥

 口に添えられたので、僕はそれを朦朧とする意識の中で夢中でしゃぶった。

 れーせんさんの、せいしの、あじ……♥

 そのあとから、鈴仙さんの熱っつい唇が覆いかぶさってきて、僕はそれも夢中で、吸った。
 疲労と、オーガズムの余韻が引かない。おしりも開いたまま戻ってくれなくてちょっとすーすーする。僕、この後どうすればいいんだろう。疲れたら、眠ってしまいたい。でも、鈴仙さんを置いて、寝ちゃうなんて……。

「眠い?瞼、落ちかけだよ?」

 ゼロ距離だもん、ばれちゃうよね。
 僕は小さく頷いた。多分、はい、の一言だって発せない。

「私も、妖夢の中にいっぱい出して、眠くなっちゃった。いっしょに、寝よ。このままでいいから。後始末は明日……ね……よう、む」

 鈴仙さんも、そういって崩れる様に僕の横に頭を落とす。視界に入ってきた鈴仙さんの頭はウィッグの薄菫色と地毛の黒のレイヤーカラーみたいになってる。きっと僕も同じことになってるだろう。
 どっちが先に眠ったのか、もうわかんないけど、二人とも、水飴の中に沈むみたいに、眠りについた。







「わ、」

 お風呂場から出てきたすっぴん鈴仙さんは、男の人だった。

 いつも練習試合の後にお風呂に入って出てて来るときは、しっかり女の人なのに、今の鈴仙さんは、男の人。
 勿論顔のつくりはすごく綺麗で、そのままでも美形なんだけど、ウィッグはないから髪の毛は色も黒いし短いし、目元も唇も作りこまれてないからあっさりっていうか、男の人らしいざっくりした彫りになっていた。ありていに言えば"イケメン"。そっか、化粧を取るとこうなるんだ……。

 あの後結局翌日まで目が冷めなくて、目が冷めたら鈴仙さんが色々と後始末をしていた。「私は先に浴びちゃったから、シャワー浴びてきなよ」と言われた。言われてお風呂に入るまではまだ半分意識がなかったからあまり気に出来なかったけれど、こうしてすっきりしてから出て来て見直せば、今の鈴仙さんは、完全にすっぴんだった。

「何驚いてるの、私が男だって知ってるでしょ。さっき散々、妖夢のことを女の子にしてあげたじゃない?」

 男の姿の私、幻滅した?
 ちょっと苦い顔で笑う鈴仙さん。

「そ、そんなことないです……あの、そのまんまでも、十分綺麗です」
「うそ。その可愛い顔に出てるよ」

 僕もさっきお風呂に入ってから、今は女装していない。その僕を見て"可愛い"というのなら、鈴仙さんだって同じじゃないか。
 でも、確かに、綺麗、というのはちょっと違った。なんていうのかな、男としてカッコいい。女の人にモテそうで、なにこれズルいって思った。でも、そのギャップ、いやギャップを知ったという出来事自体が、秘め事みたいで、ちょっと嬉しかった。

「その、お化粧でもっともっと綺麗になるってわかったってことです!それに」
「うん?」
「こ、こうやって、女装してた同士が、女装もお化粧もしてない姿見せ合うのって、特別な感じがしちゃって」
「特別」
「だ、だって、心を許した人にしか、見せられないですよね、こんなビフォーアフター」

 僕が言うと、鈴仙さんが、大の字で飛びついて来た。

「わわわわ」

 そのまま、二人ともベッドにダイブしてしまう。倒れこんだ布団の中で、鈴仙さんは僕を小動物でも可愛がるみたいにぎゅうと抱いた。

「もー、妖夢、可愛いっ、ほんっと可愛いっ!そーだよね、うん、うん。男の子に戻った妖夢もぜんっぜん可愛いもんっ♥」
「わ、わわ、れいせん、さんっ?」

 鈴仙さんが、昨日そうだったのと同じように、キスの雨をくれる。舌は入ってこない、ちゅっ、ちゅっ、っと啄むみたいにいくつもいくつも。

「ん、ちゅっ、ようむぅ」
「鈴仙、さんっ……ちゅっ、ちゅっ」

 このまま、昨夜の続きをしてしまいそう、と、いう雰囲気にも拘らず、僕も鈴仙さんも、どちらからともなくキスを止めて顔を離す。

「でも、えっちは、"女の子になってから"が、いいですね。僕、女の子として、鈴仙さんとえっちしたいです」
「そうだね。私も、ちゃんとメイクして、可愛い服着て、ちゃぁんと妖夢に捧げる"女の子になってから"、女の子同士の、えっちが、したい」

 なあに言ってんだろ、僕、男なのに!ヘンタイだあ!

 天井に向かって、大きな声で言ってみる。でも、僻みとか、後ろめたさとか、コンプレクスはもう、全然なくなってて。なんだか清々しくって笑えてくる。鈴仙さんは、そんな風に笑ってる僕の手を、握ってくれた。

「もう、"男"になんてこだわる必要、ないじゃない。妖夢は女の子になって、自信をつけて、前よりずっと強くなったんだから。幽々子さんの前でも、誰の前でも堂々と、ウィッグつけて、メイクして、スカート穿いて、女の子でいればいいの。そうでしょ?」
「そう、ですね。あーあ、もっと早く、こうすればよかった!」
「私のおかげでしょ?」
「はい」

 鈴仙さんは僕の頭を撫でながら、同じように天井に視線を投げている。そして、そのまんま、静かに言う。声が、違う。低い……これ、男の人の声だ。

「俺もさ、昔、悩んだんだよね。なんでか知らないけど、やたらと女の服に憧れたり、自分が男ってのが受け入れられなかったり、男なのに男を好きになったりさ。だから、自分を歪ませたんだ。オカマの自分が気持ち悪いんだって引け目を全部捨てて、こんな俺の何が悪いんだ、ってさ。乱暴な方法だったけど、それ以外に苦しまない方法はないって思ったから。周りのやつはそんな俺をバカにしたけど、自分が楽ならそれでいいって思って」
「鈴仙、さん……?」

 ごめん、愚痴。口を閉ざそうとする鈴仙さんに、続けて、と言う代わりに手を強く握り返す。閉ざされかけた口が、再び開いた。

「でっもさ、今更女の恰好した可愛い子を好きになっちゃうなんてなー。これなら男のままでいた方が、よっぽど良かった気がするわ」
「ぼ、僕は女の子になった鈴仙さんがいいです」
「本当ぉかよぉ?」
「本当です」

 ははっ、こりゃますます、歪んできたね、私。なんて鈴仙さんは笑う。

「こういう切り替え方って、ただの逃げかもしれないって思うけどさ。けど、そういう弱さがあったから、俺、戦争で生き延びられたんだと思うし、だからここでまだ生きてるんだと思うし。今でも姫様の傍で役に立ててるんだと思うし。なんか、悪くねーなって。ソーゴーテキに。」

 鈴仙さんも苦しかったんだ。その過去苦しみは僕には理解しきれはしないけど、でも、今の鈴仙さんを肯定することは、出来る。もう、今更僕がすることではない、永遠亭に住まう方達が、きっとこういう鈴仙さんを肯定しているだろうから。

「わるくない、と、思います。むしろ、いいですっ、素敵ですもん、今の鈴仙さん!ずっ、ずるいって、思うくらいですよ、綺麗だし強いし優しいし気配り出来る大人だし綺麗だし」
「綺麗は二回目ー」

 急に、いつもの声色に戻った。

「と、とにかく、ズルイんです!」
「あはは、妖夢のそーいうとこ、かわい」
「ぼ、僕のことはいいんです。だから永遠亭の皆さんも、鈴仙さんのこと受け入れてると思うし、幸せそうだし」
「うん、幸せだよ。姫様のところで生きてると、ただの兵器だった頃と違って、男だの女だのに雁字搦めになってた頃と違って、今の自分を、すごく肯定できるんだ」
「はい」

 何がハイなのかわからないけど、もう、いろんなもを経て、今の自分を肯定できるって一言に対して"その通り!"って感じで、それまでに経てきた自分のこととか、きっと鈴仙さんが得てきたものとか一つ一つを指さして肯定するのも面倒くさいほどで、ただ、ハイ、だなんて。

「女装してるの知られてさ、変身願望、とかって片づけられるの、ムカつくんだよね。違うっての。望むだけの薄っぺらな幻想じゃない。私は"こうなんだ"っていう、認識と実態のほんとの一致なのに。女装した時に、自分の体はこうあるのが正しいんだって靄が晴れるの。男の格好してるときの不一致な感じがすっと抜けて、すっごいしっくりくるんだよね。‟なりたい‟っていうより……‟戻りたい‟、かな。わかってもらえないんだけどねー」

 わかる、わかります。それを僕が安易に口に出すのは気が引けたのでそうは出来なかったけれど、僕が得たものは、まさに、それだった。今までの自分が全部偽物だったんだって、傍目からは馬鹿げた勘違いにしか見えないだろうけど、締め付けるほどのリアル。女の子になった私が、本物だっていう、統一感。説明できないっていうか、そうとしか言えない。こういってわからない人には、きっとどう言ってもわからないだろうという諦めが芽生えるところも、鈴仙さんの言うところに強く共感できた。
 それを教えてくれたのは、鈴仙さんだし、それにきっと、鈴仙さんのそれをわかってるのって、僕だけ、だと思う。

「永遠亭の皆さんは、鈴仙さんのこと、ほんとに受け入れてるんだなって、思います。みんな、鈴仙さんを女性として扱ってるの、傍目から見ていてわかります」
「うん。姫様も、師匠も、慧音先生もね。藤原さんなんて途中までほんとに女だと思ってたみたいだし。ふふっ、慧音先生なんて"あー、こりゃあ妹紅より女の子だわ。妹紅も少しは見習え"だなんて。藤原さんふてくされちゃってた」

 くすくすわらう鈴仙さん。わー、そういうの、なんかいいなあ。
 僕の方は、こんな風になったことをどうやって幽々子様にCOしよう。なんと思われるだろう。
 永遠亭の方々のおおらかな感じは羨ましい。きっと、本当に鈴仙さんは女性として暮らすことが出来ているのだろう。……でも。

「でも」
「ぅん?」
「でも、鈴仙さんの、ほんとのところ、わかって、肯定してあげられるのは、僕だけだと思うんです!永遠亭の皆さんより、ずっと、僕の方が、女の子になりたいって思ってる、僕の方が」

 僕は、鈴仙さんの視線を遮るように、天井と鈴仙さんの間に顔を滑り込ませる。視線を、奪った。"僕だけだと思う"なんて、前の僕では、思えなかっただろう。私自身を認識して自信を得た僕だから、こんな風に思えるようになったんだ。

「僕なら、鈴仙さんの、一番に、なれるとおもい、ま……す」

 僕のその言葉を、鈴仙さんは耳をぴこぴこと動かしながら聞いて、そして鈴仙さんの目が、急に輝きだした。

「よう、む」

 あれ、これって……?鈴仙さんの、魔眼?なんで?

「もー、妖夢ったら、女装、覚えたばっかなのに、生意気……っ」

 鈴仙さんの目に宿る輝きは、でもよく見れば赤くなくって。それはただ、部屋の光を反射してるだけ。光は透明で眩しく揺れていて、目の端から、ぽろっと、落ちた。

「ズルい、はこっちの科白。妖夢の可愛さ、反則だからっ」

 鈴仙さんの腕が僕の首の後ろで組まれて、そのまま引き寄せられて。
 そのままながいながいキスをした。
 リップを塗っていない唇でも、すごくきもちい。これくらいくっつくと、睫毛整えてなくっても、睫毛が当たる。ウィッグじゃない生の髪の毛同士が触れ合って、くすぐったい。シャワーを浴びた後の芳香が、生で鼻に入ってくる。
 おとこどうしなのになあ、そんなのがふっと頭をよぎったけど、それもいいかなって、もう、思っちゃった。
 唇が離れて、鈴仙さんの目は、元に戻ってる。一旦離れて、僕が上半身を起こすと鈴仙さんも起き上って。二人並んでベッドに腰を下ろすと、右手で僕の左手を握る。左手で僕の額の髪をかきあげて、額にもう一つだけ、ちゅっ。
 そうされたから、鈴仙さんの、よく見たらうっすら喉仏のある首に、口を寄せた。
 ちょっと、男だって言われてるみたいでそこはヤダよ、と笑う鈴仙さん。
 それでもいいですよぉっ、と笑い返す。
 そのまんま鈴仙さんは僕の上半身を捻って後ろから手を回すみたいに抱いて、ぼふんと二人であおむけに倒れた。

「ところでさぁ」
「はい」
「こんど、半霊クンも混ぜて、3Pしよーねっ」

 凍りつく僕。
「えっ……なんで、知って……?」

 呟いてしまってから、しまったと内心二重に凍り付く。それは知ってたんじゃなくって、ただのカマかけだった。

「ははーん。やっぱ自分とシたんだー?女装した自分が可愛すぎた?そーだよねー、あんだけ自信つくってことは、女装した自分が可愛すぎてヤバイとか思っちゃったんでしょ」
「ちちちちちがいますあれはですねその」
「いくら自信がついたからって、ナルシーまで行っちゃうのは、おねーさん、どーかとおもうなー」
「うわああああん!」

 そんな3Pなんかしたら、完全に、ヘンタイさんになっちゃうよお。でも、鈴仙さんなら、受け入れてくれるかな。

「鈴仙さんは……僕がそんなヘンタイさんでも、嫌いにならないですか?」

 鈴仙さんは、何も言わずに僕を、もう一回押し倒した。








よーむ!よーむごはんはー!よーむー!いつかえってくるのよーごーはーんー!

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