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【勇儀/萃香/さとり/こいし】勇儀玉責

キンタマ虐めと、精子の睾丸逆注入は
いずれ書きたいモノの一つでした。夢が一つ叶った(?)
ホントに可能かどうかは知りません。多分無理でしょう。

誰でやるか迷ってたんですが、勇儀はやってみてぴったりだなと思いました。

内容的に特に語ることはありませんが、
読みは「ユウギギョクサイ」ということにしといてください。
玉砕とかけたつもりなんですけどどうにも巧く表現できそうになかったので
そのまま玉責にしました。



そういえばここんところ何作か、投降したっきりこのblogにアーカイブしてなかったな…。

以下、アーカイブ
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「無秩序こそ地霊が不倶、悪にして秩序たる我らの力を以て、|悪霊《タナリ》の穢魂を刈り取るのだ! 抜刀!」

 スチールデヴィルの鬨声に押し出されるように、配下の歩兵隊がめいめいの得物を振上げる。数も形も知れぬレムレー、有象無象の雑兵メレゴン、そして下位それ故にこの流血戦線の主力たるオルソンが、声に続いた。
 秩序にして悪たる|悪鬼《バーテズ》と、無秩序にして悪たる|悪霊《タナリ》との苛烈かつ永い流血戦線は、人間如きの尺度では毛先ほども想像できない規模の、巨大で深刻、本質的で宿命的な戦争だった。その第二幕が、続いている。

「忌々しい無秩序、汚らわしい|悪霊《タナリ》共を、成敗する! 突撃!!」

 声を上げ多くの兵を率いる|悪鬼《バーテズ》の指揮官スチールデヴィルも、指揮官とはいえ一人ではない。十人程度でもない。百万対百万の激突が常態である|悪霊《タナリ》と|悪鬼《バーテズ》の流血戦線では、千人を束ねる将であろうとも大軍の将軍ではない。万鬼を統べる将であろうとも、指先の関節程度の役割しか持たない。それほどの戦争だ。
 |悪鬼《バーテズ》が整然と敷された陣形を乱さぬまま美しい図形の移動のように突撃するその先にあるのは、それとはまったく逆の、息一つ合わず色も姿も形も速度も武器も何もかも全く統一感のない軍団、陣形もなさず戦術もなくただ目の前にいる敵を打倒すためだけに進んでくる辛うじて形を持った、しかし破壊と無秩序そのものを具現した、まさに混沌だった。

「ああ、あんなところに|中継界《穴》が開いたから、こんな場所で無用な防戦を強いられる。厄介だな」

 そして五匹、士体、百人、千騎、あるいは万鬼を率いる長が整然とインデントされていく潔癖な戦陣の光景を、後方の本営から俯瞰し眺めている女達がいた。彼女等こそ、この戦争のデザイナーだ。

「博麗との盟約なんて、締結すべきだったのか? 自由に身動きもできやしねえ。|万色悠龍《ティアマトー》の|化身《アスペクト》なんか、オレ等が暴れりゃ黙らせられるだろうに」
「「奇妙なことに紫色は|万色悠龍《あれ》の言う《《万色に含まれていない》》、あれを単なる|化身《アスペクト》として見くびらない方がよいでしょう。|化身《アスペクト》ではなく、|現身《アバター》かもしれないのです。」」
「|万色悠龍《ティアマトー》が|物質界《アッシャー》に|現身《アバター》なんか置くんですか」
「「あれの真意は全く|読心《よめ》ません。それにあなたが自由に動けないのは博麗云々ではなくて、もう|四天王《テトラ・フィーンド》、こうした戦闘では将軍としての責務を負ったから。そうでなければ、大穴のことなど気にせずに今頃、《《あの中》》でしょう?」」

 苦々しく歯痒そうに、彼方に軍勢同士の激突を見るのは、額に長い角の生えた鬼神。この本営には他に三名の鬼神が立ち、更にそれを見下ろすように二名の幼児然とした少女が、一人は椅子に腰かけ、一人はその傍らに立っている。

「ああ、ちげえねえ。|オレ等《バーテズ》は|奴等《タナリ》をぶちのめすために存在しているってのに、何だってオレはこんなところで物見遊山なんてしてるんだよ」
「まーまー。戦争はスポーツじゃないんだ、勇儀に取っちゃ軽いダンスのつもりでも、他の奴等にとっては生きるか死ぬかの瀬戸際だからね」
「だったら猶更オレに行かせてくれよ。もっとマシな戦線を張ってやる」
「「星熊勇儀。あなたも亡き父君を次いで|四天王《テトラ・フィーンド》の一角に立つ者となったのよ。将軍なら、敵を多く殺す戦争ではなく味方を多く生かし、ただ勝つのではなくより巧く勝つ戦争をなさい。あなたが一騎当千なのは知っているけど、|千如き《…》が何だというのです。そういう次元から、早く抜け出すことです」」

 一段高い位置にある、金の猫足に赤い座面の飾り椅子に腰かけ四人の鬼神を見下ろす少女、それとその傍らに立ち目を閉じたままの少女は、まるで二人で一人であるかのように一言一句とも同じ言葉を、しかしほんのわずかにだけ差のある|微差二重音声《バイノーラルボイス》で喋る。また、彼女達の周囲には一対の肉玉が漂うように浮いている。椅子に座って瞬き一つしないままの少女には目を見開いた眼が、それの傍で立ち目を片時も開かない少女には目を閉じた眼。|単眼翼魔《アーリマン》の仔を彷彿とさせる、眼球に薄い被膜をまとったもので手足や翼はないが、浮かんで漂う線状の肉管によって体と接続されていた。噂では、人型の方それ自体はただの手足のような存在で、本体はこの目玉の方だともいわれている。
 この双子姫に戒めの言葉をかけられた、女性の割に大柄な体つきに威容を誇る一角を立てた星熊と呼ばれた鬼神の傍で、けらけらと笑うのは、大柄な星熊には対照的に背丈がその三分の一程度しかない鬼神、双子の姫よりなお小さい。額から前方へ鋭く真っ直ぐに伸びる一角の星熊に対して、この小さな鬼の角は側頭部から二本が歪に暴れる稲妻のように広がっている。

「ちっ……萃香も、お前らも、よく平然としてられんな! 疼かねえのかよ!?」

 星熊が拳を地面に突き立ててどすんと地面に腰を落とすと、萃香と指された双角の鬼神が星熊の背中に負ぶさるように腕を回す。

「そろそろ単正面戦に気を取られてる|悪霊《タナリ》の側面を、東第四軍の騎兵が突っつく頃だよ。奴らに戦略はないから単純に分散するだろうし、そしたらあの辺の真ん中の、開いたところに遊びに行こうよ。『火』が発動するまでさ。それまではちゃんと|将軍《フィクサ》やってサ。……それぐらいはいいでしょ、|古明地の双子姫様《プリンセス》?」
「「仕方のない人たちですね。側面攻撃が上手く行ったなら、熱核攻撃前までを条件に、許可しましょう。そのかわり」」
「わあってるって、敵将の首級だろ!?わあってるって、わあってるって!な、みんなで行こうぜ!」

 急に天気が晴れたみたいに様子を裏返す星熊。他の三人を誘って「仕上げ」の暴れ方を切り出す。が、他の三人はそう乗り気ではない様だった。

「私は念のために西を固めておく。|悪霊《タナリ》共にそんな策があるとは思えないけどね」
「なんでぃ、ツレねえなあ」
「私も遠慮しておくわ。勇儀の暴れっぷりをここから見ている方が、楽しいから。伊吹と一緒に行ってらっしゃいな、ふふ」
「何だよそれぇ。オレだけかよお」
「我慢しなって、私が付き合ったげるから」

 星熊が腰を落として胡坐をかいたくらいが、伊吹が立った背丈に丁度いい。そのへそを曲げた大柄な女性を、幼気の残る少女が頭を撫でて宥めている姿は、どうにも微笑ましいものだが、姿など彼女達|悪鬼《バーテズ》にとってはさほど意味のないものだ。この二人はほとんど同い年、むしろ小さな伊吹の方が1000年ばかり年上なのだ。

「ほら、あっこで暴れられるかどうかは勇儀配下の東軍の成果にかかってるんだから、|新人将軍《私等》は戦場をちゃんと眺めて勉強しておかないと」

 伊吹が彼方の激突を指差す。斥候|蝙蝠《インプ》の報告では予定通り、左側、つまり東側面を騎兵が迷彩して前線を押し上げている。合図と同時に敵本陣へ側面攻撃を仕掛ける算段だった。
 |悪鬼《バーテズ》に対して|悪霊《タナリ》はとかく桁外れに大群である。どれほどがどこにいれば、それが全軍だ、残りの軍はどこにいるだ、などという想定は役に立たない。|四天王《テトラ・フィーンド》の一人は、地霊殿の最も弱い側面である西側に、念のために戦線を展開する、と言っていた。

「と言っても奴らはいつも策を講じたり作戦を打ったりしてくるわけじゃない、重要なのは士気の維持と装備、後は被害の少ない布陣と、攻防指示のタイミングくらいのものだ」
「ぜんぶじゃねえかよぅ」
「ばぁか。だから|悪霊《タナリ》相手ばっかりの星熊はいつまでも|怪力乱神《オンリーパワーノーブレイン》って言われるのよ。本来は、敵の作戦とこちらの作戦の駆け引き、地形と布陣の臨機での効果見極め、事前・最中問わずもたらされる情報戦、天候、星の運び、疫病風の向き、全てを統合して戦争を指揮するのが将軍なのだから。この流血戦線は一次二次とも最大最長最悪の戦争だけど、戦争の全てではないわ、むしろ|簡易制限ルール《リミテッド》。応報内戦を《《運よく》》生き延びたこの地霊殿で、勇儀も生き延びようというのなら、もう少し狡猾にならないとね」
「そういうあなたはそれらを勘とかいってすっ飛ばしてるでしょうに、偉そうなことを言わないの。でも勇儀、それに伊吹も、まだまだ学ぶことは多いんだから。大胆になるときはそれでいいけど、上手く、使い分けなきゃだよ」

 |四天王《テトラ・フィーンド》の内もう二人は、星熊と伊吹よりもかなり年上だった。伊吹も星熊も、先の大きな内乱で|四天王《テトラ・フィーンド》であった親を失い、幸い(いや、不幸か)にも世襲で繰り上げとなった。子とは言え力自体はほかの二人に勝るとも劣らず、問題は経験の厚みとなっている。|四天王《テトラ・フィーンド》が他二柱は、伊吹と星熊に同僚としての親密さと先輩としての威厳の双方の表情をみせ、つまりは良好な関係性を保っていた。

 先輩二人に窘められ、星熊は小さくなる。誤解を恐れずにいうのなら、見た目には可愛らしいという感じではない、大柄で逞しささえある星熊だがそうしてばつが悪そうにしている限りは、この先輩四天王から見ればやはり、可愛らしい後輩というものらしかった。





「あのお」

 |四天王《テトラ・フィーンド》の後ろにひっそりと縮こまっていた一匹の|地獄猫《ベゼキラ》が声を上げた。

「星熊様の『仕上げ』に、私もついて行っても、よろしいですか」
「「お燐、あなたはいつでもそうやって屍肉を集めているけれど、そうやって集められた魂がどこの誰かの下に不平等に渡っていないか、旧獄全体の関心事なのです。それを理解しておいて下さいね」」
「どこかに多く少なく行っているだなんてとんでもない。|神に《・・》誓って平等ですよ。10刈り取った人のところに5、5を刈り取った人のところに2、不平等な配分なんて全くとんでもない。これは原初契約に基づくわれら|悪鬼《バーテズ》に与えられた最も根源的な労役、その秩序に逆らおうなんて思ってもいません」

 燐、と呼ばれた|地獄猫《ベゼキラ》は今は|司獄《オーヴァロード》である古明地の双子姫、その直属の武将|四天王《テトラ・フィーンド》と同じく人型をなしている。二股に分かれた尻尾、炎のように赤く割れた瞳、血を満たすような赤が満たす口から覗く牙と、同じくの鬣を彷彿とする赤い髪を今は三つ編みに分けて尻尾と揃いの二股に垂れており、見る者を欺く愛らしい人の姿だ。手ずから押すこともあるが専ら|屍妖精《ゾンビフェアリー》に押させる赤茶けた錆の浮いた台車の中に今は何も載せられていないが、これが|一度《ひとたび》戦場に出て屍人狩りを行えば忌々しく穢れた宝石粒になった魂で溢杯になる。戦場(現代では殆どがこの第二次流血戦線からのものだが、少し前には応報内戦や|新中継界形成事変《間欠泉騒動》での争いも含む)で魂を回収しそれを戦果に応じて配分して回るのが、燐と呼ばれたこの|地獄猫《ベゼキラ》の役割だった。

「「星熊勇儀について行ってどうするのですか」」
「それは勿論、ウチのお仕事、死体漁りですよぉ。|第二次流血戦線《この戦場》は無二の大戦場。魂回収も、物質界からの流入を除けば、ここからが専らですから。新鮮な死体からは新鮮な魂が集まりますよ、新鮮な魂からは上質の霊素が抽出できますから。」

 飄々と自らの目的を表す|地獄猫《ベゼキラ》に、古明地の姉妹は二人で3つの瞳を向けて、二人で2つの口で、二人で1つの言葉を投げる。それはいつも真意の全く読み取れないこのしまいにしては珍しく、若干の疑いの念を嗅ぎ取ることができる仕草だった。

「「……あなたは|星熊勇儀《星野由紀とやら》と因縁があるようですし」」
「あ、アレは、あはは、仕方なかったんですよぉ、まさか|鬼《フィーンド》が出てくる件だなんて思ってなかったので」

 燐と呼ばれた|地獄猫《ベゼキラ》自身には|四天王《テトラ・フィーンド》ほどの大きな力はない。この場にいる|鬼《フィーンド》がその気になれば、ともすれば吐息ひとつで存在を消し飛ばされるひ弱な存在だ。だが、与えられたその特殊な役目によって、彼女は他の|悪鬼《バーテズ》達に大きな影響力を持っている。
 死人の魂は、新生外方次元界がひとつたる|旧獄《シェンディラヴリ》(それは|九獄《バートル》の一部であった頃から変わらない)のエネルギーそのものである。昔と少し異なるのは、人間の魂と同等に打倒した|悪霊《タナリ》のそれを重視することだ。魂を直接自身の力に結び付けることが出来る上位の|悪鬼《バーテズ》にとっては、より多くの魂を受け取ることは自身の力を膨らせることに直接つながる。それを得るためのコストを圧縮することも然り。その魂の回収業者である火焔猫燐に分配量を都合してもうことは、他の者に隠れて力を拡大するための最も有効な方法の一つなのだ。そしてその役割を与えているのは、この|悪鬼に非ずして悪鬼の支配者《オーヴァロード》である古明地姉妹。全ての回収された魂の半分は無条件に古明地姉妹の下へ入り、残り半分を戦果に応じて他の者達で配分する。
 古明地姉妹の力は今やこの旧獄で圧倒的であり、そのせいもあって、かつての|九獄《バートル》が権力争いで名ばかりの秩序を謳っていたのに比べれば、今この旧獄は相当安定している。だから彼女に敢えて敵対する者はいないのだ。然るに、先に双子姫の言った「不平等」とはその実、最も双子姫自身に対してに行われており、それは広く公式のもので誰も弾劾せず、この旧獄の秩序を維持するのに最も有効な課税として認識されていた。

「「《《本当に想定外だった》》ようですね、まあ、いいでしょう。二人の暴れっぷりに巻き込まれないように精々気を付けるのですよ」」
「あい!」







「へへっ、こン時を待ちわびたよ!萃香、暴れンぞォ!」
 当初の作戦通り、将軍星熊管轄の東第四軍が無秩序な|悪霊《タナリ》軍の側面を叩いて軍勢が分かれたところに出来た空白地域に、星熊と伊吹は降臨した。この合戦においては、二人とも将軍の立場、それが突然戦線の最前に現れたとあっては、|悪鬼《バーテズ》軍の士気は跳ね上がり、|悪霊《タナリ》軍の戦意は怯む。

「ちょっと、東第四軍勢に一声かけて!ちゃんと鼓舞して!!」
「|東第二軍《伊吹ンとこ》はどうなのさ!?」
「|薄めた私《…》がちゃんと先頭で戦ってるよ」

 伊吹が任されている東第二軍は、機動力と攻撃力過多に構成された東第四軍の騎兵の電撃性を確たるものにするために後続からせり上がる重装歩兵だ。東第四軍が|悪霊《タナリ》へ大打撃と共に混乱を与えてから退いたところでそれと入れ替わり、突撃を命じられ一丸となって進む正面の南軍・西軍とで挟撃にして擂り潰す役割を負っている。

「ああ、伊吹は器用でいいよな、そう言うのが出来て。私は無理だ、馬鹿正直に突っ込むしか能がねえよっ!」

 伊吹の本体は今こうして星熊と一緒に行動しているが、薄く分けた|化身《アスペクト》の内一人が別の場所で軍を率いていた。伊吹は|化身《アスペクト》の造出と操作に非常に長けた|悪鬼《バーテズ》だった。他の|悪鬼《バーテズ》(それが格上であっても)がするよりも格段に上等巧く|化身《アスペクト》を扱い、強力にも脆弱にも、濃密にも希薄にも、大きくも小さくも、多くも少なくも、自在にこなす。特筆すべきは、そうして他所に派遣している|化身《アスペクト》と本体自身を、いつでもどこでも任意に入れ替えたり、その全てを同時に薄い本体としたりも出来ることだ。これは他のどの|悪鬼《バーテズ》にも真似ができない芸当で、彼女のなす|化身《アスペクト》は、特別に|別名《エイリアス》と呼ばれている。

「|悪霊《タナリ》相手に名乗り上げたって意味ないだろ。あいつらどうせ、群ではあっても軍じゃないんだ、適当に強そうな奴の頭引きちぎって持ってけば、いいんだろ?」
「否定はしないけどね」
「じゃあ先頭でちょいと暴れてくらぁ。そのほうがよっぽど名刺代わりになるってもんだろ」
「適当に|二軍《私達》にバトンタッチしてよ?」
「わあってるって!」








 |悪霊《タナリ》というのはいつまでも殆ど変わらない、つまり、何万年も前から|悪鬼《バーテズ》との戦争状態が続く中、奴らは戦略も戦術も時には作戦さえ持たずに少しの統率も一つの陣形も僅かな指揮系統もこれっぽちの統一感も全く連携もせずただ馬鹿みたいに突撃を繰り返すばかりで、しかしまるで俄に大量の腐肉を得て一気に湧き出した虫をそのまま巨大化したような夥しい密度でその無策を肯定するかのような戦い方を、一向に変えるつもりがないのらしい。

「はン、いつまでもそんなだからさ!」

 ただし、|悪霊《タナリ》達の馬鹿げたやり方が間違っているかの答えは出ていない、なにせこの星の数をも上回らんばかりの数の|悪霊《タナリ》は、結局そのやり方で何万年も|悪鬼《バーテズ》と戦い続け、裏を返せば|悪鬼《バーテズ》はその馬鹿みたいな戦い方に勝利することは出来ていないのだ。
 星熊と伊吹、それについてきた|地獄猫《ベゼキラ》を大きく遠巻きに円形に囲むように、|悪霊《タナリ》が群がっている。知能が薄く破壊と混沌だけを求める自然災害のような彼らでも、そこにいる|鬼《フィーンド》が強大な存在だということはわかるらしい、それも、二人。

「安心しな、秩序も混沌も、一人で|戦う《やる》にゃ関係のないことだ、単純に強いやつが勝つ。かかってこいよ、|四天王《テトラ・フィーンド》星熊勇儀の首は高いぜ?」
「やれやれ名乗る気ないなんて言いながら」

 苦笑いでそれを見ている伊吹は、お手並み拝見と行こうかね、とその場に胡座をかいて座り込む。何ならいつも携えている瓢箪から酒さえ飲もうとしていた。仮にも戦場だ、周囲360度完全に数え切れないほどの|悪霊《タナリ》に囲まれている、まるでまともではない。その異常さを証左するのは|地獄猫《ベゼキラ》燐の対応だ、彼女は突然胡座をかいて酒を煽り始めた伊吹に目を剥いて驚いたように言う。

「えっ、えっ、なにしてるんですか」
「猫さんよ、勇儀の戦いっぷりを実際に目にするのは初めてかい? 見てなよ、|勇儀《あれ》の戦いっぷりはサ、好い肴になるんだ」
「オイ萃香、お前やんねえのか」
「やるさ、一杯ね」
「一杯どころで済む器かよ?」
「勇儀次第かな」

 ったく、と舌打ち、しかし愉悦を顕にした笑みで伊吹に向けて大盃を差し出す。注いでくれという合図だ、伊吹はその盃の無限分の一だけその盃に注いでやる。なみと注がれて表面張力さえ見せる酒漿は水よりもに軽く、水よりも僅かに粘り、そして水よりも遥かに熱い。芳香は剃刀、口当たりは果実で、腹に落ちて花を燃やした。それを一気に飲み下した星熊は腹に染み渡る熱に、くうう、と嬉しそうな呻きを漏らして盃を放り、拳を結んだ右手を左掌に打ち込むようにして口角を上げる。

「こんな隙晒してんのに来ねえのかよ……腑抜けども、がっ!」

 最後の一音を星熊はたしかに発しているが、それを聞き留めた者はいなかったかもしれない、重なるように、地を引き裂く轟音が響き渡ったからだ。
 星熊は、まるで四股を踏む要領で、右足を前に出して地を衝いていた、その場所には不自然に巨大なクレーターが穿たれ、その場からまっすぐ前に伸びるように地平にまで巨大な地割れが走って大顎のように口を開け、得物を飲み込み噛んで磨り潰していく。
 渇き切った地獄の赤い大地は、生きている。そのごつごつと剥き出した赤銅色の岩肌は、まるで巨大な生き物の腹の中にいるかのようでさえあるし、事実、こうして亀裂が入ろうが大穴が開こうが、燃えようが泥濘もうが、地獄の大地は再生してしまう、この渇ききった赤い錆色の岩肌を。それは長い長いこの戦争に、地形変化による戦況の変化がもたらされないことを示していた。
 岩の歯の隙間からは哀れにも飲み込まれ生きたまま肉に磨り潰される|悪霊《タナリ》の悲鳴が溢れ出している、だがその一撃で数百の|悪霊《タナリ》を葬ってさえその数に対してはまるで影響がなかった、そうして穿たれた前線の兵はまるでみるみる再生する肉のように数でそれを塞ぎ直してくる。

「オラオラ、こんなにされちまっていいのかよォ!?」

 手近な死体を一つ掴み上げ硬そうな武具を一つ毟り取った、それは角か骨格かだったのか体と一体化していて千切ると肉が刮げて何か液体が噴き出したが星熊はそれを全く気に留めない、彼女はそれを力任せに群の中に投げつけた。まるで大砲の弾丸のように二筋目の雷撃が群を貫く。

「オレはどつき合いの方が得意なんだよ、いつまでもこんなしみったれたことやらせんじゃねえよ」
「アレが『好い肴』になるんで?」
「……なんか今日は荒れてるねぇ。嫌なことでもあったのかな」

 こうして前線に出ている|悪霊《タナリ》にあっては、薄い知性にただの暴力性だけが備わり、しかしその「数」こそが力なのだ。数百程度、ガードで防いだか、入っても痛くもない、あるいはそも当たってさえいないのと同程度かもしれないのだ。「一騎当千などものの役にも立たない」と一蹴した古明地の言はその現れである。星熊の剛力も効果があるのか否か、|悪霊《タナリ》の前線はあっさりと復旧される。
 姿も得物も全くバラバラの有象無象の|悪霊《タナリ》達が、火を吹いた星熊(とその傍にいる伊吹と火炎猫)にいよいよ大挙して押し寄せる。
 サイズは大小様々伊吹から見て見下ろす奴もいれば、星熊が仰ぎ見る大きな奴もいる。ある者は腕が1本で、ある者は2本で、ある者は3本で、ある者は4本、あるいは腕がない。足がないものもいれば1本だけ生えた者もあり、車輪を付けた物もあり、矮た2本をぶら下げる者もあり、4本以上を波打たせる者もある。鉤爪を振るう者も、剣を携えた者も、牙を剥く者も、ブレスを吐く者も、死の視線を投げる者も、呪文を唱え続ける者もいる。
 全く統一感のない混沌とした、隣りにいる友軍を障害物とさえ見なしかねない混沌な軍勢が、しかしただのタイミングのみを一つに合わせて一斉に飛びかかり、襲い掛かってきた。

「へへっ、ようやくか!」
「頑張れ勇儀、少しはかっこよく暴れておくれよう、酒が不味いよぉ?」
「わっわ! あたしゃ生きたあんたらには用事ないんだって!」

 火炎猫が本来の猫の姿に戻る、それは家で人に甘えたりそっぽ向いたりする気紛れで愛らしい猫ではなく、靭やかに跳ねて切り裂く獰猛な肉食獣、刃のように鋭く尖る長い牙、目と尾には文字通りの焔が灯り体全体がエネルギー体であるかのように熱を持った光を帯びて常に火花をちらしている、力を秘めた四肢は熱く滾って蹴り跳ねる大地と切り裂く肉を待ち構えている。鬣を備えてはいないが、このヘルキャットにとって鬣は強さの象徴ではない。

「あんた、《《出来る》》の?」
―― にがてですけどにぇえ

 いいだけ酒を呷っているにも拘わらず酒臭さのない吐息を漏らす伊吹に向かって、燃える呪いの瘴気を口の端から漏らす地獄猫、隆々とした四肢で答える「にがて」に、説得力などまったくない。

「じゃあまかせた」
「に゛ゃっ!? 殺生な!?」
「勇儀に付いてきたんだ、それくらいの試験はさせてもらうよ」

 そう言って伊吹は相変わらず酒を大きく呷り、それに相応しく大きく深い息を吐いた。その吐息自体がまるで局所性の超低気圧のように周囲の空気を吸い込んで、《《何か》》がその場で大きく膨らんでいく。現れたのは、息を吐いた主と待ったく同じ姿のもうひとりの伊吹。

「さあさあはやく」
       「はじめとくれよ」

 一方は今も多勢に無勢で大暴している星熊を望み、もう一方は光り輝く肉食獣に視線を向けてどっかと胡坐をかいて座り込んでいた。どちらも盃と瓢箪を持って、お互いに酌をしては盃を鳴らして酒を呷っている。自分は全くやる気はないと、言わんばかりだ。
 応じるも否もなかった、|悪霊《タナリ》共はもう腕を爪を得物を牙を向けて襲い掛かってきているのだ、始めたくて燻っていた星熊はともかくそれについてきて死者の魂だけをひょいひょいと集めるつもりしかなかった火炎猫も、応戦を強いられる。飲んだくれて座り込んだままの伊吹の態度の方が異様なのだ。

―― ええい、ままよっ!

 火炎という名前を戴いているが、この猫の体を包み、口から吐き出される光の正体は燃焼による火炎ではない。地獄棲まいの獣という野性によって高エネルギーを抱え込んだまま粗暴にまとめ上げられたマナが、遍在する自然モナドと摩擦して発光しているものだ。火炎というのが燃焼エネルギーのプラズマとしての副産物であるのに対して、火焔猫のこの青白い炎はそうした現象の元となる元素の輝きであり、然るに、相応のプロセスを踏めば火炎と成して吐き出すことも可能だし、火焔猫もそれをすることは多々あるが、もっぱら自らの肉体へ特殊な作用をもたらすことに使用される。肉体能力を向上させることは常套手段であるが他にも特殊な使い方がある、例えば

―― インビジブル・キャットウォーク

 地獄は薄暗くまるで黄昏時の様に常に薄膜が下りたように仄めかしいと思われがちだが、この|旧獄《シェンディラヴリ》は違う。光源の知れない光がもたらされており、大気中に舞う極小のチリにその光が乱反射して、どこもかしこも美しさを持たない薄汚れて眩いばかりの光に溢れ返っている。地面を埋める錆じみた赤茶の岩肌もその光の氾濫に一役買っていた。火焔猫の姿は、まるで洪水する光の中に溶け込む様に、消えていく。

「ちょっとぉ、それじゃ私がタゲられちゃうじゃないか〜」

 実態が消えたわけではない、実際には姿が失われたわけでもない、単に自身の体の発光によって視覚の認知捻じ曲げているだけだ。音や温度で対象を捉えるものにとっては余り効果がないが、それでもこの世の地生体のほとんどは対象を「見る」という認知を光を媒体にしている、こうした群体の中での効果は絶大だ。
 火炎猫の姿はもはや、視覚によってはちらちらとたまに眩むような光が散る以外に知覚できない、光の粉が、あるいは地面を強く蹴ったその痕跡を察知したとて、姿がどこにあるのか、まして何をしようとしているかなどわかりはしない。
 火炎猫と伊吹に向かう|悪霊《タナリ》は、袈裟に、飛水に、兜割に、予測の方向と位置から襲いかかる不可視の剣歯と爪、それに燃瘴ガスによって、まるで勝手に肉を散らし血を撒き燃え上がって次々に倒れていく。自ら裁断機に向かって歩いているように見えるその様子は滑稽でさえあるが、その脅威にさらされている当事者にとっては笑い事ではないだろう。鬣こそ無いがまさに獅子奮迅の勢いで押し寄せる|悪霊《タナリ》の群をなぎ倒していく。

「おお〜見事見事」

 それでも、多勢に無勢であることに変わりは無い。|地獄猫《ベゼキラ》自身が一撃でも貰う様子はまるで見えないが、手数には限度がある。怒濤のごとく押し寄せる|悪霊《タナリ》に対して打ち漏らしが生じ、通過を許してしまう。
 こうして|悪霊《タナリ》の押し寄せる「前線」に徒に現れて戦闘行為に及ぼうだなどと思うのは、ある程度以上に同様に数で対応しうる「前線」だけだ。それをすっ飛ばしてそこに行こうというオニふたりの発想は酔狂を通り越して、まるで愚行だ。だが彼女ら二人にはそれを戯れとするだけの力がある。|地獄猫《ベゼキラ》とは、そもそも存在の根底から、レベルが違う。

「あ~ん、伊吹さまぁぁ」

 彼女自身では無理を自覚していたことではあるが、案の定対応に限度がある。弱音を上げる火炎猫の方へ、伊吹は視線を送る。

「やれやれ、しょうがないねえ」

 盃を傾け火炎猫の奮闘に拍手を贈ったそれ自体に偽りはない。実際によくやった方だろうと伊吹は思っていた。だがここに陣取った以上はこれ以上の侵入を許してしまうわけにも、オニとしてのプライドが許さない。
 討ち漏らしが漏れ入ってきた方へ、伊吹は無尽蔵に酒を吐き出す奇妙の瓢箪を投げつける。威力があったようには見えないのだが、直撃を食らった|悪霊《タナリ》は強い衝撃で圧壊するように弾け散り、突き抜けた衝撃がその後方の|悪霊《タナリ》達も吹き飛ばす。伊吹瓢は手に残した弦の端に巻き戻されるように主の手の元へ戻って、何事もなかったかのように次の一杯を吐き出している。

「ん〜、こんくらいの相手なら1000分の1位の力でもいいかな」

 普通そう言う科白は本人が手を抜く余裕としてしか機能しないものだが伊吹の場合はそうではない、相手を1000分の1の力で倒せるという目算は、相手に比喩ではない形で1000倍の戦力をぶつけられるということだ、伊吹は1000分の1の力を持った自分自身を瞬時に1000人作り出す力を持っているのだから。

「調子こいて細かく分けすぎて、各個撃破されんじゃねーぞぉ?」
「わかってるよお」

 対して、そうした器用なことが出来ない星熊は、馬鹿正直に拳一発で複数の相手を吹き飛ばすような、そういう立ち回りだ、それに、それ相応の力も持っている。

「オラオラオラぁぁ! 大江山嵐だ、ここまで押し通って、辿り着いて見せな!!」

 怪力乱神の面目躍如、星熊は一度天を衝き上げた拳を刺すように落とす。隕石でも落ちたようにその場が陥没し、そうして生じた衝撃波は、乱雑な間隔に並んで配置された光点にそれぞれ吸い込まれるように収束する。物理エネルギーを無理矢理凝集した高密なパワー持ったエネルギーパルスの嵐が、星熊を中心にした円周上にまき散らされて拡大していく。デタラメの様に見えて実際デタラメな、だが星熊らしい攻撃は、弱い|悪霊《タナリ》はそれに晒されただけで形を失い、そうで無くとも体表に深刻な損傷を負う。

「はんっ、たいしたことねえな、数ばっかかよ!?」

 どん、と衝撃を生じて地面を蹴るとその姿が突如消え、オオエヤマアラシと呼ばれた攻撃を損傷を受けながらも生き延びた一匹一匹の目の前に現れる。姿が見えたときには既に拳が振り抜かれた姿勢になっていて、敵は赤い飛沫になって、あるいは粉微塵になって砕けている。気分の乗った星熊にとって、この戦場の規模には三歩も不要だ。瞬間移動を繰り返すように、拳を振り抜いた、あるいは蹴り抜いた姿勢だけが明滅しながら、仕留めていく。まるで虫潰しか草むしりのように淡々と、だが残酷にそれは続いていく。
 星熊の使う技は、科学エネルギー(薬品で対象を溶かす化学や、マイクロ波で加熱する電波工学)や自然エネルギー(地水火風の自然元素に訴えて熱エネルギーや運動エネルギーを引き出す)ではなく、物理的な運動エネルギーを直接操作してぶつけるものだ。嵐、と表現しているがあれは空気の流れを指す嵐では無く、物理的な運動エネルギーが直接奔流をなしているという奇天烈なものだ。無理に何かに比喩するならば、引力が近いかも知れない。自然界には運動エネルギーがそれとわかる形で存在するのは物体が運動しているときのみで、表現するための言葉が存在しない。
 ほとんどの場合、自然エネルギーを源泉とする魔術師や神性はそれを「遠隔物理属性」とか「無属性魔砲」という珍妙なものと見なしている。当の星熊は「当たって、対象をぶっ壊せれば、大差なんてない。どんな源泉使ってたって最終的には対象をぶっ壊すパワーに過ぎないんろ?」と言っているがそれを実現しうる存在は限られていた。途中で別のエネルギー源を仲介しない分、消費エネルギーに対する作用エネルギーへの変換効率が高く、単純な破壊力という観点では純粋に高止まりしやすいのが特徴だった。

「げえっ、何ですかあれ、えげつな。差がありすぎるワンサイドキルって感じですねぇ」
「あはー、さすがさすが」
「私まで巻き込まれそうだったんですけど……」
「スイッチ入った勇儀、あんましそういうの考えてないからねえ。大体、隣には私しかいないし」

 オオエヤマアラシと呼ばれた攻撃は、乱暴に円周に拡大されるもので、当然伊吹も、火炎猫も範囲内にいた。伊吹は難なくそれを防いで見せたが、たかだか|地獄猫《ベゼキラ》にとっては困難なことだ。流石に伊吹がブロックして事なきを得た。

「今の、平気なんですか?」
「うん?」
「星熊さまの、防いでらっしゃいましたけど」
「まあ、私と勇儀は同格だかんね。スパーリングするときなんかあんなかんじだよ」

 たいしたことじゃない、といった様子で涼しげに答える伊吹に、火炎猫は顔を引きつらせている。あんな攻撃を日常茶飯事だなんて、ロード級の|悪鬼《バーテズ》というのは、まさに化け物なのだろうか。下手をすると界一つ支配していることもあるクラスであることを考えると不思議ではないが、目の前にすると不可思議な現象そのもののようにも見える。天変地異とか、大災害とか、そういったものが言葉をしゃべって歩いているような。

「さとりさまが目をかける理由が、理解できます」

 だが火炎猫のその言葉に、少し皮肉を込めたように伊吹は帰した。

「目をかける? そりゃああんた達のことだろう。猫、それに鴉。|古明地姉妹《プリンセス》の存在規模に比すれば、|地獄猫《ベゼキラ》と|八咫烏《ヤタガラス》なんてものが側近に取り立てられていることの方が不思議だし、でもただの|地獄猫《ベゼキラ》と|八咫烏《ヤタガラス》に収まっていないその実を見れば、納得というもんだ。比類無き大規模破壊兵器と、|底無しの生命精神エネルギー《アストラル》回収機関。界を維持するのに必要なものを、あんたらは持っている。」
「……買い被りすぎです、私も、空も、ただのペットですから。側近だなんてそんなたいそうなものでは、にゃいですよ」

 そうかい、と聞く耳を持たなさそうに気のない相槌を打つ伊吹。
 土地も民も変わらないまま支配者の首だけがすげ変わるときに往々にしてそうであるように、元々この|旧獄《シェンディラヴリ》の支配者ではなかった〝古明地〟を名乗る正体の知れない妖怪がこの地を支配するとき、旧来の実力者の多くを再雇用したのと同様、旧来の権力体系に関わりの無い新参者を中枢に招き入れた。その代表格が、「火炎猫燐」と呼ばれる|地獄猫《ベゼキラ》と、「霊烏路空」と呼ばれる|八咫烏《ヤタガラス》の二匹である。これらは全く無名で知られていない存在であったにも拘わらず、突如として古明地姉妹に取り立てられてその傍に侍ることになった。地獄棲まいの鳥獣としてありふれた存在であることから、ただのペットとの見方もあるが、そう見ない者もいる。古明地に近い立場の者であればあるほど、それは顕著だ。つまり、伊吹も、星熊も、この二匹のペットをただのペットだなどとは、思っていない。他の|四天王《テトラ・フィーンド》もそうだし、一部の高官もそうだ。
 そして更に一部の者が、伊吹が言ったような、その実態を知っている。二匹とも、ただのペットの皮を被った、特殊な改造兵器として、この|旧獄《シェンディラヴリ》という界を担保する機能を、同時に、古明地姉妹を圧倒的に贔屓する形でその支配力を維持するための機能を、密かに担っている。
 もしこの二匹あるいは古明地姉妹がただの二人で、十分に|旧獄《シェンディラヴリ》を支配するに足る力を持つまでに成長したなら、他の|悪鬼《バーテズ》は全て破棄されるのではないか。「秩序」という|悪鬼《バーテズ》の本質を利用して力を吸い上げた後、それら全てを処分するつもりなのではないか、と囁かれていた。
 それが本当かどうかなど当の姉妹以外には知る由も無いことだが、新参の支配者という者にはいつでもこうした陰謀論がつきまとうものだ。

「ともかく、新鮮な魂狩り放題だ。好きなだけ持ってきなよ」
「ありがとうございます~。この働きはさとりさまの」
「結構だよ、《《そういうつもり》》で言ってんじゃない」
「……でも、そういうところ、ですよ。さとりさまが買ってらっしゃるのは」

 伊吹は火炎猫の言葉が聞こえていない振りをしながら、星熊の方へ拍手を送りながら酒を呷っている。

「おー、勇儀かっこいー♥ 惚れ直しちゃうー♥」
「ばっか、てめーもやれよ萃香ぁ!」
「酒がおいしいんだもん」
「オレと酒とどっちなんだよ」
「うーん、お酒かな♥」
「しんじまえw」

 伊吹と、それに星熊は、この地獄で生まれた、|旧獄《シェンディラヴリ》由来の|悪鬼《バーテズ》達と、少し違う出自を持つ。その癖巨大な力を持ち、旧来の|悪鬼《バーテズ》とも、古明地姉妹とも、若干距離を取った立場にいた。古明地姉妹には|四天王《テトラ・フィーンド》として取り立てられはするものの、その元々の荒い気性と根っから正直な性格が影響して、埋まらない溝を抱えているのも事実だった。
 火炎猫からは見えない逆の戦域、つまりは星熊の方を見ている萃香の表情が、苦く歪む。伊吹は見た目に沿わず相当に老齢な|鬼神《フィーンド》(というよりはオニ)だ。星熊の抱いている古明地姉妹への反感も、それに自分自身の中にある嫌悪感も、それなりに折り合いを付けて|悪鬼《バーテズ》としての立場を生きている。だが、納得のいかないことだって、ある。

(ただの暴力として、欲しいんだろ。火力が巨大すぎて小回りのきかない|改造八咫烏《ヘルファイアエンジン》なんか、〝使えない切り札〟に過ぎない。ただでさえ痩せた地獄の土地を、本当に不毛にしてしまうし、それだけじゃない、こんな巨大な戦略兵器を実際に使用しようものなら、他の界のロード達からも不要に目を付けられて身動きが出来なくなる。実際に使用できる〝実効性のある威力〟として、私らオニの力が欲しいんだろう。いけ好かない奴だね、古明地)

 と、エネルギーの大風を吹かせながら暴れる星熊の足が、ふと止まった。それを見ている伊吹の様子も、何かを警戒するように鋭くなる。

「伊吹さま?」
「へえ、何か、来たみたいだよ。これも|双子姫《プリンセス》の見込み通りかい?」
「えっ?」

 伊吹が視線を送る方、つまり星熊が警戒して視線を送る更に向こう、荒涼とした赤い岩肌ばかりが広がり寒々とした濃紺の空との境界線として横たわる地平線を突き破るようにその向こうから姿を現したのは。

「レベル、5だ」

 伊吹が目を細めて言う。火炎猫がまだ頭部しか見えないその巨大な姿に後ずさるように見る。そして、右の拳を左の掌に叩くように収めて笑うのは星熊。

「真打ち登場ってかあ? レベル5たぁ、好い演出じゃねえか」







 オレが望んでたのは、こういうモンよ! つい、笑みがこぼれてしまう。

「萃香、来やがったぜ!」
「こんなおっきいの、みりゃわかるよー」

 レベル5、と呼ばれるクラスの|悪霊《タナリ》にも、色々いる。
 そもそも|悪霊《タナリ》というものが混沌を極めた様な群体で、種という概念そのものが希薄なのだ。一人一種族、なんてものが普通の世界では伝説的な扱いを受けるが、|悪霊《タナリ》の世界ではそんなモノは至って普通なことだ、なんせ統一性や秩序というものが希薄な世界とその住人なのだから。
 だが、意図的に作り出されたモノについてはそうとは限らない|悪霊《タナリ》のロード達も自分で手を動かすのが怠いと思うことは人並みにあるのだろう、兵隊や労役の受け口として、|被造物《クリーチャー》を作るロードもいる。そういうときには、使いやすいように均質を試みる場合も、あるようだ。
 今目の前にしているのは、戦争用に造られた|被造物《クリーチャー》でありながらレベル5(5は相当高い。オレ達のヒエラルキとは一致しないから一概には言えないが、オレや萃香はランク6か7位だろう。5にもなれば一体存在するだけで戦場を左右する。6や7は支配地域を持つ可能性があるクラスだ)という、いわゆる生きた兵器。とにかく巨大で、動く城をコンセプトに作られたと聞く。攻城戦ともなれば肩や背中や頭に搭載空間を備え付けて|背乗り《デサント》するような攻性な使い方もされるという。知能は低め、速度も遅め、とにかくタフネスだけが馬鹿高くて、特殊な能力は特にない。図体に任せた攻撃力は、サイズと比すれば一定水準以下だが、単機の兵として見れば破格のパワーでもある。

「……オレの拳、通るか?」

 世に、役立たずを指して「でくの坊」「うどの大木」という言葉があるが、この二者には決定的な差がある。後者は、でかい。でかいと言うことはそれだけでも力なのだということを、その格言は忘れている。
 萃香とオレが対峙しているのは、その|デカ物《ファッティ》、と言うに相応しい|悪霊《タナリ》だった。奴が搭載してきた兵はほとんどオレ達が仕留め、今はその搭載空間に幾らかの遠距離攻撃を得意とする奴らが残っている。伴兵がいない状態でも、この生きた城塞は生温い相手ではない。
 力の強い者になるほど、ランク付けはされがちな者だが、格下ならば余裕で勝てるのかというとそういうわけでは無い。戦闘力のランク付け1や2など状況と運でどうにでもひっくり返るモノだ、それは単純に後先考えずに真正面の相手と一対一の全力対決をやったときにどちらが生き残る可能性が高いか、という観点でしか無いからだ。ランク5が格下であっても強敵だというのは、この場がプロレスのリングではなく、戦争の前線であると言うことに尽きる。

「こいつのサイズにゃ、いくらデカイ萃香でも敵わねえな」
「もう。人のことをチビチビいったりデカ物呼ばわりしたりー」
「へへ、その通りじゃんかよ」
「昔はほとんど同じ背ぇだったのに、にょきにょきにょきにょき大きくなって。勇儀ったらきっとそのうちあれくらいになるんじゃないの」
「なるかよw」
「どーだかねー?」

 あれが一歩踏み出す度に、大地が揺れる。地平線を割って現れた頭部は近づくにつれてそのまま伸び上がり、今や見上げるくらい。それが山では無いというだけでも驚きだ。天を背負う巨人というのがいたりいなかったりするらしいのは聞いたことがあるが、萃香がフルサイズのミッシングパープルパワーを使った時を軽く凌駕するサイズ。距離が近くなってしまえば、見上げたところでなんだかわからなくなってしまう、正確な形を把握するのにもとにかく距離を離すしか無くなるだろう、そういう巨大さだった。
 その山のように巨大な|悪霊《タナリ》が、オレ達に気付いたらしい。こっからじゃよく見えないが、それだけでも小さな丘位のサイズはあるんじゃないだろうか、どうやって作ったのかわかりもしない鉄仮面の隙間の奥で、瞳のようなものがオレ達の方に向いている。それに、足取りがこちらに向いているようだった。
 図体がでかいから動きが緩慢だ、それでもスローモーションで映像を見ているようなそんな遅さではない、仮にも生きものとして、何より兵器として機能するのに満足な速さはある。通常の歩行はそのデタラメな歩幅故に鳥達の直線飛翔程度の速度はあり、腕や体のこなしについても同様だ。単純に図体がでかいので相対的に速さが出ていないように見えるだけ、あの拳で振り払われれば全身の骨と言わず肉も全て弾けて形を失うだろうし、ゆったりとした動きに見える足に蹴飛ばされても同じだろう。得物を持っていないが、格闘という概念さえ不要そうだ、なんせ踏むとか払うとかそれらの行為全てが驚異的な破壊行為なのだから。

「やっこさん、オレ達を見つけたぜ。豆粒なんか見逃してくれりゃよかったのに」
「やるの、勇儀。手伝う?」
「ったりめーよ、こんなお楽しみが待ってたなんて早く言って欲しかったね、オレ一人でやらせて貰うぜ!」

 オレには絵心のえの字もないが、まるで絵描きがそうするみたいに両手の親指と人差し指で、地平を割って現れる巨人を囲って見る。脇に|卓状台地《メサ》を並べてみれば、確かにあれは山のように大きなものではあるが、ああした大きな山体に比べれば幾らか救いがあるように見える、山そのものに比べれば随分と細身で可愛らしいものだ。

「アレならでかくなった萃香の方が全然体重重そうだ」
「ちょっとォ!?」
「デブなんて言ってねーだろ」
「ゆった! 今ゆった!!」

 ちっちゃい萃香がいっぱい飛んできて髪の毛やら頬やらを引っ張ってくる。

「いたいいたい」
「ぶー さっさと《《あれ》》とデートしてこいよ。でかすぎて入らない~とか泣き言ゆってろ」
「生憎と、オレが突っ込む方だからな! 愛してるぜ萃香」
「ぶぁーか、さっさと行け」

 萃香に送り出して貰って、オレはレベル5野郎の

「さっきはああ言ったけど、《《後ろ》》を狙ったりはしねえよ。正面から、真っ向勝負だ。」

 聞こえてんだか聞こえてないんだかわからない相手に、挨拶になるのかならないのかさえわからない言葉を投げて、それを手袋の代わりか何かにでもしよう。

「いくぜィっ!!」

 一歩、こいつはただの間隔調整。二歩、目標距離の三分の一だけ。三歩目に十分に力を込めるのに、近過ぎちゃいけねえからな。そして三歩で、渾身の力を乗っけた踏み込み、同時に

「くーらーーーーー……ええええええっ!!」

 力任せで反撃のリスクも顧みない大ぶりな拳は、必中必殺のストレート。まるで防御も回避もしようとしない巨人の脛に綺麗に入る。余りにも体格差が大きすぎる。オレの拳なんて、虫が噛みついたくらいのサイズでしかない。でも。

「!? やっば、声だけで十分攻撃じゃんかよ、これっ!」

 不意の衝撃波で地面に放り出されて強い圧力が被さってくる。耳に危険を感じて慌てて塞いだが少しやられたかも知れない。オレが脛に一撃加えた瞬間に、まるで世界全体が爆発したんじゃないかという轟音が響いた。勿論オレの拳の音じゃない、音は、巨人の叫び声だった。
 レベル5の巨人は声を上げて、オレが拳をぶち込んだ方の足を上げて、よけるような動きを見せる。だが、その声の衝撃波で、オレはその上から既に突き落とされていた。仮にまだあそこにいたら不覚にも足を下ろしたときに潰されてしまったかも知れない。ぞっとしない話だ。

「|悪霊《タナリ》でも弁慶の泣き所で泣くモンなのかいっ」

 耳がキンキンとよく聞こえないが、どうやらオレの力が通らないわけじゃなさそうだ。脛をテーブルの角にぶつけた程度には効いてくれたのがわかる。

「今のが本気だなんて言ったつもりはねーからな! 攻撃らしい攻撃がないようなら、萃香の方がよっぽど手強いぜ、レベル5っつっても、所詮はレベル5か、ああ!?」







 巨大なこぶしは真下から見上げるとまるで天蓋が落ちてくるような恐ろしさがある、こんな光景で攻撃を仕掛けてくる相手はそうそう滅多にいるもんじゃない。

「立体起動を使わない方が回避しやすいとか、ちょっとやりづれーな。 っ!」

 相手の軸がどうしても縦に長いせいで、行動には必ず縦軸が含まれる。それを立体的、つまり高さを使った移動で回避しようとするのは、距離的に不利が大きい。水平方向に動き続けるのが最も効率的だが、重力に従も反もしない運動というのは制御が難しく、それ故の疲れというものもある。水平方向に力を加えるための足場も限られる。地面を使う場合はどうしても水平ではなく傾斜したベクトルを強いられるため距離を生もうとすればするほど高さを伴い、高さを求めた跳躍でもないのに着地後ディレイを強いられる。三歩必殺と謳うそれでは、相手を必殺するのでその後の隙のことなど考えやしないが、必殺出来ない場合はどうにもやりづらい。

「空でも飛べりゃ、便利なんだがなあ!」

 レベル5の拳は地面に突き立つと広い範囲に地面を陥没させ、剰え遠く離れた場所に不安定なまま保たれていた岩石構造を崩す。それ自体はオレの拳も大差は無いのだが、奴は図体にものを言わせて、そうした地形変化を全く厭わず無遠慮にどこどこ打ち込んで来やがる。

「勇儀ー、てつだおーかあ?」
「っせぇ、だまってろぉ」

 反撃のタイミングを窺ってんだ、もうちょいいい場所に、あのバカパンチを落としてくれねえかな。足踏みでも無く、蹴りでも無く、腕で広く薙ぐのでも無く、オレを直接ぶっ潰そうとする、落とすような拳。
 それには自分の立ち回りが大きく影響することはわかっている。

(あの空っぽそうな頭に、最大限効率のいい打撃を加えるには……なるだけ近くに無理に打たせる必要がある、けどっ……ああ、動きづらいな!)

 奴にとっては地面が少し凹んだ程度の認識なのかも知れないが、そんな風に地面をズタズタに砕かれると、こっちからするとあっちもこっちも山やら谷やら崖やら窪地に変化しているようなもんだ。不安定な足場に、移動の不自由が強いられる凹凸。それでもなんとか奴の足下に入り込んで、かつ、蹴りではなく、拳を突き落としたくなるような動きを誘う必要がある。
 あからさまに足下をちょろちょろとするのではない、距離を取って見せ、当てられるときに当てたいと思わせなければダメだ。

「大江山……颪っ!」

 パワー型の技ではあるが、どちらかというと小型の相手を大量に相手にするときのものだ、こんな巨大な相手をどうにか出来るものじゃない。なんせ技の名前が山風なのに、相手が山みたいなもんじゃ効果そのものがお察しと言えなくもない。
 それでも遠くから何らかの攻撃アクションを取っている、相手に理解させるのには十分だ。攻撃である以上、それでも生で食らえば幾らかの損傷がある、奴にとってはそれこそ顎の強い虫に囓られるとかその程度かも知れないが。奴もそれに応じるように、手元にある適当な岩(それは小石に用に見えるが一つ一つが圧死に値する巨岩だ)を投げつけてきたりする。奴が手に取って投げる主体よりも、その脇で指を抜けたり途中で砕けたりして不測の飛来を見せる小型の礫の方が予想が付かない分、怖い。だが、それもその程度だ。コントロールの効いた弾幕でもなければ、途中で爆発する様な弾丸でもない。直線運動でしかないなら、それは一定以上の密度にでもならない限り脅威になどなり得ない。
 オレは更に衝撃波の物理エネルギーを凝集し、大江山嵐よりも指向性を持った形でぶつける。その弾幕の隙間を自らくぐるように動き回りながら、持ち前の腕力はレベル5の体を積極的に刺しに行く。
 馬鹿でかい図体のレベル5も流石に焦れただろうか、奴の拳も足も、少し動くが速くなっている。動きが速いというのは、焦っていると言うことだ。焦りがないのなら、ペースを変える必要なんか無い。ペースを変えると言うことは、ペースを変える必要があると思っているからに他ならないのだから。

「へへっ、オレはスピードタイプじゃあねえけどな。パワーってのはスピードに転嫁できるんだよ。そんなに図体がでかくなければ、だがなぁ!」

 奴の足に大きな損傷を与えることも考えたが、それよりも、オレは頭を狙いたいと思っていた。デカイだけで人と同じ姿をしているのなら、足を折ったところでその場に座り込んで依然そこに居座られてしまうし、無理矢理足を引き摺って移動することだって出来るはずだ。だとしたら、頭を打ち抜く以外に、ないだろう。

(こいよ、お前の拳ならオレの体なんて、ぷちっと一発だぜ?)

 直接攻撃を加えるためを装って、久方ぶりに足下に躍り出る。凹凸に砕けた地盤と、やつの足の位置関係から、まるで同じ場所をうろうろと行き来しているかのように見せかける。勿論そんなつもりじゃない、足場も動きも自分の体の運びも十全自分のコントロール下にある。さあ。
 レベル5野郎が、足を踏みつけ攻撃を繰り出しながら、拳を上に振り上げた。

(来た……! そのまま振り下ろしたら、丁度いい感じだぜ!)

 振り下ろされる拳を頭上に見ながら、オレは「こっちには行けないな」と演技をして見せていた回避経路を難なく通り抜けて、その拳の攻撃範囲から跳躍するように飛び退く。
 拳の押し潰す攻撃範囲を間一髪ですり抜けてそれを回避した直後、クレータを穿つ拳の衝撃波が体を揺さぶってくる。近すぎる場所からの強烈な衝撃波は、体の内側から振動して揺さぶられて絞られるような感覚として体中を打ち抜いてきた。もしかしたら中身が少し損傷したかも知れない。吹き飛ばされそうになるのをなんとか堪える。この好機をずっと待ち構えていた、コレがチェックメイトだなんては思っていないが、それでも。
 ほぼ真下に打ち下ろされた拳、その腕は真っ直ぐほぼ垂直に肩まで続き、その肩の横には、当然頭がある。斜めに落とされる拳では、頭への土台としては確度が緩い。どうしても、真下に突き立てられた拳の腕でなければならなかった。そして、それが今だ。
 垂直といっても本当に垂直ではない、70度くらいの傾斜。これくらいなら、登り切れる!

「いくぜえっ! 三歩、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ、さぁぁぁぁぁぁぁつ!!!」

 一歩目で肘まで。岩のように硬い表皮は、足下が滑らなくていいな!
 二歩目で肩まで。ここまでこれば奴の顔がよく拝めるってもんだ、山登りのてっぺんでご来光でも拝む気分だね!
 三歩目が目指す場所、はこの野郎の体の上にはない。この肩から奴の頭をぶち抜いた向こう側の、空中。そのための土台として、奴の頭と垂直に位置する肩が必要だったのだ。
 巨体故に頑強で、土台として十分な奴の肩を、思い切り蹴る。勿論、自分の部分を破壊するような運動エネルギーを作用として生じる力点をそれ自体の他の部分求めるのは、難しい。渾身の力は奴の頭をぶち抜いてその向こうに自分が突き抜けているイメージ、それを得るためには三歩目の突進時に、更にブーストをかける必要がある。

「喰、ら、い、」

 三歩目の直後、言ってしまえば三.一歩目として、得意の運動エネルギー創出を自身の体にかかるように、行使する。イメージは3軸の力の流れ、その間に生じる直線的な物理運動。それを自分の体に、叩き込む。

「や、が……れぇぇええええええっっっっっっ!!!!!!!!!!!!」

 元々三歩必殺は直線運動によってその直線上へ貫くような拳での打撃だ。今回のように、途中で偏向することはしない、というのはパワー効率が落ちることと

「っ!? ちっくょおおっ!!」

 安定性に欠くことだ。そも一方向への加速を試みるのに、3軸の力を使うのも安定性の確保のためだ。だがそれでもそれぞれの界や土地、あるいは星に存在する特有の物理演算に固有のモジュールはそこに不確定をインジェクションしてくる。頭脳派の魔術師はそうしたものを計算の中に予め含めるものだが、星熊はそうした計算があまり得意ではない、そんなことをするくらいなら「もう一発やった方が早い」と思うクチだった。
 星熊の体は見事空中に飛び出したがレベル5の頭部は健在だ、顔を覆う鉄仮面が大きく割けて巨大な顔面に派手な損傷を与えてはいたが、それは星熊の想定したダメージではなかった。
 落下し、着地する星熊。苦々しく舌打ちして、分厚い装甲の防具を着けていたにも拘わらず顔面に大きな傷を負ったことに苦悶の声を上げるレベル5を見上げる。
 赤い血液のようなものが、裂けた鉄仮面の下から、裂けた顔面の皮膚からたばだばと零れている。頭部を撃ち抜くことは出来なかったが、当のレベル5自身には想像していない大きな損傷を得たと言うことらしい。苦痛に表情を歪め、声を上げている。

「そんくらいの傷で、案外なよなよしてんなあ。こっちは渾身の一撃を外して心が折れそうだぜ」

 もう一度、とは思ったが、もう一度都合のいい角度で拳を放ってくれるかどうかは疑わしい。次の手を考えなければ、と思っていたとき。







「「星熊、ひきなさい」」

 星熊の脳裏に、支配者である|双子姫《古明地》の、特徴的な二重音声が響いた。

「ハァ!? なんだってよ!? レベル5を討ち取れるんだぞ! 滅多なことじゃねえ!」

 せっかく楽しくなって来たったのに、余計な水を差しやがって、いつもいつもあのガキ共は!

「「あなたがそれをする必要はありません。|霊烏路空《ヘルファイアエンジン》があなたよりも《《少しばかり》》巧く、それに無慈悲にやるでしょう。|悪霊《タナリ》共には手痛い仕置きが、必要なのです。あなたのように敵に情けをかけかねない戦士には……もっと活躍の場がありましょう」」

 遠隔伝声される古明地姉妹の|微差二重音声《バイノーラルボイス》が伝えてきた内容に、オレではなく、ただオレの戦闘を眺めて酒を飲んでいた萃香が声を上げる。

「まさか、使うって言うの、|ヘルファイア《熱核》を!?」

 萃香の予想を裏切って、古明地姉妹はたかだかレベル5に向けてそれを撃とうというのだ。レベル5が容易な敵ではないのは間違いない。だが、|改造八咫烏《ヘルファイアエンジン》を持ち出すほどの深刻で絶望的な脅威では、無い はずだった。

「|姫《プリンセス》、何かの間違いではないですか。相手は、レベル5です。|ヘルファイア《熱核》を使用するほどの相手ではないと。我々にお任せを」

 オレよりはよっぽど大人の対応という奴が出来る萃香は、古明地の二人と遠隔会話を始めた。チャネルはオレにも開放されている、入りたければいつでもその会話に入ることが出来るが、オレは何も言わずに聞いているだけだ。

「「いいえ伊吹。我々には|悪霊《タナリ》の相手以外に、目下重要な仕事が控えています」」
「〝|外園《幻想郷》〟……」
「「そうです。|悪霊《タナリ》の相手など続けても何も得るものは無く、でも停止することの出来ない固定費用のようなもの。ですが、伊吹、あなたが伝えてくれた〝幻想郷〟という外の界とのつながりは、この|旧獄《シェンディラヴリ》に大きな変化をもたらします。それを、〝悪い変化〟にするわけにはいきません。この戦闘を圧倒的勝利で収めて時間的猶予を確保すると同時に、|霊烏路空《我々の火》の力を確認しておく必要があります。」」

 幻想郷、とは現在確認されている「外なる界」の内、行き来の可能性がある唯一の界だ。太古から近い界として認識され、萃香以外に幾らかの存在が、渡ったと聞いている。何より、こうして永久とも思える|悪霊《タナリ》との戦争が続き先が見えない状況にあって、熱死を迎えつつある地獄の切れ端としての|旧獄《シェンディ》(古明地の二人とその手下が、|九獄《バートル》からこの一帯だけを切り離し別界として離脱することが出来たのは、元々この一帯が熱死に向かい先のない空間として見捨てられがちだったからだ)から見れば、幻想郷という界は希望の星にも等しい。その界と正式な接続が出来れば、閉じて燃え尽きようとしているこの界がよみがえるかも知れないのだから。
 萃香は先遣として、幻想郷に渡りしばらく滞在していた。幻想郷、という名前も萃香がもたらした情報だ。それも含めた内情を、萃香は古明地の姉妹に伝えていたが、その他の内容は他の者には余り知らされていない。

「幻想郷は……八博の首脳は無闇な殺生を行いません。我々|悪鬼《バーテズ》が〝秩序にして悪〟であるなら、幻想郷に棲まう者達の多くは〝混沌にして中立〟。彼女等は自らの価値を踏みにじられず利害が一致する限りにおいては、信頼出来ます。|改造八咫烏《ヘルファイアエンジン》など、ちらつかせる方が、よほど危険です。八博の首魁は、あなたが思っているよりも、よほど強大で」
「「青と黄を従え、赤と白とともにある紫色。最近では紅を配下に取り込んだ。界の深い部分を|〝色〟で表現しようとするふざけた思想《ペインテッド》、|万色悠龍《ティアマトー》の切片の可能性、大いに認識しています。」」
「でしたら、考え直してください。|ヘルファイア《熱核》は、この場で無理に使う必要があるものでは。八雲を無用に警戒させては、我々にもメリットがありません」
「「メリットならあります」」
「それは、」
「「忌まわしい|悪霊《タナリ》共をより多く、殺せることです。よもや伊吹、それに星熊、それに異を唱えるなどと、言いませんよね?」」

 古明地姉妹が、釘を刺すように言う。聞いた萃香は眉をひそめて不本意そうな表情、視線がチラリとオレの方を見る。まだやりたくてうずうずしているオレの様子をみて、萃香の複雑な表情は更に陰った。

「「伊吹。星熊。変更は許されません。下がりなさい。お燐、あなたもはやく。《《お空の》》に巻き込まれたくはないでしょう?」」
「勿論ですにゃ」

 こっちは最初からそのつもりだったのだろうか、そうでなくもこんな戦場もう懲り懲りと言うつもりなのか、あるいは主人に言われれば絶対だからなのか、二つ返事で了解している。

「勇儀」

 舌打ちや口答えこそしないものの、萃香も苦い表情で何か言いたげにしている。オレは「一人でやる」と楽しみを奪う形であったが、彼女だってやるのが嫌いなわけじゃない。さっきのオレのが失敗したのを見て、いよいよ自分も出番があるかもと思っていた矢先だったかも知れない。
 それでも、彼女はオレに比べれば相当に老獪なオニだ。ここで古明地に逆らうなんてことは、しないかも知れない。だからオレにも、退け、と伝えてきている。

「萃香は、いいのかよ。暴れられるときに暴れるのが、オレ達の本望ってもんだろ」
「そんなのは、私も、同じだよ。でも、|悪霊《タナリ》はまだいっくらでもいる。奴らとの戦いもきっともっとずうっと続くし、機会はまだいっぱいある」
「あのカラスが代わりに暴れるようにならなきゃな」
「あれは、そんな簡単に何回もホイホイと使えるような兵器じゃないよ、大丈夫。あれは今回特別に使うことになったけれど、私達は……使える暴力として、|四天王《テトラ・フィーンド》に編入されたんだ。それを、信じるしかない」
「信じる? 何をだよ」

 何をだ、という「名詞」を求める問いかけに、萃香は口ごもる。
 オレ達がそんなことをしている間に、|地獄猫《ベゼキラ》はさっさと尻尾をくるりとやっている。萃香も、それに続こうと、オレを招いていた。

「勇儀……功を急かないほうがいいよ。|古明地の双子姫《プリンセス》はどうせ、自分のペットを贔屓する。あれが|悪鬼《バーテズ》じゃなくっても関係ない、いずれあの|猫《掃除機》と|烏《エアコン》にも跪かないといけない日が来る。でも、そうならない方法を考えるのは、今じゃない」

 天井を見上げると、双翼を左右に大きく開き胸に赤く燃える火球を抱いた|半鳥人《ハルピュイア》のような何者かが貼り付いているのが見える。あれは古明地のペット、元々は地底の気温調整をする無数に散りばめられたインフラデバイスの一つでしかなかった鴉に、徒に業火の力を与えて改造した|八咫烏《ヘルファイアエンジン》だ。改造には古明地姉妹の力の他、地底のバランスに影響しないよう地上にいる別の神の力を用いたとも言われている。|古明地の双子姫《プリンセス》が言うにまだ試作品らしいのだが、それでも尚|悪霊《タナリ》との戦争で大きな戦力となる新兵器だと喧伝されていた。
 八咫烏は、いやそれどころかあの古明地姉妹も、|悪鬼《バーテズ》ではない。その点で言えばあの|火焔猫《ベゼキラ》もそうだ。古明地姉妹は何者であるのかその正体も知れていない。応報内戦で様々の秩序が入れ替わった(乱れた、とは悪にして秩序を謳う悪鬼は決して言わない)が、その時内戦の乗じてこの一帯の領域ごと|九獄《バートル》から切り離して別の次元界とした張本人だ。その力の巨大さを疑うものは誰もいないが、その正体を知る者も誰もいない。
 その不可思議の一つに、人間を堕落させ魂をこの次元界へ招き入れることよりも、|悪霊《タナリ》に対する敵愾心の方が強いように思える振る舞いがある。人間を誘惑し堕落させその魂をこちらへ招き髄までこの領域と自身のエネルギーとすることは、|悪鬼《バーテズ》共通の目的であるはずなのに、彼女らはそれを軽んじているかのようだ。
 先だっての|新中継界形成事変《間欠泉騒動》にしてもそうだ、そうして他の領界との障壁を破り開通させたことは、むしろ、そうすることで悪たる渾沌を他領域へ伝播せしめる、もっと別の、忌まわしく古い存在の行動にも見えるからだ。
 そうした大凡|悪鬼《バーテズ》らしからぬ振る舞いは、一緒にこの|廃獄《シェンディ》へ転移させられた他の|悪鬼《バーテズ》に少なからぬ疑惑(もしくは叛意)を与えているが、それを表に出せるものは誰もいなかった。あの双子姫の持つ力は、この|廃獄《シェンディ》では圧倒的なのだから。

 |九獄《バートル》にいた頃から運悪く生き残りここへ来た者の中には、幾らか物知りで余計なことを知っている者もいる。もはや彼らの言うことを真に受ける根拠は何もないが、彼らが言うには、あの古明地の双子姫は、|悪鬼《バーテズ》ではないどころか、敵であるところの、|渾沌たる不定の次元《アビス》の者だという。
 現在|渾沌たる不定の次元《アビス》は、星熊たち|悪鬼《バーテズ》と深刻で根源的な流血戦線を拮抗しあう|悪霊《タナリ》が支配しているが、|悪霊《タナリ》が|渾沌《アビス》を支配する前時代には、|古き悪しきそこに在りしもの《The Old being, that Evil is》(オビリスと略される)存在が支配していた。噂曰く、古明地の双子姫は|古き悪しきそこに在りしもの《オビリス》か、その強力な|化身《アスペクト》なのだと。
 多くの|化身《アスペクト》は、本体とは別の存在であり、本体が死んでも生き続ける。であるならば、説明のつかない|悪霊《タナリ》への敵愾心は、たしかにその仮定によって平仄が整うことは整うのだ。
 古明地姉妹は|物質界《アッシャー》でいうところの「覚」という妖怪を自称しているが、確かにそれを裏付けるところもなく、また覚としては破格に強力であることも間違いがなかった(本来ならば覚には|悪鬼《バーテズ》を統べるほどの力はない。下層の妖怪だ)。星熊や伊吹といった|悪鬼《バーテズ》の中でも上位の|鬼神《ラス・フィーンド》、ましてその筆頭存在である|四天王《テトラ・フィーンド》を顎で使う者など存在しないはずなのに、その覚は確かにそうした形で秩序をなしている。

(それが本当だとしても、元の場所を抜け出してこんな場所へ来ることに、何の意味がある。|風の諸侯《アーカーズ》との戦いを放棄し、女王を裏切ってまで、こんな地に逃げ込むようなことを、するだろうか)

 古明地姉妹に対する星熊の疑念は日に日に大きくなる一方だった。それは彼女に独特の心情ではない。地霊殿と呼ばれる宮殿を中心とする廃獄領域にやって来た者の内、誰も、古明地姉妹の正体も目的も、知らないのだ。「古明地」を名乗る前、向こう側では何と呼ばれる存在であったのか、真の名を隠してここに転身した(あるいは「古明地」を名乗る|化身《アスペクト》を遣わせた)司獄に対して、彼女のペットを除いては、心からの支持を持っている者などいないのだ。星熊だけではない、|四天王《テトラ・フィーンド》だけではない、あらゆる|悪鬼《バーテズ》が、多かれ少なかれ、|正体の知れぬ双子の司獄《オーヴァロード》に不信を感じている。
 ただ、星熊は幾らか、心根が実直過ぎるのだ。彼女の父親もまたそうであり、生前は|四天王《テトラ・フィーンド》を冠しており、そして、死んだ。報告上は流血戦線での戦死となっているが、娘は父の死に疑念を抱いている。

「「こんな下らない井戸で、あなたがそんなリスクを負う必要はありません」」
「リスクじゃねえんだよ、|悪鬼《バーテズ》の名誉って奴だ。悪逆非道の誇りってもんが、オニにはあるんだよ、|悪鬼に非ずして悪鬼の姫様《オーヴァロード》には、それがわからねえか、無理もないな! テメエらがアレをどうしてもぶっ放すってなら、オレなんかに構わずに使えばいいさ! オレはやりたいようにやる。こいつと、決着を付けて、あのカラスの火も生き延びて、レベル5の首を引き摺って持っててやるから……首を洗って待ってんだな!」
「「星熊、いい加減にしなさい」」

 オレが、声の方向もわからない古明地の声に対して啖呵を切って空に向かって中指を立てと、それは空から降ってきた。恐ろしい、ものだ。あのカラスの吐く生温い火なんかメじゃない奴。

「な……なっ、こ、れ……っ、!?」







「う、あれ」

 次に気が付いたときには、オレは奇妙な体勢になっていた。目の前には。

「勇儀」
「「気が付きましたね」」

 目の前に見えたのは、俺の顔を心配そうな表情で覗き込む萃香と、その後ろで冷ややかな表情を向けてくる古明地のガキ共。

「なんだ、これ。さっき、オレ」

 オレは、両手を後ろ手に拘束されて、立たされたいた。意識が無かったはずなのに、オレは確かに自分の足で立っている。意識を取り戻す前から立っていたと言うことか?

「「少々荒っぽいやり方ですが、あなたのその大した容量もない頭のなかの接続を、弄らせて貰いました。あなたの意識は遮断され、肉体の制御を手放しました。体が覚醒したまま睡眠状態にあるような感じです。あなたをここへ連れ戻してくれたのは、伊吹です。感謝することですね」」
「萃香……」
「勇儀、ごめん」

 距離にして、古明地姉妹が戦場尾見下ろしていた仮設の城から、オレが実際にレベル5と戦っていた戦線は、かなりの距離がある。その距離をしてなお、あんなおぞましい精神干渉を飛ばせるというのか。
 あのとき、オレが空に向けて中指を立てて古明地姉妹を呪う言葉を吐き捨てた直後に空から降ってきた名状し難い不明の塊は、空を覆うほどに巨大でありながら、地上のオレに向かって降下するに従って小さく鋭く漏斗のような形に変形して、オレの頭の中に突き刺さってきた。その瞬間……奴らの言う通り意識を手放したのだろう。そこから今までの記憶は一つも残っていない。

「伊吹がいなかったら、あなたの抜け殻の体ごと、|業火エンジン《八咫烏》で焼き消していたところです」
「……そうしてくれて構わなかったんだぜ」
「勇儀、やめて。|古明地の姫様《プリンセス》は、使わなかったよ。|改造八咫烏《ヘルファイアエンジン》。私と勇儀が退却するのに、万一でも当たったらいけないからって」

 捨てていけよ、バカ。そう言ったら萃香に軽くグーで殴られた。

「勇儀。これは|古明地の双子姫《プリンセス》の肩を持つ意味じゃない、本当にそうだったから言うんだ。姫は、勇儀がまだ残ってるからって|改造八咫烏《ヘルファイアエンジン》を使わなかったんだ。勇儀一人のために、別の策を強いられた。そのために、期待通りの戦果は上がらなかったし、味方に余計な被害が出た!」

 オレ達は退却した。レベル5は健在で、|改造八咫烏《ヘルファイアエンジン》は使わなかった。そりゃあ、被害が拡大しても当然の結果だろう。だったら、オレになんか構わずに火を使えばよかったのだ。

「「そういう、子供じみた考えをおやめなさいと、何度も言っているでしょう。反逆にも等しい行動。本来なら『のっぺらぼう』に貶して然るべきですが」」

 |ヌッペリボー《のっぺらぼう》とは、|悪鬼《バーテズ》の中でも最下層かつ特異な存在であり、懲罰などの理由で他の存在から貶められるように変容させられる末路の姿である。放っておくと勝手に増えて手に負えなくなる虫や草のような、精神を持たないぶよぶよした肉塊で、元々は|悪鬼《バーテズ》が住まうもっと前からこの地に犇めいていた原始的な生物であると言われる。あらゆる階級の|悪鬼《バーテズ》から見ても等しく奴隷であり、食料として食われ、建築人夫であると同時に資材でもあり、燃料として炉に放り込まれ、戦争では最前線でまず死ぬ。人称を与えられない。
 |ヌッペリボー《のっぺらぼう》に変化させられた者は、もはや救いを待つ望みさえ断たれ、何らかの容易な理由であっさりと死ぬまでの僅かな時間を、自分以外の|ヌッペリボー《のっぺらぼう》と互いに口汚く罵り合うことしか出来ずに過ごすことになる。それ以外の能を消されるのだ。

「お待ちください!星熊の行動は、我々|鬼《フィーンド》の生得である、全く取るに足らない下らない、理性に欠いた獣の本能のようなものです。稀にそのような」
「「わかっています。あなたが何を思っているのかくらいは、すべて、わかっています」」

 椅子に座ったまま視線を伊吹の方へは向けず焦点がどこに合っているのか判らない一人と、その傍らに立ち目を瞑ったままにも拘わらず刺すほどに感じる視線を射てくるもう一人。|二者一対の旧獄支配者《オーヴァロード》は、星熊の行動を問い質すべく彼女を左右から静かに威圧する。
 それには抗えないと言外に表するように、萃香は平伏する。

「何卒、星熊に、慈悲を」
「やめろ、オレのためにそんな頭を下げるな。こんな奴に」
「「あなた方の行動を許す前例も、あなた方の言い分に示す理解も、あなた方に譲渡する慈悲も、それらはほんの少しでさえ私の中には無い。なぜならあなた達が心根に抱いている私への叛意も全て透けて見えているからです」」

 冷や汗を噴き出す萃香。そうなのだ、|古明地の双子姫《プリンセス》が高圧な立場を保ち続けられるのは、ペットの|火焔猫《ベゼキラ》によって堆く積み上げられた魂の税収による圧倒的な霊力の格差だけが理由ではない。いつどこからでも脳の中を正確に透かし見られる|読心《スキミング》と、眼の前にいてさえ認識の籠目容易にすり抜ける|無意識《インコグニト》の二つが最悪の形で共存しているという生態故である。これを前にしては、いかに強大な力を持つ|鬼神《ラス・フィーンド》であっても無力な子供と何ら変わらない。
 実のところ、税収によって圧倒的な格差を得ている霊力は、勢力争いに勝つため負けないための力としては用いられていない。その性質により座るその高座からの命令を円滑に実行し叛意を削ぐための抑止力かあるいは対価として存在するだけだった。最小限の力で最大の相手を縊る最適の力を持っているこの姫に、力などさほどの価値はないのだから。

「ですが、最近は気分が良いのです、きっと、井戸の蓋が抜けて鬱気が薄まったからでしょう。伊吹、あなたが先に外に出て、そこですべきことをしたからですね。それとも土蜘蛛の横穴が界を広げているからでしょうか。いずれにせよ、あなたに免じて、今日のところは『子供の《《おいた》》』ということで済ませましょう。」

 古明地の姉妹が、慈悲深いとでも主張したいのだろうか、そうした言葉を吐いて、萃香から目を外す。そして、オレの方を見た。

「「星熊には、再教育が必要なようですね。 これでも私共は、あなた方〝オニ〟を高く評価しています。そう簡単に失うつもりではありませんから」」
「教育? ペットにでもするってのかい、あの鴉と猫みたいに」
「それは、あなた次第です、星熊。それに、伊吹も」
「萃香は関係ねーだろ!」
「「関係の有無を決めるのは、あなたではありません、星熊」」

 そういって萃香の方を見る古明地のガキ。萃香は、険しい顔で、オレから目を逸らした。

「萃香、お前、そんなタトゥー入れてたっけ? ちょっとかっこいいじゃんか。でも、可愛い顔のお前にゃちょっと似合わないな」

 左目の下、頬骨の辺り。顔にして左右アシンメトリで、まるで片目だけの涙をトライバルなレイアウトにデザインしたような、ちょっとパンクっぽいタトゥーが見えた。







 この部屋に、錠前は無い。その代わりに、不浄で冒涜的な封印術式が刻まれているのが、そういうのが余り詳しいわけじゃないオレにでもありありとわかった。
 ただの立方体の内側に造られたこの部屋は、巨体な立方体の岩石を球状に内側をくりぬいてある用に見えるが、どことなく歪んでいる様に見える。歪んでいないかも知れない、いや、歪んでいるか?
 この球体が内接する立方体は、一辺の長さが10メートルくらいはあるだろうか。結構広いが、一切何も無い。全く目印になるものが用意されていない球状の内側からは、出入り口になる扉がどこなのかさえわからない、切れ目さえわからないくらいにぴったりと組み合わさっている。今自分が座らされている場所が、下の真ん中に位置する、とわかるだけだ。
 真っ白い石造り、内側の面は、磨き上げられた大理石のように冷たく光沢を保っている。大理石に特有な不規則な波紋状の模様が浮かんでいるが、それを一つ一つ正確に覚えたとしても、この部屋の任意の点の一意性を保つのは難しいだろう。認識能力に靄がかかっている、これはこの部屋の持つ牢獄性の機能の一つだろう。

「随分上等なもてなしじゃねえか、オレ専用にこんな部屋まで用意して」

 目の前には古明地の姉妹が、立っている。立っている? 球の内面に立っているのだが、何かずれて見えるのは、真っ直ぐなのは「下」に向かってではなく、その球の内面に対してまっすぐ立っているのだ。この部屋が大きいから余り目立たないが、つまり普通に感が選れ魔、斜めに立っていることになる。
 真球に見えるがぼんやりと見渡すと真球ではないような疑いが生じる不安定感のある見た目、目の前の姉妹が真っ直ぐに立っているという事実。この部屋がただの部屋では無いことを示している。

「「あなた専用の部屋ではありませんよ」」
「他にもこうして〝再教育〟を受けた奴がいるってのか、なるほどこの|旧獄《シェンディ》の統制は、政治の表舞台ではなく、ここで作り上げられてたって訳か」
「「この部屋に生きて入ったのはあなたで3人目です。」」
「思ったより少ないじゃんか」
「最初に入ったのは、私と妹です。他にこの部屋に入ったのは、この部屋の封印を作り上げるために詰め込まれた、数え切れない既に死んだ者の魂だけでした。他の方を招待したのは、星熊、あなたが初めてです」

 そう。この部屋に施された冒涜的な、というのは、未練を残した無数の命を成仏させないように意図的に保ったままで、この部屋の中に詰め込んでいると言うことだ。10や100といった生半可な数では無い。高等な精神を持った、少なくとも霊長類以上の意志色を残したままのアストラル、つまり魂と言い換えてもいい、そういう高等な意思・自我を持つ知的生命体の魂を、千や万、詰め込んであるのだ、この直径10メートル程度の石の部屋の中に。
 この内側には数えることも困難なほどに変形して圧縮された魂が、未だに未練を抱いてこの世に縛り付けられている。それらは皆一様に生者と世界への筋違いな恨みを持ち、この場所で一緒に世界に対して呪詛を吐き続けてくれる仲間かを求めている。

「「この部屋は、井戸の最奥。ここが|旧獄《シェンディラヴリ》と呼ばれる所以の、その本質です。鍵もありませんし素材自体は何の変哲も無いただの石ですがご安心ください、折り重なり詰め込まれ重なり合った〝材料〟の魂達が、この空間から脱出することを許してくれません。」」
「こいつは素晴らしい居心地だ、吐き気がする」
「「この部屋の中には一緒に過ごしてくれる天使や神様も沢山いますよ、すぐに、声も聞こえるようになるでしょう。さみしいなんてことはありません」」
「……ぞっとしないね」
「「私達のもといた場所では、こうした牢獄は他にもいくつか用意されていました。いずれも、素晴らしい堅牢性です。」」
「だろうね。実にいい趣味だ。だが、オレの趣味にはちょっとばかり合いそうにないんだ、部屋を変えて貰うわけには?」
「「生憎変更は許されていません」」
「だろうと思ったけどね」

 つまりこの空間の持つ鍵も無いのに担保される牢獄性の機能というのは、この部屋の中に渦巻いて重畳した状態の未練ある魂が腕を伸ばし続ける同志を求めてこの場所へ引き留めようとする力による。この部屋に一度足を踏み入れれば、正確な手順なしにはこの部屋を出ようとする意志そのものをへし折られ、ここを出ようと考える度に嫌悪感や禁忌、恐怖を植え付けられ、しまいにはここを出ようと考えなくなるというのだ。

「ここに初めて入ったのはお前達だと言ったな。誰が突っ込んだんだよ。どうやって出たんだ。こんなおぞましい部屋、自分で入る理由がないし、自分で出られる道理がねえ。デタラメ言ってんじゃねえよ」
「「信じるも信じないもご自由にどうぞ。ですが、私達の魂はまだこの中、深いイドの底に、留まったままです」」

 今までこの井戸、精神性の強牢獄の話をつらつらと聞かされたし、ここからオレは出られないだろうことも聞かされたが、その一言が一番、寒気を覚えた。

「……そんで、招待を受けたこの素敵な部屋の中で、オレはどう料理されるって言うんだ。|ヌッペリボー《のっぺらぼう》になるよりはマシって話は聞いてるんだが」
「「ええ、きっと気に入ってもらえると思いますよ。」」







 好きな男の子がいた。顔は特別美形っていうわけではないのだけど、明るくて少し剽軽なところに、惹かれたんだと思う。一緒にいて楽しかった。女の子の中でもかなり背が高い自分と一緒にいてもあまり特別な目で見ないでくれるのも、嬉しかったんだと思う。

「こんな風に背がでかいとさ、いろいろ不自由なんだ」
「そうなの?」

 まだ小さい頃は、もっと可愛らしい服を着てたんだ。他の女子と同じように、フリルがひらひらしてたり、リボンが揺れてるようなの。でも、あっという間に背が伸びて似合わなくなって。似合わないだけじゃなくて、サイズもなくなって。

「背大きいの、羨ましいな。俺もそれくらいになれっかなあ」
「な、なれるよ! 男子なんてすぐ背伸びるっていうじゃんか!」

 この背を羨ましいなんて言われたのは、その時は初めてだったから。きっと、たぶん、おそらく、その気になってて、夢を見ちゃったんだと思う。

「ねえ、夏祭り、一緒に回らない? 他の子は、さ、誘わないでさ。二人で」
「うん、いいよ」

 夏祭りは、「付き合ってる男子と女子が二人で初めて行く」っていう、なんか、子供の間での独自の暗黙ルールみたいなのがあって、それにOKしてくれたってことは、つまり、そういうことなんだって、嬉しくなった。
 調子に、乗ってたんだと、思う。舞い上がって、浮かれ上がっていた。
 彼には、仲のいい男子がいて、そいつは、彼とは違って背が高かったりがたいがいい自分の事を、指さして笑うタイプだった。ガキ大将っていうか、手下みたいなのがいっぱいいて。彼も、その一人だったのかも知れない。夏祭りでばったりと会ったそいつが(そいつは手下みたいな男子何人もで来ていた。今になって考えればそれは、もしかしたら、やっかみだったのかも知れない)、凄く悪そうな顔で、言うんだ。

「ばっか、そいつ、男だぜ」
「はあ!? 違うし!」
「だったら、証拠、見せてみろよ」
「そんなの……きゃっ!」

 奴の手下の何人かに押さえ込まれて身動きが出来なくなったところで、浴衣の裾を、捲り上げられた。
 証拠、証拠というのは。

「げっ、マジもんの男じゃねえか、それ」
「やめろ、ばか!」

 そんなところだけ見たら、証拠って、逆の意味になっちゃう。

「だから妙に体でけえのか」
「ちがう! これは、ちがうっ! あたしは女だ!」

 こんな目にあっても、そんな風に言われても、彼はきっと、なんて希望を持っていただ。無根拠な自信っていうか単に世間知らずっていうか。調子に乗ってた時だし、人の残酷さもよく知らなかった小さい頃の話だから。
 捲れた浴衣の、股の間を見た彼が、《《彼も》》、言ったんだ。

「キモっ……」

 その言葉が、たった一言小さな声で聞こえたその声が、まるで死の宣告みたいに聞こえた。

「キモっ……」

 何度も夢に出てきて、何度もうなされた。

「キモっ……」

 今でも、その言葉はことあるごとに、頭と胸の中でむくむくと大きくなって、内圧を大きくする。思い出すだけで胸がいっぱいになって、押し出された体積が、目から水になって出てくる。

「キモっ……」

 もう、昔のことだ。子供の頃のことだ。それでも、忘れられない。

「キモっ……」

「キモっ……」

 何度も、反芻する。

「キモっ……」

「キモっ……」

 彼の声は、何年経っても色褪せずに鮮明なまま。むしろ重みと痛みを、未だに増している気がする。

「キモっ……」

「キモっ……」

「キモっ……」

「女のくせにちんぽついてる、キモっ……」







「うっ!?」

 オレは今、何を? 寝て、いた?
 目の前には古明地姉妹が立っていて、依然、丸い部屋の中にいる。

「「あなたのコンプレックスは、その余りにも雄々しい、男性器。他の身体的特徴も魅力的な女性性を高く保っているし、口調はともかく精神性も酷く女性的です。だというのに《《それ》》だけが、余りにも不自然に、強烈に、男。」」

 この部屋の説明を受けていたはずだ。そこでオレはうたた寝をして? 寝るはずなんてない、少なくともこいつらの目の前で。
 嫌な夢を見た。今でもたまに見る夢だ、子供の頃の嫌な出来事を未だに夢に見るなんて、あまったれた根性の証拠だが……こいつらは夢の中の出来事まで盗み見るのか? 

「見てたのかよ、今の」
「「見てた、といいますか、あなたに今思い出させたのは、私達です。それを、拝借するために」」
「けっ、最高に悪趣味だな」
「「これさえなければ、もっと自由に生きてこれたのに。もっとマシな人生だったかも知れないのに。もしかしたら、もっと、女らしい人生を送っていたかも知れないのに。そう思っている。幼い頃の恋心がたやすく踏みにじられた、誰かの手によってと言うよりも、自分の体の特徴のせいで」」

 そう言って、古明地姉妹は左右からオレのスカート(悔しいが、ロングにしている髪の毛と並んで、これはオレが女だってことを周囲に知らせるための、ティピカルな道具のようなものでしかない。似合ってるなんて思ったことは一度もなかった)の裾を掴んで、捲り上げる。
 抵抗しようとしたが、体が動かない。まるで、あのときの、何人もの男子に押さえつけられていたみたいに、体の自由がきかなくて、いよいよその《《それ》》が、剥く出されてしまう。
 古明地の姉の方が、手を伸ばしてそれに触れてきた。

「さ、さわんじゃねえ! 何するつもりだ!?」
「「社会的に足場を置くべき場所がうまく決められず、強がって一匹狼を演じているが、心の底では寂しくてたまらない。今や周囲から敬愛されるその真正直さは、その寂しさとコンプレックスの裏返し。昔から、この一点だけが障害で不要な困難を強いられ、自由な恋愛も出来ない。」」
「うるさい」

 こいつのせいで、オレは……その、女らしい下着をつけられない。男物のボクサーパンツを使っているが、下がボクサーだから上もそれなりのデザインで縛られてしまう。胸は胸で無用にでかいので、スポーティなデザインでサイズが大きいの、なんて酷く限られた選択肢しかない。
 それと、こんな身だって生理は来るが、ナプキンというのが、その、タマに邪魔されてフィットしないので、タンポン一択だ。楽は楽だからそれ自体はいいのだが、小さい頃はみんなナプキンで、周囲に小さな悩みなどを聞くに聞けなかった。アソコにモノを入れるなんてちょっとねえ~、って声が圧倒的だったからだ。ナプキンではなくタンポンを持ち歩いている姿を知られるのもなんとなく気が引けた。手持ちが切れてしまったときに周囲に都合して貰うことも出来ない。

「「ナプキンが使えない……なるほど確かに、それは私も見落としていました。改めて言語化して思い描いて頂いて恐縮です」」
「おい!? 余計なことを見るな!」
「「それに、本当は、同類のオニ以外に、もっと」」
「まて」

 聞き捨てならない言葉が出そうだったので、それは遮った。それは、オレが一番嫌いな奴だ。

「ここにいるオレのことを何と言ったって構いやしねえが、萃香のことを悪く言うんじゃねえ」
「「申し訳ありません、あなたの可愛らしいところが|読心《み》えてしまったもので、つい深入りを」」

 皮肉めいた笑みを浮かべて、言う。

「本当の本心がどうだったって、理性だの愛憎だのでそれを乗り越えちまうのが、知性ってもんだろう。それともそんなもんは、覚って妖怪には存在しないって言うのか? この場にいない奴のことを言うのはアンフェアだ、一番、好かねえ」
「「星熊、やはり、あなたは」」
「あんだよ、それ以上言うなら、この精神性の鎖をぶっちぎっててめえをぶん殴るぞ」
「「できるものならどうぞ。ですが、尊敬します。あなたのその真正直さが、欲しい」」

 何を言ってんだかよくわからない。このガキは、人の本心を容易に見透かすくせに他人から本心がわかりづらい言動をする。

「「―― ですが、私達が今欲しているのは、もっと身近なことです」」
「あんだよ。さっきからテメエのそういう回りくどい言い方が気にくわねえんだよ、人の中身はドストレートに抜き取ってくくせに。少しは自分の行いを改めろ」
「「それは、あなたに裏表がないからです。普通はもっと……いえ、その話は、この際どうでもいいですね。星熊、あなたは性欲が、男性としての方が強い。自慰も、男性器での方が多いようですね」」
「ぅおい、一気に下劣な話になりやがったな」
「「別にどっちだって構わないのです、あなたが女としての性欲が強かったら、こんな《《可愛らしいモノ》》が付いていなければ、その通りにするだけですし」」
「なにをするってんだ。人の下半身ヒン剥いて、まさかレイプでもするってのか」
「「まあ、当たらずとも遠からずというところでしょうか」」







 スカートをたくし上げて、ぱんつの中に収まる膨らみの方を、布地の上からぺたぺたと触る古明地さとり。妹の方は何もしてこない。これは、姉の趣向なのか?

「なんだよ、触ったことがないのか? 案外ウブなんだな?」

 オレの挑発には答えることなく、オレの下着をズリ下ろした。ついにナマでこれを、こいつらに見せることになっちまうなんて。羞恥はない、あるのはただの、屈辱感だけ。

「大きいですね」
「ありがとよ、お前のじゃ破けちまうかもな」
「興味ありませんね」

 何なんだ、こいつは。
 古明地さとりは、モロ出しになったオレの男性器を視姦し続ける。息がかかってむず痒いが、だからって興奮できるようなシチュエーションじゃねえ。
 古明地さとりの、萃香程じゃないがガキっぽい容貌、常にどこか眠たそうに瞼が垂れたような目が、瞬き一つせずオレの陰部を見ている。ひと言も口を利かず表情も変えずにオレの陰茎と陰嚢を眺めている。大きな目がよく動いて、その形を視線でなぞっているのがよくわかった。だが、女陰の方は全く目もくれていないようだった。

「見てるだけじゃ、次のステップには進めないぜ、おぼこちゃん」

 やはり何も答えない姉。まさか、男性器相手に怖じ気づいているんじゃないだろうな。
 と、思っていたら、姉の手が伸びてきた。小さくほっそりした白い手、萃香のそれに比べれば随分大人っぽいが、それでも子供のそれと一見してわかる。それが、オレの陰嚢を両手で掬い取るように持ち上げる。左右のタマを左右の手それぞれに収めるみたいに。

「見た目よりも重たいですね、」
「五体満足な女にはついてないからな、羨ましいかい」
「どうでしょう、半々、ですかね」

 半々といったが、1ミリだってそんなことは思ってないに違いない。おちょくっているのだろうか。
 古明地の手は徐々に動きを見せ始める。袋を包み込むように手を閉じ、揉むような動き。タマを掌の中で転がして、指を垂れ下がった皮の中に埋める。陰茎と陰嚢の境界辺りを指の腹でなぞったり、タマを親指の付け根のふっくらした部分に乗せたり。

「何してるんだ」
「私のことは見なくて結構です」

 と、問いには答えない姉。ただ、オレの陰嚢を掌で転がして遊んでいる。いつまでも、陰嚢を包み、指先を左右の袋や陰茎との縫い目に沿わせて動かしたり、内側で垂れ下がっている睾丸を指先で追いかけたり。

(何なんだ、これは)

 そして突然。

「ぎゃっ!」

 タマを摘ままれた。強く。だが、これなら何か不意にぶつけたりしたときの方がまだ強いというレベルだ。一瞬強く握られたが、それ以降はまた、緩く触ったり握ったり揺らしたりしている。

「そ、そんな、嫌がらせみてーな〝教育〟ってわけじゃねえだろうな」

 やはり黙ったままだ。一瞬痛みを与えられたが、それ以外は痛みどころか、男性器を対象に快感で攻めてくるなんてこともない。ただ、まるで小児自慰を他人に行っているような、本気で性的快感(あるいは苦痛なのだろうか)を与えようとしてのものには思えない。
 確かに手の動きは少しずつ速くなってきているかも知れない。ただ、触っている部分は依然として陰嚢ばかり。そこをさっきのように強く刺激されるのはキツいが、こんな風にやわやわと触られるだけでは、何も感じない。そんなところを触られているという屈辱感が少々ある程度だ。
 指先で陰嚢の皺を伸ばしたり、指を奥に押し込んだり、といった奇妙な動きが目立つ。手で触られて温度が上昇しているせいで、たらんと垂れ下がった状態から変化はない。尻穴から続く筋をなぞったり竿との縫い目に指を沿わせたりもあるが、基本的には袋の中のタマをどうにかしたいのらしい。睾丸の周囲をくるくると円を描くように指先で撫でたり、つんつんと突いてみたり。両手で挟み込むようにして存在を強調させたりもしているが、さっきの様に痛みを伴う責めはほとんど

「いっ」

 極稀に、あるというくらい。だがそれが主体だという感じではない。痛みで攻め抜くのなら、もっと効率のよい方法があるはずだ。一体何をしたいのか、さっぱりわからない。
 いろんな動きを混ぜているが、共通しているの「袋を撫でる」「袋を揺する」「縫い目や蟻の門渡りをなぞる」「極希に睾丸を刺激する」の三つだろうか。古明地の細くて白い手が、一体何を目的にこんな場所を触れているのか、全く理解しかねる。
 袋に触れるかどうかのこそばゆい感触を延々と数分も続けられる。何かを欲しがってしまうわけではないが、触るか触らないかの接触というのは、否応なくもどかしいもので、続けられるとじれったくなってしまう。
 いい加減その感触に慣れが出てくると、次は縫い目なぞりへ移行する。竿と袋の縫い目は普段意図的に触るような場所ではない、その希少性がなんだか心地よいような気がしないでもない。耳かきや足裏マッサージに似ているだろうか。どちらにしたって苦痛を与える目的には使えなさそうだが。
 その間、割と頻繁にゆさゆさと袋を細かく揺すられる。その中に精液が入っているのは間違いないのだが、それを揺すってどうするというのだろうか。

(ぅん……?)

 袋と縫い目の刺激を、延々と繰り返される。頻繁に袋ごと睾丸を揺すられる。意味はわからないのだが、なんだか妙な気分になってきた。

(これは)

 気持ちいいと言うよりは、心地よいというか。ふわふわと浮かぶような、掌で玉袋を掬い上げるように揺すられると、まるで全身がゆりかごの中にいるような。

「いたっ!」

 その間にも急に現実に引き戻される、睾丸への強圧迫。その腹の底が捩れるような苦痛を、陰嚢全体を慰撫されている奇妙な心地よさが、癒していく。

「ふぅっ……」

 自分の吐いた溜息が、こんなにも熱を帯びたものになっていることに、自分で驚いてしまった。興奮、しているのか?

(なんだ、これ)

 陰嚢に触れられることに性感などあると思っていなかったが、今感じているのは確かに快感だ。ただ、男性器から生じる快感としては、妙にふわふわとしている。
 タマ自体が感じているわけじゃない、なんだか、袋とタマへの刺激が、ペニスの付け根のその奥の方、いや、ケツの中?へ伝わっているような。最初は何も感じていなかったが、徐々にその熱の伝わる経路の様なものが見えてきてしまっていた。
 ふわふわとした浮遊感と同時にちんぽの付け根からけつの穴の奥辺りに、どろどろと蟠る何かが生じている。吐き出したいという衝動がないのが射精欲と違うところだが、この蟠りの正体はわからないし、これ自体が快感を生み出す突然変異細胞のようにさえ感じられる。

(なんだよ、これ、なんだ、よおっ)

 ただ陰嚢をまさぐられているだけだというのに、理不尽で腑に落ちない、快感。古明地の姉はこれを狙っているに違いない。

(だけど、こんなことをして、なんになるってんだ。こんなものを教え込んだところで、オニとしての誇りも消えなきゃ、お前等への不信感だって消えやしねえよ)

 内心の独白であり、同時に隠すつもりもない心情と古明地姉妹への宣言。それを|読心《み》てか、|読心《み》ずか、姉は淡々とオレの陰嚢を触り続ける。タマを揺すり、皺を押し、縫い目をなぞる。

「く……ふぅっ……」

 もう心地よさを否定するものは無い、竿に触れてもらえないもどかしさと、陰嚢を刺激されて生じる心地よさは、全く別の発端を持ち、同じくらいの権利を持って主張してきている。
 せめて、射精で終わらせられたなら、この正体不明の快感にも理由を付けて整理できるというものなのに、それをさせてもらえない。ひたすら、睾丸快感を、見せつけられて、自覚させられる。
 それに

「ぎゃっ!」

 稀に差し込んでくる痛みの方も忘れない。いっそこれで、快感が全部悪い夢のように冷めてくれればいいのに、それもない。痛みで開いた穴を、ふわふわのホイップで埋め戻されるような、そんな得体の知れない感覚を繰り返されていた。すぐに、優しい(という言葉を使うのは凄く癪だが!)タッチで、陰嚢全体を愛撫、そう、これはれっきとした愛撫なのだろう、愛撫してくる姉。心地よさは雨の日にガラスを打つ滴のよう、痛みで溌と滴を払った後でも、窓ガラスをみるみる滴で濡らして曇らせていく。

「ふうっ、ふっ……ちく、しょぉっ……」

 悔しいという感覚が、顔を覗かせる。古明地なんかに感じさせられるつもりなんかない、と思っていたわけではない。この悔しさは、古明地から与えられることに対するのではなく、こんな訳のわからない行為で感じてしまっている自分への憤りに近い。
 そうしてまるで足場が消えて不安定な沼地で、でももがくつもりもなくただ宛てもなく流されている様なそんな感覚に言いなりになっていると、気が付くと古明地の目が、オレの方を見ていた。
 表情が、柔らかい。つい「お前そんな顔できるのかよ」なんて言ってしまった。

「心外ですね、自身の手で相手が堕ちそうになっているのを見て、気分が悪い女なんていないと思いますよ」
「……その科白を聞いたオレは気分が悪くなったわ」
「そうおっしゃらずに」

 そう言って、古明地さとりは、責めの手に変化を加えてきた。

「っ!?」

 玉袋をさする手の動きと別に、指が、強く肉を圧迫してくる。睾丸や玉袋ではない。さっきまで指先でなぞる様に撫でていただけの、蟻の門渡り、女陰を避けて、ケツの穴との境目にある、少しだけ陰部側。
 ケツ穴をイキむ時に使う気がするが、正直何なのかはよくわからない。ただ、そこは確かに妙に柔らかくて、同時に筋肉質だ。椅子に座って圧迫したって、押し込むような刺激になることはない。それを、ぐっと、強く押し込まれた。それだけなのに。

(~~~~~っ!? な、なんだ、なんだこれっ!?)

 痺れるような、もどかしいような、じれったいような、甘いような……射精寸前のむずむずしたような、得も言われぬ電流が、腰奥からペニス全体に、ずん、と響いた。余震が、体中に響き渡っている。

(な、なんだよ、なんだよこれっ、ただ、ケツ穴の近くを圧されただけなのに)

 目を白黒させていると、古明地の姉はその圧迫愛撫を何度も何度も繰り返してきた。陰嚢撫でと睾丸への弱い圧迫を織り交ぜながら、何度も、何度も。

「ふっ! ふっ……ぐっ……! っぁ、っ! ~~~っ」

 歯を食いしばって、変な声が出そうになるのを、押さえる。絶頂じゃない、絶頂寸前のあの、狂おしい奴。古明地に蟻の門渡りを押し込まれる度に、高確率で快感電流が全身の輪郭を駆け巡る。特にペニスの先端へ向かって執拗に行き来する。射精したい様な、でも射精の快感じゃない。チン先から開いた管の、その内壁をぞわぞわと甘い感覚が満たしていく。ペニス尿道を通って、腰の奥の方に熱を流し込んでくる。奥に蟠っているのは、精液、でも、射精したいわけじゃない、いや、射精したい。射精すればきっとすっきりする。でもこの心地よさは、男の絶頂に直結するのとはなんだか違う。

(なんでだよおおおっ、オレの体、どうなっちまったんだ……!?)

「はあっ、はあっ そこ、やめ……っ、っっくっ!!」

 やばい、これ、これ、続けられたら……でも、コレ続けられた先の絶頂って、ドコなんだ? 射精か? 膣イキなのか? アナルセックス? よくわからない。行き先のない快感は、どんなに膨らんでも、例えその先で爆ぜようとも、きっと最終的な結像をせずに、明確なゴールを持たない。それならば、忘れてしまえるかも知れない。
 どうだろうか、そんなに都合がいいだろうか。それも見越して、こいつらはオレをどうにかしようというのではないのか。
 不安が否定できない中で、古明地さとりを見る。癪に障る程に柔らかい笑みで、オレを見上げていた。

「こんなところですね」
「なにが、だっ」
「感じてもらえたようで、《《ここ》》で」

 そう言って、古明地は再度、オレの陰嚢を掬い上げるように掌の上にのせて、たぷたぷ、と揺らしてみせる。反吐が出るほど品性下劣な映像だが、今のオレはそれを下品だと笑う立場にない。

「そっ、そんなところで感じるわけ、ねえだろっ」

 そんなのが口でばかりの抵抗だということには、覚姉妹でなかったとしても気付いていただろう。古明地の姉も、あえて何も返しては来なかった。
 最後、陰嚢を触りながら蟻の門渡りの辺りを押し込まれたとき、一つも触っていなかった竿にぞくぞくとした感覚が走り、鈴口からだらしなく涎が垂れたのは、誰の目にも明らかだった。







 姉がその場を離れたので、このよくわからない行為(最終的に凄まじい量の先走りを漏らしてしまったことから目的はわかりかけてはいるが)は一旦終わったのだろうと思った。が。代わりに妹の方が、入り込んできた。

「つ、続きがあるのかよ、欲求不満で終わらずに済みそうだな」

 古明地こいしは、相変わらず目を瞑ったままだ。オレの、カウパー漏らしが見えているかどうかはわからない。

(って考えてりゃ姉には透けて伝わってるのか、おっかねえな。……こんなんなっちまうなんて、自分の体でも驚きだぜ、あんたらやっぱ《《それ》》で客取れるよ)

 声には出さずに姉の方へ視線を送ると、何も言わずに口角だけを小さく上げて笑っていた。けっ、気味の悪い女だぜ。
 妹の方は、姉とは違い迷いなく竿の方に触れてきた。当然、カウパーが漏れ出ていることには触られてしまえば気付かれる。

「♥」
「はっ、や、やっとそこなのかよ、待ち焦がれたぜ」

 強がって見せるが、待ち焦がれたのは、強がりではなく本心だった。この気持ちも見透かされているのだろう。陰嚢を触り回されて不覚の心地よさを覚えながら達することができないもどかしさ、それにいよいよ止めが欲しいと願ってしまっていたのを、安易に、しかし覚えこまされるタイミングで与えられる。

「姉の私が言うのもなんですが、妹の手は、《《巧み》》です。堪能なさってください。」

 姉が言っているのを聞いて、その言葉を解釈したタイミングでようやく妹がその隣にではなく俺の股座に潜り込んでいるのに気付いた。いつの間に入り込んだのか、まったくわからない。気配さえ感じなかったし、何ならすでに触られているが、はじめ触られている事にさえ気付けなかった。
 この姉妹が離れて位置しているのは、滅多に見るものではない。この部屋は10メートル程度しかないはずなのに姉の方は数百メートルも先にいるように感じられてしまうし、妹の方は股の間にいるだけなのにまるで顔と顔がぶつかりそうなほど近くにいるように感じる。姉はその妙に遠い位置から、オレの心の中や過去すべてを余すところなく俯瞰しているみたいで、自分の中身をすべて見られている、本棚やタンスの中、秘密の宝箱をすべて無遠慮にひっくり返されてその中身を一つ一つ吟味されているような、強烈な嫌悪感と忌避感があった。
 対して、近すぎて魚眼じみて見える妹の表情はそれでも目を閉じたままだが、まるでその瞼の下に隠れたままの目がこちらをぎろりとみているような寒気を覚える。

「しゅうちゅうして」

 妹の声単品を聞いたのは初めてかもしれない。甘ったるくて掠れるような声、でも、それが可愛らしくは聞こえない、単純に、不気味だ。

「私男だから、手コキやフェラだったら、女なんかよりずっと気持ちよくしてあげられるよ」
「なっ……」

 男? 古明地の妹は、男だってのか。目を閉じたままだから余り気付かなかったが、確かに少しばかり掘りが深いかも知れない。頬骨も言われてみれば出ているように見えなくもない。それでも、男と言えるほどのものではない、コレなら、オレの方がまだ男装が似合ってしまう(悔しいが)だろう。

「おちんちんに集中してね」

 オレの竿に触れる手は、姉のに比べて幾らか関節部分が節だっている、関節ではない部分は細長く、肉付きが薄い。手の甲にも肉が薄くて、指を曲げると筋が立ち、確かにごつさを感じなくもない。男の手だと言われれば、男の手つきかも知れない。
 だが聞こえてくる掠れ声は、不気味ではあるが甘さを孕み女性のものだ。可愛らしくは聞こえないが、これは男だ女だという問題ではないきがする。
 女のオレが男に手コキされる、という奇妙な構図だが、姉の言うとおり、いや妹(弟なのか?)自身の言うとおり、そのタッチは女性の手コキとはひと味違った。

(慣れてるな……)

 女が男のペニスに向けてする、サービス満点の手コキとは少し違う。実用的で、効率的な……つまり、古明地こいし自身がオナニーする時の実体験に即した手コキなのだろう。
 太股の内側を撫でるところからとか、前戯とか、最初は竿から優しく、とか、姉が準備してくれた睾丸も一緒にね、なんてことはない。オレの背後に回って(全くいつ回られたのかわからなかった)、背中に乗っかるような形でオレの股間に手を伸ばし、いきなり適度な強さで竿を握る。

「火星さんなんだ、かわいい。私とおんなじ」
「男のくせにちんぽに可愛いとか、キモいな」
「女のくせにちんぽついてるとか、キモいな、なんて思ってないから大丈夫だよ」
「……ちっ」

 なんだか巧く返されたような気がして癪だ。
 古明地の|弟《妹》は、姉が絞り出したカウパーを指先で掬って亀頭全体に塗り回す。裏筋を指先でふわっと撫でて鈴口を少し押し込むようにして、亀頭全体を親指と人差し指で作ったリングで優しく絞るように擦って撫でる。ねっとり濡れさせられたところで、その滑り余りを、口元に運んで舐めた。

「いい匂い。えっちなことが大好きな人のおちんちんの匂い」
「し、しらねえよ」

 古明地こいしはそのまま掌に唾液を垂らして手をベタベタにしてから、再び竿を握る。少し余った皮ごと上下に擦られると、亀頭を濡らした液体が皮の中で滑り、手と竿の間では唾液がぬめる。
 順手の握り方はオレ自身に馴染みのある握り方で、これをするためにわざわざ背中に回っているのだろう。人差し指+中指と親指で出来るリングへの加圧を中心に亀頭とカリの円周を絞り込むように刺激してくる。

「くっ、てめ、ホントに、男のくせに、慣れて……っ」
「自分で、慣れてるよ?」
「誰かにするのは自分でするのと同じかよ」
「|同調し《あわせ》ちゃえば、おんなじ。男なんてあわせやすいし」
「オレは男じゃねえ」
「あっ、ごめんね……」
「けっ」

 掌と薬指、小指での握り込みは竿の部分を擦る。オーソドックスで効率的な手コキだがそれ以上に、オレ自身が慣れたやり方を完全になぞる様に再現してくる様子は、さながら他人に施されるオナニーだ。
 オナニーに慣れているのか、他人に合わせることになれているのか、あるいは単純にペニスを扱くことになれているのか、もしかしたら全部かも知れないが。とにかく効率がいい。愛情とかフェチズムを用いた精神的な興奮に頼らずに、テクニックと刺激だけでペニス絶頂までの最短経路を行くような感じ。商売女よりもよほどに巧い。
 その慣れた感覚が、単純に自分の意識とは別の部分でもたらされることは、因果が逆ではあるがどうしようもない興奮を呼び覚ます。

「っ、うう」

 握る強さまで丁度いい、もう少し強くして欲しいと思えば、自分が望むのよりもほんの少し強く、イきそうだから弱めに、と思うとそれもクールダウンを許さないギリギリの刺激を保ったところで維持される。目の前でチンポを扱かれるオレを眺めている姉の読心と妹のコンビネーションかも知れない。慣れた快感を使って、射精欲をより強く増幅させてくる。
 竿を強く、亀頭周辺を弛めにされると、刺激を欲しがってしまう。そこにもう片方の手が被さる。左手が、竿を握り扱きながら、余っている右手が被さって掌全体で亀頭を撫で回す。欲したときにこうして想像以上の快感を与えられてしまうと、それを防御できずに素直に受け止めてしまう。つまり。

「うっ、くううっ」(ちくしょぉ、きもち、いいっ……)

 右手の5本の指それぞれが立つように配置されて、亀頭を摘まむように包む。そのまま指の先と腹を使って、雁の部分と指の当たる5カ所をそれぞれバラバラの動きで刺激してくる。こんなオナニーをしたことはないが、主体はあくまでも慣れた竿コキということだろうか。亀頭へのテクニカルな5点攻めは、アクセントとして与えられただけですぐに掌で包む動きに戻った。完全に、翻弄されている。

「星熊さんの、びくびく~ってしてる、イきそう?」

 答えない、が、答えないことで、肯定になっていただろう。背後から、満足そうな吐息が聞こえた。

「じゃあ、そろそろ〆よっか。おねえちゃんがくれた奴、思い出して集中してね」
「えっ」

 そう言うと、妹の手は竿を扱く速さを一気に増す。亀頭を包む手も追加して、このまま雁首を絞り込む扱きと亀頭への包み込み刺激で絶頂まで駆け上らされるのか、と思ったら、突然、〝それ〟は襲ってきた。

「!?」

 それは、姉がオレに教え込んだ、陰嚢辺りをゆったりと刺激し続けた後に蟻の門渡りのあたりを強く押し込む、あの不明の快感。
 姉の方は確かにそこにいる、遙か遠くにいるように見える錯覚はそのままで、距離如何に関わらず、その手はオレに触れてはいない。だのに、妹の手の動きとは別に、陰嚢を撫でられ揉まれる感じと、ケツの穴付近に感じるあの圧迫感。まるで4本の手で股の間を弄り倒されているような。

「なん、だ、これっ……あ、っっ、あ゛っ、ぅぅっ!」
「どっちがきもちいい? どっちでイってもいいからね」

 声をかけてくるのは妹の方だが、姉から送られてくる視線は、その言葉は私のものでもあるといわんばかりだ。
 陰嚢刺激から呼び起こされる浮遊感と幸福感、蟻の門渡りの奥の方に湧き上がるむずむずと渦巻く欲求。姉に与えられた刺激を追体験させられ、それに被さる妹の手コキが姉の愛撫全てのゴールになろうとしている。
 姉の教え込んだ新しい快感を、妹が同調して引きずり出したオレ自身のオナニーの快感で吐き出させる。そんなものを知ったら、オレは、タマ刺激で……!

「あっ、お、オ゛ぁっ♥ やめろ、それっ、4カ所っ、4カ所責められっ♥ タマ撫で快感といつものオナニーを、紐付け、するなっ♥ そんなことされた、オレっ、オレぇっ♥」

 植え付けられる。条件反応で、チンポ扱きと陰嚢愛撫が、関係してしまう。こんなものを知って、こんなものでイってしまおうものなら、射精の度に陰嚢を思い出して、陰嚢に触れる度に射精を思い出して、それって。

(キンタマ愛撫で、イケるようになるって、こと……)

 そんなの嫌だ、女として最低だ、ふたなりだってだけでも無理なのに、竿オナでも女として失格感強いのに、た、タマでイケるようになるなんて、そんなの、そんなのは♥

「「我慢はよくありませんよ」」

 耳元と、遙か向こうから届く声が、|微差二重音声《バイノーラルボイス》を取り戻していた。

「「いつものちんぽオナニーじゃないですか。我慢することなんてありません。キンタマ揉みも気持ちよかったでしょう? 前立腺押し込みも、心地よかったでしょう? 全て受け入れてしまえばいいんです。気持ちいいことを我慢する必要なんて、これっぽっちもありません」」
「っく、あ、ア゛っ……んぐ、うううっ、くうぅううっ♥」

 だめだ、抵抗できない。
 気持ちがいいのは、気持ちがいいに決まってる! だって、気持ちがいいんだから!
 結びつけられちまう、ちんぽと、きんたまと、射精と、オナニーと、ふわふわと……ああ、なんかよくわかんねえ、よくわかんねえけど、きもちがいいやつ、ぜんぶ!!

「イく、いくっ、いぐう~~~~~~~~~~っっっっっっっ♥」

 どぶっ♥ ぶびゅっ♥ どぶぶっ♥ びゅううっ♥

 ちんぽが、溜に溜めた快感を、全て精液に変換して爆発させたような、壮絶な快感が全身を駆け巡る。爆発だ、浮遊とか幸福とか、そんな生やさしいもんじゃない、抵抗不能で、絶望的で、絶対的な、最上の快感。

「ふぐっっ♥ ひっ、はグぅっ♥ で、でちまっ……へるぅっ♥」

 無様に射精したオレのペニス。尿道を駆け抜けた精液の感触は慣れ親しんだ大好きな快感で、でも今はそこから更に奥の方の、睾丸や前立腺にまで、そのイメージが繋がってしまっている。下半身全体が、エロイメージでしっかり固まっちまった。
 大量に噴き出した精液は妹の手の中にぶつかったが、収まりきる量ではなかった。掌の中にしっかり溜まった上で指の合間から糸を引いていくつも滴りを見せている。

「♥ ……いっぱい♥」

 古明地こいしの手の中にたっぷりと収まっている、真っ白の液体。妹はこれをうっとりと見つめて(目は瞑ったままだが)笑う。それを、口に運んで、おいしそうに飲み込んでいく。正体は男だって言うのに、自分にもその液体をぶちまける器官が突いているって言うのに、そんなに嬉しそうな、いやらしい顔で……♥
 ぞくり、射精を終えて急にクールダウンしていくはずの性欲が、冷め切らない。妹のザー飲もそうだが、遠くからオレの痴態を、その冷ややかな目でじっと見ていた、姉の視線にも、だ。

「「愉しんでいただけたようで、何よりです」」
「くそ、がっ……」







 悔しいが、妹の手コキテクは、極上だった。サービス満点の風俗嬢にされると言うよりも、日常のオナニーそのものをとんでもなく贅沢なものにしたような。だがそれもあるが……それ以上に、姉の目だ。妹がオレを責めている間、足を組んで完全にオレを蔑んだ目で、じっとオレを見ていた。妹の行為それ自体が、奴の手足の動きだったんじゃ無いかとさえ思う。
 癪に障る目付き。三白眼じみていて、人を小馬鹿にしたような目。そのむかっ腹の立つ目が、まばたきも惜しむように、妹の手コキに追いやられていくオレを見ていた。屈辱的だというのに、オレを見ているその目を睨み返すことが出来なかった。
 まるで、その目に、吸い込まれてしまいそうな。古明地さとりの目は、まるで虚無だ。本体があの|単眼翼魔《アーリマン》の仔の様な「サードアイ」と呼ばれる奇妙な眼体だと言われる所以は、人型頭部に備わった二つの目があまりにも生命感に欠き偽物じみているからだ。
 だがこうして奴の行為に晒されてよくわかった。あれは、虚無ではあるが、本物だ。精神を吸い取るスポンジのような凶悪な目。見透かされるとか見抜かれるとかいうのではない、まるごと、持って行かれる。
 その目に、妹の手コキで感じているオレを心臓ごと持って行かれたような感覚は、ペニス愛撫による性感を無性にどうしようもなく、増幅した。

(なんだってんだ……あの、目……)

 あの目に魅入られて、触られてもいない場所の刺激を、確かに感じた。離れた場所から、キンタマを触られる確かな感触が、再生された。
 覚姉妹の目が特殊なものであることくらいは、いくらオレでも知っている。閉じられたまま開かれるのをほとんど見られたことのない妹の目も、姉妹がこの|旧獄《シェンディラヴリ》を支配するのにこの上なく重要な力を持っていることも、それは姉妹自身によって隠されること無く語られていた。

「「《《そこ》》での悦び、覚えましたか?」」

 ……個人的には善戦したつもりだ。だが、結局ああも盛大に吐精してしまった。妹はまるで恋人のそれのように、目を閉じたまま、だが満足そうに笑いながらそれを舐め取り、飲み下した。
 目が閉じられたままどこを見ているのかわからない、その欠損した表情の中で、オレはその目に都合のよい表情を重ねてみてしまう。まるでトルソーの様な、欠けているからこそ、それと対峙するものにとっての完全を再現しうる、|目《表情》。
 その表情で見つめられながら、卓越したテクでペニスを愛撫されたのを思い出して、オレは寒気にも似た感覚を覚える。

「おぼえる、もんかよ、ド変態姉妹が。しかも、妹は、女装の変態野郎だった? オレなんかよりもその辺の酒場にでも行って客にねだって来いよ、いくらでも、その手の客が射精してくれるぜ」
「「……ふふ、流石に精通だけで転がるだなんて思っていません。でも、一度体験したモノを、あなたはこれから無限に回想します、星熊、あなたのPOW値では到底抵抗できないでしょう」
「は? 何言ってんだよ、意味わかん……くっあ!?」

 突然、目の前に見える光景が、別の映像に切り替わる。これは、さっきこの二人が部屋に入ってきたときの、俺自身の視界……?

「「その通りです。あたまの頭は今、この2時間ばかりの出来事を、忠実に、あなたの体全体に再生していきます」」
「どういう、ことだ」
「「あなたを《《ここ》》の奥から、犯して……腐らせます。さっき、わずかに、ほんのわずかに感じた睾丸愛撫への快感、前立腺刺激への誘導。それと手淫で絶頂した快感。これから1週間、1秒の猶予も無く、あなたの頭は、快感を駆け上ったあの時間をことを、繰り返し繰り返し、ただ繰り返し、直列に起こった出来事を全て重複させて、精神と記憶、認識全てに向けて忠実に再生します。深い部分の記憶は肉体にも影響するでしょう。」」
「うっ、あ、ああっ……んくぅぅっ!♥」

 古明地の姿は、映像と声が一致していない。今、オレの目の前に見えているのは、オレのチンポを扱き回す妹と、玉を撫で回す姉の姿、さっきまでかけられていたいやらしい数々の言葉の音声、それに、そのときの感触や興奮までがあのときと全く同じように繰り返されている。目の前にいるのだろう本物のガキ共の声と姿とは、別物だ。これは、|幻影《イリュージョン》の応用か?
 前触れも無く襲いかかってくる、強烈な射精欲と、睾丸に感じる甘い感覚。さっきこの二人にイかされちまったあの瞬間だ。目の前に展開される|幻影《イリュージョン》とは別に、本物からそこを本当に触られている訳でもないはずなのに、確かに襲ってくる容赦の無い愛撫の感触。それによって強制的に引き出されてみるみる増していく射精欲、それに、玉袋の奥からむずむずとくすぶる、甘さ。

「これ、は」

 目の前に見えている姉妹の姿もそうだし、与えられている感触も、そこから湧き上がる快感も、全てが偽物の筈だ。だが、こうして晒されてしまえば、現実も同じ。
 これはさっき、姉にされたものの、更に強い追体験だ。精神側から肉体へ錯覚を植え付けているのに違いない。双はわかっていても、抗えるものでは無かった。

「い、や、やめろ、やめろおおっ、オレは、こんな、こんなのでは、あっ、オぁ゛ァ゛あっ……♥」

 腰が、震える。頭の中に強制的に再生された虚像な絶頂シークエンスで、オレは確かに本物の絶頂を迎えてしまった。ペニス刺激と、陰嚢への愛撫。両方で、《《しっかりと感じていた》》。
 本当に触られているわけでも無いというのに(触られていたって《《こんな場所》》への愛撫で)イかされるなんて、ありえねえ……。でも、確かにペニスの中をほとばしる精液の感触を感じてしまったし、この睾丸の内側に膨らんでくる達成感と幸福感。恍惚、喜悦。元々頭の中にしか存在しないそれは、こうして頭の中にだけ巻き起こされれば確かに本物と同じ。
 これを、まさかこの絶頂強制追体験を、延々と味わわされる……?

「「察しがよくて助かります。あなた程度の精神防御壁は、私達の前では役に立ちません。絶頂の快楽を、剥き出しの魂で、味わい続けるとよいでしょう」」
「ま、まて、こんな悪趣味なこと、よく」
「「では、また後日。どうぞ、《《ご無事で》》」」
「まてって、おい、待ってくれ、こんなこと……!!」

 オレの言葉が奴らに届いたのかどうか、確認する術はなかった。
 オレの視界にはまた、勃起した自分のペニスが先走りをだらだらと垂らし、それを妹が扱いている光景。その下で姉が蔑むような、それでいて吸い込まれるような闇の目線でオレを見ている光景。その、与えられている感触、空気、興奮、熱気、欲情、それに声に、五感を完全に塗り潰され、封じ込められていた。







 何が現実なのか、もうわからない。途中でもう数えるのもやめた。いや、数えることが出来なくなった。
 しばらくは与えられる情報をただの記号に落とし込み、客観的な分析と言語化をして思考に押し留めて隅に追いやって、体感覚への侵入を阻止しようとしていた。
 だがそれも大した時間は保たなかったんだ。言語化し続けると、しかし怒濤の勢いで流し込まれてくるそれはあっという間にゲシュタルト崩壊し、思考の中で意味性を留めなくなった。むしろ意味をむしり取られた記号と体感覚が、意味を仲介せずに直結している。
 思考の檻をすり抜けた快感幻影はあっという間に精神系と感覚系を冒して、もはやオレは覚姉妹によって強制反復される絶頂シークエンスに抵抗することも出来ず、1リピートごとに余りにも素直なアクメへ追いやられるようになっている。

「オ゛……♥ ああっ♥ もう、もうやめっ♥ チンポ死ぬっ……♥ イきすぎてチンポの根元壊れるっ♥ ザーメンせき止め能力ゼロになるっ♥ キンタマ触るなっ♥ やめてくれえっ♥ チンイキにタマ愛撫の気持ちよさ重ねられたらっ♥ もう、もうやめろぉぉおぉっ♥」

 射精。陰嚢の内側に湧き上がる甘い感覚。
 どぶんっ、とペニスの先にリアルな感触が吹き上がる。与えられる快感と絶頂シークエンスは偽物でも、追いやられる絶頂と射精は本物だ。下手にフィジカルなタフネスがあるせいで、オレの《《それ》》は、肉欲の求めるままに精液を製造し続ける。供給は間に合っていて、絶頂に堕とされる度に、十分なリアル射精をしてしまう。赤玉が射精てくれた方がまだマシだ。

「イッ……♥」

 言葉が出ない、吐息か嗚咽になってそれは空中に消える。自分の頭の中、口から出てくる声、そこにさえもう意味が薄らいでいた。
 この部屋にはきっと誰もいない。光だって差し込んでいないだろう。ただの真っ暗闇の密室で、だがオレは確かに覚姉妹の手と声で、無間地獄とも思える絶頂ループを繰り返していた。今や、視界にあの二人の映像が描かれるだけで、射精寸前の快感が湧き上がるようになっている。意味を捨てた覚姉妹の視覚情報の記号が、直接射精欲にアクセスしてくるようになっているからだ。

(ミスっ、た……)

 意味を捨てることで、いわゆる心頭滅却を目指したことが、逆に自分を追い込んでいる。だが、そうでもしなければもっと早くにこうなっていただろう。つまり、無駄な抵抗だったと言うことだ。
 頭の中で再び、絶頂シークエンスのラストを迎える。もう、そのシークエンスに抵抗することが出来ない。

「イく、イくイく、イっちまううぅっっっっ♥ チンポイく、止められねえ、イくの止められねえっ♥ 触るな、チンポ触るな、キンタマ触るなぁぁっ♥ これ以上オレに、チンポアクメ覚えさせないでくれえぇぇっ♥ オ゛っん゛♥ おほぉぁ゛ぁ゛っ♥ またイく、また射精るっ♥ 射精る、射精る゛♥ 射精る射精る射精る射精る射精るっっっっっっっ♥♥♥」

 繰り返される絶頂。射精。陰嚢愛撫への感応。抵抗値を失った剥き出しの精神への、容赦の無い調教の反復。

「オ゛……ア゛ぁッ゛……」

 いくら目を見開いてみても、網膜から脳へ正しい映像は送られてこない。また、姉妹がオレをイかせる映像と音声、それに感触が、始まる。もう、何度目かわからない。精神障壁ととかされて剥き出しになったそれは、順応と飽きを失っている。何度同じポルノグラフィを映し出されても、全く同じように……いや、繰り返される度により強く深く抵抗なく快感を沸き上げるようになってしまう。調教、の言葉が全く相応しい。

(もう……もう、無理だっ、耐えられるか、こんなの……)

 思考の隅で、これは、助けを求めているのか?
 でも、誰にだかなんてわからない。きっと誰に求めたところで、誰も助けることは出来ない。
 だってこれは、他の誰からもアクセスできない、オレの脳みその中でだけおこっていることだから。

(ころしてくれ)

 と、思いながら、しかし薄っぺらな精神と重厚すぎる肉欲が、再び絶頂を迎えてペニスはあえなく射精した。







「「おはようございます。お目覚めはいかがですか?」」

 繰り返し繰り返しのセルフエロ動画再生からようやく解放されて、現れたのはやはり二人のガキの面だった。

「……最高の気分だね、モーニグコールがお前等でなかったらなおよかったんだがな」
「「それは残念です。ご期待に添えればよかったのですが」」
「ああ、サービスを変えてほしいもんだね」

 冷ややかに笑ったのは姉の方だ、妹は余り表情を変えない。まるで姉の影のようにいつも一緒にくっついているが余り能動的な活動を見たことが無い。だがオレはよく知っている。この何もしてないように見える妹も、相当に厄介なのだ。姉の読心は、妹の無意識アクセスが常に一身として行動していることで、より残酷さを増す。同時に妹のそれも、姉の能力が介添えすることで残忍さを膨らませている。この姉妹は互いの能力をよくよく理解し、敵を共通のものとすることでその立ち位置を確たるものにしてきた。今|旧獄《シェンディ》を支配するこの覚の姉妹に逆らえる者はほとんどいないが、それはこの二人が常に一緒に行動し、お互いの不完全を補完し合う一つの完全として存在するからだ。こいつ等の精神干渉は肉体に及び、それを阻止することは……悔しいが極めて難しい。今オレが、こうして抵抗できずにやりたい放題にやられているの然り。
 だが、いつまでも好き勝手させて堪るものか。絶対に隙を見てこの支配の檻を抜け出して……あいつらの喉笛を噛み千切ってやる。片方を仕留められれば、両方揃っていなければ、どうにだって出来るはずだ。

「「生憎、こちらから提供できるサービスは、いずれもあなたの気に召すものでは無いかと思います」」
「だったら」
「「ですので、はやく、あなたが変わってしまう方が、楽ですよ?」」

 ちっ、と舌打ちをして睨み付けてみるが、姉妹が動じる様子は無い。剰え、ほとんど表情を変えない妹の方さえ、オレを薄く笑った。

「「思い出してください。私達からの責めで無様に射精したのを。このはしたなくずっしり溜め込んだ精子タンクから、あられも無い声と……可愛らしい顔で、臭い匂い汁を噴水したのを。それを、あなたは何回、追体験しましたか?」」
「思い出したくもねえ、なっ」
「「〝思い出しなさい〟」」

 両サイドからの|微差二重音声《バイノーラルボイス》で命令されると、砂で表面を隠していたカンバスから一気にその砂を払い除けたように、思い出したくも無いそれを無理矢理に脳内再描写させられてしまう。
 姉からねちっこく刷り込まれた、陰嚢愛撫の心地よさ。全く抵抗できずに射精快感の淵に突き落としてきた妹の手コキ。その両者が脳内で混じり合って繋がる、充足感。

「くっ! やめ、ろっ」

 最初に与えられたペニス陵辱と、その後に執拗にその記憶を焼き重ねられた追体験調教。一回や二回で瑕疵を得るような柔な精神はしていないつもりだが、その精神ひっかきを何十回何百回と強制再生されて、すり減った傷口から染み入ってくるそれを否定しきれなくなっていた。
 両サイドから、それぞれがとっておきに甘い、耳から胸の深い部分まですとんと落ちるように入ってくる、恐るべき声質が|微差二重《バイノーラル》をなして心の障壁を揺さぶり砕いて染み込んでくる。古明地の姉妹が、〝思い出せ〟と言った羞恥と快楽、それに屈辱と諦念の綯い交ぜが、股間の海綿体に集まってくる。まるで抵抗できない、この二人に「勃起しろ」と言われれば、自分でさえ制御の難しいそれが、奴らの思い通りになってしまう。

「「ふふ、大ききなりましたね。いいこ、いいこ」」
「ふざけんじゃ、ねえっ! く、ふぅうっ」

 結局勃起させられたペニスを、妹が無表情のまま撫で回す。亀頭を包み込むような動きは、しかし射精に責め殺すというよりも、挑発して徒に快感を湧き上がらせておちょくってきているだけだ。それに、姉の方は、また……陰嚢を触っている。

「そこが、好きなのかよ、変態女」
「「好きなのは、どちらでしょう、変態女さん?」」

 古明地姉妹が嗤うように囁いて、そして、オレの耳元に左右から口を寄せる。鼓膜に直接音声振動を叩き込むような、でもその振動が生温い温水のようで、強いリバーブ、それに息の多いウィスパー。声に似せた、脳は干渉だ。

(なにを……するき、だ)

 抵抗できないことは想像出来る、だが覚悟くらいは。そう思っていると、オレの陰部に触れて撫でながら耳元から送り込まれる「意味注入」。それは、古明地姉妹が、珍しく二人別の言葉を持って相手に語りかける精神掌握の前段階だった。

さあ力を抜いて
 力を抜いて

気持ちいいことを受け入れてください
 気持ちいい、そう、ここは気持ちのいいものなんです

もともと快感を得るように出来ている器官なんですから
 ここで気持ちよくなっちゃうのは、全然悪いことではないのですよ

ほら力を抜いて
 力を、抜いて?

私達の手の動きに集中してください
 私達の指の動きを意識で追いかけて

私達の指が、あなたの気持ちのいい竿をなぞります
 私達の指が、あなたの気持ちのいい亀頭を撫でるよ

気持ちがいいのは当然です
 気持ちがいいのは当たり前、恥ずかしいことじゃないの

受け入れてもいいんです
 気持ちよくなっちゃおう?

おちんちんに意識を集めてください
 おちんちんがぬるま湯につかっているような、そんな感覚を想像して

柔らかくて気持ちいいです
 気持ちいい、心地よいね

ふわふわ ゆらゆら
 ゆらゆら ふわふわ

おちんちんが気持ちいい とっても気持ちいい
 たまたまが気持ちいい とっても気持ちいいね

亀頭を撫でられた快感が全身に行き渡ります
 袋を触られた心地よさが先進に行き渡っていくよ

ゆっくり、ゆうっくり 気持ちいいのが広がっていきますよ
 ゆっくり、ゆうっくり 気持ちいいのが広がってくる

全身の感覚が鈍く、遠のいていきます
 眠くなるみたいに、遠く、遠く、ぼやけていく

その分、おちんちんに触られる感覚だけは、ずっとずっとはっきりと見えますね
 たまたまを撫でられる感じだけは、すごく、すごおく、はっきりと見える

袋の内側がじわじわ、あったかくなってきました
 おちんちんの気持ちいいのが、袋の内側に集まってきた感じ

タマだって、おちんちんの一部なんですから、気持ちよくて当たり前です
 袋の中があったかくなって、気持ちよくなっても、全然恥ずかしくないんだよ

キンタマで感じなさい
キンタマで感じなさい

仕方が無いんです、ここは、気持ちよくなってしまうものですから
 しょうが無いんだよ、だっておちんちんは気持ちのいいものだもん

温かさに包まれていたおちんちんが、じわじわ、と、熱くなっていきます
 あったかかったタマ袋が、じいん、じいんって、あっつくなっていくよ

熱くなっていく感覚に集中してください
 あっついのをちゃんと感じていてね

じわじわ、あつい
 じいんじいんって、あっつい

おちんちんの熱さが、とても気持ちいいです。溶けてしまいそう
 たまたまの熱さが、とても気持ちいいよ。溶けちゃいそう

私達の指の動きを意識してください
 私達の指の動きを忘れないで

亀頭を撫でる私達の手は、おちんちんをもっとあっつくしていきます
 タマ袋を撫でる私達の手は、袋の中をもっとあっつくしていくよ

ほら
 ほら

きもち、いいですね
 きもち、いいね

おちんちん、きもちいい
 たまたま、きもちいい

ほら
 ほおら

おちんちん全体が熱くて気持ちよくなっていきます
 どんどん、どんどん気持ちよくなっちゃう

キンタマで感じなさい
キンタマで感じなさい

 いつの間にか、目が見えていなかったのを認識した。見えていなかったわけではない、目から送られてきた視覚情報が、認識能力に到達していなかったのだ。目以外のあらゆる受容器は古明地姉妹の精神干渉に乗っ取られていた。今ふと気がついたとき、思い出したように突然なだれ込んでくる五感の情報。見えたのは、勃起して射精寸前まで膨れ上がったペニス。その下で精液を送り出す臨戦態勢で迫り上がっている睾丸。さみしく無視され続ける女性器全般。上がった体温、息、汗、乾いた口の中。いつの間にかちんぽとキンタマのことしか考えられなくなっている脳みそと、自分のちんぽから目を離せなくなっているオレ自身。

「なにをした……っ、今の声は、なんだっ!?」
「「では、思い知って貰いましょう」」

 古明地姉妹が、オレの左右から挟むように像を結び、姉が右の、妹が左の、キンタマをそれぞれ両手で包み込む。体温が高いのか、それとも、オレのキンタマがおかしくなっているのか。じわじわと内側から熱を感じる。その熱にやられるように、異様な心地よさが湧き上がってくる。

「な、何をする気、だ」

 言葉にして伝える必要など無い、そう言外に表現している。姉妹は無言の内にオレの陰嚢を包み込む手を動かし始める。熱が増し、タマ袋の表面の感触がいつもの何倍にも敏感になったような気がする。それに、内側で転がされる睾丸も、まるで目で見ているかのように鮮明な感覚を伝えてきた。その感覚は、金的な弱点への衝撃を怯えるものでは無い、不安と恐怖はじくじくと煮崩れるように失われて、その内側から顔を覗かせたのは、期待。熱が増して、感覚が研ぎ済まされて、睾丸の周囲に張り巡らされた神経は、まるで。

(こ、これっ……皮の上から、クリ、触られてる、みてえな……っ)

「「本当に、感受性が強い人。こんなにも、伝わってくれるなんて。さあ、〝キンタマで、感じなさい〟」」
「なっ……」

 まるで睾丸の中に暖かい練乳が嵩を増していくような感じ。迫り上がってくる熱感、それは心地よさと重複していて、タマの中がその熱に満たされていく内に、心地よさと幸福感も一緒に膨らんで、満たされていく。
 タマしか触られていないはずなのに、いつの間にかびくびくと竿が焦れて震えている。先走りが鈴口の上でぷっくりと泣いていた。じりじり遠赤外線で熱されるみたいに、竿全体が快感に炙られていく。その熱源は、紛れもない、陰嚢の内側。それを引き出しているのは、古明地姉妹のタマ撫でだ。

「ふうっ、ふううぅっ♥ てめっ、ら、こんなこと……♥ オレは、こんなもんでイったり、しねえぞっ」

 抵抗の言葉を投げるが、姉妹は意に介す様子さえない。ひたすら、ねっとりと、ねちっこく、内側から掘り起こすような動きで、陰嚢とその内側の睾丸を、可愛がってくる。

「っ♥ ~~~~っ♥ や、やめ……っ そんなもの、でっ……♥」

 |微差二重音声《バイノーラルボイス》の、暗示を刷り込むような左右からの精神攻撃で、ふやけて柔らかくなってしまっているオレの心が、陰嚢から湧き上がる快感をブロックできずに受け止めてしまう。

(あつい……キンタマが、あつい……きもちいいっ)

 もはや亀頭も竿も触られていない。ただただ、陰嚢だけを執拗に揉まれて撫でられている。だのに、温泉の中に浸かっているような心地よさと、チンポ扱きに夢中になっているような焦燥感、膣奥でイく時みたいに膨れ上がっていく幸福感を伴う快感が、全部一緒くたになって、睾丸の中に注がれていく。精巣が性的万能性を有して、それに相応なありとあらゆる性感を生じている。

(タマが……タマが、全部になってる♥ 熱くて、満たされて……もっと、もっと触ってほしいっ♥)
「「ええ、もっと触ってあげます。取り返しが付かなくなるくらいに」」
「ふぁぁぇ?」

 覚えたくもない異様な快感。それを刷り込んでくる、肉体にまで影響する強烈な古明地姉妹の精神干渉。その催眠じみた精神攻撃に混じって、決定的にオレを堕とす物理。

 ぎゅううううっ♥
 きゅきゅっきゅうううっ♥

「オ゛っ!? ……ほぎゅっ♥ はぁあアアあああ゛アアああ゛あああああぇえ゛えぇぇああアああ゛あ゛あっっっっっっっっっっっっ♥♥♥♥♥」

 突然襲いかかってきた強烈な、抗うことも出来ない絶頂信号の正体は、古明地姉妹がオレの睾丸を思い切り握り込んだものだった。

(なっ……なぁぁっ?! こ、こん、なああああっ♥)

 普通なら失神するほどの痛みだろうそれが、今は、失神するほどの快感。そして。

 どぶっっ♥ ぼびゅゆうっっっ♥ びゅっ、びゅるるるるっ♥

「ふぁあはえへえぁおぉぉあぁあほへあああああああああ!?♥♥♥♥」

 物理的に搾り射精される強制的な射精……まさに精液搾り。

「オ゛ぉぉ゛っ、や、やめろおぉおおおおおぉぉっ♥ こんな、こん゛に゛ゃ、のぉ゛ぉっ♥」

 びゅーーーっ、ぶぶっ、ぶしゃああっ、びゅるるるっ

 信じられない、こんな絶頂で、想像以上の射精量。しかも簡単には止まらない、止めてくれない。古明地姉妹が左右から股に手を突っ込んで陰嚢をさわさわ、もみもみ、と刺激する度に、オレのペニスの先端から精液が留まること無く噴き出していく。まるでその手から無限に快感を注ぎ込まれているようにさえ感じられる。時折攻撃的に深く強く、まるで睾丸を握り潰すつもりなんじゃ無いかという強さで刺激されると、痛みでは無く意識がぶっ飛びそうな快感とともに、まるで嘔吐物を吐き出すかのような狂った勢いで精液が噴き出す。

「ほぎっぎいぃぃい♥ いや、いやだああっ♥ キンタマ撫でられて揉まれて射精するなんて、いやだあああっ♥」

 ついに、ついに亀頭へも竿へも触られること無く、陰嚢と睾丸への刺激だけで、射精まで追いやられてしまった。古明地姉妹は、ずっとオレにコレをさせようとしていたのだ、この快感を覚え込ませて、しかもこれを与えられるのは自分たちだけだと思い知らせるつもりで……。そしてそれは思惑通りに運んでいるようだった、何故なら。

(こ、こんにゃのが……死ぬほろ、きもち……いい、なんてっ……♥)

 ペニス扱きでの絶頂と違う、ふわふわと揺れるような心地よさを抱き合わせた、|幸せな《危険な》絶頂。今までに味わったことのない、これ以外によっては決して得られないだろうとわかってしまう、強烈で絶望的な快感。女としての尊厳を踏みにじって、体に不釣り合いな男性用の快感器で、だらしないアヘ顔を晒しながら射精快感に震えている。

「「ふふ、思ったよりも《《飲み込み》》が早いですね。こんなに簡単に、ここで射精できるようになるなんて」」
「な、なってねえっ! こんなところ触られて射精できるようになんか! これは、これはちげえっ……これは」
「「強情な方ですね、でももう、あなたの精神は溶けかけている、まともな形を留められなくなりつつあります。我慢はよくありませんよ」」

 キンタマを揉む力が緩やかになり、陰嚢を優しく撫で回すような動き、垂れ下がる睾丸を下から掬い上げてまるで可愛がるかのような愛撫に変わる、ぶん殴られるみたいな強烈な快感から、抱擁する様な優しい快感に変化して全身を鳥の羽で包み込まれる浮遊感みたい、快感と言うよりも心地よさのようなものに、抱かれる。

「ふぁ、ぁぁっ……」

 どぷっ、どぷんっ♥

 更に精液を吐き出すのと同時に、今度は間抜けな声も出てしまった。それは確かに心地よくいつまでも浸っていたい官能ではあるが、激烈に襲いかかってきた射精感と比べればもったいぶるような焦燥感でもある。陰嚢の奥底で、くくっ、と迫り上がって射精を待ち構えていたキンタマにとって、それは甘い焦らしに違いなかった。

「ほぁあぁぁっ♥ んっぅぅっ っくっ、ふうっ、ふううっっ♥ な、何だよ、もう、しまいか? 随分優しいサービスになったじゃんかよ」
「「虐めるばかりでは、嫌われてしまいますから。でも、睾丸責め《《だけ》》で射精したこと、よくよく憶えてくださいね?」」
「嫌われてるって自覚、あったんだな。おどろいたぜ。 ほふううっっ♥ つ、摘まむなっ、袋の中のコリコリをつまみ上げるなっ♥ こ、こんな肉玉ふたっつを手玉に取ったくらいで、オレを好きに出来ると思うなぁぁっ♥」







 オレがなんと強がって見せようと、目の前に出来上がった、湯気さえ上げる白い水溜まりが、オレ自身に強烈な敗北感を刻みつけてくる。認めざるを得ない、この匂い立つ精液溜まりが、動かぬ証拠だった。
 ペニスはまだ屹立していて、鈴口をぱくつかせながら痙攣している。絶頂の快感が肉棒から抜けきっていない。だが、否定できない屈辱のもととなったのは、オレのペニスが言うことを聞かずに、キンタマへの愛撫と加虐のみによって絶頂に至ってしまったことだ。
 あり得ない、そう思っていても、指先一つ触られることが無かった竿は脈打っている。床に広がる粘っこい水溜まりは紛れもなくオレが吐き出したもの、それも、陰嚢を弄り触り回されただけで至った、気持ちの悪い絶頂。たゆたう意識に、鋭敏化した粘膜感度。精液をまき散らしてオレが絶頂を迎えたのは、覚姉妹の目論見通り、陰嚢マッサージによるものだった。
 胸の奥の深い部分から絞り出すように吐き出される熱い吐息は、性的絶頂に追いやられたときのもの。竿の下に無様にぶら下がっている陰嚢。この中の睾丸を握り揉まれただけで、オレは精液をまき散らしたのだ。
 古明地の姉が床に広がるオレの精液溜まりを指先に小さく掬い、その先端を妹の法へ向ける。妹は目を閉じたままでもその位置を正確に把握して、姉の差し出してきた精液付きの指を、口に含む。くちゅ、くちゅっ、と音を立ててその精液をすすっている。
 指先に付いた精液が綺麗に舐め取られた後、妹はまるでおいしいものを食べた後のように恍惚の表情を見せ、そして姉と同じように並んでオレを見た。再び響く、|微差二重音声《バイノーラルボイス》。

「「今日の授業の内容はテストに出ますからね。《《よく復習しておいてください》》」」

 一つも笑っていない表情で言う冗談を冗談だと認識するのは難しい。しかし言っていることの意味を理解して、オレは青ざめる。

「じょ、冗談じゃねえ、あんなのはもう……や、やめろ、こんなもの憶えさせるな! おい!! やめろ、やめてくれっ……ふぐぅっ、あ、ア゛ぁっっ♥」

 再び、閉じてもいない瞼がまるで閉じられたように視界が閉ざされて、再び浮かび上がってきたのは、古明地の姉妹が左右からオレのタマ袋を握っている映像と、その感触。姉妹の、耳から精神に揺さぶりをかけるような|微差二重音声《バイノーラルボイス》。
 実態じゃ無い、本物じゃ無い、ただの、立体映像と同じ、夢と同じ、想像や妄想と同じ、遮断すれば、遮断……遮断、出来ない! 最初から再び繰り広げられるのは、股の間を姉妹にまさぐられ、痛みさえ感じる筈の睾丸を愛撫され、剰えそれによってペニスもヴァギナも触れること無く絶頂まで押し上げられてしまったあの屈辱の(そして法悦の)時間だ。

「おふっ……♥ ひっぐ♥ やめろっ、そんなところ、さわるなっ♥ それはそうやって使うもんじゃ……ふぎぃいっ♥ 触るなっ、揉むなぁぁっ♥ 左右別々に、きっ、気持ちよくっ♥ コリコリだめ、うぐうぅぅっっ♥ 中のタマをコリコリするなっ♥ びりびりくるからやめっ、やめてくれっ! そんなもの憶えさせられたら、オレ、戻れなくなるっ、二度とまともなオニにもろれなくにゃっ……ぐぎいぃぃぃいっ!♥」

 古明地姉妹の左右同時タマ責めに、オレはあっさりと精液搾りされてしまった。いや、これは実際にされたわけじゃない、ただの、記憶と精神を操作した心身性追体験だ、ただの、ただの夢、思い込み……ま、また、また揉まれてっ……!

「ホぐっ♥ キンタマっ、キンタマ揉み、やめへくりぇっ♥ 気持ちよくなるっ、キンタマで気持ちよくなるの、体が、おぼえちまうっ♥ こ、古明地っ、さ、さとりさま、こいしさまっ♥ もう、降参、降参するからっ、これ、止めてく……おっごおぉぉぉ゛おぉ゛っ!! つぶれっ……睾丸潰れるっ! ゴリゴリされたら睾丸つぶっ……ちゅぶれゆ……♥ 気持ちよくなんか、気持ちよくなんか、なっ、いっ、いっ、イく、イくっ♥ 気持ちよくなんかねえからなっ! これは、ただキンタマの中のザーメン搾りだりぇひ……ひっぉぉぉっ♥ でる射精るっ、またキンタマ搾りでザーメン、ブッ射精るっっっっっ♥ キンタマ、きんたまあああああああああああっ♥」

 陰嚢愛撫と睾丸責めでの射精が、何度に及ぶことになるのか。全く想像が出来ずに、恐怖にも近い期待が、涙になって頬を伝い落ちた。







 白色の牢獄の中に、一人で放置されていた。この壁の向こうにガキ共がいるのか、それともこの中にまだ魂があるという狂言じみた言葉が本当ならそこにいるのかも知れないが、どちらにせよオレの目には見えない。

「くっ、そ」

 この中空球体が、絶望的に脱出出来ない牢獄だということは、身にしみてわかっている。この大して熱くもないだろう壁をぶち抜いてしまおうと考えただけで、胸の中が急に締め上げられて苦しくなる。こんな程度の苦痛平気だとそれを振り切ろうとすると体中が訛りのように重くなって動かなくなる。それさえ振り払って拳を突こうとすると、鳴ってもいないホワイトノイズまみれのティンパニの音のような轟音が鼓膜を介さずに頭の中を埋め尽くして頭が割れそうにいたくなり、その痛みをごまかしついでに頭突きで壁を砕こうとしたら、何も入っていない胃の中のものをそれでも吐き出そうとする強烈な嘔吐感に襲われて、ただの胃液を延々と吐き出すことになった。せめてこの胃液で壁が溶けてでもくれればいいのにそれもないようだ。
 これがこの部屋の中にぎゅうぎゅう詰めにされている無数の命の呪詛の力なのだと、これが病気や何らかの科学的なトリックを用いたものでは無く、純粋に生きものが他の生きものを貶めようとする意志の力なのだと思うと、無性に胸が苦しくなった。泣けてくるというか、業の深さに、申し訳なくなってしまう。誰に対してと言うこともない。意志を持つ者、この部屋に押し込められた哀れな命が、他人をこうして巻き込もうとする、さもしさ。
 そうした心の弱さこそ、あの姉妹の格好の餌食なのだろう。この牢獄が姉妹作なのかどうかは知らないが。

(もう、ここでの監禁は、何日だろう)

 光もなく、食事も定期的ではないこの牢獄の中で日付を知るのは困難を極める。ここに押し込められてから何時間が経ったのか、何日が経ったのか、あるいはもしかしたらもう何年も経っているかも知れない。
 出られる気配はない。古明地の姉妹がオレに向けてまるでそうするつもりがないのも事実だ。

 だが、ここで折れるわけにはいかない。

 萃香がどうなっているのかも気になる。
 あの姉妹が〝再教育〟を諦めるまで耐え続ければ、この部屋を出られるかもしれない。あるいは、あの姉妹に反感を持つ地霊高官が叛乱を起こすことだって、無いとも限らない。それに、萃香や他の|四天王《テトラ・フィーンド》が便宜を図ってくれるかも知れない。ともかく、いずれの可能性についても、自分が諦めない事が、屈しないことが、大前提になる。

(根比べ、か)


 そいつを苦手だと思ったことはない。いつだって腕力の次に信用できるのはそいつだった。今回もそうなるだろう。
 幸い女の身ながら「そう言う対象」になりにくい外見のこともあり(幸いじゃねえ!)、こうしたことは未知の体験ではあるが、経験済みのことに落とし込むことが出来れば、幾らか気は楽になったし、乗り切れる気が湧いてくる。
 あの姉妹に「根性」という言葉が備わっているとは思えないが、巧く行かなければ破壊してしまうクチかもしれない。それは幼児性という意味ではない、地獄ではそうしたものは、たとえこの先巧く行ったとしても「そこまでに巧く行かなかった理由」を不確定要素と見做してリスクとして扱うケースが少なくない。

(……その方が、マシだ)

 この先にあるのは、タマ責めでイかされそれを何度も追体験させられた後の、それを利用した拷問だろう。屈して奴らの思うままに操られる人形になるくらいなら、抵抗を諦めずにぶち殺された方が、オニとして誇りを保てる。それに、ここで屈してしまえば、萃香に面目だって立たない。
 萃香が同じ目に遭ってるとは思えないが、オレをかばい立てしたことできっと何か不利な目を被っているはずだ。もしかしたら……オレを恨んでいるだろうか。だとしたらそれを晴らすまでは絶対に折れない、あるいは屈さずに死んだと伝われば、ほんの少しでもその返答になるだろうか。

(萃香)

 彼女は、ただ、同郷の仲間というだけじゃない。同じオニとしての仲間意識だけでもない。萃香はオレの心の支えだ。彼女がいつも好い距離でオレを支えてくれたから、今のオレがある。頭が余り回らなくて無駄に障害を背負ってしまうオレを巧く誘導してくれていた。オレに頭を使うことを教えてくれたのも、萃香だ。

(萃香に報いるまでは、絶対に、あんなガキ共に屈したりするものか)

 快楽責めは、確かにオレには耐えがたい拷問だ。だが、これを利用されて、どうにか自分が操作されてしまうという気はしなかった。これが欲しかったら○○しろ、といわれて、与えられそうな何ごとかを幾ら想像してみても、全くそれに足るような事物は思いつかない。駆け引きとして成立しているように思えないのだ。これで、オレを手籠めに出来ると思っているのなら、それは奴らの甘い考えがオレにとっては好都合となる。付けいる隙はそこかも知れない。

(言いなりに出来るものならしてみろ。少なくともこんな方法じゃオレは折れねえぜ)

 俄然、自信がわいてきた。こんな牢獄(奴らは〝井戸〟といっていたが)に迄オレを引きずり込んで〝再教育〟だなんて、よっぽど本気なのに違いない。裏を返せば、奴らにも自信がないのだ。

(当然、苦痛での拷問なんて、なおのこと屈しねえがな。打たれて切られて焼かれて、残りの体が首から上だけの存在になったとしても、抵抗し抜いてみせる。……萃香、お前のためだ)







「はっ……はっ、うそ、うそだろっ……オレ、オレっ……あ、あ、あああ、ああああっ、あーーーーーーーっ、お、おんおおおおおおーーーーーーーっ♥ ふーっ、ふーーーーーっ、はあっ、はああっ♥ こんなこと、こんなこと絶対ダメなのに、止められねええっ♥ 止まってくれ、止まって、止まって……オレの手、とまってくれぇっ♥」

 どぶっ♥ どぶんっ♥ どぴゅっ♥ ぴゅっ♥ ぴゅぴゅっ♥ どばっ♥

「ほぉぉぉっ♥ んほおおおおおっ♥」

 キンタマを握る手が止まらない。

(なんでっ、なんでだよぉぉっ さっき、こんなのでオレは屈しねえって、いったばかりなのにっ)

 興味なさげに壁によしかかりながら、足先で床に何かなぞる様にしながら暇そうな態度を隠そうとしない妹。目の閉じられた顔だけが時折思い出したようにオレの股間に向けられて、まるで呆れるような溜息を吐いて再び目を逸らす。姉の方ときたら、その辺に浮かんでゆったり寛ぐような姿勢で本を読んでいる。同じように、時折チラリと視線がこちらに向き、顔を顰めるようにしてから目を逸らす。
 二人ともオレを騒音源か何かのように扱っているような、そんな感じだ。
 その中でも、二人がアトランダムなタイミングでチラリと向けてくる視線、これが偶然に重なったとき、恐ろしいそれは襲ってくる。
 妹が顔を上げた、姉が本から目を離し、二人が同時にこちらを見た。

「ふっ! ふぐぅぅううぅっ♥ ほっ、み、見るなっ♥ おまえひゃち、みるにゃぁああっ♥」

 びくんっ びくっ、びくびくっ♥
 どびゅうぅ♥ びゅるるっ♥ ごぶっっ♥ ぶぷっ♥ びゅうぅうっ♥

「ふご、ふうぅぅっ♥ キンタマっ♥ キンタマがあぁぁっ♥」

 陰嚢の内側で、睾丸がうねるように勝手に動き回る。疼く、という表現以外に言葉に表せない。
 こんなことでは屈しない、と心に決めた後、姉妹が再びこの部屋に現れてから掻痒のような、我慢ならない接触欲求が襲ってくるようになった。二人はそのときからずっとあの様子で口も利かずにちらちらと偶にこちらを意識する程度だ。だが、この無性に襲ってくるこの未知の感覚は二人が持ち込んだ者なのは明らかだった。

(握るのとまらねえっ♥ お稲荷さん握るの、止めらんねえっ♥)

 どぶんっっっっっ♥

「ふぎぃぃっ♥」

 引っ掻きたいとか内側にある異物感を掻き毟りたいというのとは違って、内側からむずむずと脈打つような圧力と熱を感じる。触れてれくれ、触ってくれ、弄ってくれと、睾丸が欲求をまき散らしている。その欲求に答えて刺激を送れば、もらえるのはあの浮遊感を伴う幸福な快感だということも、頭の奥がなんとなく理解してしまっていた。
 片方の視線がチラリとオレの股間を見るとき、その疼きは凄まじく湧き上がる。触れてもいないのに絶頂寸前のような、焦げ付く甘さのような、不安感と期待の綯い交ぜのような、射精に向かって一直線に走り抜けたいあの感覚が、急に高まる。視線がそれるとそれが収まる、を繰り返していた。視線をよこされて、また逸らされるのを反復する度に、徐々に水位が上がるように、いや下がるように、我慢の限度がすり減っていくのが、わかった。
 それに何とか耐え続けていたのだが、二人の視線が重なったとき、突然頭の中で何かが、切れた。

「キンタマっ……キンタマ握るのっ、キモチィぃぃっ♥」

 睾丸がまき散らしまくっていた疼きに耐えられずに自らそれに触れてしまった。

(萃香、ごめん、萃香っ、オレ、オレ簡単に……決心したのに簡単に、自分でっ……♥)

 気温の変化や体温の変化があったときににゅるにゅるとゆっくりと不随意にゆっくりと動く睾丸が、まるで絶頂寸前の陰茎のビクビク痙攣のように、歓喜にうねり動くのがわかった。陰嚢の上から少し指先で触れただけだというのに。

「ふーっ ふーっ♥ だめ、だめなのに……こんなの、自分で触ったら、おしまいなのにっ……♥」

 まるでシコり切って張り詰めたクリトリスに触れたときのように、電流とも閃光とも灼熱とも、あるいは飛翔感や充足感とってもいい、一つの言葉では言い表せない快感が、爆ぜた。
 触ってしまった。自ら、陰嚢、睾丸に、快感を求めて触れてしまった。一度でも触れてそれを知ってしまえば、そこからはただの崩壊だ。

「んおおオオオオオオ゛オオオ゛オ゛オっ!? これっ、コレぇぇえええっ!?♥」

 指で軽く触れるだけで済んだのはものの数秒だった、すぐに陰嚢の上から睾丸を握って圧迫することがより深く大きな快感を得られることに気付いてしまい、それからはひたすらキンタマを握り続けている。キンタマから手を離すことが出来ない。

(くそおっ……くそぉぉぉっ、こんなつもりじゃ、なかったのに! オレが、キンタマなんか、自分で触って、き、気持ちよくなんかっ……)

「み、みるなぁぁっ♥」

 姉の目が、オレを見る。見られている股間、陰嚢がびりびりと低周波刺激受けるみたいに響いて、突然キンタマに出来上がった快感神経をもろに撫で回してくる。

「オ゛っ♥ オぐっっぅ♥」

 その響く快感導入を受けて、実際にオレのキンタマに圧迫快感を与えているのは他でもないオレの手だ。オレ自身だ。これは、古明地に視姦されながらのオナニーだった。生じる快感とその欲求が、羞恥と屈辱、それに倫理性を、あっさりと上回ってしまった。
 だが。気持ちいいからと、射精のために竿と亀頭を触ろうとすると、触れようとすると体が止まって動かなくなるのんだ。

(竿オナが、無意識に、禁止されている……ッ!)

 だが、金玉に触れることは全く障害されない、むしろそうしろそうしろと、体中が囁きかけてくる。抵抗、出来ない。ひたすら、バカみたいにキンタマを揉み触りながら、快感の沼地に自ら沈んでいく。
 ただ視線を向けられているだけなのに、睾丸に生じる疼きは、浅ましく変態的な、睾丸オナニーをどうしようもなく誘ってくる。その誘いを断ることなんか出来ず、オレはただ、オレの陰嚢をじったりと見つめる古明地さとりの視線に、身を焼かれるような快感を与えられながら、夢中になって陰嚢と、睾丸を揉み回してしまう。

(きもちいいっ♥ キンタマ気持ちよくて、とめらんねえぇっ♥)

 ぎゅっ♥ ぎゅうっ♥ きゅっきゅっきゅっ♥

 姉が溜息を吐き、まるで馬鹿にするように目を離した後も、高まった快感は余韻を引いて、その名残を惜しむようにキンタマ弄りを続けてしまう。

(そんな♥ 目で♥ みたってよおっ♥ だってこれ、お前がくれたモンだろぉっ♥)

 もう一度視線を求めるように、オレの方から懇願するような視線を送ってしまうが、姉からの反応はない。興味なさげに視線を逸らされたのに、構って欲しそうな目線を送りながらキンタマを揉み続けるアホみたいな絵面、でもその浅ましさがオレのキンタマオナニーを止めさせてくれる気配はこれっぽっちもなかった。
 揉み潰せば揉みしだくほど、触れてもいない竿にも快感が走り、前立腺付近にも熱が溜まっていく。先走りが漏れて、いつでも射精できますと、全く触れていないチンポが涎を垂らしている。
 姉の視線を媚びるようにキンタマオナニーしまくっていると、ふと妹の顔が、こちらに向く。目を閉じたままで表情がわかりにくいが、その閉じられた瞼の下の目が、オレの陰嚢を見ている気がした。

「はぁぁぁあああああああっ♥ んおっ♥ おおぉおっ♥ み、みるなあああっ♥ みるなあぁぁああっん♥ キンタマ、オレのキンタマオナニー、みるんじゃねえっ♥」

 もみもみもみもみもみっ♥
 きゅんっ、きゅんきゅんっ♥

 目は閉じられたままだが、妹の眉は何かを悲しむように垂れ、だが口元は薄く笑っている。わかりにくいけれどアレは……

(あ、憐れまれているっ、こんな、キンタマオナニーに夢中になっているオレを見て、蔑んで憐れんでるっ♥ ちくしょう、おまえらの、これはお前等の仕業だろうっ!?♥ そんな、憐れむなんて、ひどすぎるだろぉっ♥)

「ふーーっ♥ ふーーーっ♥ ふぐっ、ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、ああっ……♥」

 キンタマ揉みを止められない無様な様子を見られて憐れまれるなんて、屈辱以外の何でもない。屈辱で、羞恥、だが、それらが全て快感にリダイレクトされてしまう。快感は更にキンタマを揉む力を呼び起こして、より苛烈に、自分のキンタマを虐めてしまう。
 袋ごと掌で包むように握ったり、指数本で睾丸を追いかけ回して摘まみ上げたり、掌の上に乗せた睾丸を上から指で平たく圧してみたり。とにかく、睾丸に圧迫をかけるのが、凄まじい快感を生じる。陰嚢に感じていた快感の大半が、睾丸への圧迫感からだったということに、気付いてしまった。
 それに気付けば、より効率的に快感を得るために、睾丸圧迫をひたすら繰り返すようになってしまう。

「キンタマっ♥ キンタマ圧すの、きもち、いぃぃいっっ♥ っ!♥ ンぐっ♥ ふぐぅううっ♥」

 睾丸を圧迫するときのあの得も言われぬ苦痛は、それはそれで残っている。強く圧迫すると腹の下が強い筋で引っ張られて捩れるような痛みと違和感を混ぜ合わせて腹の下にドスンと打ち込まれたような苦痛は、ある。だがその上から覆い被さるように、それを塗りつぶすような、快感が怒濤になって押し寄せてくるのだ。
 そしてそれは、射精という形で頻繁に小カタストロフィを迎える。

「んヲォぉおおっ♥ 出る、また、また射精るっ♥ タマオナで、射精っ♥」

 水位を増して決壊しようとする射精欲、よくというよりはそれは反応だ、キンタマ刺激に対するただの、結果。願望は刺激側に剥いていて、射精とはただの肉体側の反応の結果でしかない。その結果が欲しくて、オレは、ただただ、キンタマを揉み続ける。
 女の方も汁をだらだらと垂らして割れ目はひくついていたが、そんなのは今は全然どうでもよくなっていた。キンタマさえあれば、キンタマ刺激さえあれば、必要な欲求、それと結果にコミットできると思い込まされていたから。
 妹の憐憫のこもった顔つきでキンタマオナニーが加速しているところに、不意に重ねられる、姉の視線。

「んオ゛オ゛オ゛っ♥ おまえっ、今、っ、今見るのかよぉっ♥ 殺す気かよっ、オレのキンタマ、揉み潰させる気かよぉおっ♥ おおおおっ♥ 止まんねえっ、タマ揉み気持ちいいのとまんねえぇぇっ♥ ふおぉおっ♥ んほおおおおぉおっ♥ 射精る♥ キンタマ押し潰しながら射精る♥ 射精る♥ でるぅぅううううっっっっっ♥」

 どっぴゅううううっっ♥ ぶびゅううううううっ♥ どぶっ♥ どぶぶっ♥ どびゅぅぅうっ♥

「頃合いですね」

 姉が本をパタンと閉じて着地すると、妹は壁から立ち戻り、二人がいつも通りに寄り添うように立つ。
 だがオレには、二人が一体何を言っているのか、何をしようとしているのか、全く興味がない。それどころじゃない、だって、こんな♥ こんな気持ちいいこと、イってる最中に、止めろなんて無理だろぉっ♥
 姉妹が寄り添って二人で手を合わせて、こちらを見ている。妹の方も目を開いて、6つの目で、オレを、真っ直ぐに見ている。

「「星熊。《《それ》》を、心に刻みなさい。それがあなたの、新たな|心傷《トラウマ》です。私達がそうしろとしないかぎり、あなたのその傷は決して消えない、癒えない、忘れない。さあ、刻みなさい。次に射精したとき、あなたのそれは、完全に心に刻まれます。」」

 何か恐ろしいことを言っている気がするが、全然止まれない。射精したい、キンタマで射精♥ 止まるはずない♥

(タマ搾り……タマ搾りっ♥ キンタマ、キンタマ搾り♥ タマ搾りタマ搾りタマ搾りタマ搾りっっ♥♥♥♥)

 ぎゅっっ♥ ぎゅっぎゅっ♥ ぎゅむぎゅむっっっっっっ♥

「ほぎゅぅぅう♥ サオと違って、射精して、イってるときも、ずっと触れるっ♥ 射精しながら、ずっとオナれちまうっ♥ とまんねえっ♥ こんなの止まるわけねえだろぉっ♥ 射精っ♥ キンタマ射精♥ キンタマ♥ キンタマ好きになっちまったじゃねえか♥ お前等のせいで、オレ、キンタマ大好きのタマオナジャンキーになっちまったじゃねえかぁぁっ♥ いいっ♥ きもちいいいっ♥ キンタマ搾り♥ 精液キンタマ直搾り、気持ちいいのおぼえちまったぁぁっ♥ んほおぉおおぉっ♥ 射精る、また射精るぅぅっ♥」

 もみっ♥ きゅうっ、きゅきゅっ、ぎゅううううつ♥
 びゅっっ♥ びゅるうるるっ♥ どぶっ♥ どぶどぶっ♥ どびゅぅっ♥

 下品に股を開いて勃起したペニスアクメ痙攣でぶるんぶるん振り回しながら、キンタマを揉む手を止められな句鳴っていた。
 姉妹がオレのことを見ているその視線が興奮をかき立てて、キンタマ刺激は簡単にオレを絶頂させる。射精しても難なく触り続けられてしまい、サオ絶頂よりもきゅんきゅんふわふわと長引く特有の心地よい絶頂感。一体どれくらいそうして自分で精液搾りを続けたのかわからない。まるで眠りに落ちるみたいに意識を失った。
 その寝落ちの寸前まで自分のキンタマを触り続けていたこととその心地よい喪神だけは、きっと、目が覚めた後も覚えているだろう。
 トラウマ? それがなんだっていうんだ。こんな気持ちいいこと、忘れたいと思う訳がない♥







「「寝ている場合ではありませんよ」」

 その言葉は耳を通過せず、直接脳に突き刺さってきた。聞き逃すということも出来ないし、失神していて取り漏らすことさえ許されない。
 オレは、惨めさと疲労で何も言葉を発することが出来ないまま、古明地姉妹の姿を認める。いつも通り左右対称に並び、姉は目を開いてオレを柔らかく射貫くような視線を向けている。妹は目を閉じたままこちらを見つめていた。
 二人とも、両手に黒く光をよく反射する素材で出来た長手袋を付けている。それに、ヒールの高いこちらも黒光りする靴。そうした装具をオレが知らない訳ではない。

「そういう趣味もあるのかよ」
「「いかような趣味でも、星熊、あなたのために」」
「オレの趣味じゃねえ」
「「新しい趣味を開拓するのも、人生の潤いの一つです。そう思いませんか」」

 思わねえよ、と答える気にもならなかった。姉妹はつかつかとその底の堅い靴音を鳴らしてオレに近づいてくる。殴ってやりたい、余りにも無防備に見えるその面を。こんな奴ら、一撃入れられれば消し飛ばせる自信があった。だが無防備に見えるのはまさにその見た目に限ったこと。奴らの最大の防御は既に行われている、つまり攻撃への禁忌形成、無意識の抑圧、精神的な強暗示は、オレから奴らへのあらゆる攻撃を、オレ側に防止《《させている》》。

「もうすっかり」
 「ココの虜だね」

 姉妹が左右別々に言葉を話す。

「自分で致すのは、いかがでしたか?」
 「人にして貰うのと、どっちが好きだった?」

 二人はバラバラに一つのセンテンスを話しながら、オレの股ぐらを押し広げてその間に割いってくる。冷たく黒光りするラテックス長手袋の吸い付くような感触が太股の内側に貼り付いてくる。

 「人にされる方を、教えたげるね」
「自慰であれだけ激しく乱れたのです、こういうことだって興味、おありでしょう?」

 姉が、オレの陰部に温感ローションを注ぐ。ペニスの先端から根元を追うように垂らしながら、それも大量に。わざとそんな高さから股間全体を濡らす様に垂らしているが、濡らしたい場所がどこなのか、オレには想像が付いている。
 邪悪に笑う姉、無表情に笑う妹。アシンメトリな様子に、左右対称の動きで互いのラテックス製のスキニーなグローブを、ローションで濡らしていく。元々光沢の強い素材に、ローションがまぶされるとそれは艶めかしささえ見せる強く乱れた反射で輝いた。

「興味、ねえ、なっ」

 オレが否定しようとも、この姉妹には何の意味だってない。したいようにし、させたいようにさせるのだ。
 ねっとりとローションで濡れたラテックスのぴっちり手袋で、姉が右の、妹が左の、タマを触り始める。

 にゅるっ、ぬるぬるっ♥ ぎゅうっ♥ にゅるっ♥ くにくにくにくに♥
 きゅっ、きゅっきゅっ♥ にゅううううっ♥ きゅきゅっ♥ ぬるんっ♥ ぎゅうううっ♥

「う゛っあ、やめっ……」

 ぎゅむっ♥
 きゅううううっ♥

「くふぅぅっっん♥ くそっ、お、ふ、二人がかり、かよっっ♥ 左右のタマ、二人がかりでっ♥ おっオぉぉっほおっぉおっ♥ やめろォっ、ちくしょうっ♥ 卑怯ものぉっ♥ あぎっ、キンタマっ♥ キンタマぎゅって、するのやめっ♥ ぐぎ、あ゛あ゛ア゛っっッ♥」

 ぬらぬらと照り返す艶めかしい光沢、それに相応しい吸い付き滑るような感触。オレのキンタマが快感神経の凝集に成り果てているのを知っていて、容赦なく潰しにかかってくる、しかも、左右とも姉妹総出で。

(キンタマ、覚えちまってるのに♥ キンタマ搾りでイケること、体がもう覚えちまってるのに、そんなことされたらっ♥)

 ぶしゅっ♥ びゆっ、びゅううううっ♥

「はぎゅぅっ♥」

 少し握られただけで、あっという間に射精させられてしまった。温感ローションのヌルヌルした快感、心地よく暖かくて、睾丸奥に生じる熱い性感の呼び水になってしまう。その中で姉妹の20本の指が、キンタマを蹂躙し続ける。時に優しく包み込むように、時に押し潰すくらいに。

「オ゛ッ♥ ほォぉぉぉ゛ぉっ♥ はっ、はあっ♥ キンタマ、っ、キンタマぁぁぁぁ♥」

 にゅるっ♥ くりっ、くりっくりっ♥

「はヒっっ♥ タマくりくりおすの……♥」

 ぎゅむっ、ぎゅむうぅぅうっ♥

「ぎゃひっぃぃぃっ♥ おっご♥ ツブすのぉっ♥ キンタマつぶすのぉっ♥ だめだぁぁっ♥」

 どぴゅっ♥

「ほっぐぅぅうっ♥ ザーメン押し出されるっ♥ キンタマの中から直接、ザーメン絞られるっっ♥ ローションまみれでヌルヌルテカテカのキンタマ♥ 長手袋のぬめぬめ愛撫で、キンタマ絞りっ♥ 耐えられないっ♥ 調教済みのキンタマじゃ、ザーメン止めらんねえっ♥ クるっ、でけえの、クるっ♥ やめろおっ♥ キンタマやめろぉおっ♥ キンタマサイドアタック、逃げ場なさ過ぎて無理っ♥ 無理無理無理無理また射精る、射精る射精る射精る射精る射精るうっぅぅうっ♥」

 どっっぷん♥ びゅうぅっ、びゅるるるる♥ びゅううううっ♥

 「あはっ♥ すごいすごいっ♥ 私の手、そんなによかった?」
「私の愛撫でそんなにブチまけて、ふふ……可愛いですね」

 ぎゅっ、ぎゅっぎゅううううううううっ!♥
 こりっ♥ くりくりっ、こりっ♥ ぐりぐりぐりぐりっ、ぐううううっ♥

「ぐげぎゃぁあぁっ♥ キンタマ潰れるっ♥ キンタマ捩れて、くるひっっ、くるひいのにっ、ぎもぢい゛ぃい゛っ♥ おっご♥ ぎぁぇぉ゛ぉぉ゛っ、ん゛ぐげっ♥ ごんに゛ゃなの゛っ♥ ごんにゃのれ゛、オレっっ、オレのキンタマ♥ 悦んぢまっでる゛ぅっ♥ やめてぐれ、っ、もお、もお、やめっ……、イくイく、イくイくイく射精るイくイく射精る射精る射精るまたイくまたイくキンタマイくせーし射精る、でるぅっ♥」

 ぴた。

「はへっ……お、ひっ……」

 ぴくん、ぴくん♥

「や、やめちまうの、かよぉっ」

 きゅんっ♥ きゅんきゅんっ♥

 「だって星熊さんが、」
「止めろとおっしゃるので。」
 「射精したくないのかなあって」
「このまま、あなたのキンタマを押し潰し続ければきっと」
 「たぁくさんでるよ♥ どぷどぷぅ~~っ♥ って♥」
「でも、射精したくないというのなら」
 「させないままでも愉しませてあげられるしぃ」
「それを星熊がお好みでしたら」

 ぎゅっ、ぎゅううううううっ!!!

「ほひぃっ♥ あっ、あ゛っ♥ で、射精るっ、イくっ♥」

 ぴた。

「おおおおおぉぉっ……ん! な、なんで、止め……っ、イケそう、だったのによおおっ♥ ここまで、もうザー汁ここまで上がってきてんのに、吹き出し直前のところまで来てんのに、チン奥ちりちりして、辛いっ、痛いっ、射精したいっ♥」

 きゅんっ♥ きゅんっ♥
 うずっ、うずっうずぅうっ♥

 「射精したいならぁ」
「ちゃんと、おねだりしてください?」

 きゅううっ♥
 ぎゅううっ♥

「ひぎぃっ♥ でにゃい、キンタマ圧されてるのに、ザーメン射精ないっ♥ ちんぽ爆発するっ♥ こんなのチンポ壊れるっ、キンタマばかになるっ♥」

 ぎゅううっ♥
 きゅううっ♥

「んおぉぉおぉぉぉっ♥ 射精させてっ、射精させてくださいっ♥ ザーメン♥ キンタマにたぷたぷ溜まってるクサレザーメン♥ キンタマから射精たがってやがるからっ♥ 躾のなってない、育ちの悪いザーメン、欲深キンタマ、お慈悲下さいっ♥ トドメっ♥ 射精したい、射精したい射精したい射精したい射精したい射精したいっ♥ キンタマにトドメをお願いしますっ♥ キンタマ搾りアクメおねがいしましゅうぅうっ♥」

「まあ、いいでしょう」
 「そのかわり、今日は、イきっぱなしの刑だよー♥」
「ふ、ふぇぁぁ?」
「イくのを我慢するか、それとも、これから嫌だといってもイき続けるか。」
 「どちらがいいか、選ばせてあげる。……イきたい?」
「イきたくないと言ってもイくの止めてあげないのと、どっちがいいですか?」

 きゅっ♥ ぴた。 きゅううううっ♥ ぴた。
 ぎゅむぎゅむっ♥ ぴた。 もにもにもにっ♥ ぴた。

「ふーーーーーっ♥ ふーーーーーーーーーっ♥ ふっ♥ ふーーーーーーーーーーっ♥ そんなの、そんなの決まってる♥ 選べる分けねえだろっ♥ イかせてくれ、イかせてくださいっ♥ 射精させてくださいっ♥ このまま永遠にイき続けるのでもいいっ♥ 頭がぶっ壊れるまでアクメし続けるのでも構わないっ♥ そんな先のことどうでもいい、いま射精したい、とにかく今射精したいんだぁぁっ♥」
「星熊の精神力では」
 「イき狂っちゃうかもよぉ?」
「かまわねえっ!♥ イき狂って壊れるなら、かまわねええっ♥ イかせてくれっ♥ 射精っ♥ キンタマで射精させてくれええっ♥」

 まともな思考など出来ない、ただ、キンタマの奥で疼きまくってる性欲と、射精欲求だけ。脳みその中までカウパーでたぷんたぷんに満たされてるみたい。完全に、莫迦になっている。射精のことしか頭にない、射精狂い。キンタマ狂い。
 オレの行き詰まった答えを聞いて、姉妹とも満足そうな表情。そして。

「「承りました。では、狂うまでイってください。」」

 姉妹はそう言って、オレの股間から手を離して立ち上がった。







 がすっ、げしっ

「ぐっ、なに、す……」

 姉妹の足が、オレの頭を蹴り飛ばして、上半身を突き飛ばした。
 痛みはほとんどない、フィジカルの大して強くない姉妹と、体力バカみたいなオレに、物理応酬など意味がない。ただ、姉妹の蹴りは単純にオレの上半身を倒し、オレを俯せにした。
 俯せに倒れた股間から、姉妹のどちらかの手が陰茎に触る。俯せて潰れた格好のちんぽとキンタマ、その両方が無遠慮にずるずると体の下から引きずり出される。裏筋、そして亀頭が地面に擦れて火花が散るような快感が爆ぜる。

「っっん! ふぁぁへぁあぁぁあああああっっ♥」

 とぷんっ♥ とぴゅぅぅっ♥ どっぴゅうぅっ♥

 そのつもりがなかったとしても、陰茎への刺激はオレが涎を垂らして待ち望み、そしてやっとやっと与えられたものだ。指先が表面をなぞるだけでも、ちんぽの付け根のダムが崩れて精液を漏らしてしまった。でも、この切なすぎる射精快感……余韻無くて終わるの早過ぎねえか? だって、キンタマ絶頂なら、射精してからしばらくふわふわしてて、ケツ穴の奥にじゅわぁぁって気持ちいいのがずっと残……って、オレ、何、考えて……やっぱり、もう♥
 姉か妹か、あるいはその両方のラテックス手袋をべっとりと汚した精液が、汚らしいものをこそぐみたいにオレの尻タブに擦り付けられている。
 射精で感覚が朦朧とし、だけど自分がもうキンタマアクメ中毒に堕ち切っているのを思い知っている間に、オレの陰茎は開かれた股の間から引き摺り出され、頭とは逆の方向に伸びて潰れている。陰嚢もそれに引っ張られるように股の間でだらしなく床に垂れ広がっていた。ガニ股の中心で股の間の方向へチン先を向けたまま射精して、白い飛沫をガニ股俯せのケツ方向にぶち撒き、自分の精液を自分の尻になすられて、快感と惨めさの両方で身動きがとれない。

(キンタマが、ちんぽよりキンタマが、よくなっちまってる……♥ これで、マンコ使用禁止解除してもらえなかったら、オレ、女としても、オトコとしてもアウトじゃねえかよぉっっ♥)

 惨めすぎる、だが、ゾクゾクと股間から背筋へ駆け抜ける甘い疼き電流。それでもいいと、それがいいと思っちまってるオレが、むくむくと存在感を増していた。
 俯せたオレの、脱力して上がらず床にべったりへばりつくだらしない頭、興奮に蒸し上げられて絶頂に震える背中、自分の精液を擦られて濡れるケツ、そして勃起しながら自重で股下方向に伸びたペニスと、期待にきゅんきゅん蠢く調教済みキンタマを、姉妹は立ったままきっと腕を組み汚物でも見下すような蔑む視線で眺め、剰え嗤うように口元を歪めているだろう。俯せたここからでは判らないが、きっと、そうだ。
 そう思うと、射精したばかりのペニスに、再び媚電流が流れた。
 姉妹が背中から、尚もオレを追い詰める声を浴びせかけてくる、これ以上、オレをどうおかしくしようって言うんだ。

「では、いきますよ」
 「イかせ続けてってゆったの、星熊さんだからねえ?」
「あ、あんだってん……」

 一瞬、1秒にも満たない空白が空いた後、それは残酷に襲いかかってきた。

「ひぎっ!?」

 横たわったままのオレの股の間でノビている陰嚢、その中で期待を膨らませて刺激に腫れ上がる睾丸に、再び圧力が加わる。だが、さっきまでのとは、まるで違う、これは。

(ふ、踏まれ……)

 ぐにゅっ
 ぎりっ

「ぎゃああああぁぁぁああっっ!」

 姉妹の、黒い艶がテラ光りする靴。ヒールが鋭くてソールも堅いピンヒール。その本底が、オレのタマを押し潰している。手で握られるのとはまるで違う、圧倒的で絶望的な圧迫感。

「や゛、や゛めろぉぉ゛っっっっ!」

 一気に全力をかけたりはしてきていない、少しずつ、少しずつ踏み込み沈めるように、左右のキンタマとも、二人の黒くテカる靴が、押し潰してきていた。
 こうなっては身動きもとれない、全身が針で刺し留められたみたいに、その小さな肉袋はオレの体を完全に封殺している。睾丸が踏みつぶされる激痛、そこから延びて臓腑の底につながる管を遡ってくる、原が捩れるほどの苦痛。冷や汗が吹き出して視界が白く窄まる。

「ぐげぁ、あっぁぁっっっっ……」

 失神しそうな激痛と吐き気さえ誘引する苦悶。それが、腹の中で暴れ回って、オレは股間を床に磔にされる形のまま、揉んどり打って、襲いかかる激痛に悲鳴を上げる。だが、その喉の奥を通り過ぎた腹の底、捩れるような苦痛にさいなまれていたはずの体の奥深くに生まれていたのは、紛れもない、快感の火花だった。

「ぎっ、ぐげえぇぇえっ♥ ふ、踏むなっ♥ オレの大切なタマを、踏んで遊ぶなぁぁっ♥ オ゛ッん゛いてえっ、痛えハズなのに、なんでっ、こんな扱いされて、オレのキンタマ、悦んじまって……ぎゃあああああああっ♥♥」

 ぶしゃっ♥ ぶしゅっ♥

 キンタマを踏み潰される度に、オレのぺニスは粘る白濁を思い切り噴き出していた、いや、噴き出させられていた。この射精の勢いは、それ用の筋力によるものじゃない。まるで足踏みポンプみたいに、キンタマを直接踏み潰されて、その中の精液は純粋な圧迫内圧で噴き出していた。その証拠に、噴き出す精液の勢いが違う。まるで出来損ない、噴出口の壊れたスプレーみたいに、飛ばすと言うよりも吹き散らす感じ。ガニ股の開いた方向に向かって、まるで精液スプレーを吹いているみたい。射精じゃなく、精液を捻り搾り取られる、劇感。こん、なのっ♥

「や゛め゛っ♥ キンタマ壊れるっ♥ そんな風に踏んだら、踏んだらっ♥」
「なにをおっしゃってるんですか」
 「もうりっぱに、こわれてるよう?」
「睾丸を踏まれて射精なんて」
 「普通は出来ないでっしょー」

 ぐぐぐぐぐっ
 ぎりぎりぎりぎりっ

「ぎゃあああああああああぁあぁっ♥ 潰れるっ、マジでオレのキンタマっ♥ キンタマ潰れてっ……」
「しかし凄い生産速度ですね……。そんなに射精が気持ちいいのですか? 射精する傍から生命力変換で増産してまで、キンタマ絶頂を愉しむなんて」
 「コレなら、牝オークの孕ませ役に使えるかも♥ 最近だーれもしないし」
「確かに、臭いし他種族の牝の良さを知った牡オークは、わざわざ見にくい同種の牝と交尾したがりませんからね」
 「星熊さんの《《コレ》》なら、強制的に射精させられるから、幾らでも種付けに使えるし」
「な゛なに、いってやが……ふぎいいいぃぃいっ!♥ オ゛っ、おごぉおぉオぉおオ゛おオおお゛オ゛ぉぉっッ!!♥♥♥」

 びゅーーーーっ♥ ぶしゅうううううっ♥ ぶしゅっ、ぶしゅうううっ♥

 姉妹は徐々に徐々に、オレの陰嚢を踏み潰す力を強くして、かける体重を多くしていく。黒光りするピンヒールの本底は、興奮でぷりぷりに膨れた陰嚢を強く押し潰して、その奥でこりこり弾力を保つ睾丸のそのしこりさえ殺そうとする圧力へ変わっていく。
 睾丸の内側で渦巻く作りかけの精液が、行き場を失って内側で暴れ回っている。まだ未熟で巣立ちには早いというのに、古明地の姉妹に早く出てこいと押し潰されていく。

 「このままいーっぱいいかせたげるね」
「そうして欲しいとおっしゃったのは、星熊自身ですから」

 ぎりぎりぎりぎりっっっっっっ
 ぐうううううぅうつう

「おごおおっぉおおっ♥ 痛い、痛い、痛い痛い痛いいいいいいいいっ♥ だめだっ、本気で、本気でそれ、だめだっ♥ 痛すぎる苦しすぎる辛すぎる、惨めすぎるっ♥ オレが、っ♥ |四天王《テトラ・フィーンド》で由緒あるオニのこのオレがっ♥ キンタマ踏まれてイき狂ってるなんてっ♥ ふごぉぉおぉっ♥ おっ♥ オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛っっっ゛っっッ゛ッ♥」

 ぶばっ!♥ ぶしゅっ♥ ぶしゅううう♥ びしゅっ♥ ぶっしゃあああっ♥

「私達はただ、こうして踏み潰しているだけですから」
 「何時間でも、何日でも、してあげられるよ?」
「ひっ……や、やめ……♥」

 ぎゅむっ、ぎりぎりっ、ぎゅううっ♥
 ずむっ、ずむっ♥ ごりゅごりゅっ♥

 二人の足が、不意にキンタマから持ち上げられた。まるで水を吸いながら膨らむ海綿のように、オレのキンタマはあっという間に元のサイズに、いや元よりも踏み潰された反動のようにより肥大化していく。ぷっくり膨らんだ陰嚢は、ゴム鞠のように弾力を持っていて、内側に秘めた絶頂器官である睾丸を守っているかのよう。だがその晴れて膨らみ上がった陰嚢自体が、既に快楽神経の巣窟になっている。サオの両サイドでぽよぽよ膨らむ陰嚢は、もはや片方ずつで握りこぶしの倍程度の大きさになっている。この内側が全て鋭敏化した快感末梢だなんて、考えただけで。

「ふーっ♥ ふーーーーーーっ♥ オぐっ♥」
「懲りない人」
 「かわいいから、好いけど」

 古明地姉妹は一旦上げた足を、休憩で膨れ直した陰嚢の上に、再び突き落とした。今度は、踵だ。肥大化陰嚢の上に、鋭く尖ったピンヒールの踵を、踏み込む。器用に捉えたキンタマを、テカった黒ピンヒールの踵は狙い撃つように踏みつける鋭い感覚が、袋の内側で快楽待ち受け状態のキンタマに突き刺さる。

「お……ア゛っっ、げはっ……♥ すげっ……♥ それ、 それ、だめ、だあっ♥ キンタマに刺さるっ♥ キンタマの中で、赤ちゃん精子まで、悦んじまうっ♥♥ オレのキンタマ、すげえっ♥ 踏み潰されるのすげええっ♥」

 ぶばっ!♥ ぶしゅっ♥ どぷどぷっっっっ♥

 射精を強制され続けて、空っぽになってもなお無意識のうちに造精してしまう。それも、妖力と鬼力を削ってまで、まるで本能的に。体が根底から睾丸責めの快楽に堕ちきって、それに抗えなくなっている証拠だ。今なら死ぬまで、生命力の全てがチキるまで、精子に変換しろと言われても、拒否することなくそうしてしまうことだろう。

(ぎもぢい゛っ……♥ キンタマっ♥ もうだめ、キンタマのことしか考えられない……♥ キンタマっ、キンタマ最高っ♥)

「どうですか、星熊?」
 「キンタマイきできるようになって嬉しーい?」

 妹がラバー手袋でオレの前髪を掴み、オレを仰け反らせるようにして俺の顔を見る。

 「うっわ……」
「酷い顔ですね」
 「幸せそう♥」

 思い切り反り返らされて、息が出来ない。だが、古明地姉妹の顔が視界に入ってきたことが、どうしようもない幸福感を呼び起こす。あ、オレ、もうダメだ。こいつらの顔を見て幸せ感じてやがる。

「このまま、しばらくイかせ続けてあげます」
 「たのしんでね? 天国。地獄かな? ふふっ!」

「……っ♥」

 仰け反ったまま、息苦しさに苛まれる。涙が出てきたのは、呼吸困難のためか、惨めさのためか、あるいは、イかせ続けてもらえる有り難さのためか。

「はへっ……♥」

 もはやまともに機能していない頭の中で、自己分析するのは難しくなっていた。ただ、そうして答えたオレの顔は、涙でぐちゃぐちゃに濡れながら、笑っていたかも知れない。
 そのふやけた笑い顔の頭の中に襲いかかってきていたのは、身を焼き尽くす地獄のような灼熱の幸福感。その証拠にオレは、キンタマを踏みつけられることなく、ただ「イかせてやる」の言葉を聞いただけで、もう一吹き精液を拭き出した。







 何日間、キンタマを踏みつけられ続けただろうか。何日間、そうしてイき続けただろうか。そうして飽きもせずオレのタマを踏み続けた姉妹の執拗過ぎる責め苦は、奴らの精神性が尋常ではないことを示している。

 はっ、はっ、はっ

 白い球体の石部屋の中に木霊する、ただ、オレの砕けた息遣いの音。姉妹は物音立てずに、身動き一つ出来なくなっているオレを見下ろしている。何日ぶりに、キンタマへの圧迫感が途絶えただろうか。徹底的に踏み潰され続けたそこは、今や膨らみ直す力も失って、しぼんだ風船のように床にぺたんこになっている。
 自分でもわかる、鼻が曲がりそうなほど臭う、精液の匂い。全て自分がまき散らした、濡れた風呂場のような滑り汁の溜まり。壁面にまで飛んだものは滴り流れている。床に落ちたものは悪臭を放つ汚らわしい水溜まりになっていた。
 姉妹の体も随分オレの精液で汚れている。そこに、自分が汚してやったという意識は生じない。奴らはオレのキンタマを虐め抜いて汚れただけだ、それは死体の処分で返り血に濡れたのと、同程度のものだ。

「……もう、もう、殺してくれ……お前等に逆らったオレが、阿呆だった」

 俯せて、自分の涙と鼻水と涎に濡れた地べたに、もう起き上がれそうにない。顔はベトベトに濡れ、倒れた体の腕は力なく放り出されて、がに股に開いた足の間からペニスが下向きに潰れて伸びてしまっている。先端から更にその向こうに向けて、何度も噴き出した精液の飛沫と水溜まりが広がっている。潰れて伸びた陰茎の左右に広がる陰嚢の中で、姉妹に踏み虐められまくったキンタマが無様に垂れて、しかしその無様に垂れ広がった姿でもまだ未練たらしくきゅんきゅん♥と疼きを振りまいている。ぶぶっ、とペニスの先端から、もう薄まってほとんど透明になった残り汁が噴き出し続けていた。
 こんな、惨めな羽目になるなんて。オニとして、それに仮にも|四天王《テトラ・フィーンド》としての誇りもあったのに、今やそんなものを心の片隅にでも引き出すことが、おこがましく恥知らずなことに思えた。

「頼むよ、もう、オれ」
「「殺す? そんなことのために、こんな汚らしいことをしている訳ではありません」」
「そんなこと、しってらひ。だけろ、そんなのだけは、御免にゃんら、全くどうしても、御免なんらよ。体は堕ひてる、お前等がイけといえばもう抵抗も出来にゃい。大層れもないこのおつむらって、完全にお前等の玩具らぁ。もうオレの負けら、認める。れも、それれもテメエらの手先になっへちょろちょろ働くなんへ、死んで腐っへもまっひらなんらよ……らからもう、ころひてくれ」

 抵抗の言葉も、色々の混ざり汁でべとべとになた顔で床ペロしながら言っても全く説得力がないかもしれない。でも、本心だった。舌を噛みちぎって死のうともしたがそれさえさせてもらえない、ただこのキンタマの快感一つでオレは堕とされた。でも、最後の一線だけは、守り抜きたい。こいつらに、従うなんて、ことだけは。

「「すごい、です。これだけ絶頂強制追体験と快楽条件刷り込みをされていながら、なお尻尾を振らないなんて」」
「生憎、振るための|尻尾《ひっぽ》を、持ち合わせてねえんら、オレ、莫迦すひれ。ただ快楽でくるくるぱーになったらけで、まともに言うことも聞けねえ奴は、駒にもならないし使い道もないらろぉ。壊すなら、さっさとしてくんにゃぁ」

 キンタマを踏まれて悦ぶような体にされて、自尊心も何もない。精神的な支え以外にももう体自体、奴らの思うがままに絶頂へ追いやれるのだ。どんなに強い精神統一も効果がない。拳一つだって繰り出せず、呵成の声一つもあげられない。だが、古明地の姉妹は、そんなオレを驚きの目で見ていた。

「「……もはや、あなたとの対決のように思えてきました。私達はあなたを殺したいわけでも壊したいわけでもない、欲しいのです。あなたを殺すだなんて、私達にとっては敗北に等しい。いいでしょう。とっておきです、これは私達にとって、折角獲得済みの成果も全て水泡に帰すかも知れない、博打。勝負しましょう、星熊。」」
「いや、ら、もう、もうオレは、嫌ら。頼む、殺ひてくぇ」

 例えそうだとしても、オレにはもうどんな抵抗だって出来ない、万に一つだって、お前等を出し抜く要素なんかないんだ。もう、何も見たくない。殺してくれるまでは、もう。もう、嫌だ。

「「あなたを《《勝たせ》》るわけにはいきません。さあ、ベットなさい、あなた自身を」」







 古明地姉妹は、そう言って一歩下がる。それと入れ替わるように前に進み出た小さな影。目を閉じて、もう何があっても嫌だと、拒否するつもりでいた。それも叶わないとは、わかっているが。

「「何が何でもその気に、なっていただきます。こういう趣向はいかがですか、星熊?」」

 身動きを封じられ、睾丸での連続絶頂を憶えさせられたオレには、もうこの二人に逆らう意思なんか残っていなかった。服従するかどうかというよりは、ただ単におとなしく「はい」と言うのが嫌だという、反抗期の子供のような、そんな薄っぺらな意思力だけが心臓に張り付いている。何の防御力も持たない薄っぺらな膜を、いつ古明地姉妹に剥き取られてしまうだろうか。そう思って、来るそのときを不安に、だがどこかで期待しながら暗室で絶頂追体験調教に喘ぎ悶えていた。心はもう、折れて砕けている。この破片を幾ら掻き集めたところで、奴らに抵抗することは叶うまい。
 閉じた目を開かされた。何の救いにもならない光が差し込んだ時、もう何をされたっておかしくないのだから、何をされたって驚きはしないだろうと思っていた自分の浅はかさを呪った。

「す、萃香」

 古明地姉妹の間に挟まれるように、それは二人を従えているというのでは勿論無く左右から無言の圧力によって縄も鎖も無く拘束されているという構図、逃げたくても逃げられないよう精神的な拘束を施された萃香はしかし……笑っていた。

「はっ、はっ、ゆ、ゆーぎ、すごいえっち……」

 萃香は、古明地姉妹に左右から遠巻きに圧迫されるよう挟まれ、床に尻をついて座り込む形で股をMに開いている。その太股の間には

「萃香、おまえ、それっ……!」

 彼女の、《《それ》》を除いては全くニンフォレプティックな体つきに、悉く不釣り合いな逞しい肉棒が屹立していた。萃香はそれをまるっこくて可愛らしい手で、必死に上下に擦り、つまり、その、オナニーしている。オレの体を見て、なのか? 萃香の可愛らしい手は、しかしその見た目とは裏腹に、ひとたび相手を打倒するために握り締められれば岩を豆腐のように砕く力を秘めていることを、そうして実際に数え切れないほどの的を葬ってきたことを、オレはよく知っている。だからこそ、その手があんな風に、淫らなことに使われているのは……。

「「お気に召したようで」」

 古明地姉妹特有の|微差二重音声《バイノーラルボイス》が、冷酷な皮肉を投げ付けてきた。片方は生々しくも癪に障る冷笑を湛え、もう片方はいつも通り生命感のかけらもない無機質な声。オレが気を失っている間に、萃香をどうにかした……いや、もしかして萃香はとうに昔から? そんなわけが、あるか。そんなこと、受け入れられない!

「き、気に召す訳が、ねえだろっ……! 萃香に、何しやがった」
「「あなた方二人が、生粋地獄生まれの|鬼神《フィーンド》とは少々違うというのは、知っています。そういうことですし、どうやら、特別な感情を抱き合っているように《《視え》》たので、少し、趣向を変えてみました。」」

 萃香はいつも冗談交じりにふざけたことを言い、時にそれを実行しがちで、気性に妖精のような気紛れさを持つ変わった奴だが、だからといってこんな馬鹿げたことをする奴ではない。オレが、よく知っている。
 まして、こんな風に。

「「逞しいですよね、ソレ。私もちょっと驚いてしまいました。それ、星熊への愛情の大きさに比例しているんですよ。……喜ばしいですね?」」

 萃香の視線は、勃起したまま収まらなくなっているペニスと、その下であまりにもたっぷりと《《溜め込んだ》》自重でだらしなく垂れて伸び、そして覚え込まされた放出の快感への期待できりきりとせり上がろうとを繰り返して勝手に上下を繰り返す下品極まりない器官に成り果てたオレの陰嚢を、凝視している。
 萃香の頬に刻まれたタトゥーが、妙な存在感を示している。あれは……もしかしてすでにあいつらのものになったっている、印だとでもいうのだろうか。似たようなタトゥーは、頬以外にも刻まれている。一番よく目立つのは、臍の下だ。まるで男の男根をデザインに落とし込んだような、スタイリッシュなのに下品な刻印。《《あれ》》は、「生やされた」ものなのか?
 その正体が何であれ、その、存在感は……。

「やめろ萃香、こんなもの、こんなもの見ないでくれっ」
「「その気になっていただけましたね。さあ、始めましょう。彼女の誘惑に耐えきったなら、星熊、あなたも、それに伊吹も、解放します。今後あなた方の自由を約束しましょう」」
「勝手なこと、いってんじゃねえ」
「「申し訳ありませんが、最初から私達の、これは勝手で始まったことです。今更」」
「ちく、しょぅっ……」

 古明地への怒りは浮かぶが、もう折れ曲がった心では敵愾心や抵抗の気持ちが沸き上がったりはしなかった。ただ、萃香の姿を見て生唾を、飲み込んでしまう。
 なんて、逞しくて、それに、それの生えた萃香自身が、可愛く見えるのだろうか。
 オレの言葉が耳に入っていないみたいに、萃香は虚ろに、でもその奥にはぼんやりと暗い光のようなものを湛えた瞳で、オレの股間を凝視しながら、ペニスを扱いている。オレが気を失っている間に、すでに何度か射精しているのだろうか、あちこちに白さを残した飛沫と水溜まりがあり、そして彼女の傍には白く濁った液体で満たされたビーカーが置かれている。二つ、いや、三つ。

(萃香、オレで、ヌいたってのかよ……しかも、そんなに大量に、出して……)

 きゅん、と下半身が疼いた。下半身、といっても疼いたのが臍の下だったなら百歩譲って救いがあったかもしれない。疼いたのは、陰嚢の奥、睾丸だった。だめだ、やっぱり、キちまう……。

(射精、したのか、萃香、オレで、っ、オレのこのキンタマ狂いになったオレの、ペニスと玉袋ついた体で、そんなに射精したのかよぉっ♥)
「「〝射精、したのか、萃香、オレで、っ、オレのこのキンタマ狂いになったオレの、ペニスと玉袋ついた体で、そんなに射精したのかよぉっ♥〟」」

 サトリの姉妹が、オレの心の中を、わざわざ口に出して晒し上げてくる。

「や、やめろっ……! この、ド変態共っ!」
「「おやおや、どちらがでしょう? こんな変態じみた科白を言わされる身にもなってください。 口ではなんと言っても、気持ちは正直、嬉しそうな貴方の心の声はもう全くフィルタ出来ていませんよ? 私のここに、ダダ漏れです」」

 |古明地姉妹《プリンセス》は、二つの体を寄せ合いながら、三つの瞳を大きく見開き、閉じられたままの三つの目を自ら指でなぞる。今のオレはもう、この二人の前に心をガードし得るだけの精神力は、残されていない。こいつらに抵抗することが、もう……。

「したよお? 勇儀のえっちすぎる体見てオナりながら、私何回も見ヌキしたよお?♥」
「ば、ばかやろうっ、萃香、おまえっ……」

 目をゆらゆらさせながら、最低なオレの体を嘗め回すように見て、手コキを続ける萃香。オレのモノに負けないくらい凶悪なペニスは、可愛らしい手が上下する度に先端からだらだらと匂い立つ粘液を零している。少し白みがかっているのは、射精の残滓が混じっているのか、それとも女としての性質が混じってそれが本気汁と同じものなのか。
 ごくんっ、と生唾を飲み込んでしまう。萃香のペニスを、オレのマンコに突っ込んだらとか、そういうインタラクティブなエロ妄想ではない、もっと単純で機械的で低俗なモノ、つまり、あのペニスは今、オレが自分のペニスを扱き立てたときと同じような快感に包まれているのだろうという、想像と共感の中間のようなモノ。投影と言っていいかもしれない。

「「〝勇儀のキンタマ、くっさそう……♥ ちんぽもすっごいエグい反り返り方してるし、ヤバいよおっ♥ ちんぽ止まんないっ♥〟」」
「やめろ、そんな声、聞かせるなあっ!!」

 萃香の心の声をわざわざ引っ張り出して目の前に見せつけられてオレは、一層アソコの疼きを強くしてしまう。

(うぐっ、くううっ、タマ、がっ……タマがせり上がっちまうっ……♥ これ以上、見てらんない、萃香の、そんな)
「勇儀っ♥ 勇儀の射精シーン見たいなあっ♥」
「っ!? 萃香、お前何言って……」

 キュウウウウッ♥

 ケツ穴の上の部分、射精するときに必死にイキむ筋肉が勝手に収縮する。チン先が跳ね上がって刺激を探し、竿の筋が中を通るザー汁管を絞る様に力んでしまう。タマ袋が迫り上がって、中のキンタマが内圧に負けたがっている。
 何もされてないのに、今までみたいに、サトリのガキ共に玉責めされたりしてる訳でもないのに、勝手に、勝手にっ♥

「勇儀、見せて、勇儀のザー射シーン、見せてっ♥ 勇儀の射精見ながら、オナりたいよう♥」
「オ゛っ、萃香、やめっ……やめろっ! そんな、そんな科白、う゛っ、んぉ゛ぉ゛っ♥ やめろぉっ♥」

 そんな、ペドい体にエグいチンポおっ勃てて、エロすぎるフタナリロリに欲情されたらっ、その視線でチンポ撫でられたらっ、チンポに、キきすぎるっ♥
 ヤバい、ヤバいっ♥ キンタマ我慢出来なくなってきてる♥ 触ってねえのに、何もしてねえのに、キンタマ迫り上がって……っ♥

 ぶばっ♥

「オ゛ォ゛んッ!♥ 嘘だろっ、そんなの、うそだろぉっ♥ 見られてるだけなのに、勃起チンポと我慢タマ見られてるだけなのに、っ、っ♥ おほぉ゛ぉ゛ぉ゛っ♥ 射精るっ、射精ちまってるぅぅっ♥」

 タマ袋の内側にきゅんきゅんと締め上がるような、疼きと甘い痺れが走ったかと思うと、精液が噴き出してしまった。普通の射精と違う、括約筋や海綿体の収縮だけじゃない、睾丸そのものまでが射精用にキュウキュウ収縮して内側に大量に溜め込んでいる精液を放出しようとしている、その蠢きや収縮、迫り上がって絞り上がる感覚が、雄とか雌とかそういうのをスッ飛ばした強烈で原始的な生殖快感に紐付いた幸福感を、どうしようもなく脳みそに流し込んでくる。

「オ゛……っ、あ゛っん♥ 萃香ぁっ♥ 見たな、見たなあっ♥ 古明地のガキに完全に調教されたオレのキンタマ射精、見たなあっ♥ おほっ、ま、まだ絞り射精てっ♥」

 どぶんっ♥

「クひぃっ♥ 惨めなチンポバカになったところ見られて、また興奮しちまってるぅっ♥」
「ああ……勇儀、勇儀♥ エロすぎっ♥ チンポに触ってないのに射精できるとかエロすぎだよお♥ ますます好きになっちゃうよお♥ ううっ♥」

 サイズ自体は同じくらいだけど、体の大きさの比率から言って余りにもえげつない萃香のペニスが、射精の兆候を見せる。古明地の妹の方がすすす、と音も立てずにその傍に寄り、萃香の耳元で何かを囁いた。萃香は、わ、わかってるよぉっ、と漏らして、笑う膝、止まらない手コキ、漏れ続ける先走り汁をそのままにふらふら立ち上がって、極太フタナリペニスの先端を、新品ビーカーの内側に向ける。そして、放った。

 びゅうぅっ♥ びゅううううっ♥

「あ゛はっ♥ また、こんなにっ♥ ん゛っ♥」

 巨チンを床に置かれたビーカーに向ける為に萃香は内股の足を広げながらつま先立ちになり、上半身を前に倒して尻を突き出すようなポーズで両手を使ってペニスの先を下に向けて押さえつけるようにしている。射精の放出の度に強烈に跳ね上がるソレを、彼女持ち前の怪力で無理矢理リコイルコントロールしながら、ビーカーの中にみるみる真っ白なホットミルクを注ぎ込んでいた。
 そうやって、ザーメン収集用ビーカーに中射精ししながら、でも快感に濁り切った萃香の目は、オレの方をガン見したままだ。

(え、エロすぎ……萃香の射精、エロすぎぃっ♥ それに、そんな風に発情した目でオレを見られると、オレの方も終わんねえだろおっ♥)

 じくじくと、またペニスが欲求不満を訴えている。《《女の方》》だって、涎を零しっぱなしで盛っているけど……チンポには勝てねえ。膣イキなんかよりも射精欲の方が完全に勝ってる。それに、それ以上に、やっぱり、睾丸が。

「はーっ♥ はーっっ♥」
「ゆーぎっ♥ ゆーぎのために、いっぱい射精したよおっ♥」

 一頻りビーカー射精しを終えて、チン先からは白濁を残した糸をとろとろと引いているだけになった萃香に向けて、古明地の姉妹が左右から近づき、姉の方が指先を萃香の額に当てる。

「はぐっ……」

 刹那、萃香の目がぐん、と大きく見開かれたまま停止した。眼球は小刻みに不規則な震えを示し、瞬きが封じられているみたいに瞼は大きく開かれたままこれも痙攣している。涙がだらだらと零れているのは、瞬きを禁じられて目が乾いているからだろうか、それとも、もっと別の何かが、指さされた額から入り込んでいるのか。
 腰付きの姿勢のまままるで石のように固まったまま、声も出さずただ目を見開いて涙を零し続ける萃香。今度は妹の方がその前に出、顔と顔を向き合わせるように近付く。そして、ずっと閉じられたままだった妹の目が、開いた。
 何をしているのかはわからない、ただ、固まったまま涙を流し続けていた萃香の口元が緩んで、急に嬉しそうな笑顔に変わる。明るい表情、口元は嬉しそうに開いて、笑い声も聞こえそうだ。瞬きは出来るようにはなったみたいだが、見開かれた目の中にある瞳は虚ろで濁ったまま、何より、涙はぼろぼろと零れ続けている。笑顔のまま虚ろな目から涙を流しているその姿は、異様の一言に尽きる。
 妹がひらり、とこちらを振り返ったときには再びその目は閉じられており。やはり生命活動さえ感じさせない無機質な無表情に変わっていた。その傍で、姉の方は、目を細め赤く歪んだ口元に細い指をやり冷ややかに笑っている。
 萃香はそのままストンと腰を落として、嬉しそうに笑った表情で泣きながらオレを見ている。

「萃香に、てめえ何しやがった……」
「「少々、心に傷を付けさせて頂きました。その上で、その傷を優しく慰撫してあげると……まあ、大概の方は《《ああ》》なりますね。星熊も、試してみますか? 曰く、〝幸せになる〟そうですよ。無論、私達は皆さんに不幸を植え付けるつもりなんて、ありませんから。」」

 背筋が、凍った。オレら|鬼神《フィーンド》は確かに|肉体《フィジカル》に偏った強さを誇っている、でも、そう簡単に精神を砕かれるようなヤワな存在じゃない。強靱な肉体を支える為に、相応の精神は必要だからだ。だが、古明地のガキ二人は……萃香の心を易々と作り替えてしまった。彼女の自我がここにはもうない、というわけではないだろう、古明地のガキに何も命じられたりしなければ、いつも通りの萃香に戻るに違いが無い、普段の言動に差なんてないだろう。だが、その差が、余りにも大きい。

「「あなたにも、《《種》》は植え付けてあるのですよ、星熊」」
「なに?」
「「その汚らしい肉袋で無様に気を遣った快感、情動、屈辱と絶頂、その一連の流れはあなたの意思に関係なく、あなたの肉体を引きずり回す、もはや心身症と化している。後はその柔らかい傷を嘗め回して縫い合わせれば、ふふ、あなたにそれに耐えるだけの精神力がありますか?」」

 完全にフィジカルに倒したステータスのオレと違って、萃香は|別名《エイリアス》という特殊な技能を使いこなすために、その怪力からは想像できないほど精神系をパンプしている。それでも、抗えなかったのだ。オレなんかに、耐え抜ける道理は……。
 オレの不安を見抜いて、古明地の姉妹は二人そろって希薄気味な表情、それでも幾らか感情を表出する姉の方から察するに薄ら笑い、そして、全く無表情の妹の方が主導してオレを警告する。いや、宣告か。

「「あなたほど高潔な|鬼神《フィーンド》が、肉棒からせせり上ってくる性欲に身を焼かれ精神回路まで焦げ付こうとしていること、通常ではあり得ない。よもや気づいていない、と言うことはないでしょう?」」
「お、オレは」
「「匂い立つ精液をよくもまあこれほどぶちまけて、それでもまだ勃起したままのペニス。この強烈な匂い、力の漲る生気、私達がこの場にいなければあっという間に野良淫魔共がたかりに来るでしょう。身動きのとれない今のあなたの、強大な力と生気を溜め込んだその|キンタマ《エナジータンク》は、下等な淫魔共にとって願ってもない食料、星熊ほどの|鬼神《フィーンド》が下級淫魔に吸い尽くされて死ぬというのも、中々に話題性に富みますが」」

 萃香にオカズにされた事実だけで、オレの逸物は全く収まる気配の見えない底なしの性欲に直結してしまっている。古明地姉妹が言う通り、いくらオレがノータリンで体に正直なタチだったとしても、ここまで我慢できなくなっているなんて。双子姫から施された度重なる再教育が、体の芯まで根を下ろしているようだった。これが、「種」だと言うのか。
 スクブスなんかの上級の淫魔と違い(元々この|旧獄《シェンディラヴリ》は、スクブスの親玉のような大悪魔からかっ攫った不動産らしいが)、特定の住処を持たない下級の淫魔は相手を弄んで喜ぶような高等な精神を持たない。ただ相手から生気を根こそぎ吸い尽くし食料にする本能によってのみ活動し、性的な活動はその副産物でしかない。今更オレがそんな雑魚にやられるなんてことは無いと思っていたが、今この状態なら、確かに生きたまま蟻に食い尽くされる様な、そんな最後になるかもしれない。
 ぞっとしない。

「「|ヌッペリボー《のっぺらぼう》になるのとどちらが良かったか、わかりませんね? |ヌッペリボー《のっぺらぼう》ならば天文学的微数で、再び這い上がって私達を討ち取れたかもしれませんから。」」

 |ヌッペリボー《のっぺらぼう》が生き延びて力を蓄え人並みの|悪鬼《バーテズ》にまで成長する可能性は、限りなくゼロに近い。その上でこの二人を打倒できる力を持つなんてことは、今この瞬間に全ての素粒子の運動方向が偶然に一定方向に指向して世界そのものがひっくり返る位に、あり得ないことだ。それならば何らかの偶然にこの拘束がほどけて下級淫魔を返り討ちにする奇跡的偶然の方が、まだベットのし甲斐がある。

(最初から、遊んでいただけだってのか)
「「半分はその通りです。でも、半分は違います。」」
「……あんだってんだよ」

 もう心の中をかっ攫われるのには慣れてしまった。隠し事など出来ない、それ自体は、改めて考えてみれば大して脅威ではない、オレはいつでも隠し事なんかせず堂々と、自分に正直に生きてきた。今更、|心《この》中を見透かされたところで、何も変わることはない。

「「あなたのような心根の真っ直ぐな|悪鬼《バーテズ》はいない。あなたほど普段の心の中を覗き見たり無意識を操作しても面白くない人は、私達がここに来てからほとんど見たことがありません。伊吹も、今四天王に君臨している四人とも、希有な|悪鬼《バーテズ》です。だから、取り立てています」」
「だったらなんだってんだよ、だから邪魔だって言うのか」
「「だから《《欲しい》》のです。あなたのような強力な|鬼神《フィーンド》は、そうそういない。それに、正しくあれ、とそれを体現する。|旧獄《シェンディラヴリ》に、必要な存在です。」」
「はっ。だったらこんな下らないこと」

 口ぶりだけは、オレを持ち上げるように言うが、やっていることはそれとは全く逆じゃねえか。

「「だから、堕とさせて貰います。是非、私達の同志に」」
「ふざけんな。こんなやり方も、そんな思想も、オレも、萃香だって受け入れやしねえよ。テメエらは、|鬼《オニ》を嘗め腐ってる、こんな塞いだ糞溜みてえな場所で生まれた|鬼神《フィーンド》なんかとは、根っこが違うんだよ!」
「「その伊吹が、その様子では、いかがなものでしょう」」
「テメエらが何か小賢しいことをしやがったからだろう!? 萃香、目ぇ覚ませよ!」

 オレの言葉にも萃香は全く動じる様子が無く、真っ直ぐにオレの方を見たまま緩くペニスを扱き続けている。あれから何度か更に射精したらしい、白い液体に満たされたビーカーが、増えている。

「萃香」
「「では、仕上げと参りましょう。伊吹もそれを望んでいるようですし」」

 何か黒い管のようなモノでつながった古明地の双子姫が、それを引きながら二手に分かれる。萃香の左右に回って、彼女の角を無造作に掴み(角はオニの誇りだ、あんな風に断りも無く雑に扱われることには、本当は酷く怒りを覚える筈なのに、今の萃香にはそれがない)、左右の耳へ姉妹が口を寄せ、何かの|言葉《命令》を流し込んでいるようだった。

「「あなたがやるのです、伊吹」」

 再び顔を上げ、背の小さな(古明地の二人も小さい方だが萃香はもっと小さい)萃香を見下ろしながら言うと、萃香は虚ろな目で、だが口元は嬉しそうに笑った妖しげな貌をして、頷いた。







「「そっちじゃありません。もっと括約筋を締め付けなさい?」」
「がっ、ぐうぅぅっ!」
「「いいですよ、その調子です。弛めてはいけませんよ?」」

 これが無意識からのアクセスの力という奴なのだろうか、膀胱括約筋にこんなに強い力がかかったことは生まれて今まで一度だってない。痛みを感じるほどに膀胱を閉じ締める力が加わり、相対的に力が緩んだのは。

「「いい具合に《《道》》が出来ました。あとは伊吹、あなたがやるか、やらないかです。お好きになさってください?」」
「や、やめろ、萃香、やめろっ! お前、何しようとしてるのか、わかってるのか!?」
「わかってるよお?♥ 入れるね? 勇儀の|精巣内《ナカ》に、私の精液♥」

 屈託のない、馬鹿みたいに明るい、まぶしい笑顔で、萃香は恐ろしいことを言う。いや、恐ろしいことを考えたのは、この古明地のガキ共だ。
 身動きを封じられたオレのペニスの先端からは透明のカテーテルが伸びている。操られた萃香が、古明地に命じられてオレのチンポに差し込んだのだ。その先にはポンプがつながっていて、更にその先にはさっき萃香が大量に出してストックしているビーカーの液体、つまり精液が備わっていた。ポンプを持っているのは萃香、嬉々とした表情で、そのポンプを圧してビーカーの中に溜め込まれた精液を、オレの膣内に送り込む準備をしていた。

「古明地、テメエらの悪趣味は、想像を絶するな」
「「あなたの想像の範囲を出るように、計画させて貰ったのですから当然です。想像できる範囲の仕置きなど、あなたには何の効果も無いでしょう?」」
「クソガキどもが……」

 萃香の精液が、オレのペニスに尿道浣腸される……。しかも、無理矢理膀胱括約筋は締め上げられて道を封じられていて、だとすると押し込まれた萃香の精液が流れ込むのは。

(オレの、き、キンタマに……萃香の精液が……っ?♥)

 想像しただけで、身も毛もよだつ、筈だというのにオレの陰嚢はくくくっ、と迫り上がり自ら距離を縮めて期待を示してしまう。
 古明地の姉の方が、顎を使って萃香に何か指示を出した。萃香は、待ってましたとばかりの明るい表情でそれに応じ、手の中のポンプを何の躊躇い無く押し込んでくる。チューブを遡ったゲル状の白濁が、ポンプを通り、更にカテーテルを上ってくる。チンポの先に到達して、いよいよペニス尿道へ入り込んできていた。

「あ゛っお゛お゛お゛お゛ん゛っ、入って、入ってくるぅっ♥ 萃香のこってりドロドロのザーメン、オレの中にっ♥」

 こきゅ、こきゅ、こきゅっ

「ほぐぅっ♥ 尿道遡ってくるっ♥ 萃香のが、萃香の精液が、オレの精子濫造機に、逆流してくるっ♥」
「あはーっ♥ すごいーっ♥ 私、勇儀のチンポに中射精しちゃってる♥ 」

 無意識によって解放された強靱で強制的な膀胱括約筋の収縮によって膀胱への道は断たれ、代わりに開かれたのは、本来自分の精液を排出する専用の精管。でたらめに強い力で押し込まれる萃香の精液はオレのナカでドロついて、前立腺を圧迫する。

「オぐぅぅっ♥ 精子注ぎ込まれて、しゃ、射精しそうにっ♥ 前立腺っ♥ 前立腺やめろぉぉっ♥」

 膀胱へ侵入出来ず、好きな女の精液が精管を逆流し始める。オレの精管をパツンパツンに膨らませながら、萃香の精液は膀胱の周囲をぞわぞわと刺激する。前立腺に包まれた膀胱の手前の合流点は、注ぎ込まれる大量の精液で絶え間なく圧迫され、完備を通り越して暴力的な快感をまき散らしていく。
 古明地姉妹によってPC筋だけで深アクメに達してしまえるようにまで調教されたオレに、そんな風に内部から強烈な前立腺刺激を与えられて耐え抜く力は無かった。

「ん゛お゛っ♥ お゛オ゛おォ゛っっ゛♥ イぐっ、イっぢまうううっ♥ 尿道精液浣腸で、萃香のザーメンちんぽに入れられて、イぐうぅぅぅうっ♥」

 M字に股を開きながら、ガチ勃起したフタナリチンポの先端から精液注入用のカテーテルを伸ばしたまま、がくがくと腰を揺らしながら、前立腺絶頂してしまう。チンポの付け根、尻穴の付近、だいたいその辺りの明確に判断の付かない朧気な一帯から迫り上がってくる強烈な快感と、幸福感。マンコでイくのとも、チンポでイくのとも、違う。解放感でもないし充足感でもない、真っ白い虚無の中の浮遊感みたいな、それでいて、とてつもない幸せな気分が、ハイにもローにも入らず正確な描写で、オレを包み込んでくる。

「ほぁ……はへ……これ、これ、らめらっれ……ぇ、ぁ♥」

 これだけでももう骨抜きだって言うのに、萃香の精液ポンピングはまだチンポの付け根を責め立てているだけ。精管を遡り始めた精虫液は、依然オレの精管をぱんぱんに膨らませながら、膀胱の傍を通り抜けてくすぐっていく。排尿感が膨らむが、締め付けられた膀胱括約筋はそれを許さない。むずむずとした切迫感が体中を支配して、それは射精か、あるいはもっと別の絶頂を求める欲情に突き刺さって、続く前立腺圧迫アクメへの抵抗値をダダ下げていく。後ろ手に拘束され股を大きく開いたまま、ペニスにもヴァギナにも触れていないのに、アクメ痙攣を繰り返してしまう。
 目の前には、嬉しそうに頬を染めてオレを見つつ、精液ポンプを押し続ける萃香。幸せそうな顔で、オレを狂った快感のどん底に引きずり込んでくる。

「萃香っ、萃香ぁっ♥ お前の精液が、オレの膣内でうようよ泳ぎまくってる♥ すげえ量の精虫が孕ませ先の卵探してチン管と、キンタマの中、暴れ回ってやがるっ♥」

 萃香はひっきりなしにポンプを押し込んで、オレのキンタマに精液を注ぎ込み続けている。ぱちんぱつんに張り詰めた精管と、その奥の睾丸。|睾丸《キンタマ》は左右とも萃香の精液をたっぷりと飲み込んで、風船のように膨らんで、元のサイズに倍くらいになっている。萃香はその膨張したキンタマ袋に頬擦りし、舌を伸ばして張り詰めた皺跡を、くすぐるようになぞり回す。

「勇儀、すごい♥ 勇儀のココ、私の精液こんなに飲み込んでくれてる♥」
「ふぅっ、んっ♥ やめっ、もお、やめろよぉっ♥」

 まるでやめて欲しくないと言いたげな声色が漏れ出してしまう。
 肥大化したキンタマは、古明地の調教で既にすっかり性感帯に化けている。そんな風に、萃香に嘗め回されたり頬ずりなんかされたりしようモノなら、それだけでもまるで乳輪と乳首を口愛撫されているみたいな、ふわふわした幸せな快感が膨らんで、勃起したままのペニスの亀頭を撫でるように通り抜けて腰の奥を溶かし、頭の中に蟠ってくる。蓄積されていくその快感は、精神を蝕む毒になって、胸の中で渦巻いていく。

「オレのキンタマ萃香のザーメンでたぷんたぷんになってやがるっ♥ これじゃあ、ニンシンっ、ニンシンしちまうっ♥ キンタマが萃香のザー汁でニンシンしちまうよぉっ♥」
「勇儀、ニンシンしてくれるの? 私のチンポ汁で? 女の子同士なのに、精虫同士のホモニンシン、しちゃうのぉっ♥ うれしいよおっ♥ じゃあもっと、勇儀精子、私の精子で犯してあげる、ねっ♥」

 ごきゅっ、ぐぎゅっ!
 萃香の手の動きが速くなって、真っ白ビーカーから遡上してくる精虫濁流が、より勢いを増してオレの玉袋を膨らませていく。

「お゛ん゛っ゛♥ ザー汁♥ 萃香のザー汁、キンタマに入ってくるっ♥ また膨らんでるっ♥ キンタマにザーメン浣腸されて、オレのキンタマ喜びすぎだっ♥ キュンキュンしてるっ♥ キンタマで感じまくってる♥ 萃香の愛をかんじちまうっ♥ キンタマから快感と幸福感爆発してるっ♥」
「ゆーぎ♥ ゆーぎっ♥ 孕んで♥ 私の精液で牡子宮、孕んでっ♥」
「オレ、オレこれでも女なのによぉっ、でも、でもキンタマが孕まされたがってる♥ オレの精子が萃香の精子と兜あわせして、喜んじまってるぅっ♥」

「「伊吹、そろそろ星熊にとどめをあげなさい。竿にも、ヴァギナにも触れてはだめよ。陰嚢だけで堕として見せなさい。ご覧なさい、星熊のこの幸せそうなトロけ顔。今の星熊なら、キンタマアクメで陥落させられるはずですよ」」
「はあい♥」
「っ♥ だ、だめだっ、ダメだ萃香♥ 今のオレ、マジでっ♥ マジでキンタマで、堕ちる、からっ♥ やめてくれ、萃香っ♥ キンタマ快感でこのガキ共に服従なんて、ん゛を゛っ♥ ホぐうっ゛♥ 玉責め、玉責めダメだぁっ♥ 」

 萃香がいよいよ古明地の指示を受けて容赦ないポンピングを開始する。膀胱括約筋は今も完全に締めころされたまま、怒濤の勢いでキンタマに注ぎ込まれてくる、好きな女のザーメン。ぎゅるぎゅる音を立てて、睾丸が膨らんでいく。キンタマの奥に感じる、萃香の体温。精虫一匹一匹が、オレの精虫一匹一匹とキスしている。

「だめだぁっ♥ オンナのタマゴと違って、精子多過ぎっ♥ キンタマの中で大量対大量の雌精子のホモ乱交、やばいぃっ♥」







「「っ、こ、これ、はっ……」」

 古明地の姉妹が、二人同時にシンメトリに表情を歪め、何かに耐えるように歯がみしながら手で目を覆うようにして身を震わせている。

「「逆流、してくるっ……読み取りのみだというの!?」」

 いつも目を開いている姉の方が、顔を背けて目を閉じる。人間が眼精疲労で目の周りを押さえるときのような仕草で閉じた目を更に遮るが、止まらない。姉の変調を、姉と感覚共有した妹はもろに受け止めていた。妹から姉への特殊な不断アクセスによって、両者の間に行き来しはじめる、不覚の情報。

「お、おねえちゃん、《《覗き見》》、止めてっ」
「こ、こいしが無意識で私に、《《見させて》》いるんじゃっ、くうっ」
「ち、がっ……くうぅっん♥ おねえちゃん、私もう、もうっ♥」
「こいし、あてられては、ダメっ、やめなさっ……ふぁぁっ♥ ど、どこをさわってっ♥」

 古明地の姉妹が別々に声を発して別の意思を持って、二人で会話しているのを初めて見たかもしれない。それ以上に、こんな風に表情を歪めているのも。あの感情のなさそうな双子姫でも、あんな風に性欲に顔を赤くするのか。

「ふたなりチンポの精子同士のホモ交合、なんて、馬鹿げてる、筈、なのに、これっ♥」
「おねえちゃん、おねえちゃん、おねえちゃん、おねえちゃんっ♥ 私も、私もしたい♥ 私もキンタマっ♥」
「こいし、自制、じせいしなさいっ♥」

 妹がまるで制御を失ったように、姉の太股に自らの股の間を擦りつけて腰を振っている。いつもも目を閉じたままの妹の瞼は、真っ直ぐに姉に向いていた。そのスカートは、妙に膨らんでいる。

「おねえちゃんこそ、もうべちょべちょおっ♥ だったら、その《《目》》、閉じればいいのに♥ 」
「じゃあ、無意識アクセス、離しなさい、こ、こいしっ♥ だめ♥ さわっちゃだめっ♥」
「おねーちゃん♥ おねーちゃん♥ すき♥ すきぃっ♥ ねえ、しよっ、セックスしよっ♥ 我慢できない♥」

 仕方なく妹の股間に当たる太股を思い切り動かしながら、半ば苦悶の表情でオレの方に憎々しげな視線を投げてくる古明地の姉。萃香に精液注入されてそれどころでは無いが、その視線に、少しだけ胸がすく。

(どうだ、よ、オレらオニをあまくみんなよ……っ♥)

 オレが何か意趣返しのような術を使っているわけでは無い、ただ、覚(なのか、何らか別の存在なのかは知らないが)としての読心機能の何か許容域を、きっと超えたのだろう。明らかに、オレと萃香の間に生じている快感が、姉妹に影響していた。反撃をしたつもりのことでは無いが、ざまあみろという感じだ。

「み、見ろよ、萃香、あいつら……ぷぎゅううっ♥」
「こらー、他の女の子となんか見ないでぇー♥」
「そ、そうじゃねえって、古明地のがきどもほぉおおおっ♥ おいっ、おい萃香、まって、待ってくれって♥ タマ握るなっ♥」
「だあめえ♥ 勇儀、ちゃんと私の精子でキンタマ感じてよお♥」
「か、感じてるってば♥ すげえキてるって、み、みたらわかんだろぉ♥ ふォぉっ♥ キンタマ膨らみすぎだって♥ 萃香のザーメンでオレのキンタマが喜びまくってる♥ オっオ゛オんっ♥ しゅいか、しゅかああっ♥」







 双子の女王のレズ絡み(妹は女装らしいが)は、オレが普通の状態なら是非見ていたいモノだったが、こっちは、それどころじゃない。萃香の精液注入で、オレの方だって、もう♥

「勇儀、キンタマでトロけすぎだよぉ♥ 姫達の調教でなっちゃったの?」
「そ、そうだよ、ちんぽだって元々こんなサイズじゃ無かったのに、タマだって性感帯なんかじゃ無かったのに」
「それが今じゃ、こんななんて♥」
「だ、だめだって、やめろって、萃香っ♥」
「だぁめぇ~♥ |双子姫《プリンセス》の命令だもん、逆らえないよおぉ?」

 そう言って萃香は、オレの竿とタマ袋の間の、普段は密着してムレ続けて匂いの沈着した辺りに丸っこくて可愛い可愛いその顔を埋めてくる。その蒸れた場所に鼻を押しつけて、そのまますんすんとオレに聞こえるようにわざと鼻を鳴らして匂いを嗅ぎ、唾液をたっぷり絡めた舌を出して袋と竿の間を舌先でなぞる様に愛撫してくる。

「ぉ゛……っ♥ おふぅっ♥ びりびり、萃香の舌で、チンポびんびんくるぅっ♥」
「あぁむっ♥ れろっ、れろっ♥ 勇儀のタマ袋、すっごくいい匂いがする♥ ドギツいエロ臭、鼻の奥にがつんってクるっ♥ 勇儀のキンタマ、もう完全にアクメスイッチになってるんだね♥ エロいなあ、惚れ直しちゃう……っ♥


 むずむずとこそばゆいような感覚に、調教で完全に植え付けられた強烈な快感がバンドルされて迫り上がってくる。触れられていない竿を伝って、やはり触ることを脳命令レベルで禁じられた亀頭に、まるで電流が這うみたいに快感の蛇が絡みついてくる。

「惚れ直す、って人のドコ見てゆってるんだっ、こんな、ぶざ……無様な、タマアヘのオレのドコがいいんだよおっ、ん゛お゛っ、す、すいがっ゛、ダメらっれ、ギン゛ダマ゛もみもみするの、やめへく……んぐい゛いい゛ぃぃぃ゛いっ♥」
「どこって、キンタマアクメ、キメまくってアヘ顔晒してるとこ全部に決まってるぢゃん♥ 私の精子で、睾丸浣腸されて、キンタマ妊娠しちゃうなんて、どんなドスケベふたなりでも言わないよお?♥ ああったまんない、勇儀のキンタマ、マジで破裂させたい♥ 私の精子でもっともっと膨らませて、このかあいいタマタマに全身で抱きついて、ぱあんっ、ってさせたい♥」

 睾丸が破裂するなんて、本来想像しただけで身の毛もよだつようなことなのに、今のオレは、それを想像してぞくぞくと背筋を走る快感電流を感じていた。このキンタマが爆発するなんて、その瞬間、どんなに気持ちいいだろう。きっと、気持ちよすぎて頭の中まで精液でびちゃびちゃになる……♥

「な、そ、そんなこと……そんなことシたいのかよ、萃香っ! そんなの、そんなの想像、したらっ♥ オレ、ますます……くふぅっ♥ キンタマきゅんって♥ 疼くっ♥ 睾丸内側から気持ちいいの沸いてきて、フクロがきゅっきゅっって迫り上がって、きたいしちまうだろぉっ♥ キンタマ膨らみ続けてるんだぞ♥ 萃香のザーメンどっぷどっぷ注ぎ込まれて、風船みたいに無様に……オレ、こんな姿誰かに見られたら、嫁に行けないっ♥」
「えっ、勇儀お嫁に行くつもりだったの?」
「お、オレ、だって、人並みに、は……」
「だめだよお? 勇儀は私のモノなんだから。だからこうやって、勇儀のために絞り出した精子で、内側からマーキングしてるのに、まだ誰かのお嫁に行こうなんて、言ってるんだ? これは、徹底的にヤらないとダメかな?」
「て、徹底的、って……」

 萃香の可愛らしい顔が意地悪く歪む、その奥で考えているだろう残酷な快感責めを想像して、オレは、また心臓で加熱された熱い吐息が肺を満たしていくのを感じる。もう、ピンク色の吐息しか出てこない。そこで古明地のガキ共が見ているのも気にならない、好きな女に無様を晒すのもどうでもいい。ただ、オレの頭の中は、今はただ、もう。
 オレが弱り顔で桃色吐息を吐いたのを見て、萃香は嬉々としてオレのチン先から伸びたポンプを激しく圧す。

「ひっグぅ!?♥ しゅ、しゅいか、少しは手かげんっ、キンタマの前に、ちんぽ、破裂、しゅるっ♥」
「大丈夫だよ、勇儀の頑丈さは、私がよく知ってるから♥ 勇儀のちんぽもキンタマも、まだ全然大丈夫だって、わかってる♥ ほら、キンタマさわったげる♥ もみもみ♥ ぷにぷに♥ 私と勇儀のザー汁でぱっつんぱっつんのキンタマ、もみもみ♥」
「萃香っ♥ オレのキンタマやべーよおっ♥ こんなに膨らんで……ふぅっ♥ さわったら、あふっ♥ そんな風に、いやらしく、ねっとり触られたら、玉イキしちまうってぇ♥ ふぎぅぅぅっ!? ばかっ、ばかぁっ♥ そんなにぎゅむぎゅむタマを触ったら……おホぉっ♥
「勇儀きもちよさそー♥ もっとしてあげるよ、私のザーメン、睾丸内部にじっくり染み込ませてあげる♥」
「おオ゛オオ゛オんっ♥ タマ責め、タマ責めもう、やめろぉおっ♥ そんなに強く♥ 指、キンタマに指埋まって♥ 揉むなっ♥ タマをもむなぁぁぁぁぁっ♥ ゾクゾクくるっ♥ びりびり、きゅんきゅん、キンタマで感じちまうからっ♥ 女なのにクリも膣もノータッチで、ふたなりチンポもアンタッチャブルで、き、キンタマ愛撫だけで、イッちまうから……ふぐぅぅぅう゛っん゛♥ 潰れるっ♥ 萃香のオニ握力でキンタマ握りされたら、キンタマ潰れて……潰れてイッちゃうぅぅっ♥」

 キンタマが、今までで最大級のイき準備している。雌の部分もだ。萃香のザーメンでたぷたぷになりながらもタマは完全に迫り上がってきゅうきゅう疼いている。逆にメス部屋は下に落ちきって入り口をひくひく広げて涎が止まらない。
 だのに、オレが今求めているモノは、チンポ射精でもマンコ受精でも無い。キンタマで妊娠したいとかいう、勿論不可能な、でも強烈な欲求。萃香の精子が精管を押し広げて睾丸の中で暴れ回っている。うじゃうじゃ活きのいい萃香の精子が、オレの生まれたての精子をその場でホモレイプしてくる。

「すいか、すいかぁっ♥ オレ、おかしいっ、あたまおかしくなっちまったよお♥ お前があんまりにもキンタマするから、オレ、タマキチになっちまったよおお♥」
「古明地の姫様達に、やっと素直にしてもらえたね♥ キンタマ開発されて、よかった、勇儀?」
「よかった♥ コレ教えてもらって、オレ幸せを知っちゃった♥ こんな幸せ、もっと早く知りたかった♥」

 ぎゅううっぎゅううううっ♥
 萃香が、今までよりももっと強くキンタマを握り締めてくる。膨らんだ睾丸に指が埋まって、そうやって締め上げられる度に絶頂尾射精したときの開放感と恍惚が、でも実際の射精の放出とは違って何度も何度も小さな快感の爆発がキンタマのあちこちで連続している。一発達して終わりじゃ無い、それと同じくらいのデカイ快感が、何度も何度も何度も何度も、萃香がタマを握り指を埋めて摘まみ込む度に起こってそれがずっと続いていく。
 オレの精管を泳ぎながらキャパシテーションした萃香の精子と、受精待ちのオレの精子が、兜合わせホモ乱交しまくっている。精子同士が鞭毛を絡め合い、先体が頭を擦り合わせながら、精子同士でハイパーアクティベーションしている。お互いの精子相手に先体反応ぶちまけて、そんなホモプレイがオレのキンタマの中のそこいら中で繰り広げられていた。

「ねえ、勇儀。妊娠して。私のお嫁さんになって、そのでっぷり膨らんだキンタマで妊娠して♥ 私、勇儀のこと、大好きだから。世界で一番妊娠させたい♥」
「今更、何ゆってんだよお♥ オレのキンタマもう雌化してるの、わかってんだろぉ♥ だからそうやって、オレのチンポに精子注入して、精巣レイプしてんだろおぉっ♥ スるよ、スるに決まってンだろ♥ 萃香の精子でオレの睾丸妊娠させてくりぇぇっ♥」
「ゆーぎっ!!!♥」

 萃香が、オレのペニスの先端から伸びたカテーテルを乱暴に抜き去る。

「ば、ばかっ、今それヌいたら、せっかくの萃香のせーし……うきゅっ♥」

 そのまま萃香がオレのチンポを握り締めた。今までずっと接触を禁止されていたそこは、|好きな女《萃香》の手で握り締められて、強烈な射精感を生み出す。だが、締め上げられて、放出は出来なかった。膨れ上がりまくったキンタマの中でオレと萃香の精液が混合された液体が、竿のナカで行き場を失って渦巻く。

「オ゛……っ♥ フごぉっ♥ ちんぽ、こわれ……っ♥」
「待って、勇儀。こんな射精してからしばらく立った中古精子じゃなくって、絞りたてのアツアツザーメン、あげるから♥」

 萃香は左手でオレのペニスを握り締めながら、右手で自分のペニスを扱きまくっている。もうぴゅっぴゅっと白く濁りかけた先走りがトんでいる。萃香のキンタマも射精に向かって、迫り上がっているのがわかった。
 萃香のちっちゃい手が、それには不釣り合いの極太ペニスをギリギリ握って、激しく扱き立てている。ペニス快感に酔い痴れた萃香のトロ顔、舌を出して涎を垂らして、激しく熱い吐息を繰り返しながら、涙さえ流してオレの痴態をガン見して、エグささえ感じる強烈なペニスオナニーを上り詰めていく。
 ぺったんこでほとんど膨らみの無い胸、くびれの無いすとんとした、でも胸から太股までが急カーブを持たない均整な曲線で描かれたボディライン。それに比べれば、オレを含めたサカった女のでこぼことした体は、まるでバランスの悪い歪で美しくも無いモノに思えてしまう。肩からちっちゃなお尻り、ふくらはぎまでが丸っこいなだらかな曲線で描かれている萃香の体は清廉ささえ感じる。接触を禁じられたままの女陰も、無毛で割れ目にもめくれ肉は無いまさに無垢。でもそれに異を唱えるようにそこは生々しい湿り気を帯び、膨らみの無い乳房の頂上では乳首がピンと立っている。真っ赤に染まった顔は性欲でぐちゃぐちゃで、何よりその中央で屹立しているペニスは、幼児的無垢の美を全否定するほどに獣じみた性欲の象徴、雄々しく存在を誇示している。無垢を否定する場所が無いなだらかな萃香の体が、そのエグい自らの性欲の象徴に全身で堕落している。こんな倒錯なエロティシズムが、この世にあるだろうか。

「す、萃香のオナニー、エロすぎ……」

 握り締められたペニスの内側で奔流する行き場の無い精液。萃香はオレのペニスの先端を自らの方へ引き寄せ、同時に扱きまくって先走りをまき散らす自分のペニスをその方へ向けた。先端同士をくっつける。

「ふぁ……っ♥」
「えへ、勇儀と、ファーストキッス♥」

 萃香の顔が、オス射精まっしぐらの虚ろなのに爛とした目の表情で、嬉しそうにその口づけを言う。キス、なんて言って、ただの亀頭同士の兜合わせ、鈴口同士をぴっちり隙間無く押しつけて、萃香のチン先のぷにぷにが、欲求不満のオレのチンポに、甘く囁いてくる。
 にゅるん、にゅるんっ、と二人の牡愛液で先端が滑り亀頭同士が擦れると、目玉がぐるんと裏返りそうなくらいの快感が爆ぜる。チンポが背伸びに背伸びの無理なリキみをして、痛いくらいのバッキバキ。萃香の手がチンポ尿道を押しつぶしていなかったら、もう何回も射精しているに違いない。でもそれを許してくれていない。

「萃香っ♥ 萃香っ♥ |尿道射精《なかだし》しするんだろ、オレの|尿道《ちんぽ膣》に、|尿道射精《なかだし》、オレ堕としのザーメン注入っ♥」
「はーっ、はーっ♥ そうらよっ♥ まっててね、もうすぐだから、もうすぐ勇儀のために作った新品ザー汁、勇儀のキンタマ子宮に、直接流し込むから♥ ふっ♥ ふっ♥」

 萃香のコキ手が一層速くなる、イきそうなんだ、|好きな女《萃香》が、オレをオカズにして、ちんぽ射精しそうなんだっ……♥

「はーっ♥ はーっ♥ 萃香、すいかぁっ♥ はやく、精子くれっ♥ オレのナカに、萃香の精子♥ はやくはやくはやくはやくはやくっ♥」
「もうすくだから、もうすぐ、もうすぐ……っ♥ ああ、イく、イくよおっ♥ チンポイく♥ 勇儀のエロいキンタマ姿見て、勇儀とちんちん擦り合わせて、私のチンポイく♥ 精子射精る♥ 射精る射精る射精る射精る射精る射精るっ♥♥♥♥♥」

 萃香が涎をだらだら垂らしながら射精に向かって駆け抜けようとしたとき。

「「なりません」」
「うっぎゅ゛ぅ゛ぅっっ!?」
「お……おあっ……て、てっめえ、ら、こんな時まで、邪魔……」

 オレらの性欲に当てられておとなしくなったと思っていた古明地のガキ共が、また、しゃしゃり出てきやがった。

「な、なんだよ、邪魔すんなよっ! オレのキンタマをメス改造したのは、テメエらだろっ! それ使ってお望み通り萃香のザーメンうけとめようってんだ、何が不満なんだよ!! はっ、萃香、はやく、はやく萃香の精子、精子、精子っ♥」
「|姫様《プリンセス》ぅっ♥ 寸止めは、なしっ♥ 射精したい、射精したい射精したい射精したい射精したい射精した出したいっっっっっっっっっっっっっ♥」
「「あなた達がここでドスケベメスチンポ祭りを楽しむのは勝手ですが、それには先に料金を頂かなければなりません。何をお支払いいただくか、わかりますよね?」」

 クールを装って冷静な口調でオレらを追い詰めているが、お前にもこのドスケベチンポの快感が伝わってるの、知ってるんだぜ?

「テメエらも、イきてえんだろ? オレらのキンタマセックスの絶頂のお裾分けが、欲しいんだろ? だからそんなに、顔が赤い。息が上がってる。メスの匂いがしてる。太股が震えて、真ん中がべっとり濡れてる。内側が、疼きまくってる。わかってるぜ。」
「「……認めます。ニッポンのオニを、我々は舐めていました。こんなに……精神の、防御力ではなく、感応力が高いなんて、想定外です。私達はあなた方を堕とすためにこの舞台を用意しましたが、あえなく私達までその舞台の上に、引き摺り上げられてしまったようです。私達姉妹は、もう、すっかり|発情して《もらって》しまいました。認めましょう」」
「ざ、まあ、ねえな……っ!」
「「ですが、状況は変わりません。あなた方の猛りまくったチンポの生殺与奪は、私達が握っています。私達はこのまま、あなた方を放置して、自室で姉妹レズセックスにしゃれ込んでも、構わないのです」」
「っ、そ、そいつは、ごめんだ、無理だっ、こんな状態で、もう一晩どころか何分だって持たねえ、頭がおかしくなる、脳みそが絶頂欲で焼き切れるっ♥」
「そうだよおっ♥ 勇儀何言ってるの? 素直に、堕ちちゃおうよ♥ そしたらイケるんだよ? 私の精液、いっぱいココに注いだげるから、勇儀キンタマナカイき、しまくれるんだよおおっ?♥」

 萃香が、膨らみまくった重さで、迫り上がろうとしても上がりきらない、ザーメンタンクになってるオレのキンタマに、また指を埋めてくる。

「ふぎいぃぃ♥ 萃香っ、やめりょおっ♥ オレのキンタマもう、限界だからっ♥ もうっ、もうたえらんねえからっ♥」
「だったら、ね? ね?」

 子供がおねだりをするような可愛らしい声でオレを誘う、でもその姿はとても子供のモノとしては歪で、内容は色キチのそれだ。でも、オレだってもう、我慢が♥ もう心の防御力なんかなくなってる♥ とっくのとうに、オレは堕ちてるんだ、あとは、もう堕ちてることを一言、認めるだけ。それだけで、それだけで、最高の瞬間が……♥

「「星熊? いかがですか? 私共と一緒に、この|旧獄《シェンディラヴリ》を……」」

 オレは古明地の堕とし文句を、もう聞くつもりなんか無かった。それを遮るように。

「なる♥ なるから♥ お前らの、奴隷に♥ チンポ快感で飼い慣らされる、イヌになる♥ お前らが敵をぶっ殺して来いって言えば、どんな敵でも倒してみせる♥ どんな困難な作戦でも絶対成功させてやる♥ お前らの最強の|使い捨ての兵隊《イヌ》になる♥ だから、だから、」
「「使い捨ての兵卒など、望んでいません。私達が求めているのは、オニです。気高く、強く、だが私達の愛で汚れて堕落した、忠実なロード|悪鬼《バーテズ》としての、オニ。あなたには将軍の座を与えているはずです、それは奴隷ではなく、仲魔、いい加減ご理解ください。……私達の仲魔になって、いただけますね? 星熊、それに、伊吹も」」

「なるっ♥ なる♥ なるから、お前達の|仲魔《モノ》になるから♥ なるって誓うから♥ 早く、イかせてくれっ♥ イかせてくれ、もう、頭が狂いそうなんだ、イきたくて頭が、早く、はやくううううううううううううううううううううううっ!!!!♥」
「私も♥ 私もおおっ♥ 勇儀と一緒に、地獄のために戦うから♥ だから、だからちんぽ♥ ちんぽちんぽちんぽちんぽちんぽはやくううっっ♥ 私も誓う、誓いますぅ♥」

 選択肢なんか無い。世界の半分をくれてやるなんて、そんな条件だって今更要らない。もう、「はい」しかない、オレにも、萃香にも。それが、望みなんだっ♥ 他の選択肢なんて考えられない♥

「「今の宣言で|決して消えぬ契約の印《トラウマ》は、無事刻まれました。ようこそ、星熊、伊吹、歓迎します。そして、好きなだけ、〝おイきなさい〟」」

 |双子姫《プリンセス》の許可が下り、無意識下からの禁忌付与が解かれた。靄がかかったように曇っていた意識がすっかりとクリアになり、そうして見えてきたのは、言いつけられた通りざっくりと刻みつけられた|契約心傷《トラウマ》。あの姉妹が手放そうと決めない限り、この傷は決して癒えることは無く、その限りではオレ達はあれに逆らうことも出来ないだろう……いや、もう逆らうつもりなんて無い、だって。

「勇儀っやった、勇儀、勇儀勇儀っ♥ イケる、私イケる、やっとイケるよおっ♥ ほオっ、ちんぽ凄く解き放たれてるっ♥ 開放感凄い♥ 先っちょの口からたまたまの奥まですうううって、通った感じがする♥ これ、きっとすっごく射精る、ものすごく射精るよ♥ 勇儀っ、受け止めて、私の精子、勇儀のタマ奥で受け止めてえっ♥ もうだめチンコキ止まんないから、射精するまで止まんないから、勇儀のキンタマ私の精子で孕ませるまで射精止まらないから! ふーっ、ふーっ、ふあああっ♥」
「キてくれっ、オレのキンタマ孕ませてくれっ♥ 姫の許可が出たんだ、もう何も止めるモノなんてないんだっ♥ イきまくれる、チンポもキンタマも、頭ぶっ飛ぶまでイきまくれるんだっ♥ やべえ、キンタマ疼きまくってる♥ 萃香の精液で最大アクメキメるの期待して、死ぬほど疼いてやがるっっっっ♥ 萃香、はやく、はやく|睾丸注入《なかだし》♥ |睾丸注入《なかだし》しろぉっ♥」

 左手でオレのペニスを握り潰し右手で自分のペニスを扱きまくっている萃香に代わってオレは、自分で自分のタマを揉みしだく。手を両方とも股間に運んで、左右のタマを右手と左手で片方ずつ。ちんぽを握られながらキンタマを自分で揉み込む、余りにも滑稽で無様な姿、でも。

「ほぉおぉっ♥ んおほおぉぉぁぁぁっ♥ キンタマ♥ キンタマぁっ♥ 疼くっ、キンタマ疼きまくってやがるぅっ♥ 自分でタマ握って揉みながら、|睾丸注入《なかだし》待ち♥ はっ♥ はっ♥」

 すでに大量の精液注入を受けているオレの睾丸は萃香の精液で膨らんでたぷたぷ、内側がほぼ液体で満たされている重さ。それに、弾力のある肉玉というよりも乳房のような心地良い柔肉に変わり果てている。萃香が何度もそうしてくれたように、自分で、自分のキンタマに指先をずぶずぶ埋め込み深い部分をぐりぐり刺激する。

「ふ、ゴっ♥ ほっ、へええぁぁぁああぁ♥」

 性感帯なんて生易しいもんじゃない、精巣の組織が快感神経剥き出しの、ただのエロ臓器になってる、古明地姉妹に、そうさせられた。

(結局、抵抗なんか少しも出来なかった、勝てる見込みなんか無かったんだ。このチンポ……キンタマ快感に、逆らえない、コレを餌にされたら、どんな言うことだって聞くっ、聞くしかねえだろぉぉっ♥)

 凄まじい快感と、物理的な内圧上昇、ただの|自分でしていること《オナニー》。萃香が竿と尿道を握り潰してくれているのさえ押し通るように、ぶぷっ、と、どっちのものだかわからない精液が、断続して吹き出す。自分のキンタマに指を埋めてぐにぐにと揉み潰すのを止められない。キンタマポンプで、思い切りこの|精巣《ナカ》のモノ射精したい♥

「オふっ♥ ふぐっっ♥ キンタマ♥ キンタマ気持ちいぃっ♥ キンタマ揉み止めらんない♥ 萃香にされなくても、自分で握りつぶしちまうかもぉっ♥」
「うあ、勇儀、自分でタマ揉みまくってトロ顔になってるの、えっろ……♥」

 萃香の表情にも、性行為とその快感を楽しむ余裕は消えている、オレのことを見て劇症な切なさと末期的な焦燥感で苦悶にも似た表情でちんぽを扱いていた。その先端からも、ぴゅるぴゅると先走りが飛び散っている。早くほしい、それが早くほしいっ♥

「勇儀、ホントに赤ちゃん欲しい? 私と、勇儀の赤ちゃん。お嫁さんになってくれる?」
「えっ……それ、プロポーズかよ……この状況で」
「|姫達《仲人》がアクメ許可してくれたんだよ? 今しか無いじゃん♥」
「なるよ、オレ、萃香のお嫁さんになる♥」
「じゃあ勇儀、私のお嫁さんになってくれる? 私の赤ちゃん孕んでくれる?」
「なるっ♥ オレ、萃香のお嫁さんになって赤ちゃん孕みたいっ♥」

 オレは自分のキンタマを揉みしだいていた手を淫裂へ移動して、ずっと構ってもらえないま涎でドロドロに濡れたそこを左右に広げ、充血したまま放置された寂しい熟れ肉の赤さを、萃香に晒す。開いた瞬間、水をすった海面を圧したときの様に大量の愛液が滝を打って流れ出た。肉体の機能としては異常な多汁、でも、性欲の具現としては当然の量だ。二つの穴と濡れ肉を一気に晒し萃香の視線を感じて、更に吹き出すほどに増量する。メスの匂いが立ちこめた。

「ここだ、オレをお嫁さんにする為の穴は、ココだぞ萃香っ♥」

 滴り落ちる淫液から立ちこめる匂いに誘われるみたいに、萃香が扱きまくっているペニスの先端を、オレの晒し上げメス穴へ狙いを切り替えようとする。だが。

「「それはダメです。」」

 それも|古明地姉妹《ご主人様》によって禁止されてしまった。

「なっ、なんでだよおぉっ」

 今、萃香のガチブトをオレの処女穴にぶち込まれたら、オレ、きっとイケる。初体験でお嫁さん確定セックスで妊娠確定アクメ出来るってのに♥ 何で止めるんだよおっ、もうお前達に絶対服従なのは変わんねえってのに♥♥

「「星熊、あなたはもう、一生キンタマアクメ以外、許しません。あー、嫁入りだのなんだのは好きにするとよいですが。イきたいなら、《《そこ》》で、どうぞ」」

 古明地姉妹から、無様に垂れ下がったキンタマを指さされる。妊娠を禁じられた、女として終わったというのに、オレはそんなことは盲動でもよくなっていた。今最優先されるべきは、萃香の嫁になってこの愛情を成就させること、それが古明地の姫様達の許可の下であること、それと……

「かっ、構わねえよ! オレ、一生キンタマアクメだけでいいっ♥ こんなの覚えちまったらどのみち他のどんなプレイしたって足りねえよおっ♥」

 この無様な巨タマで壮絶なアクメを決めて満足することだった。
 その禁止事項を受け入れることは、オレの子宮と卵巣がメスとしての恋愛感情を製造して、メスとしての見てくれを維持し恋愛感情を生成するための、ただのエロ器官になってしまうことを、受け入れることだった。それも、でもそれも構わねえっ、他のあらゆるモノは、それで手に入るんだから!

「わ、わたしは……?」
「「伊吹は、星熊のペニスの中以外への放精を禁止します。」」
「そ、そんなの……願ったり叶ったりだよお♥ だって、勇儀、ごめんね、勇儀のことホントの妊娠させてあげられないけど……こっちはいっぱい孕ませてあげるからね♥」

 萃香が気を取り直したように、右手でオレのキンタマをぎりぎりと握りつぶして、満面の笑みで言う。

「ふぐっ♥ お、おおおっ♥ やっぱちげえっ♥ 自分でするのと、萃香に握られんのじゃ、気持ちよさがぜんっぜんちげええええっ♥ ああっ、ああっっ♥ 頼む、萃香っ♥ もっと、もっとキンタマいじめてくれえっっ♥」
「勇儀、タマ握られる方が好き? 私、この中に射精したいんだけどなぁっ……?♥」
「し、してくれっ、それっ♥ 尿道マンコに精液注ぐの、チンポ|膣内射精《なかだ》し、チンポ|膣内射精《なかだ》しぃっ♥ キンタマ孕ませてくれっ♥」
「もうっ、勇儀はわがままだなあっ♥ でも、キンタマおねだりしちゃう勇儀、可愛いから、許しちゃうよっ♥」

 萃香が、オレのチンポを握り締めて、自分のペニスを扱きながら、キスをくれる。オレはそれを求めるように無様に舌を伸ばして迎え入れた。萃香の幼気の強い可愛い顔に、コケティッシュに笑いかけられて、その直後に舌を甘噛みしたまま引っ張り出される。涎がだらだら出て顎から胸元を着たならなしく汚していく。

「んうぅぅっ♥」
「はむっ、はむっ」

 その間も萃香は引っ切りなしにガチブトペニスを扱きながら牡愛液をオレの体の上に垂らしているし、オレは自分のタマ揉みオナニーを止められない。精神的には古明地姉妹から、物理的には萃香から、完全に発射を禁止されているペニスが己の不甲斐なさと無様さに歓喜して涎を垂らしている。

「じゃあ、するね、勇儀♥ これでイったら、もう、勇儀終わりだね?」
「構わねえっ、これでオレがオニとしての誇りを失っても、全然構わねえっ♥ そんなの、そんなのキンタマアクメ出来ることに比べれば屁でもねえ、どうでもいいことだっ♥ だから、だから早く、早くキンタマに、萃香の生ザーメン注いでくれっ♥ さっきから扱きまくってチャージしてるそのアツアツの出来たて萃香精子、オレのドスケベキンタマに注いで、睾丸アクメさせてくれぇぇっ♥」

 オレの言葉に頷いた萃香が、いよいよオレのペニスの中へ容赦ない射精を注ぎ込んできた。脈打つようにどぷん、どぷんと萃香の射精のタイミングがダイレクトにキンタマに響いてくる。

「ヤバい♥ 萃香がイってるの伝わってくるの、ヤバいっ♥ 萃香のチンポがびゅくびゅくぅって射精するのがオレのナカにも響いてきて、一緒に気持ちよくなっちまうぅ♥ ふぐっ♥ ひぁぁっ♥ すっげ、萃香、すげええっ♥ じょぼじょぼいってる♥ 萃香の精液、オレのちんこの中でじょぼじょぼいいながら遡ってくる♥ オレの内圧に逆らっていっぱいキンタマの奥まで押し込まれてくるうっ♥ あ、ああ……オレのタマ、やべえっ♥ これただのキンタマオバケだあっ……♥」

 萃香の容赦ない精液注入で一層膨らみ上がったオレの精巣とタマ袋は甚だしく巨大化して、いよいよ人体のバランスを著しく失うサイズにまで膨らみ上がった。今や、自分で自分のタマ袋に腰を下ろせてしまいそうだ。掌でどうのこうのというサイズでは無い。奥に詰まっている精液か、精液と一緒に混ざり合った何かの器官か組織に向かって指を埋めるように押し込むと、柔らかく弾力のある感触と同時に、凄まじい快感が湧き上がる。この巨大な塊全部g、ドコをどう触って押し込んでも、意識がトぶほど気持ちがいい、それだけで絶頂しそうになる。
 ガニ股を開いてペニスを前方に突き出したポーズでオレとペニスを橋渡しにつながっている萃香が、最後の放出を終えたようにぶるぶると震えて、満足そうなアヘ面で涎と涙を流している。射精のときにビクビク電気に打たれ続けているみたいにはねていた体は、今はぴくん、ぴくん、とした小さな痙攣に収まろうとしていた。
 だが、そこに古明地の姉妹が歩み寄ってきた。

「「まだ入っていますね。お手伝いしましょう」」

 きっと萃香の自然な射精が終わるのを、その後ろで内心笑いながら待ち構えていたのだろう、萃香の後ろに回り込んだ姉妹二人は、前にオレにしたときのように、左右のキンタマをそれぞれの両手で丁寧にねちっこく、そして強く、撫でて捏ね回し、握って押し潰した。

「や、ちょっ、姫!? 私は、私はソコ、まだっ……ぐぎいぃぃいっぃっ♥」

 精液を吹き出す度に前後不覚にあちこちを飛び回って中々戻ってこれなくなっていた意識をようやく自分の頭に取り戻したような萃香が、姉妹のキンタマ責めで再びぶっトばされてしまう。もう一度ぐりん、と白目を剥き涙を零し、ベロを射精して涎を垂らして、しかし快感にとろけた幸せそうな表情で悲鳴を上げる。

「す、萃香、お前も、覚えさせられちまったか、それ……もう、戻れねえぞっ♥」
「ふぎゅっ、これ、うぐぎぎぎっ♥ 痛い、痛いのに、すっご、おぉ♥ キンタマから、精子、最後の一滴まで絞り出されるの、やばいぃっ♥」

 どくんっ、どくっ、どぶっ♥
 オレと同じ末路を教え込まれた萃香が、白目を剥きながら、最後の一滴までをオレの睾丸に向かって絞り出させられる。
 巨大化してキンタマオバケになったオレの、バカみたいな精子タンクにむかって、さらなる精液注入を強制される萃香。オレの睾丸は波打つように震えて更にその注入を受け入れる。注ぎ込まれるオレの方も、飽和しきっ|たタマ射精《なかだし》快感に連続アクメを降りられない。

「ふぁぁ♥ つ、作りかけの未熟精子クンまで無理矢理搾り取られるの、ぎもぢぃぃっ♥ 痛いっ♥ きもちい♥ いたい♥ い゛だぎもぢい゛い゛ぃ゛っ゛♥」
「んおぉぉっもう、もう入らねえって、入らねえってのにぃぃぃ♥ あああっ♥ もっと、もっとそそいでくれっ♥ 萃香の出来たてザーメンでオレのキンタマパンクさせてくれっっ♥」
「「どうしましたか、星熊への愛情はこの程度ですか? あなたのその瓢箪を睾丸に接続してあげた方がいいですか? アルコール性の熱いのを無限に射精できますよ?」」
「そ、そんなこと、されたら……♥」

 キチガイじみた古明地の発言に萃香は興奮したのか、勢いが収まりかけていた絞り出し射精の量が再び増える。

「ふぎっ♥ ふぎゅっ♥ 教わってる♥ キンタマアクメの仕方、私も教わっちゃってる♥ いっぱい射精る♥ 過剰射精で頭焼き切れるっ♥ タマ搾りぎもぢいいいっ♥」
「萃香の、残り汁っ……♥」

 絞り出された最後の精液は、まるで命そのものを絞り出したみたいに熱くって、絶頂を導くと言うよりも、愛情を感じる。注ぎ込まれているのは快感と言うよりは幸福感だ。
 それを、わかっててヤっているか、この覚姉妹は? 忠誠心、あがっちまうだろぉっ♥
 やがて、古明地の左右ダブルタマ搾りを受けても何も放出されなくなった。萃香の自慢の造精器も空っぽに、なったらしい。

「「流石にもう空ですか。伊吹瓢の睾丸接続はマァ冗談として、生命力と妖力の精力変換上限を取っ払って続けてもいいんですが……そこまでするのは今の望みではありませんから。あとは、好きになさい」」

 冗談で言っているのか本気で言っているのかわからない表情で、萃香の|キンタマ《カラダ》を解放する覚姫。
 萃香は幸せそうな笑顔のまま白目を剥いて、泡を吹いて震えている。吐息が濃いピンク色に染まっていた。イキも絶え絶えな萃香は古明地から解放され、力なく後ろへよろめいて、仰向けに倒れる。それでもまるでそれが快感を求める意思を要さない本能的な動きであるかのように勃起したままのペニスを両手で扱いて、一番最後の一吹きを自分の体にぶちまけた。その精液が萃香のなだらかなおなか、ぺったんこの胸、それに可愛い顔を真っ白にコーティングしていく。顔にかかった精液が呼吸でぷっくり泡に膨らんで、それが割れると同時に萃香は完全に気を失った。

「お゛……オ゛オ゛オ゛オおオオぁぁぁああっ♥ 射精る、射精る射精る射精る射精る射精る射精る射精る、精液ボールになってこんなにでかく膨らんだキンタマから、溜め込んだザーメン、全部、全部でるうっぅうっ♥ ふぎいいぃいぃいっつ♥」

 萃香が力尽きて鈴口を止めていた圧力が解放され、古明地からも射精とアクメを許可され、オレのキンタマはもう《《それ》》を我慢する力はとうになく、オレのペニスも前立腺も括約筋も、射精を押し留めるこらえ性を失っている。もはや暴走といっていい、アクメが先で射精するのか、射精したからアクメするのか、それさえももうわからない。

 ぶしゃあああっ、ぶびゅうううううっ、びゅううっ、ぶじょおおおおおおおおおっ

 勃起したままのペニスで放尿するときの無駄に勢いのあるあの感じで、不断の精液料とは比較するのも馬鹿らしい大量の精液を、膨らみまくった精巣からぶちまける。まるで水鉄砲の様に精液を遠くまで吹き散らし、線を描くように吹き出す精液は、そのまま床に射精の軌跡通りの形を描いていく。

「どまらねええっ♥ 射精止まらねえっ♥ 射精快感でイきっぱなしになってる♥ やべえ、っこれ、やっば、おお゛おぉ゛お゛おっ♥ 射精ぎもぢいっ、ザーメン尿道浣腸からの溜め込み一斉放出やべええええっ♥ チンポの内側、精液で擦られるのやばいっ♥ 射精でイくっ♥ イって射精する♥ 射精してイくっ♥ キンタマでうじょいじょ動いて精巣犯してた精虫がまた尿道いじめてくる♥ またイくっ♥ また射精する♥ 止まんない、気持ちいいのとまんねえええええ♥」

 仰向けにアクメ失神したままの萃香に向けて、精液をぶちまけ続ける。彼女が嫌がるかもとか息が出来なくなるかもとかそんな彼女のことなんか考えてない、ただ自分(萃香の精液が多分に混じっているけど)の精液で萃香の姿が塗りつぶされていく光景と、キンタマを押し潰す快感に押し流されるみたいに、睾丸放水プッシュ射精が止められない。

「オ゛おおっん゛♥ キンタマ♥ キンタマいいっ♥ キンタマ潰しっ♥ キンタマから直接精液押し出すのタマらねええ゛え゛っ♥ どばどばっ♥ キンタマ押し潰す度に精液ドバドバでるっ♥ ありがとうございます、さとりさま、こいしさま、こんな体に、こんなキンタマにしてくれて、ありがとうございますっ♥ キンタマ調教ありがとうございますっ♥」

 玉袋に指を埋めて中をぐにぐに揉み回す度に、びゅうびゅうと押し出された精液が噴き出す。竿を押さえずに両手ともキンタマオナニーに夢中だから、竿がぶるんぶるん震えて噴き出す精液は萃香の体と言わずその周囲も一緒に真っ白に塗りつぶしていく。悪臭を漂わせる生クリームで彩られていく萃香の失神姿に、オレはますます興奮を高め、同時にこんな幸せな絶頂をくれた古明地姉妹への感謝の念、それに忠誠心が上り詰めていく。もうカンストしているのに射精の度に「キンタマありがとうございます♥」の言葉を精液と一緒にぶちまけている。こうして古明地姉妹へ感謝の言葉を吐くことと射精の快感が、より一層強く結合してしまう。
 心にも体にも、古明地姉妹への感謝=絶頂する快感としてすり込まれて、もうオレは……古明地姉妹特有の|微差二重音声《バイノーラルボイス》を聞く度にチンポを勃起させてキンタマを疼かせ、睾丸絶頂で射精する度に古明地姉妹への忠誠を高めてしまう、ただのキンタマ射精チンポ奴隷になってしまった。きっと、萃香も同じだ。
 でも、好きな女と一緒にこの|地獄《極楽》に落ちるのなら、本望だ。

「萃香……萃香ぁっ……♥ ふうっ、ふうっっ、まだでるっ♥ 萃香に射精して貰ったキンタマ孕ませ用のザーメンと、オレのキンタマ絶頂ザーメン、まだたっぷり♥ たっぷりあるぜっ♥ 何寝てんだよ、萃香、オレのキンタマいじめてくれよおっ♥ 萃香、萃香ぁっ♥」

 一人恍惚の白目を剥いて失神している萃香、残されたオレの身にもなってくれよ。古明地姉妹の方に視線を遣るが、お前は勝手にしなさいと言わんばかりの冷ややかな態度。

「……萃香も、姫も、その態度だったら、オレにだって考えがあるぜっ♥」

 オレはケツの下ででっぷりと横たわっている肥大タマ袋に視線を落とす。指を埋めて深いところを抉るように揉み込んで、溜まったままの精液の膣内でこりこりしこる睾丸の核らしきものを自分でイジメ倒している。こりっ、こりっ、と指先を弾かれて動く度に、全身がビクンと反り返るくらいの快感が駆け抜けて全身が幸福感の残り香で震える。オレは、何度でも快感を爆ぜてくる淫らな肉双球の上に「こんなエロ袋、こうしてやるっ♥」と、一気に全体重をかけて座りこんだ。
 刺激に弱いその敏感さ全てがもろに性感に直結するようになっているキンタマ袋。その上に、どすっ、と体重がかかって形が歪む。内側に抱かれたこりこりの睾丸核の上に、俺自身のはしたないデカ尻たぶが、打ち込まれた。

「ぐ、げっっ……♥ ぐぎ、ぎ……へあぁぁっ♥」

 股間から横隔膜の下を突き上げるような痛みが噴き出す、本来なら貧血にも等しい症状を伴う、単純な痛みでは無い深刻な苦痛をもたらすはずだというのに、古明地姉妹に、あるいは萃香に揉み潰されてアクメを決めまくったのと同じように、オレの睾丸は苦痛の代わりに、頭の中をぐちゃぐちゃに溶かして形を失わせてしまうほどの快感を爆ぜた。
 目の前が白い閃光で満たされて視界が失われる。おなかの中身ぐるぐると暴れ回るようにうねって、苦痛の代わりに快感で嘔吐しそう。体重で押し潰された睾丸から、一層の勢いを持って溜め込みザーメンが噴き出す。チンポ尿道の口径に対して、通過許容量を超えた放精圧力がかけられている。

「うぎゅっぅ……♥ すっげええっっ♥ チンポの口、裂けるぅ♥ 射精圧凄すぎて、ザーメンチンポ通る感覚だけでまた、イくぅっ♥ ふんっ、ふんっ♥ もっと、もっと潰すっ♥ もっとキンタマ押し潰して、射精っ、射精射精、キンタマ搾りと強制射精ン゛も゛ぢい゛ぃ゛ぃ゛ぃっ♥」

 自重でタマ袋に座って押し潰すのなら両手とも自由だ。オレはがに股に蹲踞ポーズでケツでキンタマを押し潰しながら、両手で竿をめちゃくちゃに扱き倒す。竿の部分を乱暴に擦り、親指と人差し指で作った輪っかをで雁首を締めながら通し、あるいは指先を細かく動かしてくすぐるように亀頭を甘くひっかく。射精し続けている亀頭は敏感を通り越して神経剥き出しみたいな状態、チン先刺激なんてそれだけでぶっ飛びそうになる。
 亀頭は限界まで充血して膨らみ、真っ赤になりながら鈴口を精一杯に広げて怒濤の勢いで精液をまき散らしている、がに股に失神したままの萃香の体めがけているが、もうその姿は真っ白に染まっていてよく見えないし、チンポ快感が過ぎて、ハードウェアとしては制御できる両手を添えているのに、制御系のソフトががたがたに狂っていて結局あちこちに白い飛沫をまき散らすばかりになっている。

「「伊吹にばかり情けをかけたようで不公平でしたね。これで、ご容赦くださいまし?」」

 オレがキンタマ自重プレスオナニーで浅ましく射精しているのを見かねた古明地の姫様二人が、二手に分かれてオレの背後に立った。そして。

「「思い切り、気をお遣りなさい」」

 の言葉と同時に、二人のトゥキックが、ケツの下で潰れっぱなしのキンタマに突き込まれた。

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~っっっ!? ッァ☆ っ、っオッ♥ っほへ♪ しょ、しょれっ……♨」

 一瞬で視界が消えた。白じゃ無い、黒。光が一撃で失われて、小さく瞬く点がちらちらと感じられるだけ。涙が噴き出すように零れる。痛みでは無い、これは、快感。冷や汗が噴き出して、耳が聞こえなくなる。でもコレも苦痛じゃ無い、全部が全部、快感だ。暴力的な快感が気がおかしくなるほどの快感の五寸釘になって頭蓋骨を脳みその内側から外側に向けて飛び出すみたい、頭が、絶望的に、壊れる。狂う。

「ぐ……げ……っ♥ おぁ……♥ きん、たまっ……♥ われりゅっ……♥ んもぢいっ♥ キンタマ壊れるの、さいこぉぉっ……」

 いよいよぶち壊れたペニスが、何の加圧も無く怒濤の勢いで精液を噴き射精し始めた。放出されたチンポの外が圧力が下がり、内側で圧を高め続けられていた精液を、気圧差で無理矢理引きずり出すような、体の芯がずるずると引きずり出されるような、強烈で強制、だけど甘美で耽美な射精快感が、暴走している。
 ペニスの付け根で、余りの放水圧に何かが裂けるような音が聞こえた気がする。強い衝撃を受けた睾丸が捩れ狂うような|激痛《快感》を爆発させて、下腹部から胃に向けて走り抜ける。快感暴走した脳みそから、ろくでもない信号が体中にまき散らされて、心拍まで不全を来す。睾丸からまき散らされる快感が膀胱に響いて尿意を刺激して、我慢という言葉を失った下半身が小便をまき散らしながら絶頂を堪能している。不整脈を起こす心拍は、血液の代わりに快楽ホルモンを循環させているみたい。チンポから噴き出す精液が、オレを幸せにしてくれるマンナみたいに、キンタマを蹴ってくれた古明地の姉妹が神様みたいに、思える。とにかく、今のオレはとにかく。

「ありがとうごじゃいましゅ……キンタマ調教、ありがとうございまひゅっ……キンタマ、キンタマぁっ♥」

 、睾丸にアクメとどめをくれた古明地姉妹に、圧倒的感謝の念を抱き、絶対的忠誠を誓いながら、キンタマ衝撃による視界暗転と快感絶頂を同時に味わってオレは、キンタマ、キンタマ、と念仏を唱える仏徒のようにうめき声を上げながら、意識を失った。







 星熊が白目を剥いて伊吹の上に倒れ込んだのを視認してから古明地さとりは、まるで一仕事を終えた、と実感したように深い溜息を吐く。その額には汗が浮き、頬は紅潮を続けたままだ、体温も上昇している。それは隣に侍っている妹の方も同じ、二人はオニを支配下に置くことに成功したモノの、それは彼女達にとっても100%確度をもったアクションでは無かったらしい。

「はーっ……。どうやら、堕ちてもらえたようですね、なんて、思念……簡単に堕ちると思っていたのに、こっちが巻き取られるところでした……」

 その証拠に、溜息を吐いた姉の表情には、他のモノにはめったに見せない安堵に満ちた、どことなく緩んだ穏やかなものになっている。それまでの時間が以下に緊迫した精神状態だったのかを物語っているようだった。
 大仕事を終えた安堵感と弛緩に、姉の方は満足の表情を見せているが、妹の方はそうではないようだt。

「おねえひゃまぁぁ……♥」
「こ、こいし、手伝って。この子達を」
「やぁら、私もおねえさまときもちよくなりひゃいぃ♥」

 姉の太股で何度も気を遣った妹が、いつもは無表情を崩さないままの表情を涙と涎と鼻水でべちょべちょにして、姉のカラダに縋り付いている。星熊と伊吹がすっかりトんだというのに、まだ快感伝染が消えず腰をくねらせている。姉と同じか、あるいはそれ以上の力を持った存在ではあるが、姉とは違って精神面の鍛錬が足りていない。妹はオニ二人から逆流した性欲と快感に、完全に振り回されていた。
 姉に腕を回して抱きつき、ベタベタと行為を求める妹。姉の方とて妹には性のパートナを任せる程の好意を抱いている、それを無碍にするつもりも無い。

「わ、わかったからちょっと、待ちなさいっ、|四天王《この子達》の再調教を済ませてからに」
「むうう、普通の|鬼神《フィーンド》じゃないからって、私よりおねえちゃんに目かけてもらって。……殺しちゃおうか」
「こいし。」
「おねえちゃんさ、もしかして」
「さっさと手伝ってください」
「……まあいいや、はああい。でもその代わり、今夜はたっぷり遊んでね。この人達のお陰で、火が、消えないんだからあ♥」

 姉の体から一旦は離れるものの、スカートの下から強烈に漂う女の色香は依然強い。スカートごと股の間に手を挟むような仕草で、姉に向かって甘えてねだるような表情。姉の方も、オニからの性欲逆流を受けていないわけでは無い、着いた火はお互い様だ。妹が離れた後、どこかむず痒そうに内股になったまま、妹から目を逸らして言う。

「ええ。燻って堪らないのは、私も、ですから」
「おねー、ちゃっんっ♥ 今夜はおねーちゃんいつもの百万倍可愛く見える♥」
「今夜は久しぶりに、存分に、シましょう。やっと、やっと念願の星熊と伊吹が、真の意味で手に入ったのですから。これからこの|旧獄《シェンディ》は、もっとよくなりましょう。今夜は、祝宴です」
「やったあっ♥ ねえ、おねえちゃんっ、私もあんな立派なおちんちんになりたいなあ♥ 私のちょっと、小さすぎ?」
「こいし、その両手で口と鼻を覆うポーズで〝私の○○、××すぎ〟と驚くのは、かなり古いです」

 |旧獄《シェンディラヴリ》の夜は、長いと言うよりも、深い。







「萃香ぁ、まだかよお」
「ええっ、待ってよ、まだ準備があ。まだ髪乾かないし、ああ助けてリボンがキまらないぃ」
「乙女かよ」
「乙女だよぉ~。ていうか勇儀こそ気、早すぎじゃない? 出陣まであと3時間あるよ?」

 |温泉《ふろ》から出てから、ドレッサーの前に座り込んでのんびりと準備をしている萃香。体の割に長いひまわり色の髪の毛は、確かに言うようにまだ水気を残している。そしてそれを先端でまとめるリボンの角度が、うまく決まらないというのだ。
 萃香の体のサイズじゃドレッサ備え付けの椅子でも高くて足がぶらぶらしている。台上に乗った化粧品を選ぶ手つきでさえ大げさな動きになって、奥にあるものを手に取ろうとするには肩を上げて大変そうに見える。ドレッサの鏡も持て余していた、鏡に映った彼女の姿は鏡自体の面積からいって酷く小さくて、鏡の大半の面積は意味もなく背景を映し出している。
 つまり、子供が大人の真似をして化粧品で遊んでいるようなそんな光景にさえ見える。でも、そんなことではないのは、オレでも知っていた。これは、彼女の戦化粧だ。童顔な彼女が大人っぽく見せ、あるいは魅力的な顔つきを作り、そのことで自らの戦意を高揚させるのは、戦闘力の向上につながる。それと同時に、首を取られたときに、自分を殺した相手には美しく自分を見せる、死に顔の彩りでもある。
 それは、オレもしている。大人っぽく見せたり綺麗に見られるためだったりでやっている萃香のそれよりも、より過激な奴だ。死んだ後綺麗に見られたいと余り思っていない、むしろ死んだ後首から上だけででも相手を威嚇したいと思う、オレの戦化粧は獣の野性と戦狂いの凶気を前面に出して、戦闘力のbuffにだけ特化した厳つい奴。それもオレはもうとっくに済ませている。でも今日は、ちょっと違う化粧だ。萃香に習ったんだよ、そういう、綺麗に見せる化粧。

「そらそーよ、今日はいよいよ、うまくいけばあのレベル5とやりあえるんだ、気も急くってもんだぜ。萃香は好きじゃないのかよ?」

 これから戦線だ、滾るってものだろう? 萃香だって本当は好きなはずだ、|鬼《フィーンド》に、それが嫌いな奴なんていない。

「ううん? 大好きだよ。大好きだからこうやって……んしょ、おめかししてるんじゃないか。でも勇儀も慣れたもんだねえ、昔は〝そんな甘ったれた戦化粧できるか!〟っていってたのに」
「うっさいなあ、苦労したんだぜ? 萃香に習った方法、結局ぜんっぜん役に立たなかったし」
「そりゃあそうじゃん、私と勇儀じゃ顔の作り違うんだから。化粧の仕方だって全然違うよ。私がしてるようなのをそのままやったら、勇儀じゃキツ過ぎてオバケだよ」

 そう言いながら、ほんとに子供みたいに足をぶらぶらと振りながら引いている(そんなんでよくライナー引けるな!?)アイラインは彼女の丸い目を補正するように目尻に向けて少し上向きに伸ばされていて、シャドウもそれに応じた陰影を乗せてある。でもかわいらしさを残すように、チークは少し低い位置に明るいピンク色で広めに乗っけられていて、色の違うファンデーションは境界をより広い面積で淡くぼかして鋭さを消している。ラメは控えめで、でも明るい色を多く使っていた。白のハイライト入れなんて今時だれもしないんだけど、童子と遊女を足して割ったようなメイク、萃香にはそれが似合う。
 鏡に映っている彼女の顔は、いつもの丸っこくて可愛らしい感じを生かしながらも要所要所に鋭い色使いを残し硬軟織り交ぜてよりコケティッシュな印象に変わっていく。

(ちっ、こいつはいつも可愛くまとめやがるな……)

 戦化粧を施す内に、オレには逆立ちしても出せない色香がみるみる強まっていく。見ている傍から、いっそこの場で後ろから抱きすくめてむしゃぶりつきたくなってしまう。ずるい。

「勇儀、顔つきがおっさんになってるよ。きれーなおねーさんが、台無し」
「ぅえっ!? 化粧失敗してるか?」
「そーじゃなくって」

 そりゃあ鏡越しにこっちから見えるのだから向こうからだって見えるのだった。間抜け面で萃香に見とれてた自分を思い知らされて、顔がぼっと熱くなる。しようがないだろ、もともと、その、好きな女が、綺麗に化粧でめかし込んでるんだ、見とれない方がおかしいってもんだ。

「勇儀だってきれーじゃんか、惚れ直しちゃった。もっと早く、そういうのしてればよかったのに。10年先まで予約いっぱいの花魁さんみたい」
「い、いいんだよ、オレは、そういうのは。」
「ふうん? じゃあ今日はどうしたのさ? そんなにレベル5の相手が楽しみだった? それとも、違う理由かな? そうかー、そうだよね、だからこんな、3時間前なんかに準備万端でうずうずしてるんだよね?」
「う、うっさいなあ!」

 楽しみ、そう楽しみなんだ。疼いてしまう。
 流血戦線にでて大暴れすることもそうだし、それに。







 山が崩れる音というのは、この|旧獄《シェンディラヴリ》ではとんと耳にしない音だ。というのも、この|旧獄《シェンディラヴリ》には山らしい山が残っていないからだ。地殻変動は無いが雨風の浸食はあり、河川は乏しく、ほとんど乾燥して荒涼とした平地。だからこそ戦略も戦術も無いただ正面からぶつかり、限られた陣形と指揮だけが表面に現れる限定的かつインフレした特殊な戦闘が延々と続けられている。
 そのただ真っ平らな空間に下手をすると何千年か振りに轟いたその音は正しく山を突き崩した音で、雲の上に巣を張っている蜘蛛ももの珍しそうに顔を覗かせて地上を眺めている。ただの轟音なら戦闘でよく聞こえているものだが、山が崩れ倒れるような単一で巨大な音というのはそうそう聞けるものでは無い。

「へへっ! こないだの汚名は返上させて貰ったぜ」

 まさに今萃香と勇儀が打ち倒したレベル5は、|被造物《クリーチャー》でありながらその運用と巨大さから戦場に登場することはほとんど無い。的には敵のコスト感覚があり、平地戦でただの的になりかねない図体のこれが戦線に現れたのは、前に「山が崩れた」時と競えるくらいに久しぶりのものであったし、彼女達がこれを打ち倒して倒れ込むときに轟いた音もそれ相応のものだった。
 倒れたときの音もそうだが、振動は天変地異にも等しい、地殻変動のな|旧獄《シェンディラヴリ》では地震そのものが希有な自然現象だ、地面が揺れて慌てふためく奴らも多く、劣勢にあった|悪霊《タナリ》の前線は大きな拠点を失ったことと地震という恐怖の天変地異に総崩れとなった。
 レベル5が戦況を一変する可能性のある巨大な|悪霊《タナリ》であることは間違いが無いが、倒されたときにも正しく戦線に影響するととはその通りだった。

「もう聞こえてないでしょー、頭粉々だよ。勇儀の怪力の前じゃ、|生きた城塞《レベル5》の防御力も紙装甲だね」

 |改造八咫烏《ヘルファイアエンジン》の使用を抑止させて、結果としてこのレベル5を仕留められなかったのは、人にオレの責任だ。星熊勇儀はそう考えるようになっていた。実際その通りなのだから仕方が無い。

「前回だって負けたわけじゃ無いけど、それでも汚名は受けちまったからな。雪いだ雪いだ」
「勇儀、聞き分け良くなったねー。えらいえらい。」
「うるさいなあ、人は変わるんだよ。」

 打ち倒した「生きる城塞」には、大きさこそ及ばないがミッシングパープルパワーで巨大化した伊吹が、星熊をひっつかんで、天手力男投げ。その勢いをそのまま三歩必殺な鉄拳に乗っけて、弾丸と化した星熊がレベル5の頭をぶっ潰したという訳だ。オニらしいなんとも力任せの攻撃だが、相手もそういう性質の化け物だったのだから、妥当なぶつかり合いとも言える。

「些細な切っ掛けねえ。ま、勇儀も一皮剥けたってことか」
「うまい比喩だとか言わねーからな」
「ちえ」

 確かにレベル5は戦場では強大で希有な兵ではあったが、ミッシングパープルパワー状態の伊吹にぶん投げられて対象に激突して無事でいる星熊のフィジカルの方がよほど異常だったということだろう。
 その巨体故に有効打がなかなか与えられず、それを拠点にわらわらと大挙して押し寄せてくるその些細な戦術、元々戦術など組み立てない|悪霊《タナリ》の軍勢の戦力は、たったそれだけの方法によって格段に向上していた。
 そうして戦線が|悪霊《タナリ》側に有利に傾いていたところだったが、一時戦線から退いていた星熊と伊吹が復帰。飛行部隊のひ弱な攻撃力では弱点である頭部にも有効な攻撃が通らず手を拱いていたが、星熊と伊吹のデタラメな連携技で弾丸鉄拳を頭部に受けたレベル5は頭部を粉砕され、あえなく倒れたというわけだ。

「こんなことなら最初からこうしてればよかったね。そしたら|改造八咫烏《ヘルファイアエンジン》を使うだの使わないだのなんてことで問題になることも無かったのに」
「……こいつは手段を選ばずに何としても倒さないといけない相手だったからやっただけだ、本当は、もっと楽しんで、やりたかったさ。本当はな。」
「まあそういう発想も含めて、聞き分け良くなったよね」
「だからそーいうふーにオレをガキ扱いするなー」

 さすがは|四天王《テトラ・フィーンド》と讃える者もあれば、あれじゃ|悪霊《タナリ》も顔負けの強引さだと苦笑いする者もあったが、勝ちは勝ち、しかもピンチをひっくり返した逆転勝利だ。
 戦線を退いていた星熊と伊吹については、その退場に対して|正体の知れぬ双子の司獄《オーヴァロード》の怒りに触れたのだと、|ヌッペリボー《のっぺらぼう》に堕とされたのだと噂されていた。星熊と伊吹は|悪鬼《バーテズ》の中でも出自が特殊ではあったが、その人となりで地底では|四天王《テトラ・フィーンド》であることを除いても人望が篤い。その再登場に、現場は沸いていた。

「ところで勇儀、あれ、ヤバくない?」
「ああ、丁度オレもそれを、考えてたところだ」

 その常識外れの巨体が倒れ、失われた首からは大量の血液が奔流をなしている。レベル5の体内には、通常の重力物理空間でその巨体を駆動させるために、容積以上の「つめもの」がされていたらしい。そうでなければ動けるはずも無いのだ、当然と言えば当然だ。千切れた首元から怒濤のごとくあふれ出す血液は、山の決壊から突然の川の氾濫よろしく辺りを押し流していく。氷河でこそ無いがその様子はさながら|氷河湖決壊洪水《ヨークルフロイプ》のごとし。
 やっば、と目を見開いて津波を打って押し寄せる真っ赤な流れに身構える星熊、それに伊吹。星熊は慌てたように、だがその慌てた様子を全て滑稽さと暢気にスライドさせた様な表情と声色で、何がそこにあるというのか遙か上空の雲の上の方に向かって、声を投げていた。

「おうい、〝異界渡りの蜘蛛神〟さんよ! 《《こういう光景》》は久しぶりかい? よかったら引き上げてくんないか、ちょっと……逃げ遅れそうなんだが、なあ、なあってばよお!」

 そうすると、雲の上から傍観を決め込んで様子を見ていた土蜘蛛神が蜘蛛の切れ間から顔を出し、溜息を吐いて糸を垂らしてきた。あまり|旧獄《シェンディラヴリ》の政治には絡もうとしない。流血戦線にも加わらない、|悪鬼《バーテズ》の中でもあれと絡みのある者は少なく、人となりも力もよく知られていない、変わり者の|悪鬼《バーテズ》。一説には古明地姉妹にモノを言えるくらいのロードクラスだとも言われていたが、数少ない彼女の信奉者からのもっぱらの評価は「ヤマメちゃん尊い! 死ぬまで推し変しないよ!」と翻訳不能な賛美句で表現されていた。どうやら邪神として宗派をなしているようだったが、そのイコン、つまり地上の神様に対するモノで言うなら、十字架であるとか仏像であるとか柱であるとか石、そうしたモノとして、教団員は20センチメートル程度の光る棒を持って振り回すのだという。アンセムと呼ばれる神を讃える扇動的な聖歌も、よく歌われているらしい。全くよくわからない。
 よくわからない存在ではあるが、あれはあれで間違いなく|悪鬼《バーテズ》の仲間内だ、いざとなったら星熊やあるいは古明地達の手助けの一つくらいは、とのつもりなのかもしれない。それとも、何か、言われれば手助けを断らない程度の因縁でも、あるのだろうか。
 ともかく、この戦場は逆転勝利だった。この二人からすれば、当然の勝利だったのかもしれないが、それでも、意味のある勝利だ。この二人にとって、特に。

「これで、メンツも保たれたってもんだねー」
「……ああ」

 地獄から引き上げられるわけでも無い、行き先は結局地獄でしか無い蜘蛛糸にぶら下がりながら、伊吹と星熊が会話している。すんでの所で魔力を帯びたドス赤い奔流が流れていく、二人の内ギリギリ後に糸に捕まった星熊の足先が、わずかに赤く濡れたがそれだけで済んだ。他の低級|悪鬼《バーテズ》がどうなったのかは、考えたくないところだろうか。だがヒエラルキを徹底し「悪にして秩序」たる|悪鬼《バーテズ》にあっては、それも宿命の内だった。

「メンツと、それにご褒美もね」
「そ、それは関係ないって」
「ふうん? 私は、楽しみだよ? 勇儀が要らないって言うなら、ご褒美は私が全部貰っちゃおうかな」
「い、要らないなんて要ってないだろ! 独り占めとかさせねーからな!」

 「そうやって、やっぱり少し聞き分けが無いくらいが、勇儀らしくていいや」なんてくすくすと笑う伊吹に、星熊は不満そうに、でも恥ずかしそうに頬を少し赤くして、そっぽ向いていた。







 オレと萃香は、玉座で足を組んで座りオレ達を冷ややかに見下す姉と、その横で姉に寄り添うように目を閉じたままの古明地の姫達に対面し、二人で横に並ぶ。まるで兵隊が上官に向かっているときのように不動、でも足を肩幅よりも少し広く広げた状態で立つ。
 古明地の姉妹に呼び出されて、オレも、萃香も、レベル5を討ち取った戦の帰りのそのままの姿で、ここに参じていた。勿論それは想定済みだった、いつも可愛い萃香はともかく、厳ついばかりの戦化粧をオレがやめたのには、それなりの理由があるってもんだ。
 化粧を崩さないまま(それは杯から酒をこぼさずに弾幕舞をするのに比べれば楽なものだ)の顔と体を、古明地の姫君に見られている。値踏みするような視線は変わっていない、でも、大きく変わったことがある。

「「レベル5を討ち取ったそうですね。」」
「叡智と先見の女神、|多眼卜占姫《カビリ》の慈悲と栄光に因りますれば」

 「覚」と呼ばれる妖怪の姿がこの界で都合のいい呼び名としての隠れ蓑であること、その実はどこか別の界での宗教戦争に幾度も敗れ|九獄《バートル》へ逃げ堕ちたキュベレと呼ばれる女神の|化身《アスペクト》であること、この地では|多眼卜占鬼《カビリ》あるいは|賀眦禮《かびれ》と名乗っていたことを、オレや萃香は言外に伝えられていた。

「「私共から今更、褒めたり讃えたりの言葉は贈りません、あなた達の力ならば当然の戦果。|四天王《テトラ・フィーンド》には、力と名誉に見合った、要求と責任が生じます。」」
「いかにも承知しております。」
「「ですが、それとは別に相応の報償は、与えねばなりません。それは私共の義務。あなた達の誇りが飾りでないことを示し、報い、そしてその光で下々と|旧獄《シェンディラヴリ》を照らして貰うために」」
「ありがたき、幸せ」

 現在揺るぎない支配者として他者から得ている評価が揺らいだり、萃香や蜘蛛神の働きによってこの|旧獄《シェンディラヴリ》とつながった別の界での立場を危うくしかねない事実、本来触れられたくないだろう敗残者としての本質をオレ達が知ることになったのは、オレ達が二人の信用を勝ち取ったからに他ならない。

「「褒美を取らせます。願いを聞きましょう」」

 戦果に応じた褒美、その望みを聞くという古明地姉妹の目に、もはや敵意はない。それは、オレ達からも同じだった。一度は謀反人として、|ヌッペリボー《のっぺらぼう》に堕とされそうにさえなったオレ達が、どうやって姫の信用を得たかって? そいつはな。
 望みを聞いて下さるという二人の主君に向かって、オレと萃香が望んだ褒美は、一つだ。それは覚、いや|多眼卜占姫《カビリ》としての二人の目であれば、問う迄も無いことだろう。それでも、口に出して懇願することを、迫られているのだ。
 今のオレ達に、それを拒否するつもりは無い。

「ああ、|姫《プリンセス》っ♥」
「じゃあ、姫さんっ♥」

 オレと萃香は、古明地姉妹のシンクロに負けないくらいにぴったりと一致した声と息で、答える。

「「このちんぽ……キンタマを、いじめてくださいっ♥」」

 オレと萃香は、同時にスカートの端を持ち上げて捲り上げ、あられもない陰部を姫二人に向けて曝け出す。その瞬間にスカートの内側からあふれ出す、強烈な匂い。
 オレも萃香も下着など着けていない、付けているのは無様にフル勃起した肉棒を飾る、ペニスドレス。萃香のそれは可愛い彼女に見合いの、フリルをあしらったファンシーなリボンタイプ。オレのは、レオタードをモデルにしたようなぴっちり締め上がるラバータイプだ。萃香のチン穴には射精を抑制できぬよう空洞の管が差し込まれており、逆にオレの穴には使用不能を知らしめるようにプラグが差し込まれている。
 触ることを禁じられた女陰は蜜をだらだらと垂らして床にしたたっている。本来なら、極刑にさえなりかねない下品で無礼な行為だが……オレ達にはそれが許されている。これも「名誉と栄光」の賜物だし、これこそが、二人の信用を得た直接の原因だ。

「「当然の戦果、とは言いましたが。レベル5を討ち取った褒美が、そんなことで、いいのですか?」」

 わかってるくせに、わかってるくせに♥ 全部オレ達の頭ん中なんて筒抜けで、四六時中ちんぽとキンタマのことしか考えられない体になってるの、知ってるくせに、何しらばっくれてんだよおっ♥ お前達がしたんだぞ、チンポ狂いで逆らえない体に、お前達がっ♥

「オレ達はもう、この肉棒に勝てない。これを慰めてくれる姫さんにも、もう絶対逆らえない♥」
「そういうカラダにしたのは、|双子の姫君《プリンセス》じゃないかぁ♥」
「キンタマ快楽でオレ達を虜にして、逆らえなくして、《《これ》》以上に欲しいものなんてこの世に存在しないってレベルに躾けておいて、〝願いを聞く〟? 〝そんなことでいいのか〟? 決まってるだろ、そんなの、決まってる♥」
「お慈悲を、姫、どうかお慈悲をっ♥ ちんこしてくださいっ、ちんこ、ちんこっ♥」
「頼む、もう、もうチンポ我慢できねえんだっ♥ ちげえ、き、キンタマ、キンタマいじめてくれえっ♥」

 古明地さとりは何も言わないまま立ち上がり、古明地こいしを引き連れてオレ達の方へ、歩いてくる。萃香の方には妹のこいし《《様》》、オレの方には姉のさとり《《様》》。
 スカートを全捲りして勃起チンポを震わせ、マン汁を垂らしてかろうじて姿勢を保って立っているオレと萃香の前に、二人がほぼ同時にたどり着いた。黒いラバー製の長手袋を嵌めた姉妹の姿を見て、オレと萃香は、恍惚の声を漏らす。
 
「あ……ああっ」
「ふう、ふううっ」

「「では、褒美を取らせます。これからも私達に対する変わらぬ忠誠を。その身に刻みなさい」」

 二人揃って、黒光りする長手袋に口づけ、舌を這わせて唾液をまぶしている。唾液に湿りてらてらと照り返しを孕むその手で、何をしてくれるのか?
 これから頂く《《ご褒美》》を想像しただけで、オレは……

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